他の連載作品はとりあえず置いといて、投稿します!
「――『連続
ここは、御坂さんがよく寄る公園。で、目の前には彼女のケリの跡がついた自販機。今日は『ヤシの実サイダー』が出たようだった。
「そーなのよ。何でも『
「よくわかんないけど、アルミを爆弾に変えてるってことですね!」
「すっごく、大まかに理解したわね……」
世の中、深く考えちゃ駄目ですよ!偉い人も言ってます!『考えるな、感じるんだ』って!
「まあ、とにかくそんなカンジ。それで今日も、黒子も初春さんもカンヅメってわけよ」
「んー、今度気晴らしに誘いますか――――」
◇ ◇ ◇
「と、いうわけで、やってきました、『セブンスミスト』!」
「いきなり、何ですか、佐天さん?」
初春、細かいこと気にしちゃ駄目よ?こういうのは、テンプレなんだから!
「いいじゃん、いいじゃん! 今日は初春の気晴らし兼ねてるんだから!」
「その口調は、どこかの誰かを呼び寄せそうだからやめてください……」
なによー、そこまでテンション低くしなくてもいいじゃないのよー。そう思いながら、早速テンションを上げる行動に!
「じゃー、まず私の気晴らしから!」
「わきゃああああ!?」
今日はグリーンか~。
◇ ◇ ◇
「うう、ひどいですよ……」
「アハハ、ゴメンゴメン。あ、だったらさ初春、今度からこういうの履いてみたら?」
「へ…? ○×△□!? そんなの履けるわけないじゃないですか!」
「え~、でもコレすごいよ? 布そのものは全体をガードしてるのに、全体がレースだからスケスケで。リボンを引くと何故か中央から開くように――」
「聞きたくありません聞きたくありません! 大体ソレを履くことが、何の解決になるっていうんですか!!」
「え? 堂々と見せられるじゃない」
「見られたくないんですよ!」
まあ、初春が堂々と下着晒す娘だったら、私もここまでスカートめくりに興じてないけどね!
「御坂さんは、何買うんですか?」
「あ、うん。私はパジャマを――」
その言葉が不意に止まり、視線が一つのパジャマで止まる。おおう、これは何とも――
「ね、ね、これカワ――」
「アハハ、見てよ、初春。この子供っぽいデザイン」
「小学生くらいまでは、こういうの着てましたけどね。さすがに今、これはちょっと……」
そうだよねー。……ん?御坂さんが何か言いかけていたような……
「そ、そうよね! さすがに中学生にもなってこれはないわよね!!」
「は? はあ……」
この反応……もしかして、気に入ってた?……それなら、悪いことしちゃったし、よし!
「それじゃ御坂さん、私達向こうで水着見てきますから。御坂さんは『気に入ったパジャマ』でもあれば、他のお客さんに買われないうちに買っちゃった方がいいですよ? 私達、しばらく向こう行ってますから」
「ッ!? そ、そう? じゃ、じゃあお言葉に甘えて、そうさせてもらうわ」
「え、あの、佐天さん?」
「さー行こうね、初春ー」
「え、え、え?」
初春を押し出すように、その場を離れる。フフフ……よし!ドサクサに紛れて、初春に悩殺水着を買わせよう!絶対面白くなるし!
「よーし! それじゃ初春、これなんて、どう?」
「は、はわわわわ!? 何で布が、前も後ろも紐だけなんですか?! そんなの、どんな場面で着ていけっていうんですか!!」
「そりゃー、彼氏が出来たときよ! あ、でもその時は、私にも報告してね? 『娘が欲しければ、父親であるこのワシを倒して見せよ!』ってのやってみたいから☆」
「どんな格闘家の父親ですか! ウチのお父さんは、ごく一般的なサラリーマンです!」
んー、でも初春ってお父さんとかに溺愛されてそうだなー。反応が、一々可愛いし。嫁に出るときに、似たようなことは言われるんじゃ?
なーんて、ことを考えてると、声が上がった。
「――あ、ああああ、アンタがどうしてこんなトコにいんのよ!?」
「「ん?」」
その大きな声が残してきた御坂さんのものだったので、私達二人ともがそっちを振り向く。すると、そこには御坂さんだけではなく、見覚えのない高校生くらいの男の子がいた。髪はあちこちツンツン飛び跳ねているが、目はなんか生活に疲れたように垂れ下がっており、なんか表情から『不幸』な感じがした。
「どうしたんですか、御坂さん?」
「この人、誰――あー! そっか、御坂さんの彼氏ですね!?」
「なッ!?」
「はあ? 上条さんは、ビリビリ中学生の彼女をもった覚えはありません。圧倒的に年上派ですことよ――――って、アレ?」
上条さんというらしいその人が、その台詞を言った途端、空気が変わった。ここは、もはや一般的な、平和な日本の街角じゃない。ここは――――『死地』だ。
バキンッ、というおよそ女子中学生の歯から鳴るとは思えない音とともに、空気がパキパキと音を立て、紫電をほとばしらせ――って!
