ローマ帝国駐屯地、いつもであれば兵士達が次の戦闘に備えてテント等で休息を取っている筈なのだが、今現在兵士達は誰一人として休んでおらず、皆が武器を持ち、現皇帝の指示を待っていた。
現皇帝ネロ・クラウディウスは、冷や汗をかきながら目の前に現れた招かれざる客を注視する。突如何もない所から姿を現した二メートル半以上の髑髏の鉄仮面を付け、灰色の鎧を着た大男は、目線だけを動かし、皇帝を守ろうと前に出ていたローマ兵達を見やる。
「貴様等、我輩に対して頭が高いぞ。下がれ」
「な、何を…」
「我輩は、聞き分けが悪い人間が一番嫌いなんだ。もう一度言うぞ…下がれ」
「ふ、ふざけるな!」
「突然現れて、我らに下がれだと?馬鹿にするのも大概にしろ貴様ぁ!」
「やめろ馬鹿者共!」
フローレスの発言が癪に触り、2~3人のローマ兵達が、槍を構えフローレスに突進する。ネロは直ぐ様制止したが、時既に遅く、槍は全てフローレスに直撃する
……筈だったが、突き出された槍はフローレスの手前で、見えない壁に当たるように不自然な距離で止まっていた。
「…全く、これだから人間は度し難い」
「…ッ!おいお前ら、早くそいつから離れろ!」
フローレスさ呆れたような口調で、槍に必死に力を込めているローマ兵達に右手を向ける。それを見ていた両儀式は背筋に悪寒が走り、急いで兵士達に逃げるように叫ぶ。
その直後、何の前触れもなくフローレスの前にいたローマ兵達の上半身が持っていた槍ごと消え去り、残った下半身から血を噴き出しながら倒れる。その間、血を噴き出していた下半身の最も近くにいフローレスには返り血は一滴も付かなかった。
「…え?」
盾を構えていたマシュは、目の前で起こった出来事を理解出来ず、思わず呆けた声を上げる。両儀式は苦虫を噛み潰したような顔をしながら静かにナイフを構える。
「ヒィィィィィ!?」
「なんだあれは、一体何が起こったんだ!」
「ば、化け物だ!化け物だぁ!」
突如目の前で起こった惨殺に、ネロの後ろで控えていたローマ兵達の三割が恐慌状態に陥り、恐怖が他のローマ兵達に伝染したのか徐々に隊列が崩れ始める。
「落ち着けお前達!敵は一人!たかが目に見えぬ力を使う相手に、我らローマがそう簡単に恐れをなしてはならぬぞ!それにこちらには奏者達がいる!まだ希望を捨てるな!くずれた隊列を直ちに直せ!槍兵達は余の後ろに!突撃兵達は後詰めとして、弓兵達は後方支援の為に後ろで待機!なるべく敵より離れて指示を待て!」
『ッ!…了解!』
しかし、ネロはローマ兵達に激を飛ばし、ローマ兵達を正気に戻す。そのまま、兵士達に指示を送り、兵士達はその指示に従い、槍兵と突撃兵達がネロの後ろに控え、その更に後ろでは弓兵達が弓に矢をつがえ、いつでも射撃出来る待機している。
「ほぉ…流石は現ローマ皇帝。瞬く間に兵を纏め上げたな。その手腕は素直に称賛しようではないか」
「…得体の知れぬ化け物から称賛されても余は嬉しくも何ともないぞ」
「それは残念だ。心の底からそう思っていたのだがな」
フローレスは、そんなネロ達を尻目に拘束されているバルファと立香達の方に向く。立香もサーヴァント達も直ぐ様臨戦態勢を取る。
「さてバルファ、威力偵察ご苦労であった。我輩の見立てでは、
「えぇ、彼女はフローレス様が来るのをいち早く察知しておりました。恐らくは、フローレス様と似た能力をお持ちだからなのかと思われます」
「ほぉ…それはますます期待できるではないか」
「おい、アタシ達を差し置いて部下の心配とは随分余裕みたいだな」
二人は、間にいる立香達をまるでいないかのように無視して話を進めるが、そこに両儀式が割って入る。そこでようやくフローレスの視線は割って入ってきた両儀式に向けられ、両儀式も、青い目でフローレスにナイフを構え続ける。
「貴様が我輩の出現にいち早く感ずいた者か。なるほど……貴様先程から我輩の"死"の概念を見ようとしているが、見えないだろ?」
