外道「ブルーニャ・・・ブルーニャか・・・」
腹黒「おや、また女性の知り合いかい?」
脳筋「リンとフィオーラに報告案件だな」
外道「おいバカやめろ。ただなぁ・・・なんか見たことある気がするんだよなぁ・・・」
「ざっと案内した感じはこんなところかしらね」
「人も多くて活気がある……ここは良いところですね」
ブルーニャの発言にリンは軽く引く。修羅三人衆の手合わせとかイドゥン、ユンヌ、ナギの怪獣大決戦を活気があるで済ませるこの美人何者なのだろうかと言う意味で。
本来、新人の案内は召喚士の仕事であるが、召喚士は死の王国との戦いの後始末のために仕事が忙しく、案内の仕事を押し付ける……案内の仕事をすることができなかったため、戦禍の連戦で戦ったリンが案内しているのだ。
「そういえばブルーニャはナギの格闘術に対応できていたわね」
そうなのだ。リンが驚愕することに、ブルーニャはブレスを投げ捨て、格闘術で殴りかかってきたナギに対して見事な格闘術で対応して見せたのだ。
リンの言葉にブルーニャは少し恥ずかしそうにする。
「未熟な腕前ですが、幼き頃に父から習った技です」
「未…熟……?」
リンはブルーニャの発想がおかしいことに気づく。少なくともナギと格闘術でタイマンを張れるのは理性を無くしたバーサーカーか、ナギの扱う謎の格闘術であるナギ流格闘術を収めている英雄だけだ。
「父は私に様々なことを教えてくれました。格闘術だけでなく、魔術、政治、戦術、サバイバル方法など……父の教えがあったからこそ、私は陛下のお役に立つことができたのです」
そのブルーニャが忠誠を誓っているゼフィール陛下はここでもイドゥンに会ってしまった後遺症で引きこもりになっていることは秘密にしておこうと思うリン。
「いい、お父さんだったのね」
「はい、敵には厳しく、身内には優しく……そして何よりも公平なお方でした」
「そう。言いづらいなら言わなくても良いけど、もう亡くなられたの?」
リンの言葉にブルーニャは苦笑する。
「いえ、私が15歳になった時に『お前ももう一人前だから後は一人で生きていけ。大丈夫大丈夫。転移先はランダムだけど、教えたことをこなせれば生きていけるし国の中枢に入り込める』と言われ、時空魔法で時空転移させられて以来会っておりません」
(……うん?)
ここでリンは違和感を感じる。なにせそう言うことをやりそうな鬼畜クソ外道をよく知っている。
いやでもまかさ15歳の少女を見ず知らずの土地に飛ばすような真似は……
(やるわね。むしろ笑いながら率先してやるわね)
「ち、ちなみにだけどそのお父さんの肖像画とかはある?」
リンの言葉にブルーニャは首を振る。
「いえ、持っていません。なにせ時空転移も急でしたので……しかし、父に持たされていた荷物のおかげで困るということはありませんでしたが」
リンの脳内のそう言うことをやりそうな男の笑い声が大きくなった気がした。
奴ならやる。間違いなくやる。
こうなったら奴の部屋に行くのが一番だ。
そんなわけでリンはブルーニャを促して奴が待つ執務室へと向かう。
執務室の近くまで行くと、山盛りの書類を持ったイシュタルがどこかに走っていく。どうやら未だにデスマーチの真っ最中らしい。
リンは面倒なので扉をノックせずになかに入る。すると怒声が聞こえてきた。
「はぁ!? 内政に関してはルフ男に一任していたろ!! バカ!! その書類はルフ子だ!! ベレス!! ベレト!! この書類の山をルフ子に持ってっけ!! ついでに死の王国領の経済見積もりも持ってこい!!」
我らが召喚士の怒声にベレスとベレトは慌てて書類の山を持って部屋から出て行く。
「インバース!!」
「こっちの書類は終わってますわ!! 確認を!!」
「それじゃあ次はこっちだ!!」
「合点承知ですわ!!」
そして阿吽の呼吸でやり取りをする召喚士とインバース親子。
