第五十一話 ゼメキス 聖王暦二一五年一月下 アルメキア王国/ジュークス城
聖王暦二一五年一月下――ゼメキスがクーデターを起こす前月。
アルメキア領ジュークス城内にある会議室には、王国軍総帥ゼメキスと、彼の側近であるカドールとシュレッド、そして、彼らの直属の部下である騎士が数名、円卓の席に着いていた。卓上には、
『王ヘンギスト、総帥捕縛の令を出すこととしたよし。罪状は反逆罪』
部下の騎士の一人が、拳を机に打ちつけた。「愚かな! ゼメキス閣下は、これまで誰よりもアルメキア王国のために戦い、多くの勝利と栄光を王に奉げてきた! それが反逆罪だと!? あの愚王は、いったい何を考えている!!」
「ヘンギスト陛下の側近には、閣下の地位と権勢を妬む者が多いですからな」別の部下が、落ち着いた口調で言う。「そやつらの妄言に惑わされたのでしょう。まったく、なげかわしいことだ」
「落ち着いている場合ではない! このままでは、閣下は処刑されてしまうやもしれぬのだぞ!!」
誰よりも国に尽くしたはずのゼメキスが、いわれのない罪で処刑される――不条理な話だが、現在のアルメキアでは、こんなことがまかり通るのだ。この十年、アルメキアでは反逆罪で捕縛され処刑、もしくは国外へ追放される者が後を絶たない。それも、古くからアルメキアに仕え、忠誠心厚き者ばかりである。証拠が出ないため真相は定かではないが、恐らくは全て濡れ衣であり、王宮内での権力争いの結果であろう。真に忠義の厚い家臣の進言には聞く耳を持たず、世辞と賄賂でしか世を渡る術のない愚臣共の話ばかり信用する王の姿は、容易に想像することができた。
ゼメキスは、目の前の報告書をじっと見つめていた。怒りは沸いてこなかった。むしろ、呆れる他ない。愚かな王だと思っていたが、ここまで愚劣を極めているとは思わなかった。いま軍総帥であるゼメキスを処刑などすれば、アルメキア軍は機能しなくなる。その隙に北のノルガルドが侵攻して来たら、いったいどうするつもりなのか? 王都に引きこもっていれば安全などと考えているのであろうか。一年前、ノルガルドはアルメキアとの戦争に敗れた。ゆえに王達は、ノルガルドを「アルメキアよりもはるかに劣った国」と認識しているのかもしれない。とんでもない思い違いだ。ノルガルドの軍力は、決してアルメキアに劣るものではない。特にこの一年の間に飛躍的に武力を伸ばしている。隙あらばいつでもアルメキアを攻める準備ができているとの情報は、ゼメキスの耳にも入っている。攻めてこないのは、国境の城であるこのジュークスにゼメキス自ら入り、睨みを利かせているからだ。彼が少しでも城を離れれば、この城はたちまちノルガルドの手に落ちるであろう。ましてゼメキスを処刑するなど愚の骨頂だ。あらぬ罪で総帥を処刑などすれば、アルメキア軍が内部崩壊するのは目に見えている。そうなれば、この国は半年も持つまい。
――俺は、何のために昨年のいくさで勝利したのであろうな。
一年前のノルガルドとの戦闘を思い出す。このいくさで、ゼメキスは当時のノルガルド王ドレミディッヅを討ち、講和の末、このジュークス城をアルメキアの領土とした。それも、今は虚しく思える。
ゼメキスは、その場の誰も気付かぬほど、小さく苦笑した。
昨年のノルガルドとの戦いは、アルメキア国内においては、国境の小競り合い程度の認識でしかない。
しかし、実際は薄氷の上で戦うような、極めて危険ないくさだった。
