とある科学の滅びの獣(バンダースナッチ)   作:路地裏の作者

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なんと、いつもの倍の文字数になった、今回……!切りの良いところ、と思ってたら、投稿時間にも遅れてしまいました!申し訳ありません!



082 継承―レガシィ―

 

 世界に、”灰”が舞い上がる。キース・グレイだった存在が、世界の彼方此方に散っていく。そしてかつて彼だった”灰”が、周囲の者達、特に学園都市の能力者たる彼女らに届いた時――

 

 

 ――力が、欲しいか?

 

 

 その場にいた皆は、確かにそんな言葉を聞いた。抜けていた”力”が、湧き上がる。ホワイトの圧倒的な”力”に、折れそうだった意志(ココロ)が再び活力を取り戻す。そうして彼女らは、能力を司る頭脳がどこまでも冴え渡り、今まで考えたことも無かった能力の演算式(・・・)が浮かぶのを感じ取った。

 

「? これ……」

『――そうだ。それは、お前の能力の新たな『可能性』だ』

「?! だ、誰よ、アンタ!?」

 

 御坂が気付くと、すぐ近くに半透明の人影が立っていた。軍服を着込んだ男で、軍帽の下から覗く鋭い視線を御坂へと向けている。

 

『オレは、『キース・シルバー』。あの(グレイ)が死に際まで、特に心を砕いていた佐天涙子とその友人たちの中で、お前が最もオレの”力”を受け継ぐに相応しかった。そのため”力”を直接届けるために、オレが現れたのだ』

「力って……」

『キース・ホワイトが率いる、ARMS軍団を倒せる”力”だ』

 

 その言葉に御坂が表情を引き締め、改めて正面を見据える。大分数を減らしているが、それでも全滅には至っていない。あの雲突く巨人が際限なく生み出し続けているのだ。いずれはまた自分たちを包囲し出すだろう。

 静かに状況を把握する御坂とは対照的に、彼女の身体から発生する放電は、徐々にボルテージを上げていく。まるで、彼女がその内に秘める様々な激情を現すように。

 

「……本当に、アンタの”力”でアイツらを蹴散らせるの?」

『……見縊るな。オレが渡すのは、正真正銘『戦いの神』の”力”。その道を阻む者など、どこにもいはしない。もっとも、貴様が不甲斐なければそれまでだがな』

「っ、上等っ!!」

 

 彼女が伸ばした両手の中で、放電された電撃が光球を形作っていく。空中を浮遊していた粒子に片っ端から電流を流し、強制的に電荷を帯びさせていく。次第に限定空間内部は超高温のプラズマへと変化し、その脇を固めるように彼女が愛用する超電磁砲(レールガン)の電磁レールが照準を定めた。

 

『さあ、解き放て! その”力”を! そして高らかに謳え。あらゆるものに支配されぬ、”力”の自由を!』

「あ~~、もううっさいわね、アンタ! 上等じゃない、撃ってやるわよ! この――」

 

 そうして、(ちから)は放たれた。

 

「――『ブリューナクの槍』をっ!!」

 

 荷電粒子砲『ブリューナクの槍』。電撃によって生み出される隔絶的な熱量によって、射線上のモデュレイテッドは有無を言わさず熔解した。

 

 一方、それを横目で捉えていた白井はと言うと。

 

「――また強くなりましたわね、お姉様。これでまた、追いつくのが大変になりますわ」

『……それでも君は、諦めるつもりがないのかい?』

「ええ、もちろん。当然ではありませんの?」

 

 さも当たり前だと言う様に返されたことで、白井の後ろに浮かぶ半透明のスーツの男性は、半ば苦笑していた。

 

「グリーンさん、でしたか? まあ、貴方には感謝しておきます。貴方がくれた演算式(ちから)のおかげで今まで出来なかったことが出来るようになりましたし、これでお姉様の露払いとして胸を張って堂々と働けます」

『この戦いの後、僕らの与えた”力”がそのまま残るとは限らないよ?』

「あら。貴方のお兄様ではありませんが、見縊らないでいただけますか?」

 

 そこで会話を切り、彼女もまた正面を見据える。眼前には、数えるのも億劫になるほどのモデュレイテッドの群れ。そんな軍勢に対し、白井はその右手で手刀の形を作り――――――横一線に、振り抜いた。

 

 ただの、一振り。それだけで彼女の目の前のモデュレイテッドは、上下に切り離され絶命した。

 

