アルフォンス君の胃痛の種の帰還
「マジでついてきちゃったのかマスター」
「はい!! 軍師さんが心配ですから!!」
俺の言葉に笑顔で元気よく答えるマスター。
「あ、これからは軍師さんが召喚主なんですから、マスターと呼ばれるのはおかしいですね……それじゃあ私のことは『お姉ちゃん』と呼んでください」
「お前は何を言っているんだ」
「あ! さては照れていますね!! ふふふ、パントさんから軍師さんのことを聞いたお姉ちゃんには弟君の考えていることなんてお見通しですよ!!」
「パントォォォォォォぉ!!!」
やはり諸悪の根源はあのイケメンだった。やはり奴とはいずれ決着をつけなかればならないようだ。
俺はアティ(お姉ちゃんと呼ばないことに酷く不満そうだった)を連れてヴァイス・ブレイブの本拠地入り口に着く。
『流体魔力検査—————クリア。身体的特徴—————クリア。網膜認証—————クリア。おかえりなさいませ、召喚士様。我々ヴァイス・ブレイブは貴方の帰還を歓迎します』
そんなアナウンスと一緒に巨大な門が開く。
そしてアティが呆然としながら口を開いた。
「あの……弟君。このラトリクスの技術みたいなものはいったい……」
「ちょっと利用させてもらっただけだよ」
「あぁぁぁ!! また無許可でラトリクスの技術を使ったんですね!! アルディラに怒られますよ!!」
「バレなければ問題ない」
「またそんなこと言って!!」
プンプンと擬音がつきそうな怒り方をしているアティを無視してヴァイス・ブレイブ内を歩く。そこには見慣れた光景が広がっている。
修羅道場から逃げ切れずアテナに強制連行される剣英雄。どう考えてもインフレバトル漫画作品の戦闘を行なっているユンヌとイドゥン。治安維持部隊から逃げ回るエフラムとリオン。燃やされるヘクトル。
「ここは変わらんな」
「え!? これが普通なんですか!? あの人なんか燃やされてますよ!?」
「ヘクトルだからいいんだよ。むしろいつもより火力が低いな。上げとくか」
俺のファイヤーによってヘクトルを燃やしている火力が増す。ヘクトルが「貴様ぁぁぁぁぁ!!!!!」とか叫んでいるが、奴の不幸が俺の幸福なのでなんの問題もない。
「あ!! 弟君!! そんなことしたら駄目でしょ!!」
そう言いながらアティは持ってきていた唯一の武器である木刀を一閃!! なんと風圧で燃え盛っていた炎を消え去った。
静まり返るヴァイス・ブレイブ。そんな中をアティは平然とヘクトルのところに行って縛を解いて笑顔で問いかける。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ」
ヘクトルがアティの所業に軽くドン引きしている。
「今度、弟君が酷いことをしたら私に言ってくださいね!! ちゃんと叱ってあげますから!!」
アティの言葉に即座に余計なことを言おうとしたヘクトルの眉間に向けてナイフを刺しておく。またアティに怒られたが些事である。
ユンヌとイドゥンのアティとバトルしたい視線を無視して俺は建物に入る。インバースには先に俺の執務室に向かわせている。
やだなぁ……絶対に殺人級の仕事の量があるよ……
そんなことを考えながら俺はヴァイス・ブレイブ自治領室に入る。中にはやつれきったアルフォンスがおり、その側近君が俺のことを殺す目付きで睨みつけてくる。
「よぉ、アルフォンス。ヘルの奴に手こずっているらしいな」
「……僕の力のなさを痛感しているよ」
「なに、お前さんはこれからに期待だ。安心しろ、責任を持ってヘルの奴は痛覚を持って生まれてきたことを後悔させてから殺してやるから」
「うん、あまり過激なことはしないでね。いや、本当に。少しだけ大人しめに行こう?」
「ははは、それじゃあ俺は仕事場に向かうな」
「待って!! せめて何かフォローして!! 心配しかできない!!」
泣くように叫ぶアルフォンスを無視して俺は部屋から出て行く。
「弟君、今の人は?」
「名目上のここで一番偉い人」
「え? あの人生に疲れきった表情を浮かべている子がですか!?」
