召喚士と英雄の日常   作:(TADA)

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『別で連載にしてくれませんか(意訳)』という感想をいただいたのでとりあえずお試し編です。


烈火メンバーがいないので最初の予定と違って大人しめの軍師(召喚士)。胃がバーストするどころか『この人は私が真人間にして見せる!!』と間違った使命を燃やすアティ先生です。

サモンナイト3をやっていない人には大変わかりずらいと思いますので、なんだったら読み飛ばしていただいて結構です。


忘れられた島に軍師襲来(サモンナイト3)

 「えっと、それじゃあ召喚の授業をしますね」

元帝国軍人のアティは豪商・マルティーニ家の主人から彼の子供の家庭教師の依頼を受け、その子供であるアリーゼと一緒に工船都市パスティスへ向かう船へと乗り込んだ。しかし、その船が海賊に襲撃された上に嵐によってアリーゼが海に投げ出されてさぁ大変。アティはアリーゼを助けるために準備運動もせずに海へとダイブする。そして「力が欲しいか?」という明らかに詐欺くさい声にアリーゼを助けたい一心で手を伸ばした。

それから無人の砂浜で小さな召喚獣をはぐれ召喚獣から庇おうとする生徒を助けたい気持ちで近くにあった木の枝ではぐれ召喚獣を撃退したり、船を襲撃して来た海賊と共闘してはぐれ召喚獣を木の枝で撃退してようやく一息つけたのだ。

そこでアリーゼに召喚の授業をすることにした。アリーゼがこの島に漂着したときに出会った小さな召喚獣であるキユピーとも仲が良かったためにちょうどいいと思ったのだ。

 「召喚というのは基本的に4つの異世界に住む方々を召喚します。機界・ロレイラル、鬼妖界・シルターン、霊界・サプレス、幻獣界・メイトルパの4つですね。アリーゼが出会ったキユピーはおそらくサプレスの世界出身だと思います。何故だかわかりますか?」

 「えっと……あ!! 天使さんだからですか?」

アリーゼの言葉にアティは優しい表情で頷く。

 「その通りです。それぞれの世界にはそれぞれの方々が生活しています。そうですね……あ!! せっかく全ての世界のサモナイト石が揃っているので、私がお手本を見せてあげますね」

ようやくできた教師らしい姿にアティはウキウキしながらサモナイト石の準備に入ろうとする。そこでアティが学生時代の親友から「いいか? お前は決して召喚するなよ? 絶対だぞ!!」と念を押されていたのを思い出した。確かにロレイラルでやった時はヴァルハラを召喚してしまい学院が崩壊し、シルターンで召喚した時は龍神オボロを召喚してしまい学院が崩壊し、サプレスで召喚した時は聖鎧竜スヴェルグを召喚してしまい学院が崩壊し、メイトルパで召喚した時は牙王アイギスを召喚してしまい学院が崩壊するという事件が起きたが、今回はきっと大丈夫だ。だが、ちょっと不安なので無属性のサモナイト石を使うとしよう。

 「あれ? 先生。無属性のサモナイト石を使うんですか?」

 「へ!? え、ええ。あくまでお手本ですから。無属性だったらそんな危険な召喚獣も出て来ませんからね」

 「……え? 危険?」

アリーゼの惚けた声を聞き流しながらアティは無属性のサモナイト石に魔力を込める。

そして当然のように暴走した。生まれた世界を間違えてしまったアティ先生の魔力はたかだか石ころ1つでは収まらないのだ。

 「あ!? あの!! 先生!? なんかすごいことになってますよ!!」

 「だ、大丈夫のはずです!! 『名もなき世界』だったら危険な召喚獣は出てこないはずです!!」

アティのご丁寧なフラグに答えるようにアティが魔力を込めていたサモナイト石から光がスパーキングする。

 「「きゃあ!!」」

アティはアリーゼを庇いながら、アリーゼは突然の出来事に何が起こったかわからずに悲鳴を挙げてしまう。

 「ったく。今回は随分と乱暴な召喚だな」

そして響いたのは青年の声。アティは声が聞こえた方をみると黒いローブを羽織った青年が立っていた。そして青年は何かを確認するかのように自分の体を見ると、今度はアティの方を見た。

