そんなわけでうちのトムとジェリーにも終止符を打ちましょう
そして突然入ってくるシリアス。君はおよびではないよ
「ついにこの時が来てしまった」
死の王ヘルは一人呟く。
アスク王国と死の王国の戦いは最終局面へと入っていた。ヘルの(名目上は)配下だったリーヴとスラシルは顔見知りでも容赦しない、むしろ顔見知りだと苛烈を極める鬼畜クソ外道によって完膚なきまでに消滅させられ(二人のヘルに対する恨み言が酷かった)、異世界から連れてきて無理やり仲間にしていた英雄達は鬼畜クソ外道の送還術によって送り返されていた。
「大丈夫……あの鬼畜クソ外道のところにはエイルを送り込んでいる。エイルに施されていた呪いは解呪したし、今回こそあの鬼畜クソ外道の息の根を止められる」
その発言は完全にフラグだが、追い詰められているヘルはそれに気づかない。
「ヘルぅぅぅぅぅぅ!! 処刑の時間だぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「おのれ……来やがったな鬼畜クソ外道ぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
そしてテンションがアッパー気味にダイナミック入室してくる召喚士。
「お、いたな蛆虫。今日こそ貴様を殺してやるぞ」
「あんまぁぁぁぁい!! 死ぬのはあんたの方だ!!!!」
お互いに荒ぶる鷹のポーズを決める召喚士とヘル。
そしてヘルは気づく。召喚士の隣に娘であるエイルがいることを。
(聞こえますかエイル。今こそその邪智暴虐なる召喚士を殺してこの世界を平和にするのです)
テレパシーを送るヘル。しかし、エイルの表情は変わらない。
すると召喚士がいやぁな笑みを浮かべた。
「うん? まさかまだエイルが貴様の娘だと思っているのか? 残念だったなぁ!! 貴様がエイルの一族を殺し、エイルを拉致ったことはすでにエイルに教えてある!!」
「おのれ鬼畜クソ外道ぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
娘に隠していたトップシークレットが容易くバラされていた。
「第一あの件に関してはあんたも共犯だろう!? 知らないとは言え世界の均衡を脅かしていたんだから生かしちゃおけないっていうのは共通認識だったじゃないか!!」
「はぁぁぁぁぁ!? そんなの書面で確認しましたかぁぁぁ!? 口約束でもしましたかぁぁぁぁ!? 俺は一切存じ上げませんがぁぁぁぁぁ!!!!!」
「あぁぁぁぁ!? 出たよ!! その汚い仕事は私のせいにするの昔から本当に嫌い!! 阿頼耶は阿頼耶で召喚士に甘いしさ!!!」
「バァァァァァァァカ!!! そんなの阿頼耶の弱みを握れない自分の無能のせいだろうが!!」
「世界と同一である阿頼耶の弱みを握れる方がおかしいんですけど!?」
ヘル渾身の叫びである。
盛大なネタバラシをすると二人は言わば同僚である。世界の崩壊を招きそうな存在が出た時などに阿頼耶(世界)によってその元凶を消す役割を持つ存在。型月流にいうと抑止力である。
当然のように召喚士は抑止力の仕事を全力放棄して遊んだ結果、世界が崩壊することもあるがそれはそれである。
「騙されるんじゃないエイル!! 確かに私は君の一族を皆殺しにしたけど、それはそこにいる鬼畜クソ外道も同類なんだ!!」
「愚か者め!! 俺がそんな初歩的なことを見逃すとでも思ったか!!」
「まさか……洗脳!?」
ヘルの言葉を召喚士は鼻で笑う。
「俺がそんなつまらないことをするわけがないだろう。なぁ、エイル」
召喚士の言葉に無表情のエイルはようやく口を開く。
「ショウカンシサマはスバラシイオカタデス」
「洗脳じゃないか!!」
「失礼な。一ヶ月ほどスリーズと同じ部屋で暮らしてもらっただけだ」
「それを洗脳って言うんだぁぁぁぁ!!!!」
かなり遠回しな洗脳だった。
「く!? まぁいい!! ここでお前を殺せばヘルちゃん大逆転ヴィクトリィィィ!!! 今まで負け続けた黒歴史をまとめて清算してやるからな!! ヌォォォォォォォォォォォォ!!!!!」
ヘルの叫びと共にヘルの体が大きく変化する!! 大きな体に長い首!! そして鋭い爪!! そして大空を飛ぶための巨大な翼!!
『死竜ヘルちゃん見参!! さぁ!! 勝負だ鬼畜クソ外道!!』
なんとヘルは巨大な竜に進化した!! これこそヘルの最終奥義『竜化』である!! ファイアーエムブレムシリーズにおいて竜とは最強の存在!! そしてヘルは世界である阿頼耶の代理人!! 最強に最強が合わさって最強になるのだ!!
