人理修復に舞い降りし悪党共   作:砂嵐に潜む昆虫

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やっと出来た最新話。
作者の虫はリアルで既に虫の息です
執筆の合間を縫いながら好きな動画等を見て元気を出して日々執筆頑張っていこうと思います。


※2月19日に大幅に修正をいたしました。


邪竜百年戦争 1ー6

 竜の魔女ジャンヌ・オルタは、驚愕と戦慄に震え、ジャンヌの側近たるジル・ド・レェはそれを憎々しげな表情で睨みつけていた。二人の視線の先には、キャディが召喚した蛇--世界蛇(ヨルムンガンド)が塔のように体をまっすぐに伸ばした体勢で停止していた。

 その大きさは、彼女が乗っているファブニールよりも圧倒的に大きく、その頭部はファブニールの胴体ほどの大きさを有していた。怪物(ヨルムンガンド)がゆっくりと胴体を曲げ、視線をファブニールとジャンヌ・オルタに向ける。

 左右二つずつの鋭い目が、二人と一匹をじっと見つめている。その目は、例えるなら獲物を狙う猛獣のような目だった。その目に気圧されたジャンヌ・オルタは小さな悲鳴を上げてその場から一歩、二歩と後ずさる。

 

 「ジャンヌ、ここは一旦引き返すべきかと。恐らく、あの生物に邪竜も私の海魔も歯が立たない可能性が」

 

 「ッ、ダメよジル!私がこんな所で尻尾を巻いて逃げたら、一生笑われ者だわ!そんなの、私が許す訳がないでしょ!?」

 

 「時には逃げるも勇気と言います。ここの足止めはファブニールに任せて我々は撤退しましょう」

 

 「....ッ!」

 

 ジル・ド・レェに諭されたジャンヌ・オルタは憤怒の表情で世界蛇とジル・ド・レェを何度か交互に見た後、無言で一体のワイバーンを創造する。

 ジャンヌ・オルタは何も言わずワイバーンに乗り、ジル・ド・レェもそれに追従するようにワイバーンに乗る。主の意思を理解したワイバーンはゆっくりと上昇すると、拠点たる本城に向かって飛んでいく。

 世界蛇は一度ジャンヌ・オルタの乗っているワイバーンに視線を向けたが すぐにファブニールに視線を戻す。視線を向けられたファブニールは頭を上げて低く唸り、世界蛇を睨み付ける。

 

 「ガァァァァァァァ!!」

 

 ファブニールは大きな声で咆哮すると(ブレス)を口の中に溜め込み、世界蛇の顔に向けて吐き出す。しかし顔面に炎をくらった筈の世界蛇は、大したダメージを受けた様子はなく、頭を左右に振って残り火を払うと、ジロリとファブニールを睨み付ける。

 

 「お久しぶりですね、蛇さん」

 

 『.....その呼び方は止めろ道化、その頭を噛み千切るぞ』

 

 キャディが軽い調子で話しかけると、世界蛇は睨み付けていたファブニールから視線を外し、頭を横に曲げてキャディを睨むと、恨めしそうにキャディに超音波を発して答える。

 その超音波はキャディにしか聞こえていないのか、睨まれたと思った立香達は一瞬だけ身構えてしまう。

 

 「酷いですねぇ、私と貴方の仲じゃないですかぁ」

 

 『自惚れるな、こんな狭い"かぁーど"の中に押し込んでおいてよく言うわい』

 

 「だって貴方図体デカイんですもん、その姿のままじゃまず間違いなく施設が崩壊しますよ」

 

 『ふん!儂の大きさに耐えられぬ建造物が悪い』

 

 「んな我が儘なぁ」

 

 『まぁ、そんな事はどうでも良い。道化よ、儂を召喚した理由はなんじゃ?まさかこの為だけに呼んだ訳ではなかろう』

 

 「そりゃ勿論、そこにいる竜種を貴方に倒して欲しいんですよ」

 

 『なんと、こやつ竜種であったか。道理で先程から竜独特の気配がすると思ったが、こんな小さいのがのぉ。てっきり竜種が隠れておるのかと思ったわい』

 

 「まぁ『あっち側』の竜種が大きいだけなんですけどね、お気持ちお察しいたします。それで、返答の方は?」

 

 『無論、儂も長い間かぁーどの中に閉じ込められていたのじゃ。久し振りのご馳走をみすみす逃す気はない。余すとこなく全て喰ってやろう』

 

 「あっ、可能であれば心臓だけは残して頂けると非常に有難いのですが」

 

