召喚士と英雄の日常   作:(TADA)

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今回は趣向を変えてミステリー編です。

君はこの事件を解くことができるか……!!


ペトラ少女の事件簿

 「は? 殺人事件?」

俺が執務室で殺人級の仕事の量をこなしていたら秘書・イシュタルが不思議な案件を持ってきた。

 「それなら治安維持部隊の管轄だろ」

 「いえ、殺害された被害者が召喚された英雄でして……」

 「? それなら益々治安維持部隊の案件だろうに」

俺の言葉に少し言いづらそうだったが、意を決したように口を開く。

 「殺害されたのはカレルさんなんです!!」

その言葉に頭に浮かんだのはカレルスレイヤー。忠犬の皮を被った虎狼である。

 「うん。それもう犯人わかってるから。さっさとしょっぴかせる……いや、待て。相手が修羅だと追っ手も吟味しないと危険ということか」

 「ああ、いえ。そういうことでもなくてですね」

俺の言葉に苦笑しながら止めてくるイシュタル。はて、ならどういうことだ。

 「事件を聞いたペトラさんが『私、犯人、見つける、します!! 師匠、名前、かけて!!』と言い始めまして」

 「ペトラに金田一少年の事件簿を読ませたのは誰だ!!」

 「ごめんなさい、お父様!! 私ですわ!!」

犯人は本当にすぐそばにいた。

 「う〜む、ちょっと心配だから見に行ってくるか。インバース、イシュタル。ちょっと任せた」

 「わかりました」

 「行ってらっしゃいですわ〜」

イシュタルとインバースの返事を背に俺は執務室から出るのであった。

 

 

 

 「お〜っす、失礼するぞ」

 「あら、来たのね」

俺が殺人現場に入るとすでに治安維持部隊を引き連れたリンがやってきていた。

 「被害者は?」

俺の言葉にリンは黙って指をさす。そこには死んでいるカレルと遺体を調べているペトラがいた。

 「ちなみに容疑者は?」

俺の言葉に部屋の端を指差すリン。そこには返り血を浴びたカアラと、何故かギムレーがいた。

 「いや、なんでギムレーが容疑者?」

 「それは我が聞きたいよ!!」

 「師匠! ギムレー、第一発見者、犯人、可能性、ある、です!!」

ペトラの説明に納得する俺。つまりギムレーは第一発見者だから犯人の可能性があると言いたいのだろう。

 「それでペトラ、推理パートは始まっていいのか?」

 「はい!! 大丈夫です!!」

俺の言葉に元気よく返事をするペトラ。そしてペトラちゃんの迷推理ショーが始まった。

 「まず、この部屋、ギムレー、来る、するまで、密室、です、した」

俺がリンを見ると、リンはドアノブが壊れていて鍵が閉まらないことを示してきた。

もうすでに先行き不安である。

 「次、カレルさん、傷、剣、傷、です」

全員の視線がカアラに集まる。カアラは平然としながら返り血を落とそうとしていた。

 「そして、傷、切り傷、見事、です。かなり、手練れ、です」

その言葉に再び全員の視線がカアラに集中する。カアラはカレルにまだ息があることに気づいたのか、舌打ちをしながら鯉口を切り始めた。

 「これ、完全なる証拠!! カレルさん、髪を握る、してました!!」

ペトラが持っていたのは長い黒髪!!

完全なる役満である。

 「この結果、犯人、この中、います!!」

刑事ドラマのように何故か音楽が鳴り響く。あ、音響スタッフインバースね。お疲れ様。

 「犯人、あなた、です!!」

そして効果音と共に力強く犯人を指差すペトラ。

 「……え? 我?」

まさかのギムレー犯人説である。

なんかもうこの時点で俺の頭痛が痛い。風花雪月世界の俺がペトラにどういう教育を施したかは知らないが、無駄なことをしない主義の俺が確実に言えることは勉学を教えることはしなかったということだ。

うん、だからこんなとんでも犯人説を出してきたのだろう。

 「あ〜、ペトラ、説明してくれるか!!」

 「はい!!」

本当に元気よく答えてくれるペトラ。尻尾があったらブンブンと振っていそうな雰囲気だ。現にリンは「あら? 今、一瞬尻尾が……」とか言ってる。

 「まず、カレルに残っている傷のことだが」

 「そうだよ!! 自慢じゃないけど我、剣とか超苦手だよ!!」

ギムレーさん渾身の叫び。だがペトラは動じない。

 「ギムレー、剣、ベレス先生に、習う、してます」

ペトラの言葉に全員の冷たい視線がギムレーに集まる。

 「我は純粋な邪な気持ちを抱いているだけだよ!! おっぱいとヘソとあのタイツだよ!! 性欲を持て余した教師との禁断の関係……!! 『あぁ、先生!!』『ふふふ、少しだけよ』あ、やばい滾ってきた、次回作にこのシチュエーション入れよ」

