今回は予定を変更して我らがスルト陛下とその長女のお話。
ムスペル組ですがシリアスではないのでご安心ください。
スルトは娘であるレーギャルンに「父上、少しご相談したいことが……」と呼ばれて食堂に来ていた。妹のレーヴァテインと違って昔から手のかからない娘であったレーギャルンに頼りにされてすごく嬉しかったスルトであったが、食堂でレーギャルンがやってきた服装をみて唖然としてしまった。
「……レーギャルン、その格好はどうした?」
「はい? あぁ、これは召喚士殿に新しい戦装束として召喚されまして。アンナ殿曰く『みずぎ』という防具らしいです。このような薄い布で果たして防具の役割を果たすのでしょうか」
「うむ。そうだな。だが、胸を覆っているとこを引っ張るのはやめなさい」
「? 何故でしょうか?」
この時点でスルトには大ダメージである。まさか娘に女子力どころか羞恥心があるかも怪しくなってきた。男所帯で育ったからと言ってこれではダメだろう。
とりあえずレーギャルンが引っ張った胸元をガン見していたラズワルドには後でムスペルの炎と一緒にシンモラを叩きつけることを心に固く決めるスルト。
「して、相談とはなんだ?」
これ以上レーギャルンに会話をさせるとスルトの親心が大変なことになる気がして、スルトは早速本題に入る。
スルトの言葉にレーギャルンは真剣な表情になる。それをスルトはどこか微笑ましく思いながらお茶を飲む。
(まぁ、レーギャルンのことだから新しい武器についてかもしれんな。魔法のことであったら少々不安は残るがパントとやらを頼るように教えてやるとしよう)
「実は父上。私は『恋』をしてしまったようです」
「ブッハァァっ!!」
「ち、父上!? 大丈夫ですか!?」
「う、うむ!! 問題ないぞ!! 少し予想していた相談内容の斜め上をいかれて驚いただけだ」
吹き出したお茶を机に備え付けられている台布巾で拭き取りながら、スルトは明敏な頭脳をフル回転させる。
(レ、レーギャルンが恋の相談だと!? あの鬼畜外道達からは『女子力死滅姉妹』と呼ばれ、私自身も死滅しているとは言わないがムスペルの国土並に荒廃していると思っていたレーギャルンが恋の相談だと!?)
「父上?」
「う、うむ!! なんでもないぞ!! そうか!! レーギャルンに好きな相手ができたか!!」
思わず早口になってしまうスルト。そう言いながらもスルトの頭脳は止まらない。
(しかし、これは悪いことではないのではないか? レーヴァテインはあの通りだから後継者なぞ期待できぬ。しかし、ここでレーギャルンが結婚して世継ぎを設けてくれれば私も安心して死んでいける。いや待て、結論を急ぐなスルトよ。ひょっとしたらレーギャルンの勘違いかもしれん)
とりあえず(自分で淹れ直した)お茶を飲みながらスルトは気分を落ち着ける。
「ふむ、レーギャルンは何故そのような結論に至ったのだ?」
スルトの問いにレーギャルンは少し顔を赤らめる。それはスルトが見てきた若い兵士達の恋する姿にそっくりであった。
「最初はその方をみれば胸が高鳴るだけでしたのです。しかし、長くその方と一緒にいて、その人物が別の人物と話をしているとどす黒い感情が出てくるようになったのです」
「う、うむ。そうか」
娘の恋模様を聞くのは覇王の器を持つスルトですらも少し恥ずかしいものがあった。
「最初は何かの病かと思ったのです。しかし、体は不調どころか絶好調。そこで懇意にしているシャロン王女にこの気持ちは何かを尋ねたところ『それは間違いなく恋ですね!! 間違いないです!!』と言い切られ、恥ずかしながら自覚したところでございます」
どこか恥ずかしそうに言うレーギャルンにスルトの眼差しは優しくなる。