 『...何?』

 

 キャディの注文に世界蛇は疑問詞を浮かべる。世界蛇にとって竜種は一番の好物であり、自身がどれだけ傷付こうとも食べたいと思う程に世界蛇は竜種が好きだった。

 特に心臓が好物なのだが、それを食べずに残せと言われ、おあずけをくらった世界蛇は露骨に不機嫌になる。

 

 「いやぁ例の計画には竜種の心臓がどうしても必要なんですよ、それが貴方の大好物と理解した上で重々お願いします」

 

 『その計画の重要性次第で心臓を喰らわないでおいてやろう。それで?どれだけその計画は重要なのだ?』

 

 「.....ピエレル様の復活計画の為にも本当に竜種の心臓が必要なんですよ」

 

 『ほぉ、やっとあの人間を甦させる所まで来たのか。長い道のりだったようじゃな』

 

 「えぇ、実際、とてつもない時間と労力と人手を費やしましたがね。それだけこの計画には価値があるのです、失敗なんて許されないんですよ」

 

 『そう言うことなら、まぁ心臓は喰わないでおいてやろう。しかしそれ以外は全て貰うからな』

 

 「それはご自由に」

 

 『さて、長々しい話はここまでにして....そろそろご馳走にありつくとしようかの』

 

 世界蛇は頭を前に戻し、こちらを警戒しているファブニールに視線を向ける。ファブニールは低く唸り声を上げ、世界蛇を睨み上げる。

 

 『ありとあらゆる生命に感謝し....いただきます』

 

 世界蛇は口を大きく開けると、ファブニールを頭から飲み込もうとと勢い良く迫る。ファブニールは迫りくる口に向かって大火力の(ブレス)を吐き出して迎え撃つ。しかし世界蛇は全く怯まず、そのままファブニールを(ブレス)ごと頭から飲み込む。

 前両足まで飲み込まれたファブニールは、唯一動かせる後ろ両足と尻尾を必死に動かして抵抗する。

 

 『なかなか活きが良いのぉ。じゃが、暴れすぎじゃよ』

 

 世界蛇はファブニールを咥えたまま頭部を持ち上げ、勢いよく地面に、民家等を破壊しながらファブニールを叩きつける。

 横っ腹にきた衝撃に、ファブニールは世界蛇の口の中で苦悶の声を上げる。しかし世界蛇は、それだけで終わせず、再び頭部を持ち上げ、反対側の地面に、民家を破壊しながら叩きつける。それを何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も----

 そうして何度も地面に叩きつけられたファブニールは、ピクリとも動かず、後ろ両足と尻尾はダラリと垂れ下がっていた。それを口の中で感じ取った世界蛇は、頭部を上に向け、ファブニールを丸呑みにしていく。

 

 『どれ、儂はやるべき事はやった。また用があれば呼ぶが良い。じゃが、次に儂を呼ぶときはあの人間が甦った時にしとくれ』

 

 「えぇ必ず、お約束しますよ」

 

 キャディが言い終わるやいなや、世界蛇は自信が召喚された魔方陣の中に戻っていき、魔方陣は一瞬にして消失する。

 そして、魔方陣があった場所の中央には、世界蛇の絵が描かれたカードと、そのすぐ傍には青白く発光する心臓らしき物が転がっているだけだった。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 『あ、ありえない、あの生物はもう存在することのない神話の化け物じゃないか!?それを、それをあの男は召喚したって?そんなの不可能に近い。いやそもそもあれは召喚することなんて出来ない筈だ!?ど、どうして....』

 

 「ドクター!ドクターしっかりしてください!」

 

 『っ!ご、ごめん、余りにも現実離れすぎる光景だったからつい...』

 

 「確かにのぉ、あのような大蛇をポンと召喚するような奴じゃ、狼狽えるのも無理はない」

 

 「悠長に分析してる場合かノブナガ、あんなでけぇバケモンが、今度は俺達に襲いかかったらたまったもんじゃねぇんだぞ」

 

 「分かっておる、奴があの大蛇を召喚したら、まず先に奴を始末すれば良いだけの事じゃよ」

 

 「簡単に言うなぁ、まっ!俺も手伝うの前提の話だろ?」

 

 「無論、それともなんじゃ?お主はあれと一戦殺り合いたくないのか?」

 

 「殺りたいに決まってんだろ、お前にだけ楽しい思いはさせねぇよ」

 

