あ、ムスペル側にオリジナルキャラ1人投入してます。即退場してますが。
ムスペル王国第一王女・レーギャルンは逃亡しているヴァイス・ブレイブの本隊を追っていた。何故、レーギャルンが治めている地方に侵入して来たかはわからないが、偉大な父・スルトの頭痛の種であるヴァイス・ブレイブを討つ絶好の機会だと思って出撃したのだ。
しかし、相手は百戦錬磨の父を翻弄する英雄達である。
そのためにレーギャルンは直轄軍の全てを総動員し、三方向からの同時進撃による包囲殲滅を狙った。自分自身も妹のレーヴァテインと共に軍を率いた。
最初は上手く行っていたのだ。逃げるヴァイス・ブレイブを追撃しながら疲労を蓄積させる。レーギャルンの目論見通りに進んでいたはずだった。アスク王国の第一王子が「逃げるんだ! 今なら間に合う!」としきりに叫び、フードを被った魔王の一人に殴られているのが謎だったが。
そしてレーギャルン達が森に入ってから全てが変わった。殺意しか感じない罠。人の心理を読み尽くすかのように配置されたその罠によってレーギャルンの近衛兵達は次々と死んでいった。
しかし、レーギャルンは退くわけにはいかなかった。ここで退いてしまってはここまでで戦死した部下の死んだ意味がなくなり、別方向から進軍しているはずの味方が各個撃破の標的にされかねないからだ。
そしてようやく追い詰めたところには5人の男女がいた。フードを被った魔王A、赤髪で馬に乗った魔王B、黒髪で重騎士の魔王C、青髪で際どいスリットの入った服を着ている女性騎馬魔道士、黒髪をポニーテイルにしている少女剣士。
「ようやく追い詰めましたよ……!!」
レーギャルンは心底憎たらしい声で言い放つ。武門の一族であるムスペル王家の人間として、戦って死ぬのならば許せる。しかし、部下の多くは獣のように罠に嵌められて殺されたのだ。そしてそれを実行したのはヴァイス・ブレイブの魔王Aだ。
追い詰められているにも関わらず5人は余裕だ。
「おお、結構残ったな」
「召喚士の罠を避けるなんて、アルフォンスくんやフィヨルムちゃんの言う通り優秀な将のようだね」
魔王Cと魔王Bがそのような会話をしている。その余裕さがレーギャルンをさらに苛立たせる。多くの部下が死にながらも繋げてくれた戦場だ。少しくらいは焦った様子が見たいと思っても間違いではないと思っている。
「相手より兵力を多く用意する、これは正解だな。戦争の基本は数だ。それを忘れちゃいけない。そして三方向から分割進撃しての包囲殲滅。まぁ、決まれば理想的な戦術として教本に載ってもおかしくないな」
魔王Aがなにやらレーギャルンの戦術について何かを語っている。そこでレーギャルンは違和感に気づく。
何故、罠に時間のかかった自分達しかいないのか。
「! 貴方達、まさか他の軍を!!」
「お、頭の回転が早いじゃないか。せっかく軍が三方向に散らばっているから、進軍の時間をずらさせて各個撃破させてもらったよ」
「させてもらったじゃないでしょ。他の部隊にバッチリ足止め食らってるじゃない」
「ダメだよ、リン! 戦争にはハッタリも必要なんだから!!」
魔王Aの言葉にツッコミを入れる剣士の少女。その情報が正しいなら他の軍も英雄達と交戦中なはずだ。だったらヴァイス・ブレイブの三魔王を殺すチャンスは今しかない。
部下と妹に合図を出して戦闘を開始しようとする瞬間に、魔王Aが手のひらをこちらに向けてきて、フードから見える口元で笑みを浮かべる。
「まぁ、慌てるなよレーギャルン王女。せっかくだから他の部下達の様子も見てみようぜ」
「……なにを?」
「ウルスラ、頼むわ」
魔王Aの言葉に青髪の女性が魔道具に魔力を込めると、上空に1人の女性が映し出される。
『あ、召喚士さんですか。こちらニニアンです。何かありましたか?』
「いや、想像以上に早くレーギャルン王女がやってきたんでね。そっちの戦況を教えてあげようと思ってな。戦場を映してくれるか」
『え? 召喚士さんが読み違えるなんて珍しいですね……あ、戦場を映しますね』
「なぁ!?」
