「うわぁ。2時間だけなのに随分溜まったなぁ」
明石祐奈は携帯を開いて、メールの件数を見て疲れたため息を吐いた。その件数167件。父からのメールが1件で、166件が兄からだ。昔からシスコンだったが、最近は特に酷い。具体的に言うと祐奈が同級生の男子生徒に告白されたことを知ってからだ。兄に教えていなかったはずだが、兄の友人が面白がって教えたのだろう。
祐奈は父からのメールだけ確認すると、兄からのメールは読まずにゴミ箱に放り込む。兄に短文でメールを返しておくのを忘れない。過去に一度、めんどくさがって連絡しなかったら、兄が友人の二人と一緒に女子中等部に突撃して来て、最終的に学園長室が兄を含んだ三馬鹿によって爆破された。兄達は『態々女子中等部に学園長室を作ったエロぬらりひょんに対する天誅』とか言っていたが、キチガイ達の発想なのでスルーする。というか気にしたらキチガイになると確信している。
「祐奈、襟都さん?」
「アキラ」
話しかけて来たのは祐奈の友人で、兄同士も友人である大河内アキラだった。
「アキラは軍召さんから連絡来てないの?」
「? うん。お兄ちゃんは私が連絡する前にだいたいのことを知っているし」
完全にアキラの感覚が麻痺してしまっている。いや、確かアキラは小さい頃からお兄ちゃん子だったらしい。だから完全に洗脳されてしまっているのか。
祐奈の兄がイケメン腹黒系キチガイだとしたら、アキラの兄は天才悪徳参謀系キチガイだ。現にアキラの兄の手によって何人もの生徒や教師が社会的に抹殺されている。ちなみにそれらの事件がアキラの兄の仕業だと知る人はいない。祐奈も兄から聞かなければ知らなかった。そしてアキラの兄がアキラに言い寄ろうとする男性生徒を、情報を駆使してアキラから意識をずらさせているのも知っている。これも兄情報だ。兄は祐奈がお願いすればなんでも教えてくれる。流石に冗談で国家機密を尋ねて、翌日にアキラの兄からその情報をもたらされた時にはドン引きして、二度と下手なことは尋ねないことにした。
「祐奈とアキラは何の話をしとるん?」
関西弁のイントネーションで祐奈とアキラの会話に入って来たのは和泉亜子だった。祐奈が携帯をひらひらと見せると、亜子も理解したのか苦笑した。
「襟人さんもシスコンやからなぁ……昨日、お姉ちゃんと兵人さんと一緒に晩御飯食べとる時に聞いたんやけど、兵人さん達のクラスメイトの一人が祐奈のこと狙っているって口を滑らせたら、襟都さんブチ切れて校舎半壊の大騒ぎになったらしいで」
亜子の情報に祐奈は机に突っ伏してしまう。亜子のお姉さんの彼氏が三馬鹿の残り一人である兵人だ。兵人は単細胞脳筋系キチガイだ。バカみたいにでかい斧を振りまわして、鎮圧しにきた学園広域指導員を返り討ちにし、最終的に彼女である亜子のお姉さんが止めに来るまで暴れ続けたことは忘れられない。
そしてそんな三馬鹿キチガイが通う麻帆良学園男子高等部では騒ぎが絶えない。しょっちゅう校舎が半壊し、酷い時には周囲の建物にも被害がでる。毎回、アキラの兄がどこからか調達してくる資金によって直されているが、三馬鹿キチガイの担任である葛葉刀子先生には同情を禁じ得ない。
中等部時代から葛葉先生は三馬鹿の面倒を見ているらしく、三馬鹿も葛葉先生に対して恩義は持っているようだ。だから葛葉先生の離婚騒動の時に葛葉先生の相手から金を奪い取るだけ奪い取った後、社会的に抹殺したのだろう。ちなみにその後葛葉先生からガチ説教を食らったようだが、三馬鹿は反省をせずに『バレたから問題になったんだな』というキチガイ的発想に行き着いて、やり口が巧妙になった。三馬鹿も表に立って騒いだり、裏で暗躍したりと色々するが、大抵は最終的に学園長室が破壊される。あの三馬鹿は絶対に学園長に対して何か恨みがあるに違いない。