 竜種がいとも容易く殺される光景を見ていた立香とジャンヌは絶句、モニター越しにそれを見ていたロマニは、その光景を受け入れられず、思わず現実から目を背けようとして、マシュに呼ばれて正気を取り戻す。

 クーフーリンと織田は、先程の大蛇が召喚された時の対策を話し合っていた。そんな彼等をおいて、腰に仕込み杖を帯刀したキャディは、軽い足取りでカードに近づき、右手にカード拾い上げ、左手に心臓を持つ。

 右手に持ったカードを懐にしまい、心臓を左手で弄びながら、ゆっくりと体を反転させ、カルデアに体を向ける。それにいち早く気付いたクーフーリンと信長は武器を構え、マシュとジャンヌも遅れて武器を構える。しかしキャディは右手を前に突きだし制止する。

 

 「失礼、何度もお時間を頂くようで大変失礼なのですが、後もうちょっとだけお時間頂けませんか?あともうちょっとだけでいいので!」

 

 「えっ!あ、えっと........ど、どうぞ?」

 

 「先輩!?」

 

 「いや、ほら?あの邪竜を倒してくれたんだし、もう少し位は....ね?」

 

 「ね?じゃねーよマスター。あついがホラ吹いてんのかもしれねぇんだぞ?それを信じるのかよ、オレは怪しいと思うがな。胡散臭そうだし」

 

 「そうじゃマスター、お主はお人好しが過ぎる。それがお主の美徳だとしてもそれにも限度があるぞ。奴胡散臭そうじゃし」

 

 「私は先輩がそう言うのであれば、それを無理矢理変える気はありません。しかし、クーフーリンさんの言う通りあの人物が嘘をついて私達を欺いている可能性も捨てきれません。胡散臭そうですし」

 

 「私は特に言うことは無いのですが、強いて言うなら....なんと言いましょうか、胡散臭そうな印象がありますね」

 

 「そうかもしれないけど、それでももう少しだけ様子を見ようよ。もしかしたら本当は優しい人なのかもしれないし。胡散臭いけど」

 

 「....なんで初対面の人にそんな胡散臭いとかバンバン言えるのかはさておき、それでは早速お言葉に甘えて」

 

 そう言うと、キャディは地面に刺さっていたギルディアの大矛を片手で引き抜くと右肩に担ぎ、大の字で倒れ込んでいるギルディアの傍で屈み、顔をギルディアに近づける。

 

 「もしもし~、生きてますかーギルディア?生きてますよね?貴方があれ喰らっただけで死ぬわけないですし、どうせ負けたのがショックで立ち直れないだけでしょ?困るんですよぉ今ここで落ち込まれても。貴方分かってます、今仕事中なんですよ?落ち込むなら基地に帰ってから死ぬほど落ち込んで下さい」

 

 「......」

 

 「...無視ですか、もしかして説教してる相手が私だから、反省する価値もないとか思ってるんですか?だとしたら貴方、それ凄く私の事馬鹿にしてるでしょ、まぁ今に始まった事ではないので何も言いませんが」

 

 「.....」

 

 「で?貴方このままずっとここで落ち込み続ける気ですか?私が言うのもなんですがそんなんで良いんですか?例えば名誉挽回するとか、今度からは油断しないとかすればいいじゃ無いですか。落ち込んでる暇なんて今の我々には無いんですよ理解してますか?」

 

 「....」

 

 「...なんか言ったらどうですかギルディア。あの五月蝿くて貴方が心底毛嫌いしてるこの私が、貴方に説教してるんですよ?それなのに貴方は何時ものように毒舌の一つも吐かない。そんなんだとこちらも調子狂うんてすけど?」

 

 「...」

 

 「まぁ貴方がここで、彼らに負けるなら、()()()()()の目も腐ったものですねぇ。こんな奴を臣下に入れておきながら、こんなにもメンタルが弱いだなんて、彼の顔に泥を塗るようなマネを--」

 

 「--貴様のような奴が、気安く我が王を侮辱するな」

 

 いつの間にかキャディの首は、ギルディアの手によって強く握られており、ギルディアは上体を起こすと、仮面越しにキャディを怒りと殺意を込めた目で睨みつける。

 しかしキャディはそんなの気にしないと言わんばかりに笑い声を漏らす。そんなキャディの態度が気に入らないのかギルディアは不機嫌そうに舌打ちをすると、ゆっくりと立ち上がる。身長差の関係でキャディが宙ぶらりんの状態になるが、彼は一向に気にした様子はなかった。

 

