「おお、すげぇ人だな」
新年、我がヴァイス・ブレイブには英雄達に混じって兵士、一般人が多く集まっていた。
俺はその人混みの中をヘクトルとエリウッドと一緒に歩く。
「でも急に神社なんて建立してどうしたんだい? 君、そこまで信心深くないよね」
「俺は神様なんか信用しちゃいないが、宗教というのは一般人の心の拠り所としては優秀だ。まぁ、一般人に対する飴だよ」
「ふむふむ」
「なるほどなるほど」
俺の言葉に頷くヘクトルとエリウッド。そして真面目な顔で口を開いた。
「「それで? 本音は?」」
「ふむ、金のためだ。一般人というのは税金などで金を持っていくことに腹をたてるくせに、神様に対しては惜しまない奴が多い。そこでうちの神様英雄を祀って一稼ぎしようと思った」
「「ですよね」」
なにせせっかくの本物の神様がいるのだ。利用しない手はない。
「建物は5つあるね。誰が何を司っているんだい」
エリウッドの言葉に俺は端から順番に指を指す。
「まず一番端がソティスで五穀豊穣」
「ソティスが五穀豊穣か?」
「まぁ、彼女の世界が一番偉い女神らしいからいいんじゃないかい?」
ヘクトルの問いにエリウッドが答える。
「その隣がドーマで学業成就」
「「……うわ、面倒見てくれそう!!」」
あの人が良い神様は「え? その願いか……どうすべきか……だがせっかく願ってくれているのだから……」って感じで叶えてくれそうである。
「次がナーガで家内安全」
「「オカン……」」
一番ご利益がありそうである。
「でその隣がユンヌで無病息災」
「病魔の方が逃げ出しそうな件について」
「違うよヘクトル。ユンヌが病魔を物理的に潰すんだよ」
ヘクトルもエリウッドも好き勝手なことを言っている。だが、同感である。
そして俺は最後の建物を見て顔を顰める。
「うん? 最後は順番的にオルティナかな?」
「でも随分と女性ばっかり集まっているな。オルティナは何を司っているんだい?」
エリウッドの言葉に俺は益々顔を顰める。それを見てご機嫌になるバカ二人。
「お、なんだなんだ。召喚士がそんな表情するなんて珍し……くもないな。最近は」
「まぁ、でもこいつが苦労している姿は僕らにとってはメシウマでしかないからいいんだけどね」
「ほう、そんなこと言っていていいのかな?」
「「お前の不幸が幸福だよ」」
友人の不幸を喜ぶとは友人の甲斐がない奴である。
だから俺はこいつらに現実を突きつける。
「オルティナは恋愛成就だ」
「「ちょっと用事を思い出した」」
「おっと、死ぬ時は一緒だぞ」
「「やめろぉ!! やめろぉ!!」」
完全に特大の爆弾を作った形だが、神様達の厳正な会議の結果決まったことだから仕方ない。
「まぁ、見えている爆弾は召喚士に任せるとして」
「絶対に巻き込んでやるからな」
お互いに中指を立て合う俺とエリウッド。オルティナが暴走を始めたら真っ先に巻き込んでやるからな。
「しかし、どうやってあいつらに神様の仕事を頼んだんだ」
「ああ、それは簡単だった」
ヘクトルの問いになんでもないように答える。
「まずソティスはお菓子の詰め合わせをやると言ったら喜んで引き受けた」
「「のじゃロリ……」」
思考のロリっている気がするが、そこは無視である。
「ドーマは食堂にサバ味噌煮定食を取り入れることで合意した」
「あいつどこまで影薄くすんの?」
「闇おちセリカちゃんとか闇おちベルクトくんが可哀想になるよね」
その二人も奴がドーマだと気づいていないからいいのだろう。
「ナーガは新しいフライパンだな」
「「やっぱりオカン……」」
否定できないことである。
「ユンヌはお姉ちゃんとの限界バトルだな」
「それってヴァイス・ブレイブ大丈夫?」
「死の王国を使わせるから大丈夫だ」
「死んだ後も死体蹴りされるヘルが超哀れ」
ははは、奴がいた痕跡も全て消し去ってくれるわ。