ノルガルドの前王ドレミディッヅはいくさ好きであり、王宮よりも戦場に身を置く時間の方が多い男だった。そのドレミディッヅが、兵十万を率い、アルメキアとの国境に迫ったのである。迎え撃つアルメキア軍を率いたのはゼメキスだが、与えられた兵はわずか二万であった。ゼメキスは何度も王都に援軍を要請したが、全て王の命により却下された。いかにゼメキスが軍総帥であろうと、王の命に背いて兵を動かすことはできない。当時のアルメキアとノルガルドの国境に位置するリドニー要塞は、フォルセナ大陸で最も流域面積の広いアルヴァラード川の中州に建てられた天然の要塞だ。極めて守りは堅いが、それでも、五倍の兵力差を覆すのは不可能であった。リドニーの南はすぐに王都ログレスである。つまり、リドニーの陥落はアルメキア滅亡に直結する危険があるのだ。にもかかわらず、なぜ王は援軍をよこさないのか。恐らく王は、このいくさでゼメキスを葬ろうと考えているのだろう。仮に生き延びたとしても、リドニーが陥落すればその責はゼメキスが負うことになる。良くて失脚、おそらくは処刑されるであろう。
ならば、勝つより他にない。
ゼメキスは五倍の戦力差を跳ね返すため奇策に出た。リドニーでの守りを捨て、砦の外へ打って出たのである。
この奇策に、ノルガルド軍は大いに混乱した。難攻不落のリドニー要塞を捨て、ゼメキス自ら攻めてくるなど思ってもいなかったのである。ゼメキスは自ら先頭に立ち、敵軍内に突撃した。もとよりゼメキスの軍は策よりも武力に頼った戦いを得意とする。奇襲による一点突破の力は大陸一と言って良い。その突破力を駆使してノルガルド軍の中枢に迫り、ドレミディッヅとの一騎打ちを要求したのである。
見え透いた挑発だ。賢明な将ならば、応じるはずもない。
だが、この挑発に、ドレミディッヅは応じた。
ゼメキスは激しい一騎打ちの末、ドレミディッヅを討ち取った。
そして、王を失い混乱状態にあるノルガルドに停戦を持ちかけたのだ。ノルガルドはこれに応じ、その後の講和の末、国境の城ジュークスをアルメキアに差し出したのである。
こうして、ノルガルドとのいくさは、どうにかアルメキア側の勝利で終わった。だが、極めて危険な賭けであったことは間違いない。ドレミディッヅが一騎打ちに応じなかった可能性もあるし、一騎打ちでゼメキスが敗れたことも十分考えられたし、王を討たれ逆上したノルガルドが徹底抗戦の構えを見せる可能性も高かった。どこかひとつでもしくじっていれば、いまアルメキアは存在しなかったかもしれない。
そう。
昨年のノルガルドとのいくさは、国境沿いの小競り合いなどではなく、国の存亡に関わる極めて危険な戦いだったのである。
無論、愚王ヘンギストがそのことを理解するはずもない。むしろ彼は、この結果に怒りを爆発させた。
ヘンギストはゼメキスが独断でノルガルドと講和を結んだことを命令違反とし、罪に問うため王都へ呼び戻そうとした。だがゼメキスはこの指令を無視し、ジューク城へ留まった。王都に戻れば捕縛されるのは目に見えていたし、何より、ゼメキスが国境を離れれば、ノルガルドの侵攻を許してしまう可能性が高いからだ。
ヘンギストは何度も帰還命令を出したが、ゼメキスはことごとく無視し、国境へ留まり続けた。最終的にヘンギストは暗殺部隊をも差し向けて来たが、ゼメキスはこれをも撃退する。
そして、ついに。
ヘンギストはゼメキスの度重なる命令違反を反逆罪とし、処刑する命を下そうとしているのである。
ゼメキスは卓上の報告書をじっと見つめる。この報告書はカドールの放った間者が得た情報であり、捕縛の命は、まだ正式には下されていない。だが、それも時間の問題であろう。そして、ひとたび捕縛の命が下れば、王の近衛兵団はもちろん、王宮の魔術師団や神官騎士団もゼメキスを捕えに来る。これらの兵はそれぞれ独立した部隊であり、ゼメキスの指揮下には無いのだ。無論、王命とあらばアルメキア軍に属する騎士たちも従わなければならない。ゼメキスを
――まさか、このような最期を迎えることになろうとはな。
