完全にキャラ崩壊しているうえにシリアスです。
「ちょいと失礼するよ」
そう言いながら召喚士の執務室に入ってきたのはプラハであった。召喚士はそれを意外そうな表情で迎え入れる。
「プラハか、何かようか?」
「ああ、あんたにちょっと用事があってね」
プラハの言葉に召喚士はフードの下で目を細めると、軽く手を振るう。その意味を正確に理解したインバースとブルーニャは召喚士に頭を下げながら部屋から出ていく。
その二人から鋭い視線を向けられてもプラハの不適な表情は消えない。扉が閉められてからプラハは口を開いた。
「あの二人を外させて良かったのかい?」
「あの二人なら口外することはない。だが、多くの人間に聞かせるような話ではないだろう?」
召喚士の言葉にプラハは不適な笑みを浮かべる。召喚士もプラハを無表情に見つめながら口を開いた。
「さて、話を聞こう」
「私もまどろっこしいことは嫌いでね。単刀直入に聞こう」
そしてプラハの顔からも表情が消える。
「あんたはいつ人類を滅ぼすつもりだい?」
プラハの言葉に召喚士の視線が冷たくなる。だが、プラハはその視線を気にせずに言葉を続ける。
「あんたは私と一緒さ。人類に絶望し、すべてを滅ぼそうと思っている」
プラハはフードの下の召喚士の顔を覗き込みながら言葉を続ける。
「私があんたを見た時の感情は歓喜だ。こいつなら私と一緒にすべてを滅ぼしてくれる。全てを壊してくれるってね」
「……さて、何の話だ? 俺はこの世界を救うために呼ばれた存在だ」
召喚士の言葉にプラハは心底愉快そうに笑う。
「あんたが世界を救うだって!? ありえない!! あんたの瞳にあるのは人類に対する絶望だ!! それも私なんかより重たいね!!」
笑う笑うプラハは笑う。心底愉快そうにプラハは笑う。
「あんたがやりたいのは人類を救うことじゃない!! 人類を滅ぼすことさ!!」
そしてそのままプラハは机から召喚士に向かって体の乗り出す。その瞳には狂気が宿っていた。
「さぁ命じておくれ!! 私に人類を殺せ、と!! その命令に私は従おう!! 私と同じ絶望……いや、私以上に絶望を持った奴になら私は従おう!! そして殺そう!!」
プラハは両手を広げてたからかに謳う。
「殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して全てを殺しつくそう!!」
プラハの瞳は再び召喚士に向けられる。その瞳にあるのは絶望と狂気。
「あんたにはその資格がある!! その実力がある!! さぁ!! 命じておくれ? 全てを殺せ、と!!」
狂気に飲み込まれているプラハを召喚士は冷静に見つめている。
そして召喚士は口を開いた。
「プラハ」
「なんだい?」
「俺はこの世界を滅ぼすつもりはない」
召喚士の言葉にプラハの顔から表情がなくなる。
「何故だい?」
「この世界の人類はまだ救いがあるからだ」
「あるわけないだろう!!」
召喚士の言葉にプラハは怒鳴る。
「あんただって見続けたはずだ!! 人類の愚かさを!?」
「その通り、俺は人類の愚かさを見続けてきた」
「だったら!!」
「俺を過小評価するなよ小娘」
召喚士から漏れ出てくるのはプラハ以上の狂気。その狂気に飲み込まれてプラハは息を飲んだ。
「小娘に言われる前に俺は人類の愚劣さを知っている。生きるに値しない生物だと知っている。だがな、小娘」
そう言いながら召喚士は人差し指で机を軽く叩く。
「すべての人類が愚劣なわけではない。中には救うに値する存在もある。わかるか?」
そこまで言って召喚士は机をたたくのをやめ、面白そうに口を開く。
「まずすべきは選別だ。上に立つ者を選び、育て、その者に人類の進歩を任せる。選別から漏れた者もこれで救われることがある。だが、小娘。貴様の言う通り、これでも人類が救われないことがある」
「……その時はどうするんだい?」
プラハの問いに召喚士は優しく微笑む。
「滅ぼす」
優しい微笑みから紡ぎだされた禍々しい言葉。その言葉にプラハの背筋が凍る。それと同時にプラハは高揚を得る。それは自分以上に狂っている存在を見つけた喜びだ。
「ああ……ああ!! 最高だよ!! 私は甘ちゃんだらけのここに呼ばれた意味がわからなかったが、今理解できた!! あんたの手足になってすべてを殺すためにここに呼ばれたんだ!!」
プラハの言葉は止まらない。
「召喚士……いや!! 我が主!! 私が尽くすべき主君よ!! 私はあなたに従おう!! あなたが言うならすべてを殺してみせよう!! さぁ!! 命じておくれ!! 殺せと!! すべてを殺せと命じておくれ!!」