上空に映し出された光景を見てレーギャルンは思わず声をあげてしまった。
ムスペルの兵士達の攻撃を受け止める重騎士や騎馬騎士。そして動きが止まったところに撃ち込まれる矢と魔法の嵐。
前衛は防御に徹していて怪我がほとんどない。怪我をしてもすぐに回復されてしまう。そして後衛は攻撃がくる心配がないので、自分の攻撃に専念できる。それによってムスペル側に一方的な被害が出てしまっている。
だが、情報通りならば大半の英雄がこちら側に集まっている。ならば父・スルトの側近であり、レーギャルンとレーヴァテインの守役を務めた騎士の方には戦力が少ないはずだ。あの騎士だったら時間を稼げば駆けつけてくれるはずだ。
だが、魔王Aはレーギャルンの考えを読んだかのように再び薄い笑みを浮かべた。
「スルト王の側近の老騎士。ムスペル王国でスルトを除けば一番厄介な男だな」
「……なにが言いたいのですか?」
「正直に言うとな、あまり使いたい手じゃなかったんだ。なにせ個人の武勇が戦術を崩壊させるなんてことは元軍師として認められないしな」
魔王Aの言葉にレーギャルンは違和感を感じる。思い出せ、先ほどの戦場に重大な見落としがあったはずだ。
「答え合わせと行こうか、レーギャルン王女。ウルスラ」
魔王Aの言葉に青髪の女性が先ほどと同じ形の魔道具に魔力を込める。そして今度は緑髪の少女が映し出された。
『ニノだよ! どうかしたの軍師さん』
「今は軍師じゃなくて召喚士な。我らが修羅殿はどうしてる?」
『アイラさん? アイラさんだったら……』
緑髪の少女はそう言いながら戦場を映し出す。そこには黒髪ロングヘアーの美女が地獄を作り出していた。剣の一振りで何人もの戦場の勇者達の命が奪われる。
『アイラさんがエクスカリパーを振るったら星みたいのが飛び散って、それがアイラさんに吸い込まれたらクリティカルがいっぱい出るの!!』
「ねぇ、召喚士。ここはFEHの世界のはずだよね。なんで1人だけFGOのシステムが導入されてるの?」
「俺に聞くなよエリウッド。冗談半分で渡した俺も割と驚いてるんだ」
『あ! アイラさん!! NPが満タンになったよ!!』
『ム、そうか。では奥義発動といこう』
その言葉と同時に泣く子も黙る修羅・アイラが持っていた剣を振るうと、残っていた兵士達が光に飲まれた。そして結果が表示される前に映像が途切れた。
「召喚士……! 貴方という人は!!」
「怒るなよレーギャルン王女。俺だってこの戦い方は不本意なんだ。個人の強さに依存するなんて戦略も戦術もあったもんじゃないからな」
「召喚士は政略で相手を追い込んで、謀略で内応とか反乱を起こさせたり、戦場でも罠使ったりしてハメ殺すタイプだもんな」
「褒めるなよ、ヘクトル」
「性格が悪いって言われてるだけよ?」
三人のやりとりを無視して武器を構えようとする。だが、体が動かない。それどころか体に力が入らずに地面に倒れこんでしまう。
それを見て召喚士は残酷に微笑む。ムスペルにもロキという信用のできない軍師がたまに残酷な笑みを浮かべるが、それが聖母の微笑みに見えるような微笑みだ。レーギャルンは背筋が凍るのを感じる。
「な、なに、を……」
「お? まだ口は動くか。まだこの毒は改良の余地があるな」
「ど……く……?」
レーギャルンの言葉に魔王Aは頷く。
「戦場で馬鹿正直に相手の言うことを聞いちゃダメだぞ? こんな風に罠にかけられるからな。話をしたいなら完全に行動の自由を奪ってからするべきだな」
「それで? この後はどうするんだい?」
魔王Bの言葉に魔王A平然と言い放った。
「交渉の材料にするのは王女2人でいい。他の面々には悪いが死んでもらおう。戦争相手の精鋭なんか殺せるときに殺しておくべきだろうしな」
レーギャルンは魔王を罵りたかった。しかし、毒が回ってしまって口も動かない。魔王Bが剣、魔王Cが斧を構えてレーギャルン達に近寄ってくる。そして2人が武器を振るって動けない部下達が殺されていく。
そしてレーギャルンとレーヴァテインだけが生かされている。レーヴァテインが意識を失っているようだが、レーギャルンは意識を必死に保つ。この憎き相手を視線で殺すかのように。
