今回も楽しんで頂けたら幸いです。
※一部文章を修正しました。
特異点フランスの都市オルレアン。その都市の中にあるマルトロワ広場でキャディは一人苦悩していた。
現在キャディの周りにいるのは、死人の様な顔をした、黒い外套に身を包み槍を持つ初老の男、頭から猫耳が生えている弓を持った美少女、レイピアを構えている顔つきが中性的な美少年、血管のような赤い線が浮き出た藍色の
彼等の視線を受けながらキャディは後ろに視線を向ける。キャディから少し離れた場所にはカルデアの魔術師とサーヴァントと思わしき集団と、その行く手を遮るように立っているギルディアの姿があった。それを確認したキャディは、視線を再び前に戻し、もう一度邪竜の上にいる魔女に目を向ける。
「...お家帰って良いですか?」
「はぁ?この状況で出た第一声がそれですか?本当に呆れたものですね。先ほどの非礼は寛大な心で許してあげますが、流石に自己紹介位したらどうです?あぁ、命乞いという意味で言ったのなら受け付ける気はありませんよ」
「は?誰が貴方相手になんかに命乞いなんてしなきゃいけないんですか?それこそあり得ませんよ。てか私そんなキャラじゃないので」
「なっ!?」
「キッサマァァァ!ジャンヌを!かの麗しきジャンヌを愚弄するかこの不埒者ガァァァァ!」
「あーもー五月蠅いですねぇ。そんなに叫ばれても鼓膜破れるだけですって。あれですか叫ばないと発作でも起こる持病持ちなんですかでしたらお体お大事にしてくださいね」
「.....そんなに死にたいのなら今すぐ叶えて差し上げましょう」
「ん?」
「バーサーク・サーヴァント達!そこにいるそのフザけた奴を!今すぐ!ここで!殺しなさい!」
魔女『ジャンヌダルク』が命令すると、キャディの周りにいたバーサーク・サーヴァント達が各々の武器を構え、一斉にキャディに襲いかかる。そんな状況にも関わらず彼は、大きく溜め息を漏らし、青い空を見上げた。
「(ナァンデコウナッタンデシタケ?)」
そう考えながら、キャディはほんの数時間前の自分を盛大に罵ってやりたい心境だった。
◇◇◇◇◇◇
事の始りはおよそ2~3時間前に遡る。キャディはギルディアと共に、道中で遭遇したワイバーンやらゾンビ兵やらを殺しつつやっと森を抜ける事が出来た。
おまけに抜けた先には運良く都市オルレアンがあり、これ幸いとそのままオルレアンに向かったのであった。都市の中には、森で遭遇したワイバーンやゾンビ兵がうじゃうじゃといた。その数は森で遭遇した数よりも多く、正直キャディとギルディアは辟易としていた。
何時まで経っても中々前に進めず、進めたとしても直ぐにワイバーンやゾンビ兵が襲ってくるのだ。何度も同じ敵を相手させられるのがこんなにキツいとは知らなかった二人は、身体的外傷は無いものの、精神的外傷が負う一方だった。そしてついには痺れを切らしたギルディアが、城の方角にある民家の壁を大矛でぶち抜き始め、キャディもそれに便乗し、超小型爆弾の『飴玉』を使ってギルディアと一緒に壁をぶち抜き始めたのであった。
しかし城の方へ向かって壁をぶち抜いてる途中で二人は、最悪のタイミングでその場面に現れてしまった。それは、この特異点での人理焼却を試みる『竜の魔女』ジャンヌオルタと『救国の聖女』ジャンヌダルクを連れてオルレアンにやって来たカルデアのメンバー達とが話し合っている場面に横から轟音と土煙を立てながら壁を破壊していた二人が現れしまったのだ。
「貴方は!」
「ほぉ...やはりか。また会ったな立香」
「やはりあの時感じたことのある魔力、貴様じゃったか!」
「こいつぁまためんどくせぇ野郎が来やがったぜ。つか壁から来るってどういう事だよ」
「ここに来るまでに民家の壁を破壊し続けただけだが」
「おいおいマジかよ、冗談キツいなお前。あの時は本気じゃ無かったって訳か?」
「であろうな。でなければあんな一方的な蹂躙そう易々と出来るものか」
壁を破壊して現れたギルディアの姿に立香は驚き、サーヴァント達は戦闘体勢を整えながらギルディアを警戒する。
カルデアと面識があるギルディアは彼等を見つけると期待の籠った声を漏らす。そして彼等の方へ行ってしった。
ギルディアがいなくなった事により手持ち無沙汰になったキャディは未だ晴れない土煙を利用して気配と魔力を遮断しつつ邪竜の背に乗ると、ジャンヌオルタとジル・ド・レェの背後にやって来た。どうやらジャンヌは突然の乱入者に動揺しているようだが、ジル・ド・レェは驚いたものの顎に手を添え冷静に乱入者を分析しようとしていた。
「なんなのよアイツ!突然現れて!」