 「魔力のパスを見る限りにあんたが俺を召還した人で間違いないか?」

 「……え? あ、はい」

思わず惚けた返答をしてしまうアティ。しかし、青年はその答えを聞くと胡散臭い笑顔を浮かべながら口を開いた。

 「様式美として聞いておくとしようかね」

そこで青年は一度真面目な表情をしながらアティに手を差し出しながら口を開いた。

 「問おう、貴女が私のマスターか?」

 「………はい?」

この日からアティが召還してしまった外道護衛獣に振り回され、アティは胃にダメージが蓄積される日々が始まるのであった。

 

 

 

 

 

《ジャキーニ捕縛後》

アティは走っていた。アリーゼからアティの護衛獣が捕縛したジャキーニ達が働いているユクレス村に行ったことを聞き、働いているはずの果樹園に行ったら護衛獣と護衛獣が召還したプニムと一緒にジャキーニを連行して行ったことをジャキーニの義弟であるオウキーニから慌てた様子で聞いたのだ。アティは自分の護衛獣との関係はまだ短いが『ちょっとヤバい人』という認識である。その護衛獣が楽しそうにジャキーニを連れて行った。完全に危険な予兆である。

 「軍師!! さ……ん……?」

護衛獣の名前(本名は教えてくれなかった)を叫びながら軍師とジャキーニがいるはずの浜辺に飛び出すと、アティの思考は停止した。

 「いやじゃぁぁぁあぁ!! 海の水か!? た、助け!! ガボボボボオ!!!」

 「うん? どうした髭面? 陸が嫌っていうから浜辺に埋めて海水に浸らせてやってるんだぞ? 叫ぶんじゃなくてお礼を言えよ。うん?」

 「これは拷ガボボボオボ!!」

 「え? 拷問? 拷問ってこんな生ぬるいもんじゃないぞ? いや、体験したいって言うならやるけど……うん!! 気が進まないけど頼まれたなら仕方ないよネ!!」

アティが見る限りで軍師はノリノリだった。明らかに気が進まないと言う雰囲気ではない。

 「ちょ!! ちょっと待ってください!! 軍師さん!!」

 「うん? おおマスターか」

 「な、何やってるんですか!?」

アティの言葉に心底不思議そうに軍師は首を傾げる。

 「果樹園で話をしてみた感じ、自分の立場を理解できていないみたいだからちょっと教育を施しておこうと思ってな。なに、感謝の言葉ならいらないぞ。これは護衛獣として当然のことだからな」

ここでアティは気づいた。この『護衛獣・軍師』は『ちょっと』ヤバいではなく、『とてつもなく』ヤバいと言う存在だと言うことに。

ここで素直に距離を離すことができたら、アティの胃痛はなくなったことだろう。しかし、アティは根っこからの善人で性善説を体現したかのように人物だ。

 (彼は私が真人間にしてみせます!!)

軍師のプニムがデンプシーロールをジャキーニの顔面に叩き込んでいる横でアティはそう決意したのだった。

前途多難というレベルではない。

 

 

 

 

 

《軍師との夜会話》

アティはメイメイショップへと向かう。そうと言うのもアティの護衛獣である軍師がメイメイショップに居候しているからだ。初めてメイメイに出会った時に軍師が「あ、メイメイじゃねぇか」と声をかけられた瞬間にメイメイの表情がとてつもなく嫌そうな表情になったのをアティは見逃さなかった。

その後に軍師が直接メイメイと交渉した結果、軍師はメイメイショップに居候することになった。

 「やっぱり、お話は大事ですからね」

ふんす、とやる気を出しながらアティはメイメイショップの入り口に立つ。軍師と対話をしようとするとかいつの間にかクソ高い壺を買わされていてもおかしくない出来事である。

