召喚士と英雄の日常   作:(TADA)

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だすつもりで執筆していたFEHの同人誌の原稿をみつけたので供養のために一部投稿。以下注意事項

注意事項:この作品はいつものヴァイス・ブレイブではなく異界のヴァイス・ブレイブ、召喚士は烈火軍師ではない、『蛮族殺意高めなリンちゃん』

大丈夫な方はスクロールどうぞ


草原の少女

 戦うことが好きだった。

 物心ついた時には剣を振るい、父親と鍛錬をしていた。

 自分がいた部族であるロルカ族が山賊によって壊滅した後、即座に復讐のために山賊達を探し出し皆殺しにした。

 殺すことに忌避感を感じたことはない。人間はいつか死ぬものという認識が強いからだろう。

 行き倒れを拾い、深い仲になった軍師には『たぶん、リンは戦いの中で死ぬよ』と予言された時も、まぁ、そうだろうと納得した。

 エリウッドやヘクトル達との戦いを終えると自分は草原の奥深くに隠れた。

 自分のような存在が平和を脅かす。そう軍師に言われたからだ。

 寂しくはなかった。友である馬はいたし、夫婦となった軍師もいた。

 自分が泣いたのはたった二回。一回目は両親が死んだ時、もう一つは軍師を流行り病で亡くした時。

 軍師の死後は草原を出て、ただ抜け殻のようにエレブ大陸を彷徨い、賊を殺し続けた。

 そしてこの世界に呼ばれた。

 アスク王国ヴァイス・ブレイヴ。

 異世界の英雄達が集うこの土地で、リンの魂に再び火が灯った。

 同じ世界のエリウッドやヘクトルだけでなく、強者がたくさんいた。リンはそれらの強者達を斬り倒し、アスク王国を襲ってくる敵国の兵士を殺し続けた。

 気分が良かった。この世界には仲間がいる。なにより敵がいる。

 殺す。ただ殺す。そこの事の善悪はなく。ただ強弱のみがある。それが戦場の理。

 ああ、だからこそ……

「回復薬急げ! リンちゃん! しっかりしろ!」

 自分が死にかけているのは自分が弱かったからなのだろう。

 

 

「……うん」

 リンは目を覚ますとそこはヴァイス・ブレイヴの医務室であった。

「リンさん! 良かった!」

「……プリシラ」

 そこにいたのは医療班のプリシラだ。起き上がろうとしたリンをプリシラは慌てて止める。

「ダメですリンさん! 安静にしていないと!」

「問題ないわよ」

 そして起き上がったリンは窓の外を見て驚いた。

 建物は壊れ、廃墟のようになっているヴァイス・ブレイヴの本拠地であった。

 

 

「召喚師、いる?」

「だからこっちでも回復薬が圧倒的に足りてないんだ! どうせこっちが前にでずっぱりなんだからこっちによこせって伝えろ!」

 いつもなら剽軽に笑っている召喚師が血相を変えて怒り顔でアルフォンスに怒鳴り、アルフォンスはその怒鳴りを受けて慌てて出ていく。

 リンはそれを見送ると召喚師を見る。召喚師も驚いたようにリンを見てきた。

「リンちゃん! もう動けるのか!?」

「ええ」

「マジかよ……重傷だったんだぜ……?」

 召喚師がなにやら戦慄しているが、サカの民ならばあの程度の傷はかすり傷だ。

「何があったの?」

 リンの問いは簡潔であった。召喚師も質問の意味はわかっている。

 召喚師は困ったように笑いながら口を開く。

「ムスペルの奇襲だ。スルト本人もいたから本気で潰しにかかってきたのかもな」

「被害は?」

 リンの問いに召喚師の顔が歪む。

「甚大。カミラ姉さんやチキさん、ウルスラさんのおかげで死者はいないけど、三人全員重傷で戦線には復帰できない。まだ動けるパオラ様やニノ達が周辺の索敵を任せているから、奇襲はもう受ける心配はないと思う」