「召喚士、ちょっといいかしら?」
「ああ!? よくねぇよ!! 見たらわかんだろ!! 死ぬほど忙しいんだ!!」
リンやフィオーラに対しては割と丁寧(他の英雄に比べて)な対応をする召喚士だが、今回は死ぬほど忙しいのかぞんざいに扱う。
「あら? いいの? せっかく戦力になりそうな子を連れてきたのに」
「なにぃ!?」
リンの言葉に召喚士はブルーニャを見る。ブルーニャも驚いたように召喚士を見ていた。
「ち、父上!?」
リンは内心で『あ、やっぱり』と納得しておく。そしてブルーニャを見た召喚士少しだけ驚いた表情になる。
「ブルーニャか!! よし!! ちょうどいい、そっちの机が今は空いているからこの書類を片付けろ!!」
「え? え? え?」
「ハリーハリーハリー!!!!」
召喚士に促される形で椅子に座るブルーニャ。そして間髪入れずにブルーニャの前に書類の山を一つ置くインバース。
しかし、ブルーニャも召喚士の養子。すぐに切り替えると仕事に入り始める。
リンはそれを見ながらお茶の準備をするのであった
「すまんな、ブルーニャ。助かった」
「いえ、私のほうこそ父上のお役に立てて光栄です」
仕事がひと段落すると、リンが入れたお茶で召喚士一家(召喚士、インバース、ブルーニャ)一息つく。
「召喚士、あなたブルーニャの育ての親だったの?」
「まぁな。なんか神がいっぱい地上にいてファミリアとか作ってダンジョン探索とかしている世界で拾ってな。神の力に頼るとか弱者のやることだから、自分の力だけで神殺しをできるレベルにまで育てた」
「実際に何柱か殺して天界に送還しましたからね。懐かしいです」
優しい顔して『あ、私神様くらいだったら殺せるんですよ〜』と言い放つブルーニャ。この図太い神経は完全に召喚士の子供である。
召喚士の子供であるならばリンはやることが一つだ。
「ブルーニャ」
「は、はい。なんでしょうか。あの、お顔が怖いですよ?」
15歳(肉体年齢)の乙女を捕まえて失礼な物言いだが、リンはサカ平原のように広い心でそれを許す。
「私のことはお母さんと呼びなさい」
「……はい?」
そう、娘で母呼ばわりされることの方が大切だからだ。
ブルーニャは召喚士を見る。すると召喚士は絶対に呼ぶなというジェスチャーをしていた。
それを見てブルーニャは力強く頷きながら口を開く。
「よろしくお願いします、母上」
「ブルーニャァァァァァァ!!!!!!!」
「いえ、娘からみても父上にはストッパーが必要だと思います」
義娘のまさかの裏切りに召喚士は絶叫し、リンがガッツポーズをするのであった。
ちなみに数時間後にはフィオーラも母親呼ばわりするのであった。
ブルーニャ
召喚士の教えを受けた超魔道士。しかし、どんな化学変化が起きたか性格は普通。ただ、常識の範囲が通常の人より広いだけである。
リンちゃん
義娘を手に入れて周囲を固めようとしているが、フィオーラも同じことをしているので再度の逆レを狙っている。
ブルーニャが産まれた世界
なんかロクでもない神様が地上にいっぱいいて、人間などを眷属にしてファミリアとかいう集団を作り、オラリオとかいう街にあるダンジョンに日夜アタックしている世界。ちなみに召喚士とブルーニャはその世界から出禁を食らっている。
そんな感じでブルーニャ編です。封印でも好きな敵キャラだったのでブルーニャさんには鬼畜クソ外道の娘になっていただきました。
常識とは完全にズレた価値観でヴァイス・ブレイブを混沌に落とし込んでくれるでしょう。
さて、作者は無事にイグレーヌさんを引けたわけですが……やばいですね、封印時代から好みだったのに、FEHであんな性癖の塊にされたらスコるしかないじゃないですか。
そんなわけでイグレーヌさんには『目指せオフェリア!!』ということで飛空城でマップ兵器英雄をやってもらっています。
成功率?ゼロだよ!!