「『魔剣アンサラー』――――必ず私も、この境地に至ってみせますわ」

 

 そして、彼らとは離れた場所では。

 

「みーちゃん、みさきちゃん、下がってて!」

 

 ARMS≪トゥイードルダム・トゥイードルディ≫の解放形態、流動する液体金属となったエリーが、二人の親友を庇うように前に出た。

 

『……怖いか?』

 

 傍らに浮遊する、半透明でワイシャツ姿の男性が語り掛けてくる。

 

「……だいじょうぶ。こわくないよ、ブルーおじさん。大切な『ともだち』を二人もなくしちゃう方が怖いもん」

『そうか……ならば、大丈夫だ。今のお前ならば、全てを守れる』

 

 その言葉に呼応するように、エリーの身体がぶるりと震える。次の瞬間、その身体の全てを覆い尽くすように、夥しい数の(ニードル)がその尖端を周囲の異形へと向けた。

 

『さあ、放て! 『魔弾タスラム』を!!』

「はいっ!!」

 

 全ての異形に突き刺さり、その体内で起爆する魔弾。包囲網を狭める相手に対し、全方位を網羅する攻撃。守られるばかりだった彼女もまた、戦う覚悟を決めたのだった。

 

 そして、再び操車場の只中では。

 

「――成程。これであれば、確かに私はまだ戦えそうです。とミコは新たな”力”に期待を示します」

 

 ARMS≪ユニコーン≫を発動させていた御坂ミコ。その彼女の後ろに、黒一色のスーツを纏った長髪の男性が佇んでいた。

 

『その力も、私自身の”力”と言う訳では無いがね。それもまた今はいない兄弟たちから受け継いできた”力”だ』

「構いませんよ、ブラック。この状況を打破できるのであれば。と、ミコは早速”力”を行使します!」

 

 その言葉と共に、彼女の傷ついた両腕に、罅が入る。ビキビキと、まるで殻の中から新たな生命が生まれ出るように蠢いた。そして、砕け、五指を喪った両手首の下から、新たに鋭利な刃が二本生まれた。

 

「『神剣フラガラッハ』。単分子の刃で、触れる者全て斬り裂いてみせます。と、ミコは宣言致します」

 

 この世で最も鋭利な剣と、雷速の脚。新たなチカラを得た人馬の騎兵は、並み居る異形の間を駆け抜け、その四肢を斬り裂いた。

 

「…………」

 

 繰り広げられる彼女らの攻防を、一方通行(アクセラレータ)は憮然として見ていた。彼の所にも、実は力を与えようという申し出は届いていた。しかし、彼はそれを拒んだ。誰かから力を与えられることを彼の矜持が許さなかったのか、それとも別の理由なのか、それは彼自身にも分からなかった。

 

「……ッ、クソが」

 

 歯を食い縛り、自身の自分だけの現実(パーソナルリアリティ)を制御し、掌握する。周囲に存在するありとあらゆる物理現象を把握し、ベクトルを操作し、己が力を自ら構築するために。

 

「…………」

 

 負けられない。実験にこれ以上関わる必要性はかなり薄く感じているが、それでも誰かの助力で強くなろうとは思わない。自分は、第一位なのだ。この学園都市で最強の能力者なのだ。その事実だけが、彼を支え、誰かに寄り掛かることを良しとはしなかったのだ。

 

「………………?」

 

 不意に、妙な感覚に捕らわれる。周囲に満ちているのは、第三位や空間系能力者の影響が主なはず。だというのに、周辺に散布されているのは、かなり異様で多種なAIM拡散力場が存在しているように感じるのだ。

 

(……さっきのグレイとかいうガキや、あのホワイトとかいう奴が使ってた影響か?)