ゼメキスは再び苦笑する。十五歳で初陣を飾り、以後二十年もの間戦場に身を置き、国のために戦い続け、軍総帥にまで上り詰めた。王に尽くしてきたとは言い難いが、アルメキアという国には尽くしたつもりだ。それが正しいと思っていた。だが、この国の王はゼメキスを反逆者とした。そのような愚王に仕えていた自分もまた愚かだったということかもしれない。
「……死を以って償わせるほかありますまい」
低い声で言ったのは、ゼメキスの右側に座るカドールだった。ゼメキスの腹心であり、大陸最“凶”のデスナイトと呼ばれる騎士である。
その場にいた者の視線が、一斉にカドールに集まった。死を以って償わせる――誰もがその言葉の真意を測りかねていた。カドールの表情を窺うことはできない。この男は、戦場を離れても悪魔の骨面を外すことは無い。
「貴様、それはどういう意味だ」カドールの言葉に反応したのは、ゼメキスの左側に座るシュレッドだった。ゼメキスの側近の一人であり、彼の下で最も長く戦ってきた騎士である。
「言葉通りよ。このような愚かな命を下す王を、生かしておくわけにはいかぬ」
そう言うと、カドールは視線をゼメキスへ向けた。「閣下。御決断を」
シュレッドは椅子を倒す勢いで立ち上がった。「カドール! 貴様、本当に反乱を起こせと言うのか!?」
カドールは視線を再びシュレッドに向ける。「他に道は無い」
シュレッドはギリギリと奥歯を噛んだが、それ以上カドールには何も言わず、代わりにゼメキスを見た。「ゼメキスよ。この男の言うことに耳を傾けてはならぬぞ。反乱を起こすなど、破滅の道以外の何ものでもない!」
「では、そなたはどうすれば良いというのだ?」カドールがシュレッドに問う。
「これ以上あの愚王に付き合う必要は無い。今こそこの国を捨て、他国へ仕官すべきだ」
この言葉に、今度はカドールが立ち上がった。「バカな! 貴様は閣下に、敵に背を向けて逃げよというのか!?」
カドールとシュレッドが睨み合う。側近二人の対立を、他の騎士は見ていることしかできない。この二人が対立することは珍しくない。ゼメキス同様武力に頼り敵を蹴散らす戦いを得意とするカドールに対し、シュレッドはその強面と剛腕からは想像もつかないほど慎重に戦況を見極め戦う騎士である。長くゼメキスと共に戦ってきたため、彼とは正反対の戦い方を身に着けたのだ。よって、カドールとシュレッドが対立することはよくあることだった。このような場合は、やはりゼメキスが決断することになる。
反乱か亡命か……ゼメキスは目を閉じ、二人の言葉を吟味する。
――反乱を起こしたところでどうなる? このジューク城に駐屯している兵が全て俺に就いたとしてもわずか二万。王都ログレスには、王ヘンギストの近衛兵に加え、王太子ランスの親衛隊、魔術師団、神官騎士団も駐屯している。それだけでも兵は十万を超えるはずだ。王都には総帥指揮下のアルメキア兵も駐屯しているが、王命に背くとは思えない。反乱など起こせば、アルメキア軍の大部分もヘンギスト側に就くだろう。近隣の都市や城からも兵を集めれば二十万規模になる。到底覆せる数ではない。奇襲を仕掛けたとしても、せいぜい王宮に突入するまでだろう。シュレッドの言う通り、これは破滅の道だ。ならば、シュレッドの言う通り国を捨てるか? 反逆者となった俺を受け入れる国などあるはずがない。事実上アルメキアの属国であるパドストーとカーレオン、敵国であるノルガルドはもちろん、レオニアやイスカリオも俺を受け入れまい。反逆者を
つまり。
もはやゼメキスの前に、生き残る道は残されていないのだ。
実にくだらない結末だ。このような最期を迎えるなど、思ってもみなかった。ゼメキスは死を恐れてなどいない。常に戦場に立ち続けてきたがゆえに、常に死を覚悟していた。戦場で死ぬのならば本望であった。それが、王宮内のくだらぬ権力争いに巻き込まれて死ぬなどあり得ない。