 カミラやチキ、ウルスラが重傷というのを聞いて驚いた。全員がリンとまではいかないけれどもそれに追随する猛者だ。

 召喚師はイライラしたように髪をかき混ぜる。

「リンちゃんに対してもそうだったが、突然ワープしてきての奇襲……ふざけている話だ。しかもムスペルの炎とかいうのでこちらの攻撃が無効」

 その言葉にリンはスルトに攻撃が通用しなかった理由がわかる。

「ぴよちゃん曰くムスペルの炎に対抗できる禁呪があるらしいけど……そんなの待っている余裕はないから、今急ピッチで魔術師達に対抗策を探させてる」

 そう言って召喚師は椅子に深々と座る。

「ムスペルの炎のほうはカナスさんがどうにかしてくれそうだ。問題は回復薬だな」

「足りないの?」

 リンの言葉に召喚師は苦笑いを浮かべる。

「せいぜいあと一部隊ぶんくらいだな」

 

 

「烈火棟が……」

 次にリンがやってきたのは自分が住むヴァイス・ブレイヴ内にある烈火棟だ。

 烈火棟も他の場所と同じく瓦礫の山になっていた。

「あ、リン」

「フロリーナ」

 すると瓦礫の片付けをしていたフロリーナがリンに近づいてきた。

「あんた無事だったの」

「いや、あんたもリンの傷見てたでしょ。よく動けますね」

 さらに近寄ってきたのはセーラとマシューだ。

 全員傷だらけだ。

「……他のみんなは?」

 リンの問いにフロリーナは困った表情を浮かべながら口を開く。

「ロイドさんやライナスさん、ジャファルさん、シルヴァンさん、ドルカスさん達はみんな医務室。回復薬が足りなくて治療待ち。ニニアンさんも前線に出るレベルだったから……」

 ロイド達もまた実力者だ。彼らもまた医務室で動けずにいる。

「他の英雄もみんな似たり寄ったりの状況ですね」

 マシューの言葉にリンは深刻さを理解する。

 ヴァイス・ブレイブ滅亡の瀬戸際なのだ。

 明るくみんなを鼓舞し始めたセーラを尻目にリンはそこから立ち去る。

 しばらく歩くと一人の英雄を見つけた。

 召喚師と一緒に馬鹿をやったりしているギムレーだ。

 ギムレーもリンに気づいたのか右手をあげる。

「よう、羽虫。まだ生きていたか」

「貴方のほうが死にそうね」

「ははは、ごもっとも」

 ギムレーの右足はなくなり、左腕も肘から先がなくなっている。

「大丈夫なの?」

「これでも神の端くれなんでな。しばらくすればまた伸びてくる」

「トカゲみたいね」

「マムクートなんて巨大トカゲみたいなものだ」

 他のマムクートが聞けば怒って殴ってきそうなことを笑いながら言い放つギムレー。

 能天気に笑っているが、ギムレーの手は震えていた。その震えは回復薬の副作用から来るものであることをリンは知っている。

 しかし、その副作用では一回くらいでは出るものではない。

「まさか回復薬をかぶりながら戦ったの?」

「仕方ないだろう。普通の人間では体がもたない。我が適任だったんだよ」

 ギムレーはそう言いながら懐からタバコを取り出して火をつける。

 煙を吐きだしながら言葉を続ける。

「意外と我はここを気に入っているんだ。だから、まぁ、多少の無茶はするさ」

 回復薬を飲みながら戦い続けることなど尋常な神経の持ち主にはできない。体の傷を即座に治すが、その過程の尋常ではない痛みで気を失うのが回復薬だ。

 そこまでやってヴァイス・ブレイヴを守り切ったギムレーに内心で認めつつ、リンは言葉を続ける。

「回復薬は使わないの?」

「使えないの」

 ギムレーは短くなったタバコを指で弾いて飛ばす。

「斥候に出ていたパオラ達が重傷を負って戻ってきた。で、回復薬は彼女達に使った」

 ギムレーはもう一本タバコに火を点けながら言葉を続ける。

「残りは一人分だ」

「召喚師は?」

「何人かの盗賊と一緒に行方不明さ」

 

