ブリガンダインGE/小説   作:ドラ麦茶

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第七十七話 ランス 聖王暦二一五年十二月上 エストレガレス帝国/エオルジア

 オークニーにてハレーとゼメキスが激しい一騎打ちを繰り広げている同時刻。

 

 

 

 

 

 

 森と湖に挟まれた細い街道の先に、侵攻地であるエオルジア城が見えていた。西アルメキアの君主でありエオルジア侵攻部隊の総大将でもあるランスは、城を真っ直ぐに見据え、味方部隊の布陣が整うのを待っていた。西アルメキア領キャメルフォードからエストレガレス領エオルジアへ続く街道は、城の手前で森と湖に挟まれ急激に狭くなる。待ち伏せによる奇襲を警戒しなければならないが、今のところその気配は無かった。無論、油断はできない。隊列を伸ばして狭い街道を進軍するのは危険だ。森と湖にも部隊を展開し、同時に進軍するのが理想である。そのため、森のある北方面には森林の進軍に優れた兵を、湖のある南方面には水兵や高空部隊を中心に編成してあった。

 

 進軍中に入った情報によると、北のオークニー城からデスナイト・カドールの部隊が出撃し、南へ向かっているとのことだった。そのままエオルジア城の守備に就くものと思われた。

 

 大陸最凶のデスナイトの部隊が移動したことにより、エオルジア侵攻は大きな危険を伴うようになった。五月のキャメルフォードの戦いで、ランスはカドールに敗れている。無論、だからと言って作戦を中止するわけにはいかない。カドールはアルメキア反乱の夜ランスの父である王ヘンギストを殺害した仇であり、絶対に討たなければならない相手だ。それ以上に、この作戦の成否は今後の西アルメキアの運命を大きく左右する。決して逃げ帰るわけにはいかない。

 

 前方から味方の騎馬が一騎近づいて来た。旧パドストーの騎士で、この作戦では副将を務めるグラウゼだ。

 

 グラウゼは馬を下りると、右拳を左胸に当てた。「ランス様、斥候部隊が戻りました。森林、湖ともに、やはり敵部隊の姿はありません。そして、エオルジアにカドールの姿は無く、守備に就いているのはミラ・ミレという双子の騎士で間違いない、とのことです」

 

「そうですか――」ランスは大きく頷いた。

 

 カドールが南下したとの情報が入って以来、ランスは何度も斥候部隊を送り、戦い場となるエオルジア城とその周辺を探らせていた。入念に調べさせたが、結果は全て今と同じ。城の外に敵部隊は布陣しておらず、城にカドールはいない、というものだった。

 

「我々の目が届かぬ場所に隠れ、奇襲を狙っているのでしょうか?」グラウゼが心配そうな口調で言う。

 

 もしカドールがこちらの索敵の及ばぬ場所に伏しているとすればかなり危険だ。正面からぶつかっても分が悪い相手に奇襲などされれば、こちらの部隊は壊滅的な被害を受けるだろう。

 

 しかし。

 

「いえ、恐らくそれは無いでしょう」ランスは断言するように言った。「カドールは、私のことをはるかに格下の相手だと思っているはずですし、残念ながら、私もそれは認めざるを得ません。格下相手に身を潜めて奇襲などという戦法を使う男ではないですからね」

 

 グラウゼも大きく頷いた。「そうですね。これだけ調査して同じ結果なのですから、信用して良いと思います。カドールは、なんらかの理由で到着が遅れているか、別の場所へ向かったと判断して良いでしょう」

 

「グラウゼさん。私は、これをチャンスだと考えます」

 

 ランスは力強く言った。理由はどうあれカドールは不在。エオルジアを守るのは名の知られていない騎士。今の西アルメキア部隊の戦力なら、容易に城を落とせるだろう。父の仇を討つ機会が無いのは残念であるが、今は私情よりも、部隊、そして国全体の勝利を最優先すべきだ。

 

「判りました。では、出撃しましょう」グラウゼも力強く応える。

 

 グラウゼが自分の部隊に戻り、ランスも配置についた。

 

 ――いくぞ逆賊!

 

 ランスの号令で、西アルメキア軍は一斉に進軍し始めた。

 

 

 

 

 

 

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