「ミシェイルとミネルバの仲を取り持ちたい?」
「うん」
俺の部屋に来て神妙そうな表情を浮かべながら相談してきたのはマケドニア王族の末妹・マリアだった。
「せっかくお兄様とお姉様と一緒にいられるのに、お兄様は私とお姉様を避けている気がするの」
確かにミシェイルはミネルバとマリアに対して素っ気ない態度をとっている。
「せっかく一緒にいられるんだから、仲良くしたいよ……」
そう言いながらマリアは一粒の涙を流す。この時点で俺のやるべきことは決まった。
俺はリンがこういう時のために用意してあるハンカチを使ってマリアの涙を拭く。そして安心させるように微笑みながらマリアに言う
「俺に任せておけ」
「……相談したのは私だけど、本当に大丈夫なの?」
「ああ。俺はいくつもの不可能を可能にした男だ。それくらいなら朝飯前だ」
俺の言葉に笑顔になってお礼を言うと、マリアは嬉しそうに部屋から出て行った。俺はそれを確認してから呟く。
「どう思う?」
俺の言葉に天井に張り付きながら気配を消していたエリウッドとヘクトルが降りてくる。
「「ギルティ」」
「同じ気持ちで助かるよ」
エリウッドとヘクトルの言葉に俺は満足して頷く。
「例の物は?」
「すでに用意してあるよ」
「動力源」
「ニノにやってもらおうぜ。家族のためって言ったら手伝ってくれるだろ」
俺の問いにエリウッドとヘクトルが即答してくる。
「よろしい。だったら派手に行こう」
数日後、俺はヴァイス・ブレイブにいる英雄達を大広間に集めた。全員が座れるように机と椅子も用意して、さらに中央には今回の中心であるミシェイル、ミネルバ、マリアのマケドニア三兄妹を座らせている。パオラさん、カチュア、エストの紋章ペガサスナイト三姉妹を中心に紋章メンバーが心配そうにこちらを見ている。
ミシェイルは不機嫌そうに、ミネルバはどこか肩身が狭そうに、マリアは心配そうな表情を浮かべてチラチラと俺を見ている。
そして口火を切ったのは不機嫌そうな野望の王・ミシェイルだった。
「マリア、お前が召喚士に余計なことを言ったそうだな。今更俺とミネルバの仲をとりもつことなんて無駄なことをしていないで、少しは別の奴にも気を回せ。ミネルバもだ、貴様は俺を殺してマケドニアを統べるのだぞ? それらしい振る舞いをしたらどうだ」
ミシェイルの言葉にミネルバとマリアは視線を机に落とす。紋章メンバーも怒った雰囲気を出し、特に猪突猛進なカインはすでに立ち上がったところを主君のマルスと相方のアベルに止められている。
安心して欲しい。ここから俺たちの出番だ。
「つまり今の発言を通訳すると『マリア、俺のことを心配してくれるのは死ぬほど嬉しいけど、お兄ちゃんはせっかく色々な世界の人々と出会う機会なのだから、お友達を一杯作らないとダメだぞ。ミネルバはいつまでもお兄ちゃんを殺したことを気にしていないで、前を向いてくれなきゃお兄ちゃん死んでいられない』と言うことになる」
俺のパーフェクト通訳に空気が固まる大広間。ミネルバとマリアは呆然とし、ミシェイルは白目を剥いた。ちなみに烈火メンバーは爆笑しながら酒を飲んでいる。どこまでも空気を読まない連中である。
そしていち早く再起動したのは末っ子・マリアだった。
「お兄様! 今の召喚士さんの言葉本当!?」
「そ、そんなわけないだろう!! 召喚士!! 何の真似だ!?」
「ミシェイルのエクストリームマケドニア弁のパーフェクト通訳だが?」
「そ、そそそそそそんなわけないだろう!?」
もうこれだけ焦っている時点でアウトなものだが、半信半疑な空気が漂っている。
「ミネルバも信じられないか?」
「そ、その。召喚士の言葉を信じないわけではないのだが、やはりそう簡単に信じられない」
「あ、当たり前だろう。くだらん! 要件がこれだけなら俺は部屋に戻らせてもらうぞ」
「リン」
俺の言葉に反応して、リンはミュルグレでミシェイルを一撃で気絶させる。気絶したミシェイルをヘクトルが担いで椅子に縛り付け、エリウッドが水をぶっかけてミシェイルを起こす。
「貴様ら!! 何の真似だ!!」
「これなんだと思う?」
怒ったミシェイルを無視して、俺は一つの魔道具をミシェイルに見せる。
「知るか」
ミシェイルは実に不愉快そうに吐き捨てた。俺はそれを気にしないで魔道具の説明をする。
「この魔道具はエリウッド達の世界にいるパントというイケメンで嫁は美人、魔法の腕前もチート級という超絶勝組人間が作った魔道具でな。これに魔力を通すと保存していた風景を音声付きに流すことが可能というスーパー魔道具だ」
「それがどう……し……」
俺の言葉の意味を理解したのか、ミシェイルの顔色が悪くなる。
俺はニッコリと笑いながら言葉を続ける。
「この世界には敵対した英雄が出てくることも少なくないからな。弱み…じゃなかった。見張りのために本拠地の至るところに設置してあるんだ。定期的に場所も移動させてるから気づかなかったろ? ちなみにある日、ある部屋に設置した時に面白い映像が撮れた」
