「おかしいと思うんだ」
「君の頭がかい?」
「チゲぇよ、エリウッド。こいつの性格に決まってるだろ」
当然のように俺の部屋に居座っているバカ二人に対して、お茶の水滴を飛ばして眼に直撃させる。悶絶する二人に対してストンピングを繰り返したが、復活した二人にダブルラリアットを決められた。
とりあえずいつも通りの茶番を終えて、炬燵に入る。
「おかしいと思ったのは、『マケドニア三兄妹和解編(ミシェイル発狂編)』でのお前らの行動だよ」
俺の言葉に思い当たる節がないのか『何言っているんだこいつ』的な視線を俺に向けてくる。俺はバカ二人に言い聞かせるように言葉を続ける。
「いいか。最初にマリアの話を聞いた後にお前らは何処から出てきた?」
「? 天井から張り付いていたのを降りただけだね?」
「? 何処かおかしいか?」
「おかしいだろ! お前らは設定上は貴族だぞ!! なんでサイゾウとカゲロウのお株を奪うような気配遮断と天井張り付きとかやってんの!? いや、作者自身も書いた後に不思議に思ったんだけどさ!!」
読者からも一切のツッコミがないことに、この作品でのエリウッドとヘクトルの立ち位置がわかる。
「それ「召喚士!! いるか!!!」エフラムか」
話を続けようと思ったら、妹大好きルネス王国王子・エフラムだった。まぁ、俺の部屋に来た予想はできるが、様式美として一応尋ねる。
「エフラム、何の用だ?」
「エイリークだ! 新しいエイリークの実装だぞ!! さぁ、召喚士!! 召喚室に行くぞ!!」
「やばい、こいつも話を聞かない」
最近、俺の話をちゃんと聞いてくれる英雄が少ない。というより己の欲望に忠実になってきているようだ。全く誰のせいだ。
「それよりエフラムは武器錬成も来たんだぞ? そっちじゃなくていいのか?」
「ジークムントなんかよりエイリークだ!!」
「聞いたかエリウッド。自分の武器より妹を優先する。これが本当の愛だぞ」
「やだなぁ召喚士。僕が君に神錬の雫を要求しているのは、あくまで戦力アップのためであって、決して僕がロイとお揃いの武器が持ちたいという欲求なんかないからね」
「最後に本音が出ているぞ」
口を滑らせたヘクトルの顔面にデュランダルが流れるように吸い込まれた。
「さぁ、召喚室に行くぞ!!」
「はいはい。まぁ、赤魔先生役もいるにこしたことはないしな」
白目を剥いてるヘクトルを無視して部屋を出る俺とエフラム。エリウッドもヘクトルを引きずってついてくるのであった。
召喚室に入るとエフラムは「エイリーク召喚の準備だ」と言い始めて、召喚石版の周囲にエイリークの私物を並べ始めた。
ジークリンデ、エイリークの普段使っている鎧、使用済みティッシュ、使用済みスプーン、女性物の下着。
「待って。ちょっと待ってエフラム」
「? どうした?」
心底不思議そうに俺を見てくるエフラム。
「ジークリンデと鎧はわかる。だが、ティッシュとスプーンと女性物の下着ってなんだ?」
「不思議なことを聞くな、召喚士は。全部、エイリークの使用済みに決まっているだろう」
「「「うわぁ……」」」
エフラムの言葉に流石の俺たちもドン引きした。俺たち三人をドン引きさせるなんてかなりのものだぞ。
「聞きたくないけど、どうやって使用済みを手に入れたんだい?」
「そんなものエイリークの不在の間に部屋に忍び込んだに決まっているだろう」
「エリウッド、警備隊を呼び出せ。ストーカーを捕まえるぞ」
「了解。あ、ヘクトルは牢獄の準備をしてきてくれるかい?」
「あいよ」
「待て待て。俺の言い分を聞け」
とりあえず犯罪者を捕まえようとしたら、エフラムが止めてきた。とりあえず弁解の余地を聞くためにエフラムに続きを促す。
「俺とエイリークは双子だ。よく言うだろう? 双子は一心同体とな。俺とエイリークは双子。つまり俺とエイリークは一心同体。つまり俺はエイリークだった……!!」
「おいやばいぞ。こいつシスコンじゃなくてキチガイだ」
エフラムの演説にヘクトルが恐怖している。そう思ってる俺もちょっと恐怖を感じている。発想がぶっ飛びすぎてる。
「さぁ、召喚士! 準備は完了だ!! 起動してくれ!!!」
「お、おう」
エフラムの勢いに押されて、俺も召喚石版を起動させる。そして浮かび上がってくるオーブ。
「ば、バカな…オール赤だと!?」
「エイリークエイリークエイリークエイリーク!!!!!」
なんか怪しい踊りを始めたエフラム。とりあえずそっちは無視して一つ目の赤オーブを石版に叩き込む。
捲き上る煙。出てくるソフィーヤ。発狂するエフラム。
とりあえず困惑するソフィーヤを召喚室から送り出す。
「ショウカンシ!! フタツメ!! フタツメ!!!」
「アッハイ」
言語がおかしくなってきたエフラムに本気で恐怖を感じつつ、二つ目のオーブを叩き込む。