 「こんばんは」

そう声をかけながら店内に入ると、メイメイがお酒を呑みながら出迎えてくれた。

 「あら、せんせ〜。どうかした?」

 「あ、はい。軍師さんとお話しようと思いまして」

アティの言葉にメイメイはお酒に酔って上機嫌だった表情が真顔になる。

 「先生。あれと会話するという発想は捨てたほうがいいわ。いつの間にか詐欺にあうから」

 「そこまでいいますか!?」

メイメイのあんまりは発言にアティが思わず叫ぶ。それを聞いてメイメイは再び酔った雰囲気を出して気楽に笑う。

 「にゃはは〜。まぁ、あれと関わるのはオススメしないわよぉ。何せ鬼畜と外道とクソを混ぜ合わせた挙句に人間が大嫌いだからねぇ」

その言葉にアティは首を傾げる。

 「そうでしょうか……軍師さんの瞳にはどこか他人を思いやれる光がありましたが……」

アティの言葉にメイメイは再び真顔になった。

 「メイメイさん?」

 「ん〜、先生は軍師との関わりは単純に召喚してしまった贖罪から関わりを持とうとするの?」

 「え? いえ、それはもちろんありますけど。何よりどこか救いを求めるような瞳をしていましたからです」

アティの言葉にメイメイは破顔する。

 「なるほどね〜。軍師が先生の言うことを聞くわけがわかったわ〜」

 「あの、それほど言うこと聞いてくれませんけど?」

何せ昼間から基本的に相方のプニムと一緒に行方不明。やってきたと思ったら外道行為で海賊一家からのヘイトを集めている。

だが、なんだかんだ言いながらも脱出用の船の修理の材料を持ってきてくれているのだ。法外な値段をふっかけているが、そのお金もマスターであるアティに渡してくるので、結果的に無料である。そのことをカイル達に伝えようとするとどこからともなくプニムが飛んできてアティに当身を打ち込んでいくのだ。そのために海賊一家から軍師に対する評価は最低値だ。

そのことをメイメイに伝えるとメイメイは大笑いした。

 「良かったじゃない、せんせ」

 「いえ、良くないですよ。軍師さんの評判が酷いままですから」

 「軍師は有象無象の評判なんか気にしないわよ。自分が信用できると思った人に知ってもらえたらそれでいいって考えだからねぇ。ほんと……つくづく軍師気質というか……気に入った相手のためなら悪名くらいどんとこいって性格だからねぇ。昔から」

メイメイの言葉にアティはどこか引っかかりを覚える。

 「メイメイさんは軍師さんとの付き合いが長いんですか?」

アティの言葉にメイメイはグラスに入っていたお酒を一気に飲み干す

 「同じ師匠の下で学んだ仲よ〜。それこそあれがヨチヨチ歩きの時からかしらね〜」

そこまで言ってメイメイはニヤリと笑う。

 「どう? あいつのこと知りたい?」

メイメイの言葉にアティは首を振る。

 「私は聞くんだったら本人の口から聞きたいです」

 「プッ!! あはは!! うん!! あれが先生を気に入った理由がちょっとわかった!!」

どこか楽しそうに笑うメイメイをアティは不思議そうに首を傾げるのだった。

ちなみにこの日は軍師が帰ってくることはなかった。

 

 

 

 

 

《帝国軍の指揮官がアズリアとわかった後の軍師との会話》

アティは夜に軍師を探して砂浜を歩く。昼間にメイメイと会った時に今晩はこの周辺にいるという情報を聞いたからだ。

そしてしばらく歩くと砂浜で焚き火をしながら何か調合している軍師の姿が会った。隣ではプニムが大量の魚を食べている。

 「え〜と、こんばんは」

 「あん? ああ、マスターか。どうかしたか?」

アティの言葉に軍師は顔を上げる。

 「座っていいですか?」

 「別に俺に止める権利はないな。それにあんたは俺のマスターだろ? 命令してもいいくらいじゃないか?」

軍師の言葉にアティは苦笑する。

 「たとえ召喚士と召喚獣の間柄でも、できることなら強制はしたくないです」

アティの言葉に軍師はどこかつまらなそうな表情をしながら何事かプニムに指示を出す。するとプニムは一瞬で消え去ったと思ったら5秒ほどで丸太を用意してきた。椅子のつもりらしい。