全く、アルフォンスにあんな疲れきった表情を浮かべさえるなんて悪い奴がいたものだ。きっとヘルだな。やっぱり奴は殺すしかない。
そして今度は俺の執務室である。中に入るとペトラを除いた俺の生徒達が揃っていた。
「ご苦労だったなイシュタル」
俺の言葉に心底申し訳なさそうにイシュタルは頭を下げる
「召喚士さんの後継を勤められず申し訳ありません」
「なに。相手がヘルだったら仕方ない。あいつも伊達に俺と長年敵対しているわけじゃないからな」
そう。あいつは言動はアホ丸出しだが、長年俺と敵対して未だに生きているのだ。隠された能力はそこそこ高い。
俺の言葉にベレトは悔しそうに地面を叩く。
「俺は悔しい!! 先生に任された仕事も真っ当できず!! 結局は先生に頼らなければならない事実に!! 俺は自分の無力さを痛感させられる!!」
「言っていることは暑苦しいが、ベレトの意見には私も同意見だ」
心底悔しそうに叫ぶベレトと無表情に全く感情を見せずに言うベレス。ラインハルトとオルエンも同意見のようだ。
「そうか。だったら空いた時間に授業でもやるか」
『是非!!』
俺の何気ない言葉に食いついたのは生徒達全員だった。
「まぁ、いいや。インバース。状況は?」
「イシュタルさんが綺麗にまとめておいてくれましたわぁ」
そういってインバースは一枚の紙を俺に渡してくる。俺はそれをざっと眺めながら口を開く。
「まず最優先でアスク王国の不穏分子を処理する。イシュタル、ラインハルト、オルエン、これからあげる名前の資料をルフ男からもらってこい。そして防諜にも緩みが見えるな。ベレス、ベレト。ルフ子のところに行って金のもらってこい」
俺の指示に飛び出して行く生徒達。そのまま俺は資料に目を通しながら机に座る。
「インバース」
「もう取り掛かっていますわぁ」
「ならいい」
インバースは俺の指示を待つことなく作業に移っている。
ふむ、イシュタル達をインバースレベルに引き上げた方がいいかもしれないな。
脳内で教育方法を考えつつ、資料を片っ端から読んでいると唖然としているアティが目に入った。
「どうしたアティ」
「弟君とインバースさんがちゃんと仕事をしている……?」
ヘルを殺すための仕事だったら喜んでやるさとは口に出さない。このお人好しは未だに会話であの骸骨と分かり合えると思っている脳内お花畑だ。
「あ、弟君! 何か仕事はありませんか!! 私も手伝いますよ!!」
ここで俺とインバースの高速アイコンタクト。
(アティに汚い仕事できると思うか?)
(絶対に無理ですわ)
(だよな)
そんなわけで脳内でアティをここから追い出すいい方法を考え、それを思いつく。
「俺は仕事で手が離せなくなるからリンに挨拶に行ってくれ。そこでリンに学校の設立ができないか交渉してみてくれ」
「学校ですか?」
俺の言葉に顔を輝かせるアティ。教えることが大好きな先生気質のアティには学校という響きが特別なんだろう。
「ここにはまだ10代前半や中盤の子供英雄も多い。そういう子供達に教育を施すのも仕事のうちだろう」
「わかりました!! 任せてください!!」
喜んで部屋から飛び出していくアティを見送り、俺は汚い陰謀に頭を巡らせるのであった。
ちなみに再開したリンからは仕事を増やすなと怒られた。アティはスーパーお人好しモードのゴリ押しで学校の設立を勝ち取ったらしい。
教師役の英雄を探すのも俺の仕事に追加されるのであった。
ヴァイス・ブレイブ自治領
アスク王国内の不穏分子は召喚士が帰ってきて数日中に全員が不審死。ニフルとムスペルの反乱も鎮圧され、侵攻してきた死の王国軍は迎撃にでた召喚士率いるヴァイス・ブレイブ自治領軍に撃破され、全軍の8割を失う結果になった。
召喚士塾
どうやら開講される模様
ヴァイス・ブレイブ学校
校長兼教師 アティ
教師 未定
こんな感じで召喚士はヴァイス・ブレイブに帰ってきました。これで次回からはいつも通りの頭の悪い作品に戻ります。
次回はいつかって? そんなの未定さ!!