「御坂さん、ストーーーーップ!」
「ダ、ダメですよ、御坂さん! ここお店の中ですよ?!」
「お、おお、お願いだから放して! コイツだけは、コイツだけは!」
「うお!? あぶなっ! ふ、『不幸』だぁーーーーっ!」
飛んできた電撃をかわし、大急ぎで逃げ出しながら上条さんはそう叫んだ。今のは『自業自得』っていうんですよ!
◇ ◇ ◇
「――はあ、びっくりしたあ……」
「ホントです……」
「う……ごめん……でもさっきのはアイツがムカつくこと言うから……」
まあ、非常にデリカシーに欠ける言動でしたねー。あれは、その癖鈍感で、周り中にフラグを立てて放置するタイプとみました。
そんなとき、初春の携帯が鳴り響いた。
「あ、はい、白井さん? どうかしたんですか?」
『大変ですわ、初春!
「?! 分かりました! 観測地点は、どこですか! 私も急いでそちらに――」
『第七学区の≪セブンスミスト≫という洋服店ですわ!』
「!」
その言葉に、初春の目が見開かれる。……今、このお店の名前言わなかった?
「ラッキーです! 私、今そのお店にいます! すぐに避難誘導を行いますね!」
『何ですって?! 待ちなさい、ういは――』
携帯を切り、初春がこちらに向き直る。その瞳は、いつものあわあわしてるときとはまるで別人。
「――『
◇ ◇ ◇
それから、初春の指導のもと、店内の客の避難を行う。観測から避難までが早かったせいか、皆そんなに混乱もなく避難できている。これなら間に合いそうだ。
「何とか間に合いそうですね、御坂さん。けが人もいないみたいですし」
「そうね。でも油断しちゃだめよ? 実際前の事件では、9人の
「――――え?」
その言葉に、私は思わず立ち止まる。9人の
「それ……一度に、ですか?」
「ううん、全員別々らしいわよ? 何でも爆破の威力が派手になってきた9件の事件すべてで、
「――――ッ!!」
それを聞いて、私は鳥肌が立った。殺傷性が高くなってから、必ずいる
「ちょ、ちょっと、佐天さん!?」
そこまで気づいたところで、私は全力で店の中へと戻る。この事件の本当の標的は、
「――あ! おい、御坂! ちょうど良かった、一緒にあの娘探してくれ!」
ビルの中で、さっきの上条さんと合流。一緒についてきていた女の子が、見つからないとのことだった。
セブンスミストの中、先程みんなで回っていた女性服売り場の階。そこまで戻ってきたところで、道の先に初春の無事な姿を見つけた。……良かった。
だけど、初春は血相を変えて、近くの女の子の手からカエルのぬいぐるみを奪い取り、力の限り叫ぶ。
「逃げてください!! アレが爆弾です!」
その言葉に三人が三人とも、全速力で初春に向かって走り寄った。
最初にたどり着いた私が、女の子を抱き締めた初春を、その女の子ごと左腕を回して引き寄せる。右腕には、ARMS起動の前兆である幾何学紋様が浮かび上がる。
その斜め前に、御坂さんが滑り込み、ポケットから
さらにその前に、上条さんが回り込む。何をするつもりかなんて考える暇もなかった。
そして、右腕の封が解かれるよりも早く、視界が閃光で白く染まった。閃光、爆発、衝撃――――『赤い炎』。
「う………………わあぁぁああああああああぁぁぁぁぁああーーーーッ!!!」
絶叫とともに伸ばした右腕の先。変化もしていなかったその『右腕』は、その一瞬、爆発の光よりも眩い光を放ったような気がした。
◇ ◇ ◇
爆発を起こしたセブンスミスト。そこからほど近い路地裏に、一人の少年が壁にもたれていた。
「ク、クフッ、ククク……いいぞ、段々強くなってきた。この力があれば、これだけの力があれば!」
力を振るう喜び。昏い興奮に身を浸す少年は、後ろから近づく影にも気づかない。
「僕を馬鹿にしたアイツらも、僕を助けなかった
「「そんなことさせないわよ」」
突然の声に、その男子生徒がこっちへと振り向く。そこにいるのは、右肩の半そでが千切れていたけど無傷の私と、同じく無傷の御坂さん。