「し、召喚士! やめろ!?」
「だが断る。さ、ニノ。やってくれ」
「うん!!」
俺の言葉に天使(ニノ)は元気よく頷くと、パントお手製の魔道具に魔力を流す。すると大広間の中央に映像が映し出された。そこに写っているのは野望の王・ミシェイル。彼はベッドの上で悶えていた。
『あぁぁぁぁぁぁあぁぁ!!!!! またミネルバとマリアに冷たい反応をとってしまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! ごめんよ二人ともぉぉぉぉぉぉ!!! でもお兄ちゃんは俺のことより二人が幸せになって欲しいだけなんァァァァァァァ!!!!!! 具体的に言うと二人が結婚して幸せになっている姿を見たいんだぁぁぁぁぁ!!! だからお兄ちゃんのことは放っておいていいからねぇぇぇ!!!!!!!!! お兄ちゃんは寂しいけど我慢するから!!!!!!!』
そこまでで天使(ニノ)に合図を出して映像を止める。本当はこの後も1時間以上懺悔の時間が続いた後に、俺とミネルバが結婚すればいいとかいうとち狂った発言をしていたのでここで止める。
無言の大広間。中央には喜色満面なマリア。茫然自失なミネルバ。泡を吹いているミシェイルがいる。
「エリウッド、ヘクトル。発言をどうぞ」
「いやぁ!! イケメンの無様な姿って控えめに言って最高だよね!!」
「家族を大事にしない奴とか死ねばいいと思うけどよ!! ミシェイルはただのツンデレだからなぁ!!!」
俺の言葉に腹黒親バカと脳筋ジェネラルは大爆笑である。
「き、貴様らぁぁぁぁあぁあぁ!!! 今まで俺が積み上げてきた『理想のお兄様像』をどうしてくれる!?」
「『理想のお兄様像』を作った挙句に勝手に死んで妹にトラウマ植え付けるとか最低だよねぇ!!」
「クールがかっこいいって発想が許されるのはショタまでだぜ!!!」
「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!」
エリウッドとヘクトルの煽りにブチ切れたミシェイルは拘束していたロープを引きちぎってバカ二人を追いかけ始めた。バカ二人もミシェイルを煽るようにして走って逃げていく。
残ったのは嬉しそうなマケドニアの第二王女と、ミシェイルショックから立ち直れていないミネルバ。そしてどうしていいかわからないその他大勢の英雄達だった(烈火メンバーは除く)。
「さて、マリア。ミシェイルの本音がわかったところでどうしたい?」
「もっと仲良くしたい!!」
「素晴らしい。さっそく仲良くなりに行くといい。カレル! ロイド! マリアを手伝ってミシェイルを捕獲してくれ」
緑斧のミシェイルに相性有利な二人をつけ、さらには赤剣エリウッドと壁役ヘクトルもいるのですぐに捕獲されるだろう。
マリアは俺に対して嬉しそうにお礼を言って走り去って行く。カレルとロイドもマリアについて行った。
「それで? ミネルバはどう思った?」
「……すまない。ちょっと現実を受け入れる時間をもらえるだろうか」
俺の質問にミネルバはお腹を抑えながら答えてくる。パオラさんが慌てた様子でお腹に優しい飲み物を持ってきた。
あれぇ? ミネルバのためにやったんだけどなぁ?
後日、ミシェイルはマークス、エフラムと一緒に『妹を見守る会』を結成したそうである。それを聞いたミネルバが吐血したことが印象的だった。
ミネルバ
FE界のくっ殺騎士。くっ殺を知った時の作者の第一印象は『あれ? ミネルバのことやん』でした。ミネルバのストレスを消すために書いたのに、まさかのストレス追加になって作者が驚いている。
マリア
三兄妹みんなで仲良くしたい願望を持つ心優しい少女。この作品で普通の性格の英雄を書くと変な気分になるな。
ミシェイル
隠れシスコン。この出来事の後はオープンシスコン。キャラは壊すもの。
パント
烈火世界の魔導軍将で超愛妻家。元から天才的だったのが、軍師の無茶振りに答えているうちに超絶チート魔道士になった。どのくらいチートかと言うとFFTにおけるオルランドゥくらい。わかりづらい? 簡単に言うと一人でラスボス殺せちゃう。ちなみに烈火メンバーのヒエラルキートップはルイーズ。
エクストリームマケドニア弁
『闇に飲まれよ!!』(尚、作者はアニメ末視聴)
数時間前に活動報告でいつになるかわかりませんとか言っときながら、書き始めたらその日のうちに書き上がりました。キャラが崩壊している気がするけど、誤差の範囲って信じてる!!
他に伝えたいことは同日の活動報告に書いてありますので、そちらをご参照してくだせぇ。
そして活動報告でいい忘れたことは、第二回英雄総選挙が始まりましたが、ロイとリンに投票できない現実にエリウッドと召喚士が崩れ落ちたことくらいかな!!