「そこまでにしておきなさい」
その言葉にプラハが振り返ると目の前に剣と槍が突きつけられていた。持ち主はリンとフィオーラ。二人とも冷たい瞳でプラハを見ている。
「余計なことはしないのが命を保つ秘訣よ」
「その通りです」
リンとフィオーラの言葉にプラハは獰猛に笑う。
「なんだい? あんたたちは我が主の心意がわかるとでもいうのかい?」
「バカなこと言わないで」
「私達に召喚士さんの心意がわかるわけないです」
「だったら黙ってな!!」
プラハの怒鳴りにもリンとフィオーラは一歩も引かない。
「だけどね、私達は知っている。軍師の人類に対する絶望がどれだけ深いのかをね」
リンの言葉にフィオーラは黙っているが、同意見なのだろう。
リンとフィオーラとプラハは三人で睨みあう。
だが折れたのはプラハであった。
プラハは軽く肩を竦めると召喚士の机から離れる。それを確認してからリンとフィオーラも武器をしまった。
そしてプラハは召喚士に向かって恭しく礼をする。
「私が仕えるべき主君よ。何かあればこのプラハにご命令を」
プラハの言葉に召喚士は特に答えることをせず、手で合図をして下がるようにいう。それを見てプラハはニヤリと笑ってから部屋から出て行った。
それを見送ってからリンとフィオーラからため息が出る。
「あんたねぇ……ほんと、人をちょっとは選びなさいよ」
「そうです。壊れているのはわかっていましたが、あそこまで壊れている人物だとは思っていませんでした」
リンとフィオーラの言葉に召喚士は呑気に笑う。
「異世界のプラハならあそこまで酷くないんだろうがなぁ」
召喚士の言葉にリンとフィオーラの視線が鋭くなる。そしてフィオーラが口を開いた。
「知っていて呼び寄せたんですか?」
「その通りだ」
召喚士の言葉にリンの剣とフィオーラの槍が召喚士に首元に突きつけられる。だが、召喚士は焦ることはない。
「軍師、あなたが私達とした約束、覚えているわよね?」
「当然だ。俺から言い始めたんだからな」
「その約束、下手をすれば今果たさなくてはならなくなります」
フィオーラの言葉に軽く肩を竦める。
「安心しろ。今はまだ世界を滅ぼそうとは思っていない」
その言葉にリンとフィオーラは安堵のため息を吐いて武器をしまった。
「それならなぜ『あのプラハ』を召喚したの?」
リンの問いに召喚士は立ち上がり、窓から外を見ながら説明を始める。
「あのプラハが数多い異界の中でも異端なのはわかるな?」
リンとフィオーラはその言葉に頷く。プラハはラグズを嫌悪しているが、人類も含めたすべてを滅ぼそうとはしていないはずである。
だが、この世界のプラハはすべてを滅ぼすことに固執している。まるですべてが憎いかのように。
「あのプラハは危険だ。下手な異界に召喚されればその異界は滅びるだろう。だから同類であり、あのプラハ以上に壊れている俺の手元に置く必要があった。俺の手元に置いておけば少なくとも暴走はしない」
「なるほど」
召喚士の説明にフィオーラは納得の様子を見せる。だが、リンはどこか訝し気に口を開いた。
「軍師、あなたは本当に世界を滅ぼさない?」
リンの言葉に召喚士は笑顔を浮かべる。だがその瞳はドロリと濁っていた。
「今はまだ、な」
プラハ
FE界の宇宙の蜉蝣ことプラハ様。この世界のプラハ様は完全にぶっ壊れており、全人類の滅亡を願っている。
自分以上に壊れている召喚士に絶対的な忠誠を誓う
リン&フィオーラ
召喚士のストッパー。二人がいなくなると召喚士くんは完全に闇落ちします
リン&フィオーラと軍師(召喚士)の約束
軍師「俺が道を間違えたと思った時、その時は俺を殺せ」
召喚士
英雄じゃなくて魔王
そんな感じでプラハ様(シリアス)編です。
負の方向に拗れて突き進んでしまったプラハ様。願うのは全人類の滅亡。そのために完全に上位互換である召喚士に忠誠を誓う。
たぶん召喚士が魔王として覚醒した場合、勇者アルフォンスくんの前に立ちふさがる強敵となるでしょう。
最初はシリアスにする気なかったのに「あ、そういえば召喚士と同方向に壊れている奴いないな」という作者の思い付き、そしてプラハ様(闇落ち)と召喚士(最初から闇属性)の化学変化によってシリアスの出来になりました。
ちなみに召喚士が人類に絶望しているという設定はこの作品の連載開始からある設定。後付けで神様になったり格闘術が強くなったりしましたけど、そこはぶれていません。
王道の勇者より勇者に殺される魔王系を主人公にしたがる作者です。