人理修復に舞い降りし悪党共   作:砂嵐に潜む昆虫

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投稿が遅くなりました。申し訳ございません。
今回も生暖かい目で見ていただいたら幸いです。


邪竜百年戦争 1ー3

 カルデアの面々は、警戒しながら目の前の男を見上げている。男は身長ニーメトル以上あり、神父服を着て、手には返り血だらけの大矛を持っている。

 場違いともとれるその姿は、より一層彼等に違和感を与え続けた。サーヴァント達は、既にそれぞれ自分の武器を持ち、いつでも戦闘が開始できる体勢を整えていた。しかし男は、その間に攻撃してくる素振りもなく、ただただ無言で此方を見下ろしていた。

 

 「あのぉ~....貴方は、一体誰...なんです?」

 

両者の間を沈黙が埋め尽くす中、その沈黙を破ったのはマスターの立香だった。何処か躊躇いがあるものの、必要最低限の情報だけでも欲しいと思い、勇気を出して話しかける。

 すると男は何か考えるような仕草を見せる。しかしそれもほんの2、3分であり、男はゆっくりと顔だけを立香達に向ける。

 

 「ギルディア。私の名はギルディアと言います。そう言うおまえは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 「えっ..あ、はい!そうです!」

 

 「...そうですか」

 

 ギルディアにマスターかと聞かれ、一瞬だけ呆けてしまった立香。しかし直ぐ様平静を取り戻し、それを肯定する。すると、ギルディアは何処か悲しそうな声色になる。

 

 「なんだ、話してみれば案外普通のサーヴァントじゃないか。見た目怖いけど」

 

 「...果たしてそうかのぉ」

 

 「?どう言うこと、信長」

 

 信長の何処か苦虫噛み砕いたかのような顔に、立香は疑問に思った。ギルディアの何処にそんなに危険な要素があるのか全く分からなかったから。しかしクーフーリンもどうやら信長と同意見らしくギルディアに視線を向けたまま、首を縦にふって肯定する。

 

 「そうだぜ坊主。ありゃ明らかに友好的な奴なんかじゃねぇ。俺の戦士としての直感がそう言ってやがる」 

 

 「でも普通に喋れたし、ジャドウサーヴァントって訳でもなさそうだし」

 

 「それが甘い考えなんだよ坊主。いいか?簡単で単純な話だ。まず、俺等はまだ誰もあいつに自己紹介してねぇ。だがあいつは、《《マスターが何処の誰なのかを知ってた》》。...ここまで言えば後はもう分かるよな」

 

 「ッ!それってまさかっ!」

 

 「あぁ。恐らくレフの野郎の仲間か、協力者って所か」

 

 元所長のオルガマリーを殺害し、人類の焼却を目論んでいる男、レフ・ライノール。その男の仲間かもしれないと聞き、警戒する立香。マシュも盾を構えており、状況を察したジャンヌも旗を構えて臨戦態勢を整えていた。

 しかしギルディアは得物を構えず、ただただ立香達の出方を伺っているようだった。しかしそんな状況にも関わらず、ギルディアは彼らに背を向け、森の中へ歩いていこうとする。

 

 「おいっ!何処に行く気じゃ貴様!」

 

 「...今、ここで戦う意味も必要もありません」

 

 「はぁ?何言ってんだてめぇ」

 

 「...来るべき時に、必ず私たちは戦うはずです。きっとあの狂人はそう仕向けるはずです。それまでにはそれ相応には強くなっていて下さい。でないと--」

 

 そう区切ると、ギルディアはゆっくりと振り返る。それと同時に魔力を放出し、不意討ちを狙っていたサーヴァント達を牽制する。

 

 「--あっと言う間に終わってしまいますから、それでは私が楽しめませんので」

 

