風花ガチャが始まり、先生をお迎えしたので今回のお話です。
「お前ら、召喚の時間だ」
俺の言葉にベッドの上で酒を飲んでいるヘクトル、机いっぱいにロイの写真を広げて整理をしているエリウッドが驚いて俺を見てくる。
「どうかしたのか?」
「ニンテンドースイッチがなくて風花はやれないからガチャは引かないって言ってたじゃないか」
「無能どもめ」
「「なんだと、この性格破綻者」」
俺の軽い煽りにすぐさま中指を立て返してくるバカ二人。いつもだったらここからさらに脱線を繰り返すのだが、今回は仕事があるので話を進める。
「いいか無能ども。忘れられているかもしれないが、ヴァイス・ブレイブは軍事機関だ。だから戦力増強は常に行わなければならない。ヘルのクソとの戦いも佳境になってきている。リーヴの召喚方法が異界のアルフォンスを形代にした形代召喚なのには驚いたがそれだけ。だが、奴は腐っても建国者。単体で奴を倒せるうちの英雄は……うん、いっぱいいるがそれはそれとして。とにかく佳境になっていく戦争に向けて戦力は増強しなければならない。そこで今回のガチャに追加されたベレスを見てみよう。獅子奮迅4に怒りという噛み合ったスキル。彼女の特筆すべきは奥義と武器にある。奥義である破天は敵の攻撃の20%を奥義ダメージに加算し、さらに相手が竜、獣の時は奥義ダメージの加算が40%になる。そして武器である天帝の剣は奥義発動カウント−1、戦闘中に敵の絶対追撃を無効化、かつ自分の追撃無効を無効。さらに戦闘中敵の奥義カウント+を無効、かつ自身の奥義発動カウント変動量−を無効にする。この能力は厄介な竜や獣達を相手に有利に戦える有能さだ。これは是非とも引くしかあるまい」
「ふむふむ」
「なるほどな」
エリウッドはヘクトルは納得したように頷いている。
「「それで本音は?」」
「ナイスタイツ……!!」
「「ナイスタイツ!!」」
あと声帯が伊藤静さんなのもいいよね。
「でもオーブはどうするんだい?」
「お前は自称・嫁のリンに管理されているだろ?」
「ふ、愚か者どもめ」
「「お前はいちいち罵倒しないと会話できねぇの?」」
「お前達相手だとな」
何を当然のことを言っているのだろうか。
「まぁ、それでオーブの件だが。忘れたか。俺の伴侶を自称するのは一人じゃないぞ?」
俺の笑みにエリウッドとヘクトルが引きつった笑みを浮かべる。
「し、召喚士、君まさか……」
エリウッドの言葉に力強く頷きながらオーブを取り出す。
「フィオーラに家族チェックの許可を出してもらった」
「こいつやりやがった……!!」
「自分から火薬庫で火遊びをするつもりだったのかい……!! どう考えてもリンとフィオーラの争いがひどくなる絵図しか思い浮かばないよ……!!」
「知らなかったのかエリウッド。火薬庫での火遊びはスリルがあるんだぜ?」
「「巻き込まれる身になれ!!」」
「正直、フロリーナには悪いことをしていると思っている」
現に今もリンとフィオーラの戦闘を必死になってフロリーナが止めている。頑張れフロリーナ。
召喚室に向かいながらフロリーナの健闘を祈る。祈ることしかできない俺は無力だ。無力な俺を許してくれ。
「さ、今回はどれくらいすり抜けするかな」
「俺の予想では三回はすると思うんだけどよ」
「いやいや、召喚士の運だったら五回はするでしょ」
「黙れ脳筋に腹黒ぉぉぉぉぉ!!!!」
そこから始まる召喚。すり抜けもなかったので書くことはない。カインがいっぱい出て殺意が湧いたことだろうか。
「あ、オーブがなくなったね」
「おい、召喚士、どうすんだ」
「いいだろう。半フェープッシュだ」
「「貴様はまたリンが怒り狂うことを……!!」」
ははは、せっかく4%まで上がったんだ。最低でも一人は星5を出さなきゃダメだろう……!!
そして叩き込む赤オーブ。舞う砂埃。浮かび上がってくるシルエット。
「…ベレスよ。ずっと傭兵をしてきたけど、今は教師の身。やれるだけのことはやるから」
「ナイスタイツ!!」
「バカな……!! すり抜けなしだと!?」
「ありえない……!! 召喚士に限ってそれはないはずなんだ……!!」
「うるさいぞ脳筋に腹黒!! 俺のガチャ力を甘くみるなよ!!」
「「伝承ルキナ」」
「ちょっと何を言っているかわかりませんね」
確率が15%超えるなんて……ははは、そんなのありえたら今回のガチャでエーデルガルトちゃんまで狙っちゃいますよ。
そして俺達の奇行も無表情で見ているベレス。
「おぉ、すげぇな。俺達のやりとりを普通に見ているとか」
「割とあっさりと馴染みそうだね」
ヘクトルとエリウッドの言葉にベレスは無表情に頷く。
「ああ。先生の奇行には生徒時代から慣れている」
「「「ちょっと待って」」」
「わかった」
ベレスの爆弾発言にスクラムを組む俺とヘクトルとエリウッド。
「おい召喚士。知り合いか?」
「というか知り合いだよね。思いっきり君のこと見て先生って言っていたけど」
「ちょっと待て。渡った世界が多すぎてどの世界の生徒だか把握できん」
「「この烈火テロ感」」
そして俺は首だけベレスに向ける。
「ベレス、俺とはいつ会った?」
「私が5歳の時だ。行き倒れていた先生を父が拾ってきた。そこでうちの傭兵団で軍師をやる傍らに私に色々なことを教えてくれた。私が先生をやれているのは先生のおかげだ」
「……あ〜、あそこか」
俺が思い出すのは感情を滅多に出すことがなかった少女。言われてみればその面影がある。
「改めてこれからよろしくな、ベレス」
「ああ、こちらこそよろしく頼む」
ベレス
風花主人公(女)。元いた世界では幼い頃に召喚士の教育を受けていた模様。そのせいで彼女も当然戦場では容赦がない。
召喚士塾門下生
召喚士に少しでも教えを受けた英雄。インバース(一番長い)、イシュタル(一番短い)、Wマーク(親が召喚士の同類)、セシリア(この世界から)、ベレス(一番多感な時期に教育を受けてしまった)。
召喚士の教えを受けると基本的に敵に容赦がなくなる。汚染度が低いのはイシュタルとセシリア。
リンとフィオーラのガチ争い
巻き込まれるフィオーラ涙目。
確率が15%を超える
ははは、作者だって一回しか経験ないですよ
風花ガチャは引かないと言ったな。あれは嘘だ。1%程度の召喚士の建前と99%の本音は作者の気持ちそのままです。あのタイツじゃなければひくことはなかったのに……
そしてキャラ設定が全くわからないから、とりあえず召喚士の教え子にして外道枠にしておく準備。ここからならどんなキャラ崩壊も可能ですよ!! 真面目系はきっと無理だけど!!
ちなみに先生召喚でアティ先生も召喚しようかと思いましたが、尺の都合で召喚されませんでした。