だが、それが目の前に突き付けられた現実だった。一体どこで道を誤ってしまったのか。常に戦いを求め、勝ち続けた道が間違いだったとは思えない。ならば、最初から間違いだったのだ。仕える王を誤った。ただそれだけに過ぎない。
ゼメキスの心は決まった。
これ以上あの愚王に付き合う必要は無い――シュレッドの言葉は正しい。この国を捨て、別の王に仕えるべきだ。ゼメキスは他国に受け入れられないだろうが、部下達は違う。捕縛の命が下るのはゼメキスだけだ。ならば、部下達だけでも国外へ逃がすべきだ。自分の命と引き換えにしてでも。
ゼメキスは目を開けた。
その時だった。
会議室の扉が静かに開き、カドール配下の騎士が入って来た。メルトレファスという名の男だ。ゼメキスに向かって一礼した後、カドールになにやら耳打ちをした。
カドールは「そうか――」とつぶやくように言い、ゼメキスを見た。「閣下、準備が整ったようにございます」
「準備、だと……?」それまでずっと沈黙を守ってきたゼメキスだったが、カドールの思わぬ言葉に問い返す。
カドールは「はい」と頷くと、扉の方を向いた。「入るが良い」
再び扉が開き、三人の男が中に入って来た。深い青の法服に身を包んだ男と、銀の鎧に身を包んだ男、そして、腰に異国の剣・カタナを携えた年配の男だ。その顔触れを見て、円卓を囲む騎士たちがざわめいた。ゼメキスも、大きく目を見開き、驚きの表情で男たちを迎える。
男たちはゼメキスの前に立ち、右拳を握って左胸に当てる。そして、真ん中の男――深い青の法服に身を包んだ男が、一歩前に出た。
「――魔術師団長・ギッシュ、及び、神官騎士団長ローコッド殿、そして、アルメキア騎士団剣術指南役エスクラドス殿、以上三名、それぞれの部隊を率いて、ゼメキス閣下と共に戦う所存にございます」
魔術師ギッシュの言葉に、騎士たちは大きくどよめいた。今の彼の言葉は、王都ログレスに駐屯する兵の内、魔術師団と神官騎士団がゼメキス側に就いたことを意味する。さらに、エスクラドスが味方に就いたことで、ゼメキスと声を合わせればアルメキア軍の多くが従うだろう。エスクラドスは、かつてアルメキア軍に属し、『剣聖』と謳われるほどの剣技で大陸中に名を轟かせた騎士だ。現在は前線を離れ、王宮内で騎士や兵へ剣術指南をしている。軍全体への影響力は、いまだ衰えていない。
つまり。
これで、アルメキア王国を構成する五つの部隊の内、アルメキア軍、魔術師団、神官騎士団の三つの勢力がゼメキスに側に就いたことになる。敵は、王ヘンギストの近衛兵団と、王太子ランスの親衛隊のみ。どちらも他の部隊と比べて兵の数は圧倒的に少なく、恐らく一万にも満たないであろう。無論、近衛兵団と親衛隊以外にも王や王太子に忠誠を誓いゼメキス側と戦う者もいるだろうが、それでも、兵力は完全に逆転している。これならば、王都を落とすことなど訳も無い。
だが、解せない。なぜこの三人が、ゼメキスに味方するのか?
「……貴様ら、これはどういうことだ?」ゼメキスは、鋭い目でギッシュたちを睨んだ。
「これ以上あの愚王を王座に据えておく理由はありませぬ」ギッシュが答える「あのような者が王では、遠からずこの国は亡びましょう」
「そして――」神官騎士団長のローコッドがギッシュの言葉を引き取るように言う。「現在のアルメキアにおいて、次の王にふさわしいのは、ゼメキス閣下以外におりませぬ」
続いて、エスクラドスが口を開く。「わしはそなたが王にふさわしいなどとは思わぬが、あの愚王を斬るのであれば、喜んで手を貸そう」
エスクラドスは齢五十を超え、アルメキア内では最も古参の騎士だ。ゆえに戦友も多かったはずだが、そのほとんどが、今回のゼメキスのように王宮の謀略にはまり、処刑されたか国を追われている。
「閣下、御決断を」最後にカドールが言う。「閣下ならば、必ずやこの国にふさわしい王になりましょう」
――この俺が、王だと?