 仮面越しに嗤っているのが分かるほど邪悪な魔力を放ちながらそう言うギルディア。その言葉に呆気に取られる立香達を、ギルディアは鼻で笑い飛ばしながら森の中へ、狂人(キャディ)を追うように再び歩き出した。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 「遅かったじゃないですかギルディア。何をそんなに手間取っていたのですかまさか貴方が苦戦したとかありえませんよね?」

 

 カルデアの面々を置いて、その場を去ったギルディア。その後、森の中を歩いていると、その歩いた先でキャディが懐中時計を見ながら待機していた。キャディはいつものように何処か人を馬鹿にするかのような陽気な喋り方で話しかけてくる。

 ギルディアは一瞬イラッとしたものの、事実時間が掛かっていたのでキャディに対する罵倒したい気持ちをぐっと堪える。そのかわりに小さな溜め息が零れた。

 

 「すいませんね。少し彼等からの質疑に応答していたので遅くなりました」

 

 「あら、罵倒しないんです?何時もならここで貴方の痛烈な罵倒が飛んで来ると思っていたのですが」

 

 「実際かなり時間を掛けすぎましたからね。それとも罵倒され-」

 

 「たくはないですからね!?私そんな超がつく程ドMじゃありませんから!」

 

 「...そうですか。まぁそんなことどうでも良いんですけどね.....チッ」

 

 「えぇ~..なんで若干キレるんですか意味分からないんですけど」

 

 二人の会話が繰り広げられる中、ギルディアはこの場に来てからずっと気になっていた疑問を聞いてみた。

 

 「ところでキャディ。おまえの周りの()()()()()()は一体なんですか?」

 

 ギルディアが指摘する通り、キャディの周りには()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。全員が刃物で切り裂かれたような傷があり、中には切り裂かれた回りの肉も抉れている死体もあった。よく見れば、キャディの服の所々にも返り血がこびりついていた。

 

 「あぁこれですか?ちょっとここで貴方のこと待ってたんですどね、なんか運悪くフランス兵の一個師団が通りかかりまして私のこと見た途端『不審者だ~!』とか言って襲ってきたもんですから皆殺しにしておいたんですよ。どうやって殺したのかは--」

 

 「...」

 

 さも喜劇のようにケラケラと笑いながら詳細を事細かく説明し出したキャディ。聞いてもいないのに喋り出したキャディを見ながら、内心どちらが運が悪かったのかと思うところはあったが、一々気にしていてもキリがないと理解し、適当に相槌を打っておく。

 ペラペラと未だに語っているキャディを脇目に、ギルディアは死体の何体かを重ねてそこに座る。キャディも喋りながら器用に死体を重ね、そこに無駄に優雅に座る。

 

 「それで?何か情報は得られたんですよね」

 

 「えぇ。モチのロン!かなり有益な情報が得られましたと思いますよ」

 

 「ほぉ。それはどんな情報なんですか?」

 

 「...先程話していたんですが、ていうかもしかして聞いてなかったんですか?」

 

 「.....あぁ、ある程度は聞いてたぞ」

 

 「なんですか今の間は。まさか聞くの面倒くさくて聞いてないやつですか?もしかして無視してたんですか無視してたんですね!?」

 

 「まぁ正直に言えば最初から殆ど聞いていなかった」

 

 「聞いてなかったんかい!なんで毎回変な所で貴方って人は馬鹿正直なんですかね!?理解できないんですげど!?」

 

 「耳元でギャーギャー五月蝿いですよキャディ。もう少し声を抑えたらどうです?著しく品位を損なっていますが?」

 

 「誰のせいでこんなに叫んでると思ってるんですか!貴方の為に叫んでるんですけど!?」

 

 「それよりもなんの情報を手に入れたんですか?」

 

 「あれぇ!スルーですか!?ここに来てスルーですか!?流石にそりゃあ酷すぎやしませんか!?」

 

 ギルディアの至近距離で叫ぶようにツッコむキャディ。しかしボケた(?)本人は、至って真面目な雰囲気の為、キャディは呆れた返りながらも、自分が積んだ死体の山に再度座り直した。

