召喚士と英雄の日常   作:(TADA)

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鬼畜クソ軍師!(挨拶


今回はメッセージでいただいたロイくんの初恋話と、リクエストにあったダンスパーティ回です。


いつもと違ってほのぼのです


ロイくんの初恋

エリウッドとウルスラは相談があるというロイの部屋を訪れていた。召喚士がエリウッドとウルスラのスキルについて相談があると言っていたが、二人にとって二人のスキル構成<<<<<<<<<<<<<<<<<<超えられない壁<<<<<<<<ロイの相談なので、当然のように召喚士の言葉はシカトである。

 「父上、母上、部屋まで来ていただいて申し訳ありません」

 「なに、全然構わないさ」

 「息子の相談だもの。何よりも優先するわ」

ロイの心底申し訳なさそうな表情に慈愛の表情を持って受け答えするフェレ侯夫婦。その姿は普段からは考えられないくらいに優しい表情をしていた。

 「それで? 相談ってなんだい?」

ウルスラが入れた紅茶を優雅に飲みながらエリウッドは問いかける。ウルスラもエリウッドと同じように優雅に紅茶を飲んでいる。

そんな二人を前にロイは緊張するように口を何度か開くは閉じるを繰り返す。それをみてウルスラは優しく微笑んだ。

 「いいのよ、ロイ。自分の言葉で落ち着いてから話なさい」

ウルスラの言葉でロイは自分の気分を落ち着けるように深呼吸する。そんないじらしい姿を親バカ二人は見逃すはずがないので隠し持っている映像保存装置(パント作成)で激写している。

そんな二人に気づくことなく、ロイは恥ずかしそうに口を開く。

 「好きな……人が……できました……」

恥じらったロイの姿に二人は高速で鼻血を吹くと、超高速でアイコンタクトを行う。

 (エリウッド、わかっているわね)

 (当然さ。ロイの初恋だからね。絶対に幸せにしてみせるとも)

親バカ二人による暗躍の時間である。二人にはどのようにしてロイの初恋を成就させるか。それしかない。場合によってはライフワーク=暗躍の召喚士にも協力を依頼するつもりである。

召喚士が断ったら? その時は召喚士がリンとフィオーラによって無残な死体になるだけである。

 「それで、そのお相手は誰だい?」

裏で薄汚いことを考えながらも微塵も表情には出さないエリウッド。

 (エリウッド、相手なんて決まっているでしょ)

 (十中八九リリーナちゃんだけど、いいじゃないか。ロイの恥ずかしがる姿をみるチャンスだよ?)

 (それもそうね)

どこまでも自分の欲望に忠実な親バカ二人である。

そして顔を真っ赤にして口を開くロイ。

 「に、ニニアンさんです」

 「「ウヴォッ!?」」

 「父上!? 母上!?」

 「だ、大丈夫だよ!!」

 「ええ、ちょっと受け止めるのが難しい返球が来ただけだから!!」

変な声が出た親バカ二人を心配するロイ。それにエリウッドとウルスラは持ち直す。そして再び超高速フェレ侯夫婦アイコンタクトである。

 (どうしよう?)

 (どうするもこうするも……ニニアンはロイのオシメを取り替えていたこともあるのよ? 完全にロイに対して持っているのは母性よ)

 (そうだよね。ニニアンが不満なんじゃなくて、ニニアンにとってロイは完全に恋愛対象外なんだよねぇ)

確かにニニアンは地雷を踏まなければ優しくて美人なお姉さんだ。ロイの年代によくある年上のお姉さんに憧れるのと似たようなものだろう。

 「父上、母上。僕はニニアンさんと結婚したいと考えているわけではないんです。ただ、一つだけでも思い出が欲しいんです」

 「「任せておきなさい」」

 「父上!! 母上!!」

嬉しそうな表情を浮かべるロイの顔を激写し、二人はロイの部屋から出る。そしてそのままエリウッドの部屋で会議を開始した。

 「でもどうするの? バカ正直にニニアンにロイとデートをしてと頼むわけにはいかないでしょう?」

 「そこだよね。できればロイの気持ちはニニアンにバレずに良い思い出を作ってあげたい」

そのまま二人は腕を組んで考えこむ。

 「召喚士に頼る?」

 「駄目だ。あの外道に頼ったら僕が不幸になる。いや、僕だけならまだしもロイにも被害が出かねない」

そしてロイが不幸になっても『まぁ、エリウッドも不幸になったからいいか』と言うのだ。なにせ逆の立場だったら自分がやるからエリウッドも分かりきっている。

 「ふふふ、困っているようだね」

 「「パント」」

そこに(いつの間にか)やってきていたのは最近ヴァイス・ブレイブでの騒ぎにガソリンをぶっかける事が多いパントであった。

ちなみに気配を感じずに部屋に入られたことは突っ込まない。なにせ相手はパントだ。それくらい鼻歌を歌いながらやりかねない。と言うか実際にやる。

 「僕達の悩みの内容もお見通しかい?」

 「ロイくんの初恋。是非ともいい思い出にしてあげたいものさ」

 「お見通しってわけね」

エリウッドの問いに平然と答えるパント。ロイの部屋にいなかったはずなのに知っているとは本当に何者なのだろうか。

 「大丈夫、私にいい考えがある」

 「君の声でそのセリフは失敗フラグじゃないかい?」

 

