今回はお題箱でリクエストをいただいた肝試し回。いつもより短めです
俺の部屋にはニニアンがやって来ている。
「それで? 今回は保育園で何かやるのか?」
「召喚士さんはお話が速いですねぇ」
俺の先回りした発言にニニアンが苦笑してくる。ニニアンが俺のところにやってくるのはだいたい保育園関係なのでわかるだけである。
「実は保育園の子達に肝試しの話をしたらやってみたいと言われてしまいまして」
「のじゃロリ皇帝は苦手そうだけどな」
「サナキちゃんなら涙目になりながら『怖くないぞ、本当じゃからな!!』と強がっていましたよ」
ロリコン大歓喜の予感。
「わかった。俺達が驚かし役をやればいいんだな」
俺の言葉にニニアンは苦笑しながら首を振る。
「いえ、子供達は驚かし役をやりたいらしく……」
「……え?」
ニニアンの爆弾発言から数日後、『ヴァイス・ブレイブ肝試し大会』が開催されている。籤によって二人一組になったコンビからルートに入っていく。
ちなみに俺はヘクトルとエリウッドとの組を指定された。それを知った瞬間のリンとフィオーラから漏れた舌打ちは忘れておくことにする。主に俺の貞操のために。
「それにしても結構本格的っぽいな」
「だよね。ガチ悲鳴も聞こえてくるよ」
そんな呑気な会話をヘクトルとエリウッドはしている。
「それじゃあ最後は召喚士達の組なのじゃ!!」
元気よくお化けの仮装をしたのじゃロリ皇帝が声をかけてくるので俺達は出発する。
「でもよぉ、俺達に肝試しってできるか?」
「そうだよね。烈火に関して言えば普段から頻繁に命のやり取りしているしね」
「主に味方同士でだがな」
そんな会話を俺達三人でしながら先に進む。
案の定ロリマムクート達が作り上げた脅かし道具(ロリとは思えないでき)にも驚くことなく進んでいく俺達。
「少しは驚いてやらなきゃ可哀想な気もするな」
「それじゃあ次は悲鳴でもあげようか」
「そうだな」
エリウッドの言葉に同意すると、次の驚かし道具の場所にやってくる。光が当たる机に置かれた一枚の写真。
ロイの写真(シワシワのくちゃくちゃ)だった。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!! ありえないxイィぃぃぃぃ!!」
当然のように親バカが発狂した。親バカは泣きながらロイの写真を綺麗にしようとしている。
「すげぇな、個人攻撃か」
「ニニアン保育園の教育方針が心配になるな」
当然のように俺とヘクトルは対岸の火事なので親バカの狼狽を嘲笑しながら見ていられる。
いつまでもここにいても仕方ないので次に進む。
「くっそう、ロイの写真をこんな雑に扱うなんて。これやったのがロリマムクート達じゃなかったら戦争案件だよ」
「写真一枚で何言ってんだよ」
エリウッドの言葉にヘクトルが嘲笑しながら言い放つ。そして次の驚かし道具の場所にやって来た。先ほどと同じように光に当たるように机に置かれた一枚の写真。
ロイとデートしているリリーナの写真だった。
「ぶち殺すぞあのクソガキィィィィィィィィ!!!!!」
その写真を見た瞬間にヘクトルの怒りが有頂天になった。エリウッドがその写真を見てガッツポーズを決めているのと対照的だった。
「あのクソガキうちの娘に手を出すとか頭をスイカみたいにかち割ってやる」
「いやいや、言い過ぎだよヘクトル。ロイとリリーナちゃんだよ? お似合いじゃないか」
「テメェはそうやってリリーナをロイの嫁にするつもりだろうが、俺は絶対に許さねぇからな!!」
そうは言っても本人はその気だし、母親であるフロリーナも認めているのは公然の秘密である。
「ほれ、さっさと次に行くぞ」
お互いにファイティングポーズを取っているバカ二人を促して先に進む。バカ二人もお互いに中指を立て合うと素直について来た。
「この順番でいくと最後は召喚士だね」
「でもこいつが写真一枚で発狂するとは思えないぞ」
それについてはヘクトルの意見に同意である。自分で言ってもなんだが、怖いもの知らずに育ってしまったのだ。
そして再び光が当たる机がある。先ほどまでと同じように写真が一枚置いてある。俺達は一度顔を見合わせてから写真を覗き込む。
そこには仲睦まじそうに(見える)食事をとっている俺とセシリアの姿があった。
「「「なんだこれ?」」」
不思議になって首を傾げる俺達三人。そしてその瞬間に俺の両肩に手が置かれる。
おそるおそる背後を見るとステキな笑顔を浮かべているリンとフィオーラ。
「「召喚士?/召喚士さん?」」
そして二人から立ち上る怒気。
「「この写真はどういうこと?」」
「ヒィ!!」
確かに肝が冷えるのであった。
そんな感じでお題箱でいただいた肝試し回。え? 肝試しの意味が違う? だってこいつらが幽霊程度で怖がるわけないじゃないですか。
お試しということで召喚士を風花雪月世界にぶっこんだ『外道、フォドラに立つ〜召喚士と英雄の日常外伝〜』を投稿しました。もしよかったらそちらも読んでみてください。