プニムにご褒美の甘いものをあげながら軍師は口を開く。

 「そんで? 何かあったか?」

軍師は基本的に団体行動をしない。護人などは個人的に会っているようだが、全体で集合した時などは絶対に出てこない。だから、アティが持っている剣を帝国軍が取り返そうとしていることを知らないのだ。

 「私が持っている魔剣を帝国軍が取り返そうとしています。そしてその帝国軍を率いているのは私の親友なんです」

そう言いながらアティは焚き火を見つめる。士官学校時代の同期で親友の女性。いつもアティのズレた言動をたしなめてくれていた人物だ。

そこでアティは軍師が自分のことを見つめていることに気づく。

 「ふむ……マスターよ。要は剣を返すわけにはいかないが、親友とも戦いたくない。そう言うことだな?」

アティは驚く。何せ誰にも言っていないことを言い当てられたからだ。

 「別に驚くほどのことじゃない。マスターの性格から推測しただけだ。だが当たりだったようだな」

軍師はそう言いながらも今度は別の容器で薬の調合を始めた。

 「……何か戦わないで諦めてもらう方法はありませんか?」

 「あるぞ」

 「そうですよね。そんな都合……え?」

当然のように言い放った言葉にアティは思わず惚けた声が出る。そんなアティを気にすることなく軍師は別の薬草を容器に放り込みながら続ける。

 「だからあると言っている」

 「ど、どどどどどんな方法ですか!?」

まさか世間話のつもりが解決方法があると言われてしまい、アティも焦る。そして軍師がアティの方を見ずに口を開く。

しかし、この軍師は基本的に鬼畜で外道である。アティが望むような『話し合いで解決!! Love&Peace』なんぞ糞食らえである。当然、出てくる方法も闇になる。

 「考える思考と心があるから『剣を奪い返す』と言う行動に出る。だったら簡単だ。思考と心を壊せばいい」

 「……はい?」

あんまりな発言にアティから不思議な声が出る。その声は軍師が何を言っているか理解できていない言葉だ。

しかし、軍師はそんなアティを無視して言葉を続ける。

 「1週間ほど時間をもらえればそいつの精神をぶち壊す拷問を与えて廃人にできるけどな。それをやるとそいつの人格が崩壊して二度と元には戻らない」

 「だ、ダメです!! そんなの!!」

アティは慌てた様子で立ち上がりながら叫ぶ。そこには親友をそんな状態にしたくないという気持ちは当然あったが、それ以前にこの青年にそんな汚れ仕事をして欲しくないと言う気持ちがあった。

 「だったらもう1つの方法だな」

 「……拷問とかはダメですよ?」

アティのジト目に応えた様子もなく軍師は再び口を開く。

 「こいつを使う」

そう言って差し出してきたのは軍師が調合していた薬の1つだ。匂いを嗅いでみるが特に刺激臭などはない。

 「これは?」

 「飲んだ人物の思考回路をパーにするお薬だ」

アティは軍師の言葉を聞き、よく考え。幾つもの可能性が浮かび上がったが、結論は1つだった。

 「麻薬じゃないですか!?」

 「うむ。だがこれはあまりオススメしない。何せ定期的に摂取させないと暴れだすからな」

 「禁断症状ですよ!? 使っちゃダメですよ!? 絶対にダメですよ!!」

 「うん? それはやれって言うフリでいいのか、マスター」

 「違いますよ!!」

ここで軍師の性格の矯正は不可能だと気づければ良かった。しかし、アティは愚直だった。

 (これは私が真っ当な人にしてあげます!!)

新任熱血教師の思考回路になっている。ここに軍師の出身世界の友人達がいたら必死に説得して無駄を悟らせようとしただろうが、アティにとって残念なことにそれらの人々がここにはいなかった。

 

 

 

 

《ジルコーダ戦後》

アティは上機嫌になりながら島にある集落を巡る。先日のジルコーダ騒動で海賊一家と島の住人達。さらには(ほんのちょっぴり)軍師との関係も近づいたのだ。海賊一家も自ら集落に行っており、軍師も基本的に行方不明なのは変わらないが、たまに集落を回って薬を売って歩いているらしい。