 

 

 

パントの策は単純なものであった。親睦会を名目にダンスパーティを開いてそこでロイとニニアンに踊ってもらって思い出を作ってもらう。

どう考えてもパントがルイーズと踊りたいだけだろうと言うツッコミはフェレ侯夫婦はスルーした。結果的にロイのためになるなら二人はセーフなのである。

 「急にパントは何を考えているんだかな」

 「本当に親睦会のための可能性もあるじゃないか」

 「やつに限ってそれはない」

ダンスパーティのために正装した召喚士(しかしフードは被っている)の言葉に同じく正装したエリウッドは答える。召喚士のパントに対する信頼は厚い。

 「それより君だったら奥さん候補達に追われるかと思ったんだけど。それを見てヘクトルと一緒に祝杯をあげるつもりだったんだけど」

 「馬鹿め。俺は無策でこんな地雷原に来るわけないだろう」

つまりお得意の悪辣な策で奥さん候補達をかわしたのだろう。そう言う行動が自分を追い詰めている事に気付けばいいのに。

 「おい、なんだその『可哀想だけど明日にはお肉になっちゃうのね』と言う顔は」

 「可哀想だけど明日には誰かと結婚しなくちゃいけないんだね」

 「どう言う意味だ!?」

実際のところは知らない。なにせエリウッドはパントや召喚士と違って疚しいことなど何もせず、清く正しく生きているために何かを企むなんて事はしないのだ。だから『このパーティで召喚士と踊れた者が召喚士と結婚できる』と言うデマをヘクトルと一緒に流した事実などないのだ。

エリウッドは召喚士と会話しながらもロイとニニアンの位置を確認する。ロイは恥ずかしそうにニニアンを見ており。ニニアンはウルスラと楽しそうに話しをしている(当然のようにウルスラはニニアンの足止め)。そしてそこで初めてエリウッドは動く。

 「やぁ、リリーナちゃん」

 「あ、エリウッドおじさま」

そう、ロイの事がゾッコンloveなリリーナの足止めである。足止めの方法もいたって簡単である。

 「どうだい? せっかくだから一曲どうだい?」

 「あ……え……でも……」

リリーナは迷った様子でロイをみる。しかし、腹黒侯爵の暗躍はバッチリなのだ。

 「せっかくだから一曲踊ってきたら?」

そうリリーナの母親であるフロリーナをすでに仲間に引き込んでいたのだ!!

母親の言葉にリリーナも納得したのかエリウッドの手をとる。横目で確認するとウルスラが上手い具合にロイのところにニニアンを連れて行っている。そして勇気を出してロイはニニアンに手を出し、ニニアンも微笑みながらそれを受け入れている。

 ((パーフェクト))

エリウッドとウルスラの気持ちは一致した。これでロイの初恋は悲しい思い出ではなく、甘酸っぱい思い出になるだろう。

そして始まる音楽。エリウッドはリリーナを楽しませながら、リリーナの気がロイに行かないようにする。

ちなみに召喚士とその嫁候補達は消えていた。きっとヴァイス・ブレイブ全体を使っての追いかけっこの最中なのだろう。

そして曲が終わる。笑顔で分かれているロイとニニアン。その笑顔を見てエリウッドとウルスラは頑張って慣れない暗躍した甲斐があったと思うのであった。

 




ロイ
年上のお姉さんに憧れた思春期系正統派主人公。

エリウッド&ウルスラ
息子のためにえんやこら

ニニアン
ロイの気持ちには一切気づいていない。




連続投稿最終回はリクエストにあったダンスパーティ回。それにメッセージでいただいた『ロイくんの初恋がニニアンの夢を見た』と言う発言が悪魔合体した結果、今回のようなほのぼのダンスパーティ回になりました。召喚士の不幸が小さくなりましたがご了承ください
あ、ちなみにロイくんはニニアンと踊った後にリリーナちゃんとも踊りましたよ。その辺を外さないあたりがロイくんの主人公力の高さ。

連続投稿はしんどいのでもうきっとやらない。と言うか自分の誕生日に何を書いているんだ俺は。

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