今回の大英雄戦の名前を聞いてから俺の灰色の脳細胞が刺激を受けている。どこかで聞いたことがあるような名前だった。
俺は数多くの世界に召喚されて世界を救ったり滅ぼしたりしてきた。そのために大量の英雄や英雄候補と関わりを持っていた。そのために今回はその中で関わりを持った人物だろうと思っていた。
だから大英雄戦で俺を驚愕の表情を浮かべながら俺を見つめてくる褐色グンバツスタイル美人をみて俺は記憶を呼び起こす。早く呼びおこさなと静かに怒りのボルテージを上げているリンのソール・カティが俺に降りかかり、俺が痛い目にあう。
だが、俺が記憶を呼び起こす前に褐色グンバツスタイル美人が口を開く。
「お父様!!」
次の瞬間に戦場に俺の血の雨が降った。
そんな感じで大英雄戦はボスがこっちに寝返ったことで雑魚の皆さんは鏖殺という事件でクリア。現在は俺の部屋でリンと自称娘のインバースが椅子に座って向き合っている。
俺? リンの命令で床に正座ですが何か?
「それで? なぜ別世界の貴女が召喚士の娘なのかしら?」
「いや〜ん! お父様、このおばちゃんこわ〜い!」
「落ち着けリン!!」
流れるようにリンを煽ったインバース。その煽り表情がエリウッドとヘクトルにそっくりだったためかリンの臨界点は即座に突破した。
俺が必死になって止めて落ち着かせると、リンはため息を吐きながらソール・カティとキャンドルサービスとミュルグレと青のプレゼント箱と疾弓ミュルグレをしまった。
「それで? どういうこと、召喚士」
「そう、あれはおよそ1万8000年前のことだろうか」
俺が軽いジョークを飛ばそうとしたら顔の真横に矢が突き刺さったので真面目になろうと思う。
「俺が何回目かわからない異世界召喚を体験した時かな。俺の召喚主がクソがつくほどのお人好しでな。他人のために自分を切り捨てるような生き方をする人だった。その人が子供達に楽しそうに勉強を教えているのを見て軽く影響されてな。次に召喚された世界でファウダーとかいうクソ司祭が村人を皆殺しにしているところに遭遇してな。軽く捻ってやってから追い返して金目のものがないか物色していたら生き残りの少女がいたから養子兼弟子にしてみた」
「所々に入るクズ発言で安心したわ。良い人に召喚されても軍師の性根は治らなかったのね」
「そんなに褒めるなよ」
俺の言葉にリンは無言でソール・カティを俺の頭に叩きつけてくる。痛みでのたうち回る俺を無視してリンはインバースと話を続ける。
「それで? インバースは何故召喚士を父と呼ぶのかしら?」
リンの言葉にインバースは妖艶に笑いながら言葉を続ける。
「あら? 私に生き残る手段を教えてくれ、さらには15歳まで育ててくれたのだからお父様と呼ぶのは当然じゃないかしら?」
「ちなみに生き残る手段はどんな方法?」
「単純な相手を騙す方法や効率よく敵を始末する方法。いかに自分の武器を使って相手を嵌める方法かしら」
「召喚士。将来、子育てに貴方は一切口を出さないでくれる?」
リンの視線が絶対零度状態。ちゃうねん。あの頃はまだ何を教えていいかわからなかったから自分の持てる技術全てを教え込んじゃっただけやねん。その後はちゃんとその子供にあった教育を施したから。
「ところでお父様」
ヘビに睨まれたカエル状態の俺のところにインバースがしゃがんでくる。溢れそうな胸元と見えそうで見えない下着が絶妙にエロティックだが、エロスより先に子供の時からそういう教育をしてしまったという(超珍しい)罪悪感が俺を襲っている。
「この世界には召喚士と英雄の絆システムがあると聞いたのですけれど?」
「……結ばないぞ?」
「それはわかっていますし別に構いませんわここにリンという女性がお父様が私によく聞かせてくれたお母様候補のお方なんでしょう? ええ別にそれは構いませんし母親ができるのはむしろばっちこいなわけですけど結局最強なのは娘属性妹属性弟子属性に幼馴染属性さらにはお父様より年上になってしまったことにより姉属性まで完備することになったインバースちゃん最強なのは確定的に明らかなわけでいっそのことヴァイス・ブレイブでもお父様とお母様(仮)のリンさんに私が同じ部屋で生活して『楽しい召喚士一家』なんて生活も楽しいじゃないかと思っているわけですよいえ間違いがあってお父様が血の繋がらない娘に欲情して私を襲って欲しいとかそういう欲望も私は持っているわけですがそれでもお母様(仮)のリンさんも同時に孕めばセーフというかむしろ家族も増えるしインバースちゃん大勝利だと思うわけですよ最悪一緒に生活できなくてもお父様と一