そのまま三人で世間話をする。共通する知り合いを持っており、寮でも同じ部屋の三人と、もう一人の佐々木まき絵の四人で一緒にいることも多い。ちなみにまき絵は補習を食らって担任の高畑先生に連れて行かれた。
その時、アキラの携帯が鳴った。基本的にアキラはマナーモードにしているはずだが、おそらくはアキラの兄が何かしらのハッキングをして音を鳴るようにしているのだろう。詳しくは知りたくない。
アキラも慣れた様子で携帯を開いて文面を確認する。
「お兄ちゃんが今日はまき絵と何か予定入ってるかだって? 私は特にないけど、二人は?」
「私も特にないで」
「……あ〜、そういえば、まき絵と部活の休みが一緒だったから遊びに行こうって約束したかにゃぁ」
祐奈は言い終わった後にしまったと思ったが、街で大爆発が起こったことで手遅れだったことに気づく。
アキラと亜子も気づいたのか、苦笑した。
絶対に祐奈の超絶シスコン兄が容赦なく起爆スイッチを押したのだろう。あれだけの騒ぎになれば、補習を担当している広域指導員の筆頭である高畑先生は駆り出され、補習は中止になるだろう。妹のために罪を被ると聞くと聞こえは良いかもしれないが、三馬鹿は基本的に他人に罪をなすりつけるので、三馬鹿に目をつけられた哀れな生贄が生徒指導室に連行されるのであろう。
それを知っている三人は哀れな生贄に合掌する。
「それじゃあ、まき絵を迎えに行って遊びに行って来ようかなぁ。二人はどうする?」
「あ、私も一緒に行くわ。買いたいものがあったんよ」
「私はお兄ちゃんの部屋を片付けに行かないといけないから」
三馬鹿の中心人物の妹であるアキラに本気で同情しながらも、祐奈も今回はどれだけの騒ぎになるか楽しみにしながらカバンを持って教室から飛び出した。
明石祐奈
シスコンな兄に辟易する妹ポジション。祐奈の兄がエリウッドポジション。ロイコンからシスコンになった。ロイと違ってエリウッドはこちらの愛する存在の洗脳に失敗したようである。だが、何だかんだ言いつつも兄のことは気に入っているご様子。
大河内アキラ
祐奈と同じくシスコンな兄をもつ妹。アキラの兄が召喚士ポジション。こちらは純粋に兄のことを尊敬しているようである。流石は召喚士汚い。街の中で一人暮らしをする兄の部屋に行っては片付けをし、発見してしまったエロ本を『仕方ないなぁ』と呟きながら本棚に整頓してあげる。そしてそれを知った兄が発狂する。
和泉亜子
三人ともキャラの実兄じゃ面白味に欠けるので、架空のお姉さんを作ってそれの彼氏にヘクトルポジションにした。上記二人と違って間に一人挟んでいるので、どこか外から笑ってみていられる。だが、姉がヘクトルポジションの彼氏と結婚すると言い始めたら猛反対するだろう。
葛葉刀子
アルフォンスポジションの苦労人。頑張れ! 超頑張れ! 麻帆良の未来は貴女にかかっている。
麻帆良学園男子高等部
三馬鹿が所属するクラス。問題児ばかり。よく校舎が壊れる。
麻帆良学園学園長室
特に理由はないが三馬鹿によって爆破される。そして学園長は学園長室にいる時間より病院にいる時間の方が長い。
この作品の三馬鹿を別原作に放り込みたいと思った結果、第一回目はネギまが犠牲になりました。でも原作からして結構滅茶苦茶な学園なので、特に違和感なく溶け込みますね! 三馬鹿は相変わらずキチガイですが。これからも別原作に三馬鹿を放り込むネタが出来たら投げるかもしれません。場合によっては独立させるかなぁ……
次回はちゃんとFEHネタですので。ええ、ついに秘密のベールに隠されたエリウッドの奥さんが発表されます。君は当てることができるか……!!