「…なに言ってやがる」
「なに、隠さずとも良い。我輩の"死"の概念が見えないその理由は
「ッ!」
両儀式は、フローレスの口から告げられた事実に思わず言葉を失った。自分にしか見えていないと思っていた"死"の概念が、今目の前にいるこの得体の知れない化け物も持っていることに心の中で衝撃を隠せなかった。
「…だからどうした、オルレアンでもお前と同じ『組織連盟』の奴がでっかい蛇を召喚して邪竜に食わせたとか聞いたぞ。そんな奴がいる組織なんだお前みたいな奴がいても不思議じゃないって考えるのは当たり前だろ」
「ほぉ…」
しかし、それを聞いても両儀式はなんとか表情だけは変えずにフローレスを睨みながら吠える。
フローレスも、両儀式の予想外の反応に驚きと興味を抱いたのかバルファとの会話を一旦中断して両儀式を真正面から見据える。フローレスの鉄仮面の空虚な目と両儀式の淡く光る鋭い目とが交差する。
「--はぁっ!」
フローレスが僅かに指を動かした刹那、両儀式はフローレスめがけて疾走した。手に持つナイフを逆手に持ち、フローレスの首の頸動脈目掛け最速でナイフを振るう。しかし、振るったナイフは殺されたローマ兵達同様見えない壁に阻まれる。
「フム、悪くない一撃だ。
「チッ!」
そう褒めるフローレスはそっと右手を両儀式に翳そうとし、それを見た両儀式はすぐさま距離を取る。
「フフッ、良いぞ良いぞ。それでこそ闘争のしがいがあると言うものだ」
「こっちは闘争もクソもねぇけどな!」
両儀式はアサシンとしての特性をフルに活かし、様々な方向からフローレスにヒット&アウェイで攻撃を仕掛ける。しかし、フローレスはその場から微動だにせず、両儀式の攻撃も先程と同様に障壁に阻まれる。
「フム…ここで貴様を殺すは惜しい。一先ずはバルファを回収て撤退だな」
「それをみすみす見逃すと思ってんのか!?」
「思ってなどいないとも…だからこうするのだ」
フローレスは、背後から攻撃してきた両儀式に、振り向き様に彼女の腕を掴むと勢いよく地面に叩きつけ、仰向けになった両儀式の腹を踏みつける。
「カハッ!」
「両儀式!」
「そこを動くなカルデアのマスター。動けばこの娘の体に大きな風穴が空くことになるぞ?」
「ッ!」
「人質を取るなんて卑怯よ!」
「1つ良いことを教えてやろう。闘争の世界ではな、こういった手段は卑怯ではなく兵法と言うんだ」
両儀式を助けようとする立香達。しかし、それよりも早く踏みつけた両儀式に手を翳し、フローレスは警告する。その場に踏み留まった立香達を確認してから、フローレスは手を翳したまま顔を両儀式に向ける。
「さて娘よ…もし我輩との再戦を
フローレスは両儀式に言葉を残すと、左手で何もない空間の次元を歪め、もう片手をバルファに向けると、拘束されていたバルファがひとりでに宙に浮くと、そのまま歪みの中へと吸い込まれていく。
「今だ、師匠!」
「任せて、絶対逃がさないわ!」
バルファの手が両儀式から外れた瞬間、バルファに続き歪みの中に入ろうとしたフローレスの後頭部に、三蔵は如意棒を振り回しながら突撃する。
「まずそんな攻撃が我輩に入るとでも?」
「うわわわ!」
フローレスはあたかもそれを予想していたかのように、後頭部に振り下ろされた如意棒を後ろ向きのまま掴むと大きく上に持ち上げ、如意棒ごと三蔵を後方に投げ捨てる。しかし三蔵もサーヴァントとしてのステータスを活かして転倒を回避する。
「よっと!まだまだこれからっ…!?」
地面に着地した三蔵は、再度フローレスに突撃しようとするが、体が金縛りにあったかのように身動き一つ取れなくなる。フローレスを見れば、三蔵に向けられた左手が淡く発光していた。
「流石にこれ以上長引くのは面倒だ、ここで失礼する。サラバだカルデアの者達、現ローマ皇帝よ、願わくば再び我輩の前に立つことを願っているぞ」
