ならばそれは書くしかあるまい
フィヨルムは遠い眼をしながら召喚室の隅っこにいる。
つい最近実装されたフィヨルムがニフルからもらった装備、これが優秀だったので今回の召喚になった。
『英雄値がカンストした』という理由で最近は戦場にでることがなく、ヴァイス・ブレイブの子供達と戯れるという癒しを得ていたフィヨルムであったが、新しい装備になったらまたSAN値がピンチな戦場に連れていかれることだろう。
それがフィヨルムの絶望であった。
舞う土煙、土煙の中に移動するフィヨルム。そしてフィヨルムの身体に新装備が装着されてきた。
(ああ、また頭のおかしい方々と一緒にいかなければいけないんですね)
そう思いながらフィヨルムがぼんやりとしていると突然不思議空間に放り出される。
「フィヨルム」
「あ、ニフル様」
そしてフィヨルムの目の前に現れたのはフィヨルムを眷属にしてムスペルをぶっ殺そうとしているニフルであった。
「話は他の神から聞いた。ザムジードのところで苦労しているそうね」
「……ザムジードとは?」
フィヨルムの問いにニフルは気づいた表情になる。
「あなた達の世界の召喚士」
「……召喚士様はザムジードという名前だったんですね」
「いや、あいつは服の着替えみたいに名前変えるからザムジードが真名ではない」
ニフルの言葉にフィヨルムは軽く引く。
そんなフィヨルムの反応をよそにニフルは言葉を続ける。
「フィヨルム、私はどこかの似非ヤンキー神とは違う」
「え~と、ムスペルのことですよね?」
「? ムスペル以外に似非ヤンキー神はいないでしょう?」
神々のことを人間は知りませんとはフィヨルムは口に出さなかった。
「フィヨルム、私は貴女にムスペルを殺せと命じたわ」
「はぁ、まあ」
ラクチェ情報ではスルトを倒すためにフィヨルムの寿命を使わないといけなかったらしいが、この世界では主に烈火組のせいでスルトを普通に殺したのでフィヨルムの寿命はなんともない。
なのに何故フィヨルムがニフルの戦士となったか。それは語るも涙なやりとりがあったのだ。以下にその会話全文を記す。
『フィヨルムですね。貴女を私の戦士に任命します。ムスペルを絶対にぶっ殺しなさい』
フィヨルムが拒否するまもなくフィヨルムはニフルの戦士になった。
やっぱり神はクソである。
それでもイイ子なフィヨルムは受け入れた。ご先祖様と自分達の国の守り神のためだと一念発起したのだ。
そしてムスペルの戦士となったレーギャルンと対決!!
激戦だった。三回もの引き分けの後に勝ったのはフィヨルムであった。決まり手は押し出しであった。
神々の前で行われる大相撲神々神殿場所。そこで初優勝を決めたフィヨルムには充実感があった。
だがそこは空気の読めない似非ヤンキームスペルである。即座に次の場所の興行を提案。ヒマを持て余した神々には即座に許可を出した。
そして次なる場所の勝利に向けてニフルはフィヨルムに召喚士の下で鍛えるように言ったのだ。
だから今回開花装備が召喚されるようになったのだ。
閑話休題
「私はムスペルを絶対に殺すように命じたわ」
「はい」
「でもそのやり方はあの軽蔑すべき似非ヤンキーと同じだったのよ」
「……はい?」
疑問符を浮かべるフィヨルムだったがニフルは気にしない。
「お人よしのドーマに言われたのよ。『自分の眷属にするなら何かしらの祝福を与えたほうがいい』って」
「はぁ、なるほど」
フィヨルムは脳内の片隅で『装備自体が祝福では?』と思ったが口に出さない。何せ神々が基本話をきかないのはヴァイス・ブレイブでよく知っている。
そしてニフルは指をピンと立てる。
「オルティナが言ってた。祝福には恋愛成就が一番だって」
たぶんそれ聞いた相手が間違っているとはフィヨルムは突っ込まない。誰だって命は惜しいのだ。
「だからフィヨルム、貴女に恋愛成就の祝福をあげる」
「いえ、相手がいません」
それが問題である。ラクチェ情報で異世界のフィヨルムは召喚士といい仲という話は聞いたことがあるが、この世界で召喚士を狙うのは地獄の道だ。だから当然フィヨルムには相手がいない。
その反応に我が意を得たりという表情をするニフル。
「わかっています。奥手のフィヨルムにはアプローチするのが苦手なのでしょう。私に任せておきなさい。奥手な貴女でも相手を前にしたら胸のときめきを止められなくなってしまうように祝福をかけましょう」
「それは呪いでは?」
「ちなみに相手はザムジードです」
「本当に待ってください!!」
日夜(自分の姉も含めて)召喚士ゲットバトルを繰り広げている英雄達の中に入る? それは新手の自殺ではないだろうか。
だが 神は 人間の いう事を 聞かない
「確かにザムジードはクソを煮詰めたような性格で外道な上にゴミクズのような人間性ですが身内には甘いという欠点があります」
そしていい笑顔でサムズアップするニフル。
「それじゃあムスペルの滅殺と貴女の恋愛成就を祈っています」
そう一方的に告げるとフィヨルムは元の世界に戻ってくる。
「お、でてきたでてきた」
そしてフィヨルムに近寄ってくる召喚士。そしてフィヨルムの変化は劇的だった。
(トゥンク)
声を聞いただけで心がときめく。
「新装備だな、ぴよちゃん」
声をかけてくれるだけで嬉しい。
「また戦禍の連戦とか諸々に出張ってもらうからな」
頼ってくれてとても嬉しい。
末期なくらいに召喚士にべた惚れになっている自分に気づいてフィヨルムは軽く絶望した。
反応がないフィヨルムを怪しんだのか召喚士がフィヨルムの顔を覗き込んでくる。
「大丈夫か? ひょっとして確定召喚の術式が何か悪さしたか? それだと楽しみ……げふんげふん!! 急いで直さないといけないんだが」
召喚士の心配そうな表情にフィヨルムの胸がときめきエスカレートする。
そしてフィヨルムは顔を真っ赤にしながら口を開く。
「こ」
「こ?」
「これで勝ったと思わないでくださいね!!」
「あ!! おい!! ちょっと身体の術式調べさせてくれ!! 未知の術式が」
召喚士の言葉を最後まで聞くことなくフィヨルムはヴァイス・ブレイブの中を走り抜ける。地獄のレースに参加することになったのも元はと言えば奴のせい。
「お? なんや、ニフルの戦「くたばれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」なんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
フィヨルム(開花装備)
ニフル様からの祝福で強制的に召喚士に惚れさせられてしまった
ニフル
完全に善意からの行動
召喚士
ひょっとしたら未知の術式かもと胸をときめかせたらただの神の祝福でがっかり
似非ヤンキー
頭が潰れたトマトになった
そんな感じで開花ぴよちゃん編でした。
どうしようか悩んだ末に引こうと決意したら天井まで星5が誰もでないという大惨事。ぴよちゃんもらった後に確率収束のためのガチャ一発目でマリス。これにてガチャからは撤退
そして開花ぴよちゃんを育成していて感じる召喚士大好きクラブの言動。
そうなったら惚れてもらうしかないよね!(神の祝福という名の呪い)