リンは書類を持ってヴァイス・ブレイブ内を歩く。ヴァイス・ブレイブ内にはたくさんの英雄やヴァイス・ブレイブで働く文官や武官もたくさんいる。中には厨房などで働く一般人もいる。
顔見知りと挨拶しながらリンは歩く。そしてだんだんの人が少なくなってくる。そして人影が全くなくなった場所にリンは足を踏み入れる。
『第48倉庫』
プレートにはそう書かれている。入り口にはサーナイトとキュウコンが控えている。
二匹はリンに対して少しだけ頭を下げると扉を開いた。
リンは二匹に軽く声をかけてから中に入る。そこには地下に向かって長い階段がある。
それをリンは降りていく。リンの脳内にはなんとなく引き返せという気配を感じ取る。
召喚士やパント、カナスの結界のせいだと知っているリンはそれに気にせずに下に降りていく。
そして大きな扉がある。リンはその扉を開く。
するとむせ返るような血の匂い。中には一つの大きな机の周囲に召喚士、パント、カナスがいる。
机の上には人であったモノ。それを弄りながら三人は何やら討論している。
「ああ、リンか」
「相変わらず血の匂いがやばいわね」
リンの言葉に三人は不思議そうに首を傾げている。どうやら血の匂いを嗅ぎすぎて分かっていないようだ。
「どうかしたか?」
「うちに入り込んでいるネズミの資料よ」
リンはそう言いながら資料を召喚士に渡す。召喚士はそれを捲りながら面倒そうに口を開く。
「やれやれ、潰しても潰してもキリがない」
「まぁ、私達にとっては潰しても問題ない実験台が手に入っていいじゃないか」
「そうですよ」
血にまみれながら笑顔で告げるパントとカナス。それに召喚士もそれもそうだと頷いている。
リンが部屋の周囲を見渡すと、そこらじゅうに血がついている。肉片や人の手、足なども落ちている。
ここは実験場だ。三人の狂った魔道士達の実験場だ。
「お父様ぁ」
するとそこに別の部屋からインバースが出てくる。
「おう、実験はどうだった?」
「47番と49番は投与した瞬間に発狂。48番は自我を保っていましたが喋れる状態でなくなり、50番は自分の頭を砕きましたわ」
「51番はどうだった?」
「自我が崩壊して廃人になりましたわ」
インバースが行なっていたのは召喚士の作った自白剤の実験だ。
「それとモルモットの在庫がなくなりましたわ」
「それは幸いだ」
召喚士はそう言いながら持っていた書類をインバースに渡す。インバースはそれを捲る。
「あらまぁ。大人気ですわねぇ」
「10匹ほど調達してこい」
「了解ですわぁ」
そう言いながらインバースは血塗れの手袋を外してゴミ箱に捨てながら部屋から出ていく。
「父上」
そしてインバースが出てきた部屋とは別の部屋からブルーニャが出てきた。
「おう、ブルーニャ。実験はどうだった?」
「今回は割と自信作が多かったんだけど」
どこか楽しそうなカナス。だが、その瞳には狂気が宿っている。
「結果から先に言うとダメでした」
ブルーニャの言葉に召喚士、パント、カナスは揃って頭を抱える。
「あの術式でも駄目なのか……」
「もうほとんど弄るところ残ってないよ……」
「でもここまで実験して諦めるのもどうかと思いませんか?」
「「思うんだよなぁ」」
狂っている。
それがリンの三人に対する評価だ。厳密に言えば烈火出身者は全員がどこか狂っているが、この三人は数少ない倫理観も投げ捨てて人体実験を繰り返している。
もはや何人殺したのかも覚えていないだろう。三人にとっては人間などちょうどいい実験動物にすぎない。
三人はすでにブルーニャが持ってきた実験結果を見ながら会議をしている。
「ブルーニャ、あの倫理観ゆるキャラ三人組は何を試しているの?」
「ムスペルの炎の再現です」
「あれ再現できるの?」
リンの言葉にブルーニャは写しの資料を捲り確認する。
「初期段階では肉体が炎に耐えきれず死体も残らず消滅。この時点で152匹の実験台を無駄にしました。第二段階ではアプローチを変えて肉体の強化も並行して実験しましたが、人としての形を維持できずに失敗。この時103匹の実験台がなくなりました。現在は肉体に術式を直接埋め込む実験をしております」
リンは呆れた表情でため息を吐く。ここのところヴァイス・ブレイブにいた各国の密偵やアスク王国の密偵が行方不明になることが多かったが、三人が特に実験を行なっていたらしい。
「ねぇ、召喚士。アティさんに協力を求められないかな?」
パントの言葉に召喚士は冷たい瞳を向ける。
「わかっているだろう? 認めたくないけど、私達の知識ではこれが限界だ」
「どうやって協力をしてもらうつもりだ?」
召喚士の言葉にパントは笑顔を浮かべる。
「解剖と術式を埋め込むのは必須だろうね」
その瞬間に召喚士とパントの間に大きな火花が散る。刹那の瞬間に召喚士が光の矢を放ち、パントは結界でそれを防いだのだ。
無表情の召喚士、笑顔のパント、カナスは二人を気にすることなく術式を書き込んでいる。
「パント、俺はお前と友人だと思っている」
「奇遇だね、私もだよ」
「それじゃあ俺が何を言いたいか理解しているな?」
召喚士の言葉にパントは両手を挙げる。
「アティさんには手を出さない。それでいいかい?」
パントの言葉に召喚士は満足そうに頷く。
「ところでお二人とも、この術式なんですが」
「それだとこっちの方がいいんじゃないか?」
「それだとこっちとの兼ね合いが駄目だよ」
そしてそのまま会議に流れ込む。
それを見てリンは呆れたようにため息を吐く。
三人は実験を非道だと思っていない。世界平和にするうえで必要な実験だと思っているからだ。その過程で生まれた犠牲も必要な犠牲だと割り切っている。
狂っている。
死体を解体しながら話し合いを続けている三人を見てリンはそう思うのであった。
魔道士三人組
倫理観ゆるキャラ。正確に言えば倫理観はあるが気にしていない。
サーナイト&キュウコン
召喚士の指示で門番。
第48倉庫
魔道士三人組の実験場。下手に踏み入れると実験台にされる。この場所を知っているのも魔道士三人組に手伝っているインバースとブルーニャ、リンとフィオーラ。そして何故か知っているラクチェである。
そんなこんなで倫理観ぶっ壊れている三人組のお話でした。もうちょっとシリアスにしたかったのですが、できませんでした。でも狂っている三人組は書いていて楽しかったです。
ガチャの出が良かった日にでるんじゃないかと思ってガチャを回した結果、星5が出ました。
ええ、出ましたよ魔エイリークが。
まぁ、凸進めているからいいんですけどね。