左手を三蔵に向けたまま、フローレスは歪みの中へと消えていき、それと同時に歪みは跡形もなく消失し、カルデアのマスターとサーヴァント、皇帝ネロとその兵士達が残されたのであった。
◆◆◆◆◆◆
駐屯地から自らの拠点へと帰還したフローレスは、出迎えたインセクトとバルファ以外の来客相手に、一切不機嫌さを隠そうとせずソファに腰かけていた。
「ちょっとちょっとどうしたんですかフローレス。そんな如何にも自分不機嫌ですみたいなオーラ出しちゃってぇ~」
「…実際貴様を最初に目にした瞬間仕事へのやる気が6割削げたが、今の発言でこの不快感は明確な殺意に変わったな」
「いや私見ただけでやる気半減以上とか酷すぎません!?後さらっと物騒な発言と共にこっちに手向けないでくださいよ!」
「フローレスの旦那、流石にここで能力使うのは危ねぇんじゃねぇですかね。そこの糞道化以外にもお客さんいることですし」
インセクトの言葉で、フローレスは大きなため息を一つつくと、回避体勢をとっていたキャディに向けていた手を下げ、視線を反対側のソファに座っている面々に向ける。
「それでウォーカー、貴様の隣のその二人は一体どうした」
「…それはだね」
ウォーカーと呼ばれた白色のトレンチコートにソフト帽を被った男は、フローレスの質問に言い淀みながら、隣の二人に視線を向ける。連れてフローレスもウォーカーと同じく視線を左に移す。
「ーーねぇキーカー、このマカロンとても美味しいわよ。ほら食べてみて、あーん」
片方は白髪に高級そうな服を着た少女で、その手にはマカロンが摘ままれており、それを反対にいる濃緑色のローブを着たキーカーと呼んだ男の口元にマカロンを近づけている。
キーカーは差し出されたマカロンを食べ、美味しそうに咀嚼する。それだけでも少女の顔はとても幸せそうになった。
「アリガトウ、マリー。コレモオイシイヨ」
「ちょっ、わ、私がしたいだけだからキーカーもしなくていいのよ!?」
「マリーハボクノハタベテクレナイノ?」
「べ、別にそういう訳じゃ…なによこれじゃまるでバカップルみたいだし恥ずかしじゃない」
「ナニカイッタ?」
「な、何でもないわ!ありがとうキーカー!」
マリーと呼ばれた少女は、慌てた様子でキーカーの差し出してきたプチケーキを食べ、食べてから両手で両頬を抑えて美味しそうに味わっている。
「…と言う訳だよ」
「待て、胸焼けしそうなシーンだけ見て理解しろと言うのは無理が過ぎるぞ。というかキーカーの旧友である貴様はそれを止めんのか」
「別にキーカーが嫌がっている訳ではないし、何より私はキーカーが幸せなら別に止めさせる気はないよ」
「…そうか。後バルファ、いい加減追加の菓子を持ってくるのをやめろ。これ以上はテーブルに置ききれん」
気がつけばテーブルの上はバルファが持ってきたお菓子で埋め尽くされていた。流石のフローレスもバルファに静止の声をかける。
「おぉ、これはこれは申し訳ありませんフローレス様。お二人がとても美味しそうに儂めの作った菓子を召し上がるものですから嬉しくて嬉しくて…年甲斐もなく張り切って大量に作ってしまいました。因みに後二品ほどあるので、宜しければフローレス様もお召し上がりください」
「……善処しよう」
フローレスはどこか諦めた様子でスティックチョコの皿にのっているストロベリーとラズベリーの果肉が混ざったスティックチョコを手にとって食べる。
「上手いな。このスティックチョコ」
「恐縮でございます。後、そちらのキウイの果肉が入ったスティックチョコとマンゴーの果肉が入ったスティックチョコは今回一番の自信作ですので是非食べてみて下さいませ」
「そうか、では早速頂くよ」
バルファの薦めで他のスティックチョコも味わうフローレス。前で座っているウォーカーも、一度紅茶で喉を潤してからミルククッキーやアップルパイ等を食べている。
「そういえばウォーカーさん、少し聞きたいことがあるのだけれども」