胸の奥から笑いが込み上げてきた。こらえきれず、ゼメキスは笑った。最初は小さな笑いだったが、やがて部屋中に響く笑い声になった。
俺が王になる――これが笑わらずにいられるだろうか? 戦うことしか知らなかったこの俺が、王に? そのようなこと、考えたこともなかった。権力を欲したことなど無い。総帥になったのは、ただ戦い勝ち続けた結果だ。王位など、興味も無い。
だが。
それも、悪くない。
これまでの人生の大半を戦場で生きてきた。戦いを捨てることも、戦わずに死ぬことも、どちらもあり得ない。ならば戦い続けるしかない。たとえその先に、何が待っていようとも。
ゼメキスは笑うのをやめ、カドールを見た。「よかろう。カドールよ、その話、乗ってやる」
「御意――」カドールは右の拳を握り、左胸に当てた。
続いて、ゼメキスはギッシュたちを見た。「貴様ら、誰に
「最後まで……?」ギッシュは小さく首をかしげた。「もちろん、閣下が王となられた後も、我らは家臣として、閣下を支えていく所存にございます」
「たわけが!
雷鳴のようなゼメキスの声に、多くの騎士が首をすくめた。
「そ……それでは……最後までというのは……いったい……?」
ゼメキスは椅子から立ち上がった。「――俺がこの国の王となり、そして、パドストー・カーレオン・ノルガルド・レオニア・イスカリオの周辺五国を全て滅ぼし、大陸全土を制圧するまでだ!!」
大陸全土の制圧――ゼメキスの言葉に、会議室内は大きくどよめいた。
ゼメキスは続ける「
ゼメキスの言葉に、ギッシュたちの顔に戸惑いが浮かぶ。フォルセナ大陸の統一――そんなことは、二百年の歴史の中で一度も実現していない。それは聖王暦以前の話で、もはや神話である。
だが、ギッシュ達はすぐに表情を引き締めた。「無論です! 我らは今より閣下の駒となり、必ずや勝利を奉げましょう!」
「ならば、貴様らはすぐに王都へ戻り、準備を整えよ! 我らもすぐにログレスへ帰還する。その夜が決行の日だ!!」
「ゼメキス! 考え直せ!」シュレッドが両手で机を叩いた。「大陸全土を巻き込む戦乱を起こすなど、正気か!? いや、それ以前に、これこそがヘンギストの仕掛けた罠かもしれぬのだぞ!? 貴様を王都へ呼び戻すための!」
「罠ならばそれでもかまわぬ。俺は座して死を待ちなどしない。たとえ罠であったとしても、最期の最期まで戦い続けるのみ!」
「しかし――!」
シュレッドの言葉は、もうゼメキスには届かない。
「カドール! 全軍に召集をかけよ! 王宮内でぬくぬくと過ごしてきたブタどもに、我が力、思い知らせてくれるわ!!」
「御意!!」
ゼメキスの号令で、カドール達は、一斉に行動を開始した。
騎士たちが去った会議室で、ゼメキスは――。
――例え戦乱の世となり、この大陸全てを焼き尽くすことになろうとも、俺は鬼となって戦い続けよう。そして必ずや、覇王とならん!!
胸の奥で決意した。
聖王暦二一五年二月上。アルメキア軍総帥ゼメキスは、王都ログレスにて、王ヘンギストへ反乱を起こす。
この反乱には、アルメキア軍だけでなく魔術師団と神官騎士団も味方し、ログレス王宮は一夜にして制圧された。
ゼメキスは王太子ランスこそ取り逃がしたものの、王ヘンギストをはじめとするアルメキアの重臣達をことごとく討ち、国の実権を握った。
建国以来二百年以上続いたアルメキア王国は一夜にして滅亡。ゼメキスは『エストレガレス帝国』の樹立を宣言し、周辺国へ次々と宣戦布告、進軍を始めた。
こうして、大陸全土を巻き込む大戦は、幕を開けたのである――。