 「おはようございますギルディア。よく眠れましたか、貴方が深~い眠りについている間こっちは大変だったんですよ?」

 

 「...その矛は私が王から下賜して頂いた大切な物だ。返して貰いましょうか」

 

 「あり?まさかの無視?」

 

 「一々相手にしていたらこっちが疲れますし、何よりお前のボケはいまいち理解に苦しむんですよ」

 

 「あれま辛辣」

 

 宙ぶらりんのままおちゃらけるキャディを無視し、ギルディアはキャディの右手に握られている大矛を奪い取るとキャディの首を掴んでいる手を放す。

 ギルディアが手を放した事によって、キャディの体は重力に従って地面に落下し、地面に激突した際に情けない苦悶の声を上げる。

 

 「アイタタタ.....あのぉ、酷くないですか。仮にも私貴方の上司にあたるんですよ?もうちょっと態度ってものがあるでしょうに」

 

 「だったらそれ相応の態度を示してもらわねばなりませんね。最も、お前が態度を改めたらそれはそれで気持ち悪いですけど」

 

 「ひどすぎる!」

 

 「...さて、まずは貴方達カルデアに、一つだけ謝罪することがあります」

 

 「あれ?まさかのスルーですか」

 

 ギルディアは、キャディのツッコミを無視して、立香達を見据える。目の前で復活したギルディアを前に、カルデアの全員は驚きを隠せなかった。

 そんな中ギルディアに見つめられている立香は、仮面越しにこちらを見てくるギルディアの目が、その雰囲気が憤怒に満ちているのを感じとり、思わず唾を飲み込む。

 

 「謝罪する事は、貴方達に期待しておきながら、私が貴方達に実力を見せなかったこと、すまないと思っています。そして、ここからは誠意を込めて本気でお相手いたしましょう」

 

 『ギ、ギルディアから高魔力反応!この魔力量、さっきまでとはまるで違う、違いすぎる!』

 

 「そんな事分かっておるわ、戯け!」

 

 「全くだ。アイツから漏れ出る魔力量、どうやらオレたちに倒されるまで全く本気じゃなったって訳かよ」

 

 全身から漏れ出るほどの大量の魔力を発生させるギルディアは、ゆっくりと大矛を構えると、十字型の刃の真ん中にある八つの、それぞれ色・模様の違う部分に左手を翳す。

 すると、翳していた部分の一つが淡く黒色に発光すると、それに反応してギルディアから漏れ出ている魔力も黒色に変色する。

 

 「我、司る大罪は『虚無』、七つ全ての大罪の始まりにして終わり......この大罪をもってお前等に対する誠意としましょう」

 

 黒い魔力を纏ったギルディアは、大矛を上段で構えるとゆっくりと体勢を低くし、足に力を込め---

 

 「ちょーーっと待って下さいギルディア!ストップストップ!」

 

 「.....何ですかキャディ、これからだと言うのに」

 

 ---て立香達に襲いかかろうとしたギルディアをキャディがその間に入って間一髪で止めに入る。キャディが突然割り込んできた事によってギルディアは思わず前のめりになって危うく転倒しそうになったが、超人的な身体能力と純粋な脚力で何とか転倒を回避する。

 そこから体勢を整えたギルディアは、鋭い視線を目の前の道化師に向け、怒りを露わにする。

 

 「まぁまぁ落ち着いて、私だって時間があったら死ぬほど殺り合ってくれても一向に構わなかったのですが、もう手に入れるもの手に入れたのでこれにて任務は終了。もう本部へ帰還しますよ」

 

 「何、どういうことだ?」

 

 「えぇ、今回の特異点で欲しかった物が手に入りましてね。因みにそれがこれです」

 

 キャディは左手で弄んでいた竜種の心臓をギルディアに見せびらかす。見せびらかされたギルディアは、若干イラッとしながらもそれを見て納得する。

 

 「確か人界の竜種の心臓には高い自己再生機能があると聞きましたが、もしやこれは...」

 

 「...無論『ピエレル様』蘇生の為の重要な素材の一つですよ。『裏』にも竜種はいるにはいますが、自己再生を持ってる竜種は一匹もいないんですよねぇ...なんでいないんでしょう?」

 

 「知りませんよそんなこと、ウォーカーに聞いたらどうです?」

 

 「いやぁそれはそれで聞きずらいと言うか、それにウォーカーは『裏』を作っただけなのでそう言う細かい事は知らないと思いますしー」

 

 「じゃあ尚更知りませんよ」

 

 「ですよねぇ」

 