「全くですな。礼儀と言うものがなっておらんのでしょう。しかし見たところ、奴等の仲間では無さそうですなぁ。このまま潰し合ってくれればこちらも幾分か楽にはなりますぞ」
「確かにそうね。流石ですねジル」
「この身に余るお言葉ですジャンヌ」
そんな会話をしている二人を余所に、キャディはその場から少し離れた場所でギルディアを観察していた。ギルディアはまだカルデアのマスターと話しているようで武器を構えようとしていない。カルデアのサーヴァント達は警戒をしつつ出方を窺っているようだ。
「へぇ~、あれがカルデアの。中々骨がありそうな面子が多いじゃないですか」
「ちょっと貴方!何処から来たのよ!」
その声を聞いたキャディは横に視線を向ける。そこには剣を向け、此方を睨んでいるジャンヌオルタとその横には、片手に本を持っているジル・ド・レェの姿があった。しかしキャディは、ジャンヌオルタの言葉を無視して再び視線をギルディアに戻す。
「無視するじゃないわよ!ジル!」
「おまかせあれ!行くのです海魔達よ!」
ジャンヌはジル・ド・レェに命令し、ジル・ド・レェは海魔を召喚し、キャディを攻撃させる。キャディはそれを避けながら邪竜から降り、そしてバーサーク・サーヴァント達に囲まれ
ジャンヌの命令でバーサーク・サーヴァント達はキャディを襲ってはいるが、襲われている本人のキャディは、四方八方からの猛攻をまるで軽業師のように避け続けている。
「メンドクサイですねぇホントに」
「ならば大人しく串刺しになるとこをお薦めるするが?」
「それはそれで嫌ですけど、貴方はそれで良いんですか串刺し公。貴方の意思とは思えませんけど」
「その名はあまり好まんな。それに、召喚された以上召喚者に従うしかあるまい。そこに私情は挟めん」
「あっそ。つまんないですねぇ」
独り言に反応したのは、槍で攻撃してくる初老の男--ウラド三世だっだ。彼は猛攻を仕掛けながら器用にキャディに話しかけてくる。
キャディはそれに答えつつ、逆にウラドに問い掛けた。バーサークになっても少なからず自分の意思はあるのか、彼はその問い掛けるにやや苦笑しながら答える。
キャディはそんなウラドの答えに素っ気なく答えると、背後から頭部めがけてレイピアを突き出してきた美少女--シュヴァリエ・デオンからの攻撃を首を捻って避ける。そこに弓を持った猫耳少女--アタランテの追撃が入るが、それもアクロバティックに回避する。
「避けるなァァァァァ!」
「んな無茶な」
「道化の生き血に興味など微塵もないけど、特別に私の
「いや結構です」
「いい加減..当たらないか!変態!」
「イヤ当たったら私死んじゃいますからねぇ!それに私変態じゃありませんよ!?」
「Arthurrrrrrrr!」
「誰ですかそれ!?私そんな名前じゃないんでけど!」
叫びながらレイピアで攻撃してくるデオンに呆れながら、キャディは杖を使いレイピアの突きをいなす。そこに、アタランテや
「あの道化師が血祭りにあげられるのも最早時間の問題ですな」
「そうね。私を馬鹿にしたんですもの、当然の報いよ」
未だファヴニールの上からその光景を見ていた二人は、邪悪な笑みを浮かべながらキャディを見下ろしている。
「もういい加減に諦めたら如何です?これ以上はもう意味のない事でしょ?」
「.......はい?」
「だってそうでしょう?この状況、何よりこの戦略的な差。勝利がどちらにあるのか位馬鹿な貴方でも分かるです。なのに貴方は反撃もせず避けに徹するばかりで、体力は徐々に奪われていく一方。潔く敗けを認めた方が楽なんじゃない?」
「...えぇ」
キャディが困惑していると思い込んだジャンヌオルタは、余裕の表情で堂々と勝利を宣言したのだ。当の本人は、何言ってるんだあのアバズレと思っているのだが。
「....なら、そろそろこの形勢を逆転する文字通りの
そう言うとキャディはそっと懐に手を入れ、何かを取り出そうとしている。ジャンヌオルタは、この状況で何を出そうとキャディに勝ち目はないと勝利を確信していたが、彼の近くにいたバーサーク・サーヴァント達は危険を察知し、即座に距離をとる。そしてキャディが懐から取り出したのは、見たことのない化け物の絵がリアルに描かれた一枚のトランプだった。
それを見て、ジャンヌオルタは鼻で笑おうとしたが、すぐ
「それでは行きますよ、簡単に死んでくれないでくださいね?--
キャディがトランプに書いてある文字を呪文のように呟き、地面にそのトランプを投げるように置くと、トランプに描かれていた化け物が徐々に消失していくと同時に、キャディの目の前に大きな魔方陣が展開された。その景色を見ていた彼は、マスク越しに愉悦に満ちた表情をしていたのであった。
如何だったでしょうか?
感想・評価お待ちしております!