そう考えているとヘクトルとエリウッドが超真面目な表情をしながら俺を見てくる。
「「オルティナは?」」
「……俺と二人っきりの時間」
俺の言葉の瞬間に満面の笑みを浮かべるバカ二人。
「お、ついに童貞卒業か」
「子供の名前は僕らに任せておきなよ」
「やめろぉ!! 奴が相手だと冗談にならない可能性が高いんだ!!」
いや、マジで。
「そういえば巫女服の英雄もいるな」
俺がどのようにオルティナから逃げるか考えていたらヘクトルが見渡しながらそう言った。
「シスター連中には巫女役をやってもらっている。仕えている神様はちょっと違うが……まぁ、いいだろうさ」
「巫女服はどうしたんだい?」
「ヒント:ギムレー」
「「あ(察し)」」
あのオタクマムクートは美少女の巫女服が見たいという欲望で三時間で全員分の巫女服を用意していた。
「あらぁ、先生」
「うん? おお、メルセデスか」
そこにやってきたのは巫女服を着たメルセデス。どうやら彼女はペトラと同じ世界から来たらしく、俺の教えを直接受けていたということで俺のことを先生と呼ぶ。
「ちょうどよかったわぁ。ちょっと困ったことになってしまって」
「おう、どうした」
「お祈りにきてる信者さんの中で酔っ払った方が出ちゃってぇ、私達に絡んでくるのよぉ」
なんと、どこの世界でも酔っ払いとは厄介である。
「それだとメルセデスちゃんも絡まれたのかい?」
「大丈夫だったのか?」
基本的に烈火以外には人が良いバカ二人もメルセデスを心配する。
その言葉にメルセデスはふんわり優しい笑みを浮かべる。
「先生から教わったナギ流格闘術で丁重に帰っていただいたわぁ」
「「お、おう」」
やめろ。どういう教育をしたんだという視線で俺を見るんじゃない。確かに教育を施したのは俺だが俺ではないんだ。
「フローラ」
「はい」
俺が手を叩くと即座に現れる完璧で洒脱なメイド・フローラ。
「治安維持部隊に連絡して警備員を増やしてもらってくれ」
「かしこまりました」
そして音もなく消えるフローラ。
新年の挨拶をしてその場から去っていくメルセデス。
「そういえば入り口でアンナが何か売っていたけど、何を売っていたんだい?」
思い出したように問いかけてきたエリウッド。確かにアンナは入り口のところで主に一般人むけに商売を開いている。
「英雄達のプロマイドを売っている。顔がいい奴が多いからな。中身は地雷ばっかりだが」
「「性格地雷筆頭が何を言ってやがる」」
三人でお互いに頬を引っ張りあう俺たち。
「あ、そろそろ時間かな」
「リン達が正月料理作ってくれているんだっけ?」
「リンとフロリーナとウルスラ。そして可愛いリリーナだ。いいかお前ら、リリーナの料理を最初に食べるのは俺だ」
「「はいはい」」
無駄に凄んでくるヘクトルを無視して俺とエリウッドは俺の部屋に向かって歩いていくのであった。
ちなみにリリーナの料理を最初にロイに食べさせ、それに発狂したヘクトルがロイに襲いかかるという珍事が発生し、親バカ達によって物理的に沈められる事件が起きたが割といつものことである。
ヴァイス・ブレイブ神社
敷地の一角に神様を祀っている建物をわざわざ作った。
ヴァイス・ブレイブ巫女隊
シスター部隊。例外としてルセアも。
メルセデス
ヴァイス・ブレイブ巫女隊統括。外道、フォドラに立つで召喚士の門下生になったために出演がOKになりました。
召喚士一家、エリウッド一家、ヘクトル一家の合同お正月。
家族みんなで集まってワイワイ騒ぐ。召喚士一家は嫁でリンとフィオーラ。娘でインバースとブルーニャである。
あけましておめでとうございます。新年一発目なので、実はやったことがなかった初詣ネタ。
ちなみに元旦の間は作者の飛空城の防衛もこの神様編成にしておきます。フレンドになっている方はフレンド模擬戦で参拝をどうぞ。