それを聞いたアティはすぐに商品の中に麻薬がないかの確認をした。当然の行動だろう。

そしてアティはラトリクスに入る。そしてすぐに立ち話をしているラトリクスの護人であるアルディラと軍師の姿を見つける。当然のように軍師の背後に立っている機械兵士の姿も確認できた。

だから厳しい表情をして軍師のところに向かう。軍師もアティに気づいたのか呑気な表情をしながらアティを見る。

 「おう、マスター」

 「元あったところに返してきなさい」

 「そんなママ!! こんなに可愛いのに!! なぁ、ヴァルゼルド!!」

 「はいであります!! 自分は清く正しく強い機械兵士であります!!」

アティは軍師が2人になったデジャブを感じた。ヴァルゼルドと名乗った機械兵士のノリがどう考えても軍師だったからだ。

アティは半目になりながらアルディラを見る。アルディラもどこか頭痛を堪える表情をしていた。

 「アティ。私がしたことはラトリクスに所蔵されているライブラリのアクセス許可を出しただけよ? この機械兵士を直したのは軍師よ」

アルディラの言葉にアティは本気で怒り出す。

 「なんでそんなに危険なことするんですか!! 機械兵士は暴走したらとっても危ないんですよ!!」

 「こいつ見ても危険だって言える?」

軍師の言葉にアティもできる限り見ないようにしていた召喚獣をみる。

プニム。陽気でお調子者な性格で、体はプニプニしているがなかなかの力自慢で大きな手に見える耳で敵を殴って戦う召喚獣だ。

しかし、プニムの前に『軍師の』がつくと別の召喚獣になってしまう。見た目と性格は変わらないが、圧倒的な戦闘力になる。先日のジルコーダとの戦いの時には軍師の指示で洞窟の天井を殴って崩落させて雑魚ジルコーダを生き埋めにし、ボスジルコーダの飛ばした酸を風圧でかき消してボスジルコーダに関節技を仕掛けていた。

ユクレスの護人のヤッファすらも『プニムの皮を被った別の何か』と言い放つのが『軍師のプニム』だ。

アティとアルディラの視線に気づいたのかプニムは不敵な笑みを浮かべるとシャドーボクシングを始めた。空気を切り裂く音が凄まじい。

アティとアルディラはお互いに頷いてプニムのことは見なかったことにした。

 「それで? その機械兵士……ヴァルゼルドをどうする気なの?」

アルディラの言葉に今度は珍しく軍師が不思議そうな表情になった。

 「不思議なことを聞くんだな。改造するに決まっているだろう」

 「「改造!?」」

 「ロボットを見たら乗り込んで動かしたり改造したりしたいと思うのが男の子の心理として当然だろう」

こう言った軍師は一歩も引かないだろう。むしろアティが完全論破されてしまうことは島の全員が知るところである。

だからアルディラもせめてもの抵抗をする。それすなわち

 「アティ。できる限り見張っていてね」

アティ(生贄)に丸投げすることだった。

 「はい!! 任せてください!!」

 「う〜む、この信用度0の感じに慣れている自分がいるな」

使命感に燃えるアティの横で空間ディスプレイに改造計画を作り始めている軍師がいるのであった。

 

 

 

 

《話が飛んで無色の派閥襲来》

アティは親友であるアズリアとの決戦に勝利していた。この場にいない軍師の作戦通りに動いてみたところ、そこらじゅうに張り巡らされていた罠に帝国軍がかかって行動不能になったのだ。

アティも流石にまずいと思ったのでアズリアと一騎打ちをすることにしたのだ。アティがこの島に漂着した時から愛用している木の枝を構えた瞬間に仲間達が戦慄し、イスラも含めた帝国軍の面々が黙祷を捧げ、アズリアの表情が絶望に染まったことにアティは気づかなかった。

アズリアの『秘剣・紫雷絶華』を木の枝で斬りはらい、横薙ぎにアズリアを木の枝でぶん殴ったのだ。その際にアズリアから女性から出てはいけない声が漏れた気がしたが、アティは聞かなかったことにした。田舎育ちで山を走り回ったアティと違って育ちの良いアズリアからそんな声が出るとは思わなかったからだ。

