舞踏祭イシュタル
『……え?』
舞踏祭イシュタル
『クッソォォォォォォ!!(ガチャガチャガチャガチャ』
帰ってくる鬼畜クソ外道
「いい加減認めたらどうかしら」
リンは冷めた様子で自治領主・アルフォンスに告げる。しかし、アルフォンスの表情は優れない。
「……イシュタルとラインハルト、オルエンはよくやってくれているよ」
「その状況はベレスとベレトも手伝っている結果よ。そして緩やかに状況は悪くなっている。先日のアスク王国と死の王国の戦いにも大敗したと聞いたわ。そして死の王・ヘルは着実に侵攻を開始している」
「あの戦いも君達が協力してくれたら勝てていた!」
激昂するアルフォンスの反応にもリンは冷めている。
「アルフォンス、人は国に忠誠を誓わないわ。基本的に忠誠心は人に向けられる。貴方は私達の忠誠心を手に入れることができなかった。違う?」
リンの言葉にアルフォンスは押し黙る。アルフォンス達は一方的に英雄達を召喚して戦わせている。英雄というものは一癖も二癖もある連中ばかりだ。そのような連中を従わせるにはアルフォンには不可能だった。
アルフォンスは歯軋りをする。リンの提案を受け入れれば、死の王国の侵攻は止むだろう。それは確信している。
だが、それをすればアスク王国に再びヒビが入りかねない。
「……君はどう思う?」
アルフォンスが問いかけたのはアルフォンスが側近として重用している文官だ。彼は三軍師にも能力が認められており、さらには三軍師に対して反発心を持っているためにアルフォンスは重用していた。
そんな三軍師の政敵であるはずの彼も苦渋の表情を浮かべている。
「確かに提案を受け入れれば現在の脅威は全て解決されます。ニフルとムスペルの内乱も収まるでしょう。しかし、それは私達には統治能力がないということの証拠にもなってしまいます」
「あら、アスク王国内部にも反乱分子を抱えておいて統治能力もクソもないんじゃない?」
リンの言葉にアルフォンスと文官は驚愕の表情を浮かべる。その情報はアスク王国での最高機密だからだ。
二人の反応を見てリンは妖艶に笑う。
「諜報・防諜を管理していたのは誰? そしてそれを引き継いだのは誰?」
「イシュタル殿とラインハルト殿、それにオルエン殿が裏切ったというのか!?」
文官の言葉にリンは心底愉快そうに笑う。
「裏切る? 違うわ。あの三人は最初から貴方達の味方じゃなかっただけ」
アルフォンスの文官の表情が強張る。
そしてリンは冷たい視線を二人に向ける。
「最後通告よ。私達の提案を受け入れなさい」
「…………わかった」
「アルフォンス様!!」
文官の叫びにアルフォンスも叫び返す。
「わかっている!! これが最悪の選択だということは!! だけど……アスクやニフル、ムスペルを救うにはこの方法しかないんだ!!」
アルフォンスの叫びに文官は押し黙る。彼もわかっているのだ。この方法しかないことは。しかし、彼が持っている正義心がリン達の提案を拒否する。
しかし、そんな二人に興味がないのか、リンは席から立ち上がりながら口を開く。
「パント」
「なんだい?」
突如虚空から現れたパントにアルフォンスと文官は驚愕の表情を浮かべるが、リンは気にしない。相手がパントだからだ。
「許可が降りたわ。居場所は?」
「確認できているよ。相手の警戒心を解くために一緒にペトラを連れていくけどいいかい?」
「構わないわ」
そう言いながらリンは真剣な表情で続ける。
「なんとしても召喚士を連れ戻しなさい」
「もちろんさ」
「……あ、もう胃が痛くなってきた。おかしいな……召喚士がいなくなって胃痛から解放されたはずなのに……はは、雨かな? 視界が滲んでいるや」
エルドラドはここにあった。
俺とインバースのワープダイヴは結果的に大成功であった。俺たちがやってきたのは俺たちの世界で生まれたいたら覇王になっていたに違いない強さを誇るマスター(アティ)達の名もなき島であったからだ。
この島はいい。基本的にカモ……失礼、善人しかいないし。口八丁で丸め込めば食料も簡単に手に入る。
「お父様ぁぁ、この島超最高ですわ」
「だよな。それ俺も感じてる」
俺とインバースは風雷の郷にあるミスミから騙し取った家に住んでいる。最初は姉弟子であるメイメイのところに行こうとしたのだが、あの女は俺が来たことを知るとトンズラかましたのだ。
だが、そこは俺とインバース。護人達を時に騙し、時に脅しながら安穏な生活をゲットできてきた。インバースのペガサスものんびり草を食べている。
「問題という問題がマスターによる俺に働け攻勢以外ないからなぁ」
「アティ先生もしつこいですわねぇ。いつもお父様に完全論破されてショボンとして帰っていますわ」
「インバース、そんなマスターを見てどう思った?」
「なにあの可愛い生き物」
さすがはインバースである。俺の子供だけあって同意見だ。
「軍師さん! インバースさん!!」
そこにやってきたの噂のマスターである。俺とインバースは畳でゴロゴロしながら庭に立っているマスターを眺める。