 

 夜中、リンは回復薬を持ってヴァイス・ブレイヴの入り口に立つ。入り口も崩れ落ち瓦礫の山となっている。

 そしてリンは回復薬の瓶を開ける。そしてしばらくそれを見つめていた。

「飲まないの?」

 リンが驚いて振り向くとそこには苦笑して立っているフロリーナがいた。

「いくんでしょ?」

 フロリーナの言葉にリンは頭をかく。

「私はさ、この世界は性にあっているのよね」

 リンの言葉をフロリーナは黙ってきく。

「マークが死んでから私は戦うことでしか生を実感できなくなった。この世界は異世界とかも含めて戦いに満ちている。戦って、戦って、戦って……死ぬまで戦うっていう夢が叶うとも思ってた」

 そう言ってリンは星空を見上げる。

「でもね、スルトの奴に致命傷を負わされた時、感じたことは『死にたくない』だった」

 そしてリンはまっすぐな瞳でフロリーナを見つめる。

「あの時点で私は一回死んだの。そして今も死んだまま。生き返るにはスルトの奴を殺すしかない。あいつの首を斬り落とし、返り血を浴びて初めて私はまた生きていける」

 そう言ってリンは回復薬をかぶる。急激な勢いでふさがっていく傷。リンはそれに伴う痛みを平然と耐えながらソール・カティを持つ。

「それじゃあ、行ってくるわ。私自身のために」

「……うん、いってらっしゃい」

 リンはそれだけ言うとその場から歩き去る。それを見送った後にフロリーナはその場にしゃがみ込む。

「あ~あ、私ももっと強かったらリンと一緒にいけたのに」

 そして星空を見上げる。

「あれ!? フロリーナさん! ちょうど良かった回復薬運ぶの手伝って!」

 その声に驚きながらも、フロリーナは笑顔を浮かべるのであった。

 

 

「こいつで……最後!」

 リンは槍を斬りはらうと、突き出してきたムスペル兵士の首を飛ばす。

 その光景をスルトは笑いながら見ていた。

「我が精鋭たるムスペル兵百人を一人で殺すか」

「これで精鋭? もうちょっと鍛えたほうがいいわよ」

 リンの言葉にスルトは笑うとシンモラを取り出す。リンもソール・カティを持ってスルトに突撃する。

 スルトの大振りの一撃を躱してそのまま首めがけてソール・カティを振るう。

 しかし、体にあたる直前にムスペルの炎で防がれてしまう。

 リンは即座に離脱しようとしたが、首を掴まれて思いっきり投げられてします。

 リンは空中で態勢を立て直して即座に再突撃。フェイントで背後に回り込みスルトの脳天にソール・カティを振り下ろす。しかし、再びムスペルの炎に防がれた。

 スルトのシンモラをリンは体を飛ばして最小限の傷に抑える。

 地面を転がりながらも即座にリンは立ち上がる。

「っぺ」

 リンは口の中に溜まっていた血を吐き捨てる。

(もう少し、もう少しで刃が通る)