 

 多種で多様で多彩な能力の”力”そのもの。自分がそれまで操っていた単純なベクトルとは一線を画す”力”の集合。その中に、ほんのわずかに残る、能力とは異なる”何か”。新たな”力”を得るために、一方通行(アクセラレータ)は躊躇なくそれら全て(・・)へと手を伸ばした。

 

「qwrraaonauogasabdsyvcyavyplajsuaahaga!?」

 

 能力の中にほんのわずかに残っていた理解不能な”何か”によって、思考が蹂躙される。演算が乱され、能力を行使することすら出来なくなる。

 

 それでも。それでも、手を伸ばす。何故か。どうしてこんなに必死に手を伸ばすのか。思考もおぼつかなくなった彼の頭の中。わずかに残るのは、”灰”になった彼の死に顔。他の誰かに認められたくて、結局”力”を求めた彼の死に顔が――――いつか、”無敵”を求めた誰かに重なった。

 

「qwohfuaoeuruaonququundhwocgfsadafgj殺ap――」

 

 周辺のAIMと、僅かな『魔力』を操り切り、彼の背中に漆黒の翼が生み出された。

 

 新たなチカラに目覚めた者たちが、周囲を包囲する異形を押し返していく。補充は後から後からなされていくが、少しずつ、本当に少しずつ押し返され始めていく。その事実に、戦場を俯瞰していたキース・ホワイトは歯噛みした。

 

(何故だ! 何故こんな……!)

 

 思えば、最初から予想外の連続だった。世界すら飛び越えたオリジナルの介入。そこから、死んだはずのキースシリーズの亡霊たちが、子供たちに力を与え始めた。それによって戦局は一気に悪化し、今では押し返され始めている。

 

 当初の予定では早々に圧倒的な実力差を見せつけ、この学園都市で有数の実力を誇るらしい彼らの恭順を得るはずだった。何一つ上手くいかない戦場に、歯ぎしりしながら、ホワイトは逆転の一手を打った。

 

「『灰は灰に』!」

「はぁっ!!」

 

 前線を押し戻し始めている能力者勢に対し、魔術師の二人は未だトレーラーの近くで戦っていた。それというのも、このトレーラーには彼ら二人が必ず守ると誓ったインデックスが乗っていたのだ。その近くには、先日魔術関連の事件に関わった姫神秋沙も。彼らの優先順位から言っても、この場を離れる訳にはいかなかったのだ。

 

 そうして、彼ら二人が懸命に戦い続ける中、彼らの後ろの景色が、不意に揺らいだ(・・・・)

 

「二人とも!!」

「「!!」」

 

 インデックスの必死の叫びに、同時に振り返る。見ると、トレーラーの手前に新たな異形が虚空から滲むように現れており、その手に付いた鋭利な棘をインデックスと姫神の頭上に振り上げていた。空間転移(テレポート)。空間を飛び越えて、弱点を狙うホワイトの一手。守られていた筈の二人の生命に危機が迫る。

 

「「インデックス!!」」

 

 悲壮な顔の二人が叫び、身を寄せ合ったインデックスと姫神は、来たる衝撃に思わず身を竦ませ……

 

 ――目の前で、黄金の彫像と化した異形に、目を丸くした。

 

「……え?」

「……。これ……?」

 

 インデックスは、目の前で起こった現象について記憶に無い。だけど分かる。それがどんな魔術によるものなのか。姫神は、記憶にある。それがかつて誰が用いていた『錬金術』なのかは。

 

『――――呆然。余りの間抜けさに、失望したぞ『必要悪の教会(ネセサリウス)』』

 

 虚空に声が響き渡る。その声の主が、周囲の”灰”を集めるように形を作り、異形に突き刺さった鎖付きの黄金の鏃を引き寄せた。

 

「貴方は……!」

「……やれやれ。迷って出たのか、アウレオルス」

 

 神裂とステイルがその人影を看破する。アウレオルス=イザード。かつてローマ正教に所属した稀代の錬金術師。キース・グレイに吸収されたはずの彼が、今再び戦場へと降り立っていた。

 

『偶然。先程私を捕らえていたキース・グレイの意識が消失していくのを感じた。そのため自由になった私は、戦場の多くを把握していたが、お前たちでどうにか出来そうだったので、手出しをするつもりもなかったのだ』

「…………まるで僕たちが情けなかったから、出て来ざるを得なかったみたいな言い草だね?」

『当然。余りの不甲斐なさにほんの僅か手を貸してやったに過ぎん。元々私とお前たちは敵同士だ』

 

 ……そんなことを言いながらも、肩越しに振り返ってインデックスと姫神の無事を確かめるアウレオルス。二人を見つめる彼の姿に、ステイルは数日前にこの学園都市で敵対した時のような危機感は既に感じていなかった。優し気に『生徒』を見守り、親愛の情を向ける瞳。あの瞳は、間違いなく、かつてインデックスを見守った『先生』のものだ。

 

 ふっと口元を緩め、前へと視線を戻す。敵は相変わらず多い。ただまあ、先程までのような焦燥感はもう感じなかった。

 

「さて、それじゃあやられっ放しは性に合わないし、そろそろ反撃といこうか」

「……そうですね。もう先程のように彼女らの命を狙わせはしません」

『必然。防衛は私が回る。お前たちは、周辺の敵を掃討せよ』

 

 後から出てきた幽霊もどきの癖に偉そうに言うアウレオルスに苦笑しつつ、ステイルと神裂はモデュレイテッドの群れへと突っ込んでいった。

 

(……おのれ!)