とりあえず後でギムレーの処刑とベレスに対する口頭注意をしなければ。

 「それに、ギムレー、動機、あります!!」

 「「ほう」」

俺とリンの冷たい視線がギムレーを射抜く。それは余罪が他にもあるのかと言った感じだ。

 「ギムレー、カレルさんと、ルセアさん、二人、どうじんし?、にして、カレルさん、焼かれる、しました!! その恨みです!!」

 「……あぁ、カレル×ルセアのBL同人誌『俺の剣を鎮めてくれ』のことか。燃やされた我もすっかり忘れてたよ。というか待って!! 燃やされた同人誌を恨んで殺人してたら、我はヴァイス・ブレイブの英雄全員を殺さなくちゃ行けなくなる!!」

 「リン」

 「1540。犯人確保」

 「あぁ、待って待って!! 烈火組はまだ下書きだけだから!! ペン入れもしてないから!!」

 「他にも余罪がありそうだな」

 「治安維持部隊の地下室でゆっくり聞かせてもらいしょうか」

 「そこ拷問部屋ぁぁぁぁぁ!!!!!」

暴れるギムレーを取り押さえて連行していくリン達治安維持部隊。

 「師匠!! どうでしたか!!」

 「あぁ、いい推理だったな」

俺の言葉に嬉しそうにムッフーとため息を吐くペトラ。

 「ところで召喚士殿」

 「うん、カアラ。トドメを刺すのはやめとけ、な?」

俺の言葉に不満そうに舌打ちしながら部屋を出ていくカアラ。それを見ながらペトラは不思議そうにしていた。

 「カアラさん、どうする、しましたか?」

 「きっと機嫌が悪かったんだろう」

ペトラに軽く返しながら俺はカレルの側に屈む。

 「よう、カレル。生きてるか?」

 「瀕死だぞ、クソが。ご丁寧に私が喋らないようにサイレスまでかけよって」

 「悪態つけるなら元気だな。安心しろ。今、看護師がここに向かっているから」

 「さっさと呼べばいい……うん? ちょっと待て、看護師って誰だ?」

俺が答える前に壊れる勢いで部屋の扉が開かれる。むしろ扉は粉々に粉砕された。

 「患者がいるのはここですか!?」

 「ゲェ!? バーサー看護師!?」

血走った目で患者を探すノディオンの王女・ナンナと、驚愕の声を上げるカレル。

ナンナの治療は苛烈を極める。なにせ本人が「殺してでも治してみせます!!」と豪語するのだ。そのために我がヴァイス・ブレイブでは修羅道場で死にかけて治療室で殺されかけることが頻発したりする。

 「傷が深い……ですが、致命傷ではありません。えぇ!! 絶対に助けてみせます!! たとえあなたを殺してでも……!!」

 「相変わらずこっちの話を聞かない看護師だな!! おい、召喚士!! フォローを……」

カレルが見たのは俺が残した『ご褒美にペトラに美味いもの食わせてくるわ』という置き手紙だったのだろう。殺人現場(仮)から怒声と悲鳴が響くのであった。

 




迷探偵ペトラちゃん
致命的なまでに探偵役に向いていない大型犬系脳筋少女。

ギムレー
その後余罪も見つかり三日間牢屋で過ごしたらしい。

カアラ
兄上を殺せなくて超不満

カレル
妹に殺されかけたら看護師に殺されそうになってる不幸枠。

ナンナ
バーサーカー系看護師。「どんな怪我も病も治してみせます。たとえ殺してでも……!!」が信条な超危険人物。





そんなわけで召喚士と英雄の日常ミステリー篇でした。いやぁ、ペトラちゃんの推理が冴えていましたね。この犯人は誰しもが納得ですよ。
そしてさらっと出てくるバーサー看護師ナンナちゃん。バーサー看護師ネタは前から出そうと思っていたんですが、候補がエスリンとナンナの二人でした。そして結果的にナンナちゃんがバーサー看護師に。まぁ、うちにはリーフくんいませんからセーフ。

そして今回の比翼英雄が完全にエイリーク涙目の人選で草。まぁ、リンちゃんの10凸があるから引きませんけどね。
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