 「アズリア。和平を結んでください」

 「……あぁ、勝者からの和平の願いだ。受け入れるさ。だからその木の枝を仕舞ってくれ」

アズリアが受け入れてくれたことにアティは嬉しくなる。

 「やっぱりお話をすればわかってくれるんですね……!!」

『それはお話(物理)だ』というツッコミを入れられる軍師は不在であった。

しかし、その空気をぶち壊す雰囲気を醸し出す集団がやってきた。見るからに暗殺者の格好をした集団と、典型的な召喚士の格好をした集団。

それを味方だと思った帝国軍の一部を止めたのはイスラであった。

 「やめておきなよ。あれは味方じゃない」

 「……どういう意味だ、イスラ?」

アズリアの言葉になんでもないようにイスラは告げる。

 「あれは無色の派閥さ。君たち島の住人にとっては仇敵さ」

イスラの言葉に島の住人達から殺意が漏れる。しかし、それを気にした風もなく、なんか偉そうな男性が現れる。

するとその隣に立つ女性が口を開いた。

 「傅きなさい、召喚獣供!! このお方こそ貴方達の主人であるセルボルト家の現当主、オルドレイク・セルボルト様ですよ!!」

しかし女性の言葉に素直に頷く住人はいない。なにせ住人達にとっては無色の派閥は仇敵だ。

それらを見てオルドレイクは見下したように笑う。

 「ふむ、先祖の正当な権利でここを接収しようと思ったが……まぁ、素直に従わぬか。ならば不穏分子は殺すしかあるまい」

その言葉にアティ達から緊張が出る。確かに帝国軍とは戦っていたが、お互いに死者は出さないように戦っていた。だが、目の前の男は平然と殺すと言った。つまりここから始まるのは本当の殺し合いになってしまう。

心優しいアティはそれでも話し合いで解決したいと思ってしまう。護衛獣の軍師からも甘いと言われてしまっているが、そこはアティとしても譲れない一線だった。

しかし、オルドレイクはイスラを見てどこか怒りの表情を見せる。

 「それで、同志・イスラよ。此度の裏切りは如何なる理由があるのか?」

オルドレイクの言葉にイスラは疲れ切ったように肩を竦める。

 「簡単なことですよ。貴方達かけられていた呪い。それ以上に恐ろしい存在がこの島には存在している」

 「……ほう、面白い戯言だ。このような辺境の島にそんな存在がいるのか。だが、こう言ってはなんだがそこにいる面々がそうとは思えん」

オルドレイクの表情が愉悦に染まる。

 「ひょっとしたらここにいる全員を皆殺しにすればその恐怖の存在が現れるのか?」

そしてオルドレイクは片手を挙げる。総攻撃の指示の準備だとわかるアティ達も武器を構える。

 「やれ」

オルドレイクのその言葉と同時に振り下ろされる腕。そして殺意を込めてアティ達に向かってくる暗殺者達。

そして暗殺者達は横合いから飛んで来た銃弾によって蜂の巣になって即死した。突然の惨劇に敵味方問わずに無言の空間が溢れる。

 「ふむ、ようやく来たか」

 「敵戦力の30%の削減に成功であります!! 参謀殿!!」

 「おう、ご苦労さん、ヴァルゼルド」

そこに立っていたのは片方にプニム、もう片方に魔改造を施されたヴァルゼルドを従えた軍師。

軍師は笑っていた、心底愉快そうに笑っていた。

 「マスター達と帝国軍の戦闘はお互いに殺そうという意識が薄かったから見逃していたが……お前達にはそんな情け必要ないよな」

島の外からやって来た悪意は、島内に隠れていた狂気が迎撃する。

狂気による一方的な殺戮の始まりである。

 

 

 

 

 

《番外:アティ先生の休日》

 「軍師さん!!」

 「うん? どうしたマスター」

 「どうしたじゃありませんよ!! なんですか渡してくれた水着!! せっかくのプレゼントだと思ってワクワクしながら開けて見たら出て来たのはどう見てもヒモですよ!?」

 「失礼な話だな。あれはとある世界ではスリングショットと言って水着と認められている代物だぞ?」

 「あんなヒモ見たいな水着がですか!?」

 「参謀殿!! 教官殿のそのお姿は望遠レンズでしっかりと撮影しておいたであります!!」

 「よくやったヴァルゼルド。その映像は島内にいるマスターファンに高額で売りさばくとしよう」

 「ちょ!! 軍師さんが個人的に楽しむ分にはギリギリ許せますが、販売は認めな……待ちなさい!! 軍師さん!! ヴァルゼルド!!」

 