「うん、貴様が竜になるのはわかりきっていた。だからこっちもこいつらを出そう」
そんな召喚士の言葉と共に召喚士の背後から人影が現れる。
「ヘル、あなたも竜だったのですね。あぁ、竜を殺す……それは極上の試練……ふふふ、ふははははは!! 行きますよヘル!!」
「私はユンヌ」
『待って、ちょっと待って!! おかしい!! おかしいでしょ!! ここは鬼畜クソ外道が出てきてタイマン張るところでしょ!!』
「大丈夫大丈夫。こいつらは比翼英雄だからユニット的にはタイマンだから」
『その比翼英雄は永遠の実装されないから!!』
ヘル渾身の嘆きであった。それはそうだろう。ヴァイス・ブレイブでも屈指のバグが比翼英雄とか想像したくない。
しかしヘルの嘆きは二人の戦闘狂には通じない。イドゥンは姿が搔き消えると一瞬でヘルとの距離をゼロにして拳を振り抜く。
ヘルちゃんの右半身が消し飛んだ。
ヘルは即座に右半身を復活させて衝撃波を放つ。その衝撃波をイドゥンは軽々と防ぐが、その衝撃によって吹き飛んでいく。
しかし今度はユンヌが上空から拳のラッシュ!! ヘルの体が粉々に消し飛ぶ!!
ヘルは今までの戦いで残り少ないデスパワーを駆使して体を復活させつつ上空にいるユンヌに向かってブレス攻撃!!
しかし、ユンヌはそのブレスを拳一つで吹き飛ばす!!
『いや!? おかしいでしょ!!』
「私はユンヌ」
ヘルの叫びを無視してユンヌは近接格闘!! ヘルはそれを尻尾で迎撃してユンヌを吹き飛ばす!!
「懐がガラ空きですよ?」
『ゲェ!? イドゥン!!』
息を吐く間も無く今度は戻ってきていたイドゥンの拳ラッシュ!! ヘルの前足が吹き飛び!! 翼も千切れ飛ぶ!!
「目標固定、魔法陣展開」
そしてその隙の間にヘルの足元に巨大な魔法陣が展開される。
『こ、これは対阿頼耶式消滅魔法陣!!』
「遊びは終わりの時間だ」
召喚士によってヘルを完全に殺す魔法陣が展開される。
そこにはとても冷たい笑みを浮かべた召喚士がいた。
『……私の負けか』
「ああ。そして俺の勝ちだ」
竜の姿のまま呟くヘルに、召喚士は冷たく切り捨てる。
『私には理解できないな。鬼畜クソ外道。あんただって人間の愚かさは見てきたはずだ。なのになんで未だに人間の味方をする?』
ヘルの言葉に召喚士はフードを取り外す。そこには能面のような表情を浮かべた片眼鏡の青年がいた。
「人間が愚かなんてことは師匠のところから飛び出してすぐに思い知った。だが、愚かな人間ばかりじゃないこともまた知った」
『理解できないな。そんな人間は極少数だ。それだけのために阿頼耶すらも敵に回すのか?』
「別に阿頼耶を敵に回しているつもりはないな。俺が守りたいもののために俺は全てを利用する。たったそれだけのことだ」
『イかれているよ、お前は』
ヘルの言葉に召喚士は冷たい笑みを浮かべる。
「今更だな」
その言葉と共に魔法陣は光を放ち、その光がなくなった時、死の王ヘルは消滅していたのだった。
「あの……召喚士さん……」
「なんだ、エイル」
「……泣いて、おられるのですか?」
エイルの言葉に召喚士はフードを被る。
「何故、俺が泣かなければならない」
「お母様と召喚士さんはお互いに嫌いながらも、一番理解しているようでしたから……」
「くだらん感傷だな。そんなもの俺にはない」
「……お母様の死を悲しんでくれる貴方に感謝を」
「……フン」
ヘル
ついに最後を迎えた死の王。実は阿頼耶(世界)の抑止力として人間を滅ぼしていた存在。そのため、数多くの世界で召喚士と争った。
召喚士
どこまでいくかわからないくらいの独自設定である阿頼耶(世界)の抑止力。本人は阿頼耶の使いっ走りで終わらず、自分の守りたいもののために全てを利用する存在。
阿頼耶
いうところの世界そのもの。人類が誤った道を進もうとした時、ヘルや召喚士を使ってその人類を滅ぼしている。だが、その部下であるヘルと召喚士の仲がトムとジェリーのために今日も胃を痛める。
エイル
実は召喚士を殺すためだけにヘルが育て上げた決戦存在っていう隠し設定もあるけど生かされることはなかった。自分の一族を殺したヘルを憎みつつ、育ててくれたヘルを母親だとも思っていた。
我がシリーズを長年支えてくれたヘル様の退場です。みなさん拍手でお見送りください。
そして書いているうちに突然シリアスになったヘルと召喚士。お前らそんなキャラじゃないだろ。そしてどこまでいくかわからない独自設定であるヘルと召喚士の阿頼耶(世界)の抑止力という独自設定。今後のボス次第でひょっとしたら生かされる機会もあるでしょう。
ところで以前出したフレンドのギムレーの召喚士なのですが、伝承ルキナの10凸を狙って見事に失敗しておりました。でも無課金で5限の7凸は十分だと思うぞ。