マリーはキーカーとの会話を中断し、隣でアップルパイを食べているウォーカーに話しかける。ウォーカーも彼女の真剣な眼差しを見て、手に持っていたフォークをテーブルに置く。
「私、あの部屋で目覚める前の記憶がまだ全く思い出せないのだけれども…何か私の事に関して分かった事はありましたか?」
ウォーカーによって模擬天体から霊子と残留思念を回収されて蘇生された彼女は、目が覚めた時から、模擬天体に取り込まれた後遺症の影響で記憶の全てを失ってしまっていたのだ。
目覚めてから酷く動揺していた彼女は、そこに現れたウォーカーが自分の名前はマリーと教えくれて、自分の記憶が戻るまでキーカーと行動を共にしてくれと指示されていた。それから彼女は、よく頻繁にウォーカーに進捗状況を聞いてくるのである。
「…すまないね、私も最善は尽くしているのだが、まだ君の事に関しての情報は何も分かっていない」
「……そう…ですか」
「…マリー」
ウォーカーの答えに、マリーは悲しそうな表情で僅かに俯く。キーカーはそんなマリーを見て不安になったのか、そっと彼女の左手に自分の右手を重ねる。マリーも俯いた顔を上げてキーカーを見てからキーカーの右手の上に自分の左手を更に重ねて少しだけはにかむ。
「大丈夫よ。例え自分の記憶を全て取り戻しても、私はキーカーを見捨てたりしないから。逆に、キーカーが記憶を取り戻した私を見捨てないでよね?ずっと傍にいて、私の事大切にしてよね?」
「…ウン!」
「……お取り込み中所大変失礼なのですが、温度差が激しいですぞお二人とも。そういった事は本部に帰還してからして頂けますかな?」
「えっ!あ、ご、ごめんなさい!」
バルファの躊躇うような言葉で我に帰ったマリーは、顔をリンゴの如く真っ赤にすると勢いよく立ち上がり謝罪する。フローレスは呆れ顔で、ウォーカーは苦笑い、キャディは無視してアップルパイを両手に持って爆食していた。
「……いや、構わんよ。バルファ、インセクト、貴様等も席を外して二人を連れて別の部屋に行け。このお茶会の続きはそこでしてくれて結構」
「あいよ」
「畏まりました。さてお二人とも、もし良かったらこのまま別の部屋で二人水入らずでお茶会を楽しみませぬか?このバルファ、更に腕を振るってお二人をもてなしますぞ」
「ぜ、是非お願いします!行きましょバルファ!」
「ウ、ウン、ワカッタカラヒッパラナイデヨマリー」
「おいおい二人とも、先行くならドア開けといてくれよー」
「では皆様、失礼します」
マリーは頬を朱に染めたまま、キーカーの手を掴んで急いで部屋から出ていく。その後に続いて菓子の皿を両手に持った持ったインセクトが、最後にバルファも、3人が出ていった後に扉の前でフローレス達に一礼してからお菓子をのせたカートを押して退出していく。
「さてキャディ、貴様は結局ここに何しに来たのだ」
「ん、
バルファ達が部屋からいなくなってから、フローレスは事の元凶である道化師に質問を投げ掛けるが、当の本人は口一杯にバルファ特製お菓子を頬張っていた。
「…キャディ、用は済んだだろ?君が見せたがっていものはフローレスに見せれたんだし早く帰ろう」
「待て、あの二人を我輩見せるためだけにここまで来たと言うのかキャディ?」
「はい、貴方方の帰りを待ちきれなくてウォーカー同伴で来ちゃいました♪」
「殺す」
「明確な殺害予告ってあぶなぁ!」
語尾に音符を付けてテヘペロポーズをとったキャディに、フローレスは流れる動作でテーブルのナイフをキャディ目掛けて豪速球で投げる。
時速180kmで投げられたナイフをキャディは素早くしゃがみ回避する。標的を失ったナイフはそのまま壁に激突、大きな亀裂を残した。
「あっぶねぇ!あれ当たったら絶対頭と首が引き千切れるタイプの威力じゃないですか!?」
「そのつもりで投げたからな」
「一切悪びれてないだと!」
「まぁまぁ落ち着きたまえ二人とも」
オーバーリアクションでツッコミをするキャディとそんなキャディに再び投擲せんとナイフをやフォークを携えるフローレス。