 

 「なんか話が大きく脱線したようなので元に戻しましょう。私がフランス兵を皆殺しにした際、最後の一人を拷も.....尋問した時に手に入れた情報なんですけどね。なんと今回の特異点の首魁が、かの聖女ジャンヌ・ダルクらしいんですよ!」

 

 「...?」

 

 「あれ?分からなかったからですか?ほら、この百年戦争の際、神の御告を承けたジャンヌ・ダルクがフランスに勝利をもたらしたんですよ!まぁその後、異端審問にかけられて火刑に処されちゃたみたいですけど。可哀相ですねぇ」

 

 「いや、分からなかった訳ではありません。勘違いしないで下さい。ただそのジャンヌ・ダルクらしき女性とは先程会いました。妙に神々しそうだったで印象に残っていました」

 

 「それにジャンヌ・ダルクって中々美人....え!?もしかして会ってたんですか!?」

 

 「えぇ。恐らく彼女はジャンヌ・ダルクだと思いますよ」

 

 「...まぁじか、会えたらサイン欲しかったなぁ。彼女の、いや本当に」

 

 「...気持ち悪いですね死んでください」

 

 「いやいやなんでいきなり罵倒したんですか!いいじゃないですか私だって英雄譚とか偉人の逸話とか本で結構読みますよ!憧れるのは個人の自由じゃないですか!」

 

 「おまえに読まれるなど、その英雄や偉人に大変失礼だと思うのですが」

 

 「そこまで言っちゃうのかこの人は!」

 

 またグダグダになりつつある状況に、キャディは激しいデジャヴを感じながらなんとか話を元に戻す。

 

 「しかし、可笑しいですねぇ。本来ならジャンヌ・ダルクはオルレアンにいるはずなのですが、何故ジャンヌ・ダルクが二人もいるんですかね?」

 

 「そこら辺までは流石に分からないか」

 

 「まぁ、私にも限界はありますので。仮に私が英霊だったらある程度の知識は聖杯が与えてくれたかも知れないですが。後こっから先は憶測なのですが、()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()ですかねぇ」

 

 「ほぉ...。それが天才でもあるおまえの意見ですか」

 

 キャディの言葉に感心を抱くギルディア。その言葉を無視して思考に耽るキャディの姿は、さながら複雑な暗号を解読する天才のようだった。

 マスクの上から顎部分に手をあてて、様々な思案を巡らせる。ギルディアはただそんなキャディを尻目に、大矛の返り血を懐から取り出した布で拭き出した。

 

 「まぁ、とどのつまりカルデアのマスターは『本物』のジャンヌ・ダルクと協力し、『偽者』のジャンヌ・ダルクを倒せば良い。そうすれば一応この特異点での人理焼却は阻止される。ここまでが彼らの筋書きと言ったところですかねぇ」

 

 「でもそんな簡単に終わらせてしまっては面白味がない。余りにも味気ない。だからこそ我々が横槍を入れれば良い。それに筋書き通りに終わっては我々がここに来た理由が只の観光しになってしまう」

 

 「確かに。そうなってしまいますね」

 

 ギルディアの言葉を聞くとキャディはマスクの中で満足そうに嗤いながらゆっくりと立ち上り、視線を森の外にあるオルレアンに向ける。

 

 「さぁ行きましょうギルディア。まだ始まったばかりのこの劇を、そして役者も揃いつつある、この愉快で最高のショーを。まだショーは始まったばかりですからねぇ」

 

 役者のように振る舞いながら狂気を孕んだ声で喋るキャディ。そんなキャディの横に並んだギルディアも仮面で顔が隠れてはいるものの、邪悪そのものに満ちていた。

 

 




如何だったでしょうか?なんか書いている内にズルズルと長ったらしくなってしまいました。それでも楽しんで頂けたら幸いです。今回も閲覧ありがとうございますm(__)m

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