 

 起死回生の一手も潰され、ホワイトの苛立ちは最高点に達していた。当初は、この場にいる者たちは生かしておき、自身の手駒として動かすつもりでいたが、もはやそんなことすら頭から抜け落ちていた。

 

 ホワイトの目の前、戦場の高空に歪みが生まれる。学園都市で取り込んだ一万人の能力を混ぜ合わせ、合成し、全く新たな概念を生み出していく。そうして現れたのは、膨大な”力”の塊。ただ触れた者を破壊せずにはいられない、観測できないチカラそのもの。

 

「――――さらばだ」

 

 戦場へと堕ちていく黒いチカラ。気付いたところで、誰も止められぬ圧倒的な破壊の具現を――

 

 ――上条当麻が、受け止めた。

 

「ぐっ、がっ、あぁあああああああ?!」

 

 空中で、目の前に迫る黒い何かに、右手が軋む。受け止められていることが奇跡であるかのように、右手が内から沸騰する。

 

 負けない。負けてたまるか。これ以上誰も死なせられない。今だって、瞼に浮かぶ。死に際のグレイの顔が。助けられなかった妹達(シスターズ)の顔が。だから、死なせない。これ以上、俺の目の前で、誰一人だって死なせない。

 

 拮抗が、僅かに崩れる。受け止めていた筈の右手が弾け、肩口から吹き飛ばされる。限界。幻想殺し(イマジンブレイカー)の限界――――けど、駄目だ。まだだ。まだ、つかみ取れる(・・・・・・)

 

 その瞬間を目にした周囲の者たちは、一様に言葉を失った。突如として現れた黒い球体。それに突っ込んでいき、右手で受け止めた上条当麻。そして、その右手を吹き飛ばされたと思ったら――

 

 ――突如として、その肩口から、巨大な”竜”の頭部が顕れた。

 

『――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!』

 

 顕れた頭部が、その強靭な顎で球体に噛み付く。『竜王の顎(ドラゴンストライク)』。圧倒的なその猛威に、球体はなおも抵抗するように明滅した。

 

『……………………………………………………………………………………………………ッ!!!』

 

 上条の肩口から、新たな竜が八頭、顕れる。それぞれに異なる頭部を振りかざし、黒い球体を手当たり次第に喰い尽くしていく。ホワイトの切り札だったはずの黒いチカラは、やがて徐々にその大きさを縮めていき、最後には霞のように消えた。

 

「っ、お、う、あ、あぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 右腕から生えた八頭の竜を従え、上条もまたモデュレイテッドの群れへと堕ちていく。そこにいる生命なき異形を喰い尽くすために。謎多き少年、上条当麻もまた、その右手の奥の謎と共に戦場へと参戦した。

 

 次第、次第に押し返していく戦場。光線が飛び、竜が舞う。そんなどこか非現実的な光景を、佐天の隣で祈る初春は呆然と見ていた。

 

 なんで、自分には、力が無いんだろう。どうして、自分は、こうして親友の隣で祈ることしか出来ないんだろう。なんで、どうして、自分には……

 

 そんな思いに囚われていた彼女の肩を、優しく叩く誰かがいた。軽い衝撃に、ふと顔を上げ、自分のすぐ近くに現れた人影を呆然と見上げる。若い女性だ。その長い髪を後ろで一つに束ね、幼い少女を抱っこしている女性だった。幼子を慈しむその心情が現れた顔は、先程戦場へと参戦した恵と呼ばれる女性ととてもよく似ていた。

 

『――ここは、わたしたち(・・・・・)が受け持つわ』

 

 そう告げた彼女の傍らに、二人の少女がいた。年恰好も、その顔も、まるで鏡写しのようによく似た少女だった。けれど、分かる。彼女らが、一体誰なのか。どういう存在なのか。かつてユーゴーやバンダースナッチが象ったその姿かたちを見れば、よく分かった。