それを見たウォーカーは素早く2人の間に割り込みフローレスからナイフとフォークを奪い、キャディには後ろ蹴りを放って部屋の端に吹き飛ばす。
「フローレス、この後も仕事があるんだろ?無駄に魔力と体力を消耗するのはあまり得策ではないと思うのだが」
「…そうだな、止めてくれて感謝するぞウォーカー」
「感謝されることの程でもないよ」
「私を蹴り飛ばした事に関しては何かないんですか!?」
ウォーカーの意見に、フローレスさ一旦は殺意を抑えソファに座り直すが、蹴り飛ばされたキャディは抗議の声を上げながらウォーカーに詰め寄る。
「…いいかいキャディ、もしあのまま乱闘が始まっていればこの城は10分も持たずに崩壊するかも知れないのだよ?オマケに君がフローレスの逆鱗に触れていたから君に変わって私が彼の怒りを沈めたんだ。文句より先に感謝してもらいたい所だ」
「……けっ、ありがとうございます」
「そう言う素直な所は君の少ない長所だと思うよ」
小声で正論を述べるウォーカーに、キャディは納得いかない様子でウォーカーに感謝する。ウォーカーはそんなキャディに少し微笑んでからフローレスの様子を確認するため後ろに視線を向ける。
フローレスは、ソファに座ってからはずっと水晶玉で誰かを観察していた。しかし、不意に水晶玉から視線を外し、天井を仰いだ。
「やはり奴では勝てなかったか。まぁある程度予想出来ていたが、何故あの局面でさえ驕っていられるのやら」
「どうしたのかねフローレス」
「レフ・ライノールが負けた」
独り言を呟いたフローレスは、ウォーカーの問いかけに、一応は利害の一致で協力関係にあったレフが敗北したと言う旨を淡々と伝える。
「あれ?レフなんたらって確か…」
「…貴様が回収対象に指定した魔神柱の一柱だ」
「あぁそれだ。興味が微塵も無いから忘れてました」
キャディはレフが誰だか分からず疑問を覚え、フローレスは呆れながら簡単に説明した。だと言うのに、キャディはまるで興味無かったかのか名前を聞くまで忘れていたようだ。
「それで、そのレフ・ライノールは死んだのか?」
「いや、運良くバルファの作った身代わり人形のお陰で九死に一生を得たようだ。今現在真っ直ぐ此方に向かっている」
「いや何ちゃっかり身代わり人形なんて高価な物あげちゃってるんですか!?」
「一応ここでは協力関係にあるからな。ある程度の事はしてやらないと」
キャディのツッコミを軽くあしらって、フローレスは再度水晶玉へと目を向ける。水晶玉には、必死にこの城を目指して走っているレフ・ライノールの後ろ姿が写っていた。水晶玉に手を翳して上にスクロールすると、視点が変わり、その十数キロ後ろには立香達の姿があった。
「只、生き残ったは良いものの、運悪くカルデアに勘づかれて追われているな」
「あれま、それは御愁傷様って言うかなんと言うか」
「どうするフローレス、レフ・ライノールを協力関係のもと手助けするのか、それとも目的達成の為に殺すか?」
「……もう奴には利用価値も存在価値も無い。大広間で我輩自らが始末する。そのままカルデアのサーヴァント共と少し遊ぶとしよう」
話ながらソファから立ち上がり、ドアの前に立ったフローレスは、後ろにいるキャディに顔を向ける。
「無論、貴様の指図は受けんぞキャディ」
「…構いませんよ。但し、目的の物が手に入ったらウォーカーに渡す事です。良いですね?」
「了解した。ウォーカー、一度別室にいるバルファ達を本部に帰してやってくれないか?」
「分かった。彼らを帰し次第、また来るよ」
「あぁ、頼んだ」
フローレスは扉を開け、大広間へと通じる廊下を歩いていく。両手を何度か開いたり閉じたりした後、ゆっくりと左腰に差したクレイモアを抜刀し、大広間へと向かっていった。歩くフローレスの耳に、大広間から叫ぶ協力者の声が聞こえてきた。
オルガマリーの口調良く分からないだけど上手に出来てると良いな