軍師
異世界召喚体質でサモンナイト3の「忘れられた島」にアティによって召喚されてしまった存在。最初は外道行為のオンパレードにアティ先生の胃をマッハにするつもりが、アティ先生の「召喚士を真っ当な道に戻す!!」という目標によって外道行為がかなりなりを潜めた。そして番外編で軍師の性格設定にちょこっと触れていくスタイル。

アティ
リンちゃんですら説教(言葉)を諦めて説教(物理)になったのに、根気よく説得(言葉)を軍師に続ける存在。聖母かな? あぁ、女神か。しかし、その潜在能力はクソ高く、学生時代にそれぞれの世界の最高位の召喚獣を呼び出していたり、木の枝ではぐれ召喚獣だけでなくアズリアを倒すという完全なバグ。軍師にとってアティは『姉のような人』であり、数少ない心から受け入れる人である。しかし、その辺りのことを書く予定はない。

イスラ
ある意味でこの作品1番の被害者。記憶喪失を装って島に潜入したと思ったら軍師に拉致されて拷問(初球)を受けさせられる。素直に帝国軍のスパイであると言ったら「他に情報隠してるだろ、吐けよ」と言われて拷問(中級)にレベルアップ。その拷問に耐えきれずに自分の呪いのことや無色の派閥のことを話したら「じゃあ死なない呪いがどの程度か実験な」と言われて拷問(上級)を受けさせられた。プロの拷問者である軍師が死なずに、尚且つ精神崩壊を起こさない程度に拷問を書けられた結果、軍師に絶対服従となり、軍師に対して帝国軍と無色の派閥の両方の情報を流すようになる。ちなみにかけられていた呪いはあっさりと軍師が解除しました。

メイメイ
軍師の過去を知る数少ない人物。本編の隠し設定をこっちで出していいのかと思うけどまぁいいかの精神で書きました。

軍師のプニム
この世界のワンパンマン。どんな敵も一撃粉砕。

ヴァルゼルド
軍師によって魔改造を施されたポンコツ機械兵士。しかし戦闘力はガチである。

無色の派閥
基本ルート:軍師による皆殺し。そのために今後のサモンナイトシリーズが消滅する
トゥルールート:アティが軍師の好感度を一定値超えていると、オルドレイク、ツェリーヌ、ウィゼルは生き残る。赤き手袋は皆殺し。ちなみに軍師の好感度を一定値超えさせるには全話の夜会話で軍師を選択。昼間の選択肢でも常に正解しないと辿り着かない。ここのアティ先生はそれを成功させたすごい人。
どちらのルートでもヘイゼルは生存することになる。

アティ先生のスリングショット
作者のみたいという欲望



そんな感じで軍師がサモンナイト3に召喚された場合をダイジェストでお送りしました。連載で期待してくれるのは嬉しいですが、作者の投げている二次創作の基本スタンスは思いついたネタ短編を投げていくスタイルですので、連載はしたくないのですよ。というより連載にするとなるともう一度サモンナイト3をやらなきゃいけない。今更PS2を出したくないですし、リメイクPSPは持っていません。え? アーカイブスがある? ……保留で!! あ、念のためにタグにクロスオーバーを追加しておきますね。ひょっとしたらヴァイス・ブレイブにアティ先生が召喚される可能性もあるので。

そして前話で酷いキャラにしたカアラと黒い牙に対してお怒りがそろそろ来るかなぁと思っていたら、本文ではなく後書きに対してツッコミがくる現実。心が広い読者さんばかりで作者も一安心です。

アンケートにて『父親達の座談会(超意訳)』の意見をいただきました。それを見た瞬間にエリウッドとヘクトルのシグルドに煽られるアルヴィスの様子を幻視したので書こうと思います。さ、まずは登場キャラの選抜からだな。
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