煙が出ない時点でエフラムがさらに発狂した。
「おい、エフラムのSAN値をチェックした方がいいんじゃないか?」
「確かに。なんか邪神とか召喚しそうだね」
「この召喚が終わったらアスク王国の病院に叩き込むか」
三人でエフラムの今後を相談しつつ、三つ目のオーブを石版に叩き込む。
捲き上る煙。浮かび上がるシルエット。出てくる銀髪の少女。
「いつもニコニコ、あなたの隣に這い寄る混沌「「「アウトォォォォォ!!!!!」」」あ、ちょと待ってくださいよ!!」
「ダメだから!! お前が出てきたらタグにクロスオーバーが追加されちゃうから!!」
「大丈夫ですって!! この作品のカオスを見る限りすでに FEじゃなくなってますから!! 今更、ニャR「おぉい!! 言わせねぇよ!?」
銀髪の少女の言葉をカットするヘクトル。ヘクトルには珍しいファインプレーである。
エリウッドが慌てて持ってきたダイスを投げた結果、なんとか邪神の召喚は阻止された。銀髪の少女は不満そうにしながらも帰ってくれた。
「おい、やばいぞこの世界」
「僕らがいた世界も割と混沌だったけど、流石に他作品は出てこなかったからね」
エリウッドとヘクトルが冷や汗を流しながら会話している。
「ショウカンシ!! ツギ!!」
「……はい」
もうエフラムがぶっ壊れていることに突っ込みは入れない。と言うか入れてたら話が進まない。早く出てくれエイリーク! そうでないとこのカオスの世界が終わらない。
俺とエリウッドとヘクトルの三人の願いを込めて三つ目のオーブを石版に捧げる。気持ちの方向性はどうあれ、この場にいる全員の気持ちは一つだった。
(((来てくれエイリーク!!!!)))
石板に吸い込まれるオーブ。舞い上がる土煙。エフラムと同じ色の長髪。そして「本当に戦う格好なの?」と突っ込みたくなるミニスカート。彼女こそ…
「あら? 私はシャロンさん達とお茶会を……これは……グレイプニル?」
「「「エイリーク!!」」」
「キャッ!? あ、召喚士さんとエリウッドさんとヘクトルさん。それにお兄様……? あの、召喚士さん、あそこにいるお兄様によく似た悪魔神官はどなたでしょうか……?」
「現実を見ようエイリーク。あれは君の敬愛する兄・エフラムだ」
俺の言葉にエイリークは絶句した。それはそうだろう。自分が敬愛する兄がエイリークが召喚されてからバーサーカーってるのだから。
そしてエイリークは召喚石板を囲むように置かれている品々を見る。そして下着の部分で視線が固定され、顔が真っ赤になっていく。
「あ、あの……あれはどなたが……?」
エイリークの言葉に俺たち三人は黙ってエフラムを指差す。そしてエイリークは顔を真っ赤にしてプルプル震え始めた。俺たち三人は危険を察知して部屋の隅による。
「お兄様のバカぁぁぁぁああぁぁ!!!!!」
「ありがとうございます!!!」
グレイプニルの爆音と共にエフラムのお礼の声がヴァイス・ブレイブに響き渡った。
後日、エイリークに相談され、エフラムに対してエイリーク半径1km以内に接近禁止令を出したところ、エフラムはアスク王国の国王を人質にとって王城に立てこもる事件が発生した。テロには屈してならないという標語通りに、王城ごとエフラムを高威力魔法組で消し飛ばそうとしたところ、アルフォンスに止められたのだった。
仕方ないのでエイリークでエフラムを釣り出したところを捕らえ、単独でムスペルに進行させるという罰を与えたのだった。
エフラム
実は作者から聖魔をやっていないので、聖魔キャラはよくわかっていません。ですのでキャラ崩壊するのは当然の帰結だと勝手に思ってます。そして結果がシスコンストーカー悪魔神官エフラムの誕生になりました。エフラムファンの皆さんには本当に申し訳ありません。
エイリーク
なんか原作の支援会話では兄妹の会話ではないというのをネットで見ましたが、この作品では自重を捨て去った兄にドン引きする妹になりました。作者的に女性キャラはキャラ崩壊させたくないのですが、その分男性キャラが崩壊することによって身内の女性キャラに被害が行くように。許せエイリークとミネルバ。
銀髪の少女
ははは、この作品はFE小説なんだからニャ○子さんが出るわけないじゃないですか。
悪ノリしすぎた気もしますが、作者的にエフラムの変態性をもっと上げたかったところです。ですが、三馬鹿と違ってまともな感性を持つ作者にはこれが限界でした。
今更気がつきましたがUAが10000を超えていました。皆さん、ありがとうございます。ですが、こんな作品を読んでいて大丈夫ですか? 特にFEキャラに対する認識とか。
UA10000を記念して何かネタを考えましたが、思いついたのは『炎の王・スルトの華麗なる一日』でした。もちろん三馬鹿が関わっているストーリーなので不幸になることが決定事項ですが。