「おぉう。どうしたマスター」
「今日こそお二人には働いてもらいますからね!!」
フンスという擬音がつきそうな表情で言い切るマスター。相変わらず素直で愚直である。
俺達親子にとってはそんな相手いいカモでしかないのだが。
「だがなぁ、マスター」
「おっと!! 軍師さんのお話は聞きませんよ!! 聞いたら論破されてしまいますから!!」
なんと。底抜けのお人好しで他人を疑うことを一切しないマスターからそう言われてしまった。
「それに今日はちょっと変なんです。ずっと頭の中で『軍師を働かせるんだ』って声が響いているんです」
それってノイローゼじゃないか? そして頭を抱えているマスターの後ろには人影が……
「軍師を働かせるんだ軍師を働かせるんだ軍師を働かせるんだ軍師を働かせるんだ軍師を働かせるんだ軍師を働かせるんだ軍師を働かせるんだ軍師を働かせるんだ軍師を働かせるんだ軍師を働かせるんだ軍師を働かせるんだ軍師を働かせるんだ軍師を働かせるんだ軍師を働かせるんだ軍師を働かせるんだ軍師を働かせるんだ軍師を働かせるんだ軍師を働かせるんだ」
「うぅ……やっぱり声がします……」
「違うぞマスター!! 後ろ後ろ!!」
マスターの背後でノイローゼにさせていたのはパントだった。
「え? えぇ!? どなたですか!?」
「ふむ、どなたかと聞かれたらこう答えるしかないね」
そしてパントはキメ顔で口を開く。
「人の世界を守るヒューマギア。『人理守護太郎』と」
「お前はどう考えても滅亡迅雷.net側」
そして心底どうでもいいことを言い放った。
「ヤァ、久しぶりだねぇ召喚士。あぁ、この世界では軍師だったっけ? 私としてはそっちの方が呼び慣れているからいいんだけど。それともこの世界でも偽名を使っていたのかい?」
「あ!? バカ!!」
パントの言葉に怒り心頭となったのはマスターである。
「軍師さん!! 偽名ってどういうことですか!! 人として相手にはきちんとしなきゃ駄目ですよ!!」
「ウルトラめんどくせぇ……」
超絶お人好しのクソ真面目なマスターは相手を騙すことを心底嫌う。そんな人物が基本的に偽名を使っていることを知ったらどうするか。
当然のように怒る。俺はマスターの説教を右から左へ聞き流しながらパントに半目を向ける。
「お前わかっていてやっただろ」
「当然さ!!」
「こいつ死ねばいいのに」
「あ!? お友達に向かってその暴言も駄目です!!」
説教がさらに強くなった。とりあえず説教の身代わりにインバースを立て(当然のように『裏切ったな!! シャア!!』みたいな表情になった。悪いな。親の不始末を片付けてくれ)俺はパントと話をする。
「だいたい来た理由はわかるが一応形式的に聞いておくぞ。何のようだ?」
「迎えに来たよ」
「帰れ」
俺の言葉が予想通りだったのかパントは笑顔を崩さずに言葉を続ける。
「まぁまぁ、ここは彼女のいうことも聞いてみたらどうだい?」
「……彼女?」
俺の脳裏に修羅の如くブチギレているリンとフィオーラの姿が浮かぶ。
当然のようにいつでも逃げれるように半立ちの態勢になった俺に突撃してくる人影。
「ししょォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!」
「ペ、ペトラか!!」
完全に号泣しているペトラだった。もやしな俺が受け止めれるわけがなく俺はペトラに押し倒される。
「師匠、突然、いなくなる、する、駄目です」
「あ〜、それは悪かった」
ペトラも裁判の時は完全に俺に良かれと思ってやったことだ。だから恨む気持ちはない。
だが、面白がっていた脳筋と腹黒は殺す。
ニヤニヤと笑顔を向けてくるパント。
「どうするんだい? 君みたいな鬼畜クソ外道を純粋に慕う女の子を君は無碍にできるかい?」
「ペトラ、こっちの世界で一緒に暮らすか?」
「ここに住む。ですか?」
「まぁ君なら当然そうするよね!! だけどその場合私はこの写真をリン達に見せることになる!!」
パントが見せてきたのは俺とマスターが仲良く釣り糸を垂らしている写真と、俺がペトラに押し倒されている写真だった。
「最悪かテメェ!!」
「はっはぁ!! 私がここまで性格がひん曲がったのは間違いなく君たちのせいだよ!!」
ストレートに脅しだった。
「大丈夫ですわお父様!! リンお母様とフィオーラお母様は世界を飛ぶことはできませんわ!!」
「ちなみにその場合私が連れてくるよ」
「完全に詰みましたわ!!」
インバースの逃げ道も笑顔で塞ぐ最悪すぎる天才魔導軍将。こいつ死ねばいいのに。
「あれ? リンさんというのは軍師さんから聞いていましたが、フィオーラさんというのは……」
そこに話が全くついてこれていなかったマスターが疑問を投げかける。俺が説明する前にパントが笑顔で口を開く。
「リンは軍師の嫁で、フィオーラは軍師の妻さ」
「貴様ァァァァァァ!!!!!」
貴様は俺からこの世界の居場所を奪う気だな!! 笑顔でサムズアップするんじゃない!!