「やっと見つけたわ」
「喜んでるとこ悪いけど、全員無傷よ。今回の爆発で、けが人一人いないわ」
「ッ!? そんなバカな! 僕の最大出力だぞ?!」
自分からしゃべってくれた、か。おかげで証拠とか探さなくてすみそうだ。この会話は、携帯で初春に録音してもらってるし。
「へえ……」
「手間が省けたわね」
「……ッ、あ、いや。とんでもない爆発だったんで、その、とても――」
そう言いながら、手を不自然に後ろに回した。私にも分かるくらい不自然に。
「助からないんじゃないかってね――――――!」
再び前に回した手に握られていたのは、アルミのスプーン。だけど次の瞬間、そのスプーンの先を、最強無敵の電撃姫が消し飛ばした。
「ヒッ――――レ、『
スプーンを消し飛ばした『
「くそ……くそくそ! いつも、こうだ! オマエら強いチカラを持った奴らは、何をやっても『力』でねじ伏せる! それでねじ伏せられる奴のことなんか、気にもしないでなぁ!」
「――なんですって?」
「そうだろ! オマエらは『力』を振るえばそれでいいとでも思って、周りで痛い目にあってる奴のことなんか知ろうともしない! 『力』のある奴らは、そんな奴ばかりだろうが!!」
……ああ、そうか。その言葉で理解できた。出来てしまった。
能力という名前の『力』で、優劣が決まる街。そんなトコロに住んで、しかもずっと
だから、そいつをぶん殴ろうとしていた御坂さんの手を、『右手』で抑えこんだ。……これは、多分高位の能力者に至った人には、分からない感情だから。
――――けどね。
「何とか、言ったらどうなんだよ、この――――――ブッ!?」
言葉の途中で、『左手』で思いっ切り頬を張ってやった。スナップを利かせてビンタした左手が、ジンジンと痛む。
「……正直に言うと、私は『
気持ちは、理解できる。だけど、コイツが行ったこと自体は、理解したくない。その想いのままに、胸倉をつかむ。
「けど! 『力』にねじ伏せられる気持ちを分かってるアンタが! おんなじことしてどうすんのよ!!」
それだけは、理解したくなかった。
「言っとくけど、私はアンタを許さない。アンタが傷付けようとした
だから、絶対に許せない。『力』に向き合って、『力』と戦おうとしなかったコイツだけは。
「アンタは! 『力』に呑まれた!!」
胸倉を捕まえたまま、『左手』を振りかぶる。何の能力も宿らない『左手』を。
「アンタは、自分自身に負けたんだ!!」
思い切り振りかぶった『左手』の拳を、顔面に叩き込む。そんなに鍛えてもいない私の拳は、固い顔面の骨に当たって、少し皮膚が裂けたけど、今は言いたかったことは言ったという思いが勝って、あまり気にならなかった。
「佐天さん……」
後ろからかかった声に、振り返る。私は今、いつも通り笑えてるだろうか?
「――帰りましょうか、御坂さん」
能力なんか気にしない、本物の友達のところへ。
◇ ◇ ◇
SIDE:黒子
セブンスミストの婦人服売り場。今回の爆破が起こった現場であり、初春やお姉様が巻き込まれたそこで、私は眉を顰めることになりましたわ。
(初春の話では、『
たしかにお姉様ならば、爆発から初春たちを守ることも可能でしょう。そこは信頼できます。……けれど。
(――――――『電撃』をどう使えば、『
爆発の中心から、視線を向けた先。なぜか『不自然に』爆発での変色を免れた床と後ろの壁は、白い霜に覆われていましたわ……。
SIDE OUT
今回の話で悩んだのは題名(タイトル)。グラビトンに当てる候補に挙がったのは、『衝動』、『発露』、あと単純に『爆破』でした。結局、一番介旅の感情を示している単語に決まりましたが。
上条さんは、今回ほぼ背景。むしろ、バンダースナッチのヤバイフラグを中心にしたかったので!
あと、あの口上は、某忍術使いのサラリーマンそのまんま……『力』に呑まれた相手に叩きつける言葉としては、あれが最高だったので♪
ちなみに作者は、連日休日出勤中。年度明けまで、投稿不定期です……