ブリガンダインGE/小説   作:ドラ麦茶

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第六十四話 ダーフィー 聖王暦二一五年八月下 イスカリオ/――――

 イスカリオの腕利き騎士ダーフィーは、王都カエルセント南西の山の中にいた。山間に小さな集落が点在する地域だが、最近この周辺で、トカゲに似たモンスターの目撃情報が多くなっているのだ。マナの力で召喚されたものの、何らかの事情によって逃げ出し、野生化したモンスターだと思われる。こういった野生化したモンスターは年々増えている傾向にあり、人が襲われる例も多く、大陸全土で社会問題化している。エストレガレス帝国のとある地域では、野生化した火竜サラマンダーの目撃情報もあるくらいだ。

 

 モンスターを召喚したのは騎士なので、野生化したモンスターがいた場合、捕獲するか最悪処分するのが騎士の務めだ。しかし、今はいくさ中であまり人手は無い。そもそもこの国には『野生化したモンスターの捕縛は騎士の務め』などと言う真面目な騎士が少ないのだ。もちろん、ダーフィーはそんな真面目なことを言う騎士ではない。しかし、先月同じような状況で北東の山へ野生化したモンスターの捕縛に出かけた新米騎士のティースが、なんとドラゴンを捕えて帰ってきたということがあった。ドラゴンは強力なモンスターの筆頭で、本来は召喚するのに多量のマナを消費する。また、性格はかなり凶暴で、新米騎士が容易に扱えるものではない。しかし、そのドラゴンはティースによくなついており、命令には忠実に従っていた。今後、戦場で活躍するのは間違いないだろう。新米騎士が苦も無く強力なドラゴンを仲間にし、従えたのは、実に美味しい話である。

 

 この様子を見たダーフィーは、自分も美味しい思いをしようと、今回の話に自ら志願した、というワケである。

 

 現地で聞き込みをしたダーフィーは、モンスターがねぐらにしているという洞窟にやって来た。慎重に足を踏み入れる。かなり深い洞窟のようで、たいまつを灯しても奥までは見えない。周囲を警戒しつつ、ゆっくりと進む。洞窟内の壁にはところどころ手を加えたような跡があり、どうも天然の洞窟ではなさそうだ。

 

 さらに奥へと進むと。

 

 不意に、ダーフィーの首筋に何かがふれた。

 

 はっとして振り返り、上を見るが、ごつごつした岩の天井があるだけだ。水滴でもしたたり落ちたのだろうか? もっとよく調べようと、ダーフィーはたいまつを掲げた。

 

 と、ダーフィーが頭上に気を取られた瞬間、ぐらりと足元が揺らいだ。

 

 ――しまった! 罠だ!

 

 気付いた時には遅く、地面はガラガラと音を立てて崩れ、ダーフィーは深い穴の中へ落ちていった。幸い命は取り留めたものの、大怪我を負ったダーフィーは、一節の間休養を余儀なくされた。さらに、「ダーフィーのダンナ、ドジったでヤンスねぇ」「おーっほっほっほ! 無様な姿ですわねぇ。わたくし、弱い男に興味はありませんの。さようなら」「がーっはっはっはー! これは見舞いだちょび髭! 受け取れ! チュ♂」と仲間からは散々バカにされ、踏んだり蹴ったりだった。

 

 

 

 

 

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