「レーギャルンよ。其方は確かにムスペル王国の王女だ。其方の結婚相手にはムスペルの王族に入ることとなろう。しかし、私は一人の父親として其方の恋路を応援したいと思っている」
「ち、父上!!」
なにせ女子力が死滅していると評判だった愛娘の恋路だ。パパは武力に訴えても叶えてやる所存である。
そこでスルトは大事なことを聞いていなかったことを思い出す。
「そういえば其方に見初められた幸運な相手は誰なのだ?」
「あ、申し訳ありません。それを言い忘れておりました」
「よいよい。私も妻と初めて会った時は舞い上がったものよ。其方にとっては初恋でもある。舞い上がるのは仕方あるまい」
「ありがとうございます。それで父上、私が恋した相手なのですが」
一度言葉を切ってから思い切った様子で口を開くレーギャルン。
(うむうむ。恋に平常心を忘れるなど乙女そのものではないか。次の父達の宴の時には『女子力死滅乙女』と言ってくる輩に言い返せると言うものよ)
「召喚士殿です」
「うむ、そうか。召喚士か……召喚士?」
「召喚士殿です」
「……白フード?」
「白フードです」
レーギャルンの今までの言葉は恋する乙女だと思っていたが、相手が召喚士ならば話が違ってくる。
その方を見るだけで胸が高鳴る=それはきっと怒りだ
別の人物と話をしているだけでどす黒い感情が出てくる=それは何故貴様はまだ生きているのだと言う殺意だ。決して可愛らしい恋心ではない。
結論、レーギャルンの初恋は恋なんて可愛らしいものではなく殺意であった。
そんな残酷すぎる現実を目の前の娘には言わなくてはならない。と言うか言っとかないとレーギャルンが色々可哀想すぎる。
「いいか、レーギャルン。よく聞いてほしい」
「はい、なんでしょうか」
背筋を伸ばしてスルトの言うことを聞こうとするレーギャルン。その素直さは彼女の美点だが、その素直さにアスク王国のスイーツ脳が合わさって最悪な結論に至っている。
「其方のその恋であるがな」
「お、スルトのおっさん。こんなとこにいたのか。出撃だぞ」
「沈みなさい!!」
「「ヘクトルバリアー!!!!」」
「ギャァァァアァァァッァ!!!!!」
声をかけてきた三馬鹿にレーギャルンが速攻で奥義四海の祭器をぶっ放し、脳筋が外道と腹黒の盾にされて死んだ。
「なんだなんだ!?」
「召喚士!? 今度は何をやったんだい!?」
「召喚士殿を前にする時に現れるこの胸の衝動……これが恋なのですね父上!!」
「違う!! それは違うぞレーギャルン!!」
「シャロン王女から恋心は秘めるものではなく、思うままに放つものだと聞きました!! 召喚士殿!! 私の気持ちを受け取ってください!!」
「ヌヲ!? そう言いながら四海の祭器をぶっ放してくるってどう言うことだ!?」
必死になって逃げていく召喚士を逝っちゃった目で魔法を放ちながら追いかけるレーギャルン。
「落ち着くのだレーギャルン!! それは恋心ではないのだァァァ!!!」
そんな長女を必死になってスルトは追いかけるのであった。
後日、スルトに自分の気持ちを正しく教えられたレーギャルンは、しばらくの間召喚士を見ると顔を赤らめて走り去ることになるのであった。
レーギャルン
褐色巨乳おっぱい姉さん。自分の勘違いにしばらく召喚士を直視できなくなった。
スルト
娘達の将来を不安に感じるパパ。このままでは姉妹揃って行き遅れることになるのではないかと本気で不安になっている。
そんな感じでムスペル親子のお話でした。女子力死んでる系乙女のレーギャルンちゃんの女子力強化作戦がまさかのさらなる女子力を死滅させることになろうとは……スルトパパ頑張れ。超頑張れ。
そういえば今回のお話でちょうど100話に到達しました。自分で書いていてなんですがよくここまで続いたものです。そしてみなさんのFEキャラ像が心配になってしまいます。