 傷だらけの体を抑えながらもリンはソール・カティを構える。

 スルトも笑いながらシンモラを構える。

 その瞬間、スルトに魔法が直撃した。

「っ! これはウルスラの! なんで来た!」

 振り返ったリンはさらに驚愕の表情を浮かべた。

 そこには無傷のカミラ、チキ、ウルスラが立っていた。

「先に行くわね」

「時間稼ぎは任せて!」

 カミラは斧を構え、飛竜にのってスルトへと向かい、チキは竜の姿になって進んでいく。

 そんな二人を唖然とした表情で見送るとウルスラが近づいてくる。

「召喚師の奴がアスク王国中から回復薬を盗んできたの。で、これは貴女の分」

 そう言いながらウルスラはリンに回復薬を渡す。

「で、ムスペルの炎の破り方。あの炎を一方向に展開することで攻撃を防いでいるようね。カナス曰く全方向から刹那の時間差で攻撃を仕掛ければやぶれるらしいわ」

 ウルスラの言葉にリンは回復薬をかぶる。

「ウルスラ」

「なに?」

「とどめは私にやらせて」

 その言葉にウルスラは軽く肩を竦める。

「やぶれるといってもかなりの威力の一撃が必要らしいわ。そんな一撃が放てるのはリン、貴女だけよ」

 その言葉にリンは獰猛に笑うとスルトに向かって走る。

 ウルスラの正面からの広範囲魔法攻撃。

 その直後にチキの横からの巨大なブレス攻撃。

 そしてカミラの背後からの斧の一撃。

 その瞬間にリンはスルトの頭をまたぐように肩に立つ。

「死ね」

 リンの一閃でスルトの首が飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「それでスルトの首を片手に帰ってきたリン……かっこ良かったなぁ」

 ヴァイス・ヴレイブの談話室。ここにリン、フロリーナと最近やってきたソーニャが雑談をしてた。

 フロリーナが話していたのはリンがスルトを殺した時の話だ。この物語はアスク王国が存亡の危機だったのもあって吟遊詩人達により広く知らされている。

 その本人であるリンは不思議そうに首を傾げた。

「そんなことあったっけ?」

「いえ、貴女は覚えてなさいよ。重要なターニングポイントだったっぽいわよ?」

「ここにいるとそういう危機が多すぎて感覚が麻痺してくるのよね」

「やばいところに召喚されたわね……」

 後悔してももう遅い。召喚されたからにはソーニャも死にそうな危機とかにいっぱいあってもらう。

 とりあえずリンは紅茶を一口飲んでから口を開く。

「でもソーニャも腕は衰えていないようね。安心したわ」

 その言葉にソーニャは不適に笑う。

 元の世界でのあれやこれのせいでソーニャは召喚されて早々にロイドやライナス等の黒い牙の面々(ニノを除く)に襲撃された。

 しかし、ソーニャは涼しい顔をしてそれらを返り討ちにしたのだ。

 その会話にフロリーナも苦笑いである。

「元の世界でもリンと対等に戦えていたもんね、ソーニャさん。最終的にマークさんの策にはめ殺されたけど」

「あのモヤシはこの世界にいないの? お礼参りしたいんだけど」

「私の旦那を殺そうとするなんていい度胸ね。もう一回死んどく?」

「は? 元の世界ではあのもやしにはめられただけよ? 正面からやったらネルガル様の最高傑作である私が敗けるはずないでしょ?」

 そのままお互いにメンチをきりあっていたリンとソーニャであったが、お互いに胸倉を掴み合いながら訓練場に移動していく。

 そして訓練場のほうから二人の戦いに巻き込まれた英雄の悲鳴や爆発音が聞こえてくる。

 それを聞きながらフロリーナは紅茶をすする。

「あら? フロリーナだけ?」

「あ、フィオーラお姉ちゃん。リンとソーニャさんだったら訓練場にいったよ」

「ああ、道理で……」

 烈火出身者にとってリンとソーニャは『強すぎて人間かどうか怪しい』とまで言われる存在である。

「二人に何か用事?」

「ええ、召喚師さんが『ニザヴェリルとの戦いめんどくせぇ! もうリンちゃんとソーニャ様とプラハ様投入するわ!』って言っていたから呼びに来たんだけど」

 このヴァイス・ヴレイブにおいてプラハもリンやソーニャに追随する猛者だ。

 そんな破壊の権化ともいうべき三人を戦線に投入する?

 フロリーナは内心でみたことのないニザヴェリル王に対して冥福を祈るのであった。




リン
異界でも蛮族殺意高めな軍師嫁

フロリーナ
大親友であるリンのことならお見通し

カミラ、チキ(大人)、ウルスラ
この異界のトップクラスの強者

リン、ソーニャ、プラハ
この異界の殺意高い組

ギムレー
この異界でもオタクトカゲ




そんな感じで前だすつもりで書いていたFEHの同人誌の原稿を発掘したので供養のために投稿。この同人誌がでることはありません。
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