 「...先輩、彼等は何の話をしてるのでしょうか」

 

 「俺が知りたいよ」

 

 いつの間にかギルディアが纏っていた黒い魔力も消滅しており、カルデアそっちのけで話し始める二人。それを見ていたカルデアの面々は呆れた雰囲気でそれを見ていた。

 

 「しかし、だからと言って私が戦ってはいけない理由にはならない、そうでしょう」

 

 「それ暴論ですってば!?いいから戻りますよギルディア!?...ちょっ、聞いてます!?」

 

 「少し時間を貰うだけです、いいから邪魔しないで下さい」

 

 ギルディアはそう言ってキャディの横を通り、再び大矛を構えようとしたが、大矛を構えようとしたギルディアの右腕はキャディによって()()()()()()()()()()()()で掴まれる。

 ギルディアがキャディに顔を向ければ、そこには濃厚な殺意を発するキャディの姿があった。

 

 「......いいからさっさと俺の指示に従えやこのウスノロ野郎が。フローレスの加護がなけりゃ死んでた死に損ないの分際で、俺に口答えしてんじゃねぇよ。なんなら俺がアイツ等に代わってお前の息の根止めてやろうかぁ?あ?」

 

 今までの性格が嘘の様にまるで別人のように豹変したキャディは、ギルディアの腕を掴んでいる手の力を強めながら乱暴な口調でギルディアに言う。

 

 「お前のそのどうでもいい俺にとってはくだらいプライドの為だけにこちとら時間かけられねぇんだよ。それが原因で俺の『予測』が1ミリでも狂ったら、お前どう落とし前つけるだコラ」

 

 「...本性を出したか道化」

 

 「あ?そりゃ足手まといがいればこうなるわな」

 

 キャディとギルディアは数秒間の睨み合った末、ギルディアは大きくため息を吐くと、構えようとしていた大矛を杖のように持ちかえる。

 

 「ぶちギレたお前とは出来れば殺り合いたくはないので、今回はお前の指示に従い撤退しますが、次はお前が何と言おうと彼等と戦いますからね」

 

 「......えぇ、分かってくれれば良いんですよ分かってくれれば♪」

 

 キャディの雰囲気を察したギルディアは、心底嫌そうにしながらもキャディの指示に従う事にした。それを聞いたキャディは、いつもの陽気な口調に戻り、ギルディアの腕から手を放す。あの濃密な殺意もいつの間にか消失していた。

 

 「そうと分かればギルディアは先に撤退していてください。私はもう少しやることがあるので」

 

 「別に構いませんが、返り討ちにあわないことですね」

 

 「いや彼等と戦いませんからね!?戦っても勝てないですし、何をしようと思ったんですか!?」

 

 「そんなことはどうでもいいので早く撤退用のカードを渡して下さい」

 

 「聞いたのに無視ですか!?...まぁ慣れましたけども、それでもこう、ちゃんと答える位はあっても良いじゃないですか......」

 

 ギルディアに聞こえるか聞こえないかの声で愚痴るキャディは、愚痴りながら懐からカードを一枚出すと、それを慣れた手つきでギルディアに渡す。

 それを奪い取るように受け取ったギルディアは地面にカードを置くと、地面に置いたカードは消滅し、かわりにカードを置いた場所の上の空間が割れ、ギルディア一人が通り抜けられる程の大きさの空間の歪みから生まれたゲートが出現する。

 

 「それではお先に失礼しますよキャディ」

 

 「えぇまた本部で。...あぁ先程の件ですが、しっかりと貴方の王フローレスに、貴方自身がしっかりと報告するように」

 

 「...分かってますよ」

 

 背中越しにキャディから掛けられた言葉に、ギルディアは一拍遅れて答える。その背中からは後悔ややり場のない怒りなどが透けて見えるようだった。

 ギルディアはゲートの中へ入ろうする前に後ろに顔を向ける。視線の先には立香とクーフーリンがおり、不意に視線を向けられた立香は思わずビクリと肩を震わせ、クーフーリンは不敵な笑みを浮かべながら朱槍を弄んでいた。

 

 「次こそは必ず決着をつけるとしましょう...ケルトの大戦士」

 

 「おう、それまでお互いくたばらねぇようにな」

 

 「...フッ、そうですね」

 

 クーフーリンの思いがけない言葉に、ギルディアは思わず小さく笑うと、再び彼等に背を向け、穴の中へと消えていったのであった。




如何でしたでしょうか?
楽しんで頂ければ幸いです。

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