「軍師さん!! お付き合いするならきちんとしなきゃ駄目です!!」
「ほら、こうなった」
再び俺に説教を始めるマスター。インバースは縁側でペトラとお茶を飲んでいるために生贄にはできない。
進歩したな……インバース……!!
「いや、俺は帰りたくないんだよ。それにマスターと離れたくないんだ」
「そ、そんな軍師さん……照れちゃいます」
頬を赤らめるマスター。これならもうひと押しでいける……!!
「そうやってヴァイス・ブレイブでも数多い女性英雄を口説いたわけだね!! いよ!! このスケコマシ!!」
「パントォォォぉぉぉぉぉ!!!!!!」
しかし駄目……!! マスター再びブチギレ案件……!! 問題は俺にはそのつもりが一切なかったことなんだが、マスター聞いてくれない……!!
「それと一つだけ真面目な話をするとね」
「お前が真面目な話とか世紀末かよ」
「当然のツッコミはスルーするけど。実はヘルが調子に乗っていてね。『え? あの鬼畜クソ外道いなくなったの? やったねヘルちゃん大勝利!!』宣言をしたよ」
「わかった。あの骸骨殺しに行くわ」
やはり奴をアルフォンス達に任せたのが失敗だった。責任を持って俺が生まれてきたことを後悔させてやりながら殺してやろう。
「あれ? ヘルってもしかして?」
「お、たまには頭の回転が早いなマスター。その通り。マスターに死の呪いをかけて苦しめ、俺が魔法で消しとばしたあの骸骨だ」
「た、たまにはが余計です!! そうですか、あの人がまた苦しめているんですね……」
ヘルとかいうクソ骸骨を人扱いしたマスターに俺とパントがマジ驚愕表情を浮かべる。
(え? 軍師、彼女大丈夫? ヘルを人間扱いとか脳の病気としか思えないんだけど?)
(驚愕しろ。このレベルを超えたお人好しが俺のマスターであるアティだ)
(マジかよ)
俺の言葉に滅多に笑顔を崩さない笑顔を崩すパント。すごいぞマスター。この天才から一本とった。
「よし!! 決めました!! 私も一緒にヴァイス・ブレイブ? でしたか。そこに行きます!!」
「「「「………え?」」」」
そしてそんな爆弾発言をするのであった。
残されたヴァイス・ブレイブ自治領
召喚士が行なっていた仕事はイシュタルが中心になってラインハルト、オルエン、ベレス、ベレトが引き継いだが、相手が召喚士とトムとジェリーを繰り返しているヘルだったために駄目だったご様子。ルフ男とルフ子も自分の仕事で精一杯。その結果が召喚士再登用に繋がる結果に。頑張れアルフォンス君。
ヒューマギア 滅亡迅雷.net
基本的に作者は特撮を見ないが、これだけはツイッターで腹筋崩壊太郎が話題になっていて第一話だけ見ました。
腹筋崩壊太郎ロス……
アティ先生まさかのFEHに参戦!!
どうなる次回!!
前話で最終回とか言っときながら続きを書いている作者です。あ、やめて!! 石を投げないで!!
いえ、これには深い理由があるんです。『これからはログポ勢になるかぁ。そのうちやめるかもなぁ』なんて笑っていたら、前書きにある踊り子ガチャでイシュタル実装。
そんなんまたやるしかないやん……!!
ええ、そんなわけで続けることになりました。
実は前回最終回にしていたのは風花雪月キャラが扱いづらかったため。一応、風花雪月編の主要なキャラは考えているんですが、それ以外のキャラはできるだけ自由に使いたい。そのためにこっちで設定を作りたくない。ですのでこの際、風花雪月編が終わるまでこっちは休止するか、と思っていたわけです。
え? 今後、こっちで風花雪月キャラをどうするかですか?
召喚しても出さなければ問題ないよね。だからすまないメーチェ!! 君のことは大好きだけどしばらく出番なしだ……!!
それと運営はマリアンヌの実装はよ