その視線を受けて魔王Aは困ったように肩を下げた。
「動けない騎士を殺す相手が憎いか? だけどな、俺たちがやってるのは戦争なんだ。自分の軍の仲間を殺す可能性がある相手を生かしておくわけないだろ?」
魔王Aが言葉を続ける。
「俺は召喚士である前に軍師だ。だから味方の損害を少なくして多くの敵を殺す方法をとる。恨んでくれて結構。外道と呼んでくれて構わない。それでこの世界が平和になってくれるのなら万歳だよ」
レーギャルンに魔王Aの瞳が見える。その瞳は深淵のような漆黒であった。
「さて、王女という立場に感謝するんだな。だから殺されないで済むんだからな」
そう言いながら魔王Aが近寄ってくる。毒が回って武器を持つどころか立ち上がることすらできない。
「あ……く……」
「素直に意識を飛ばせ。そっちの方が楽だぞ」
魔王はそう言いながら縄を取り出していた。そしてレーギャルンを捕縛しようとした瞬間にレーギャルンとレーヴァテイン姉妹には聞き覚えのある大音声が響き渡る。
「姫様に触るな下郎がァァァァっぁ!!!!!!」
そう言いながら血塗れになりながら魔王Aに大斧を振り下ろした『爺』の声を聞きながらレーギャルンは意識を無くした。
「逃げられた、か」
「珍しいじゃねぇか、お前が敵を読み違えるなんてよ」
「烈火の時代にもなかったことだね」
「……まぁ、可能性があるとは思っていたが、どうしようもなかったからな。なにせ数ではこっちが圧倒的に不利だったんだ」
「召喚士、怪我はどうするの? リバースの杖+持ってきているから治すことはできるわよ?」
「……いや、この傷はこのままにしておこう」
「あら、らしくないじゃない。失敗の証として残しておくつもりかしら」
「ウルスラ、俺はそんなに殊勝な性格をしているわけないだろ。ただ……愚直に忠義を尽くした老騎士に敬意を示したいだけさ」
後日、ヴァイス・ブレイブから『ムスペルの忠臣を返す』という言葉と共に送られてきた丁重に扱われた『爺』の遺体を見てレーギャルンだけでなく、ムスペル王国の騎士全員が深い悲しみに囚われたのだった。
レーギャルン
作者は『第一王女はスルトのやり方について行けなくなってヴァイス・ブレイブの味方になるかしら』なんて考えていたら普通に敵として登場。この話の展開的に召喚士を仇敵扱いしそうで、この先に仲間になったらどうしようかと思ってる。
爺
お姫様を助ける役割が必要になったのでオリキャラを作成。設定では若い頃からスルトと一緒に戦場を駆け抜け、王女2人の教育役も務めたムスペル王国の重臣。最後は修羅・アイラの追撃を振り切り、部下数名に王女2人を託して単身で外道メンバーに挑んで戦死した。自分で設定考えていて、なんか好きになった。名前がないのは考えるのがめんどくさかったからです。
特攻英雄Aチーム
リン(ノーマル)、エリウッド(ノーマル)、ヘクトル(ノーマル)、ウルスラに召喚士という悪しき烈火面の体現チーム。再行動要因でニニアンを入れたかったが、この作品のキャラ的にウルスラの方がよかったのでウルスラで。ハードまではクリアできたけどルナが厳しい。ウルスラもスキル途中だし、腹黒親バカにもスキル継承させなきゃ厳しいかなぁ
ストーリーを悪しき烈火の体現者達でクリアしていたら思いついてしまったシリアスネタ。どう考えてもレーギャルンが正義の味方です。というよりもうちの三馬鹿は正義の味方じゃなくて悪役の方がしっくりきてしまうことに納得してしまった。爺のキャラを作っていたらムスペル王国編も書きたくなったよ。今後もレーギャルン視点になったらシリアスになるかも。え? 味方になる可能性がある? それはその時に考えましょう。
あ、次回からはいつものノリに戻ります。個人的に結構好きなキャラのハーディンが無事に引けたのでハーディンネタです。当然のようにキャラは壊します。
セリカ(ダークサイド)かハーディンを狙って赤と青を引いていたらエイリーク(魔道書)1人とエイリーク(ノーマル、星4)が大量に出たんですけどストーカーの呪いですかね?