 

『今も眠り続ける彼女は、わたしたちが必ず起こして見せる。だから、貴女は――』

『もし戦場に出ることを望むのならば、私の”力”を与えよう』

 

 女性の言葉を遮って言葉を告げたのは、彼女らの後ろに現れた軍服の男性。その左頬を平行に横切る傷痕が特徴の男性だった。

 

「……”力”って?」

『言葉の通りだ。お前は祈ることしか出来ぬと思ってこんな所にいるようだが、もしお前が友人のために戦場に出たいと言うのなら、俺の”力”を与えれば、それがかなう』

「でも……だけど! 私の能力は、中途半端で! 『手で包み込んだものの温度を保つ』位しか出来なくて……!」

『十分だ』

 

 そう言って、有無を言わさず演算式を伝えてくる。それを感じ取り、頭の中で理解し、驚愕した。

 

「これ、って……」

『お前の能力の、正しく発展形とも言える能力だ。お前のその――――両手で包み込んだ範囲の、『水分子を振動させる(・・・・・・・・・)』能力のな』

 

 ”力”を与えられた、両手を見つめる。出来るのだろうか、自分にも。今まで決して、前に出ようとはしなかった。誰かを後ろから支えられるなら、それでいいと思っていた。

 

 だけど。

 

 一度だけ振り向いて、眠り続ける彼女を見る。佐天涙子。大事な、本当に大切な親友だと断言できる存在。彼女は、苦しんでいる。苦しみながら、戦っている。生きるために。もう一度、自分や白井さんや、御坂さんに会うために。生き残るために、今も戦っているのだ。

 

 目を瞑り、異形を見つめる。佐天の戦いを、妨げる者。佐天を傷つけようとする者。だったら、ここを守るのは、彼女の親友の自分の役目だ。

 

「……佐天さんのこと、お願いします」

 

 幼子を抱く女性に言い置いて、両手を前へと突き出す。相手に向かって向けた掌から、ブゥゥン、と羽音のような振動音が響き渡る。断続的な振動が伝わり、大気が歪み、彼女の両手の輪郭がぼやけ始める。

 

 自身の”力”が確実に受け継がれていくその光景を、軍服の男性――キース・レッドは、どこかくすぐったそうに見つめていた。

 

『さあ、響かせろ! ≪グリフォン≫の咆哮を!!』

「う、わあぁあああああああああああああああ!!」

 

 初春の魂からの叫びと共に、前方のモデュレイテッドは一切の区別なく、その身を粉々に粉砕された。

 




全員分の継承、完了!全部書いたら、倍の量になってしまった……

以下、受け継いだチカラ。
御坂→ブリューナクの槍。荷電粒子砲で、大枠では電気系なので、これは当初から決定。電撃耐性あっても、超高温には耐えられません。
白井→魔剣アンサラー。以前の戦闘でフラグが立っていた力を正式に継承。これから上条が御坂に何かしたら、本気で生命が危ない。
エリー→魔弾タスラム。どんな形状にもなれる彼女が、全方位に発射可能な飛び道具を得る。ある意味最強の組み合わせの一つ。
御坂ミコ→神剣フラガラッハ。他の能力では、彼女の『脚』を活かせない。ハンターハンターのヂートゥとかと同じです。
一方通行→黒い翼。本当はこの時点で旧約最終段階の白い翼まで行くか、それともバイオレットから直接『魔眼』を貰う予定でした。ただ、大人しく受け取ると思えなかったので、予定変更。
魔術師勢→アウレオルス参戦。ほとんど亡霊ですが、インデックスが危なければ閻魔を殴ってでも参戦してきます。まあ、ほんの少し姫神への罪滅ぼしもありそうです。
上条→竜王の顎。既に幻生いませんから、ここで発現させてみました。もう、本当に何なんでしょうね、コレ?
初春→グリフォンを継承!ちなみに彼女の能力は、アニメ二期で確かやってました。保温の能力とか言ってましたが、熱を操っているわけでもなさそうだったので、水分子の振動と勝手に解釈。グリフォンを受け継がせました。

そして、佐天の元に現れた恵にそっくりな女性と幼子。そして、二人ともそっくりな少女!誰かはバレバレですが、さてこれだけの意志を受け取った場合、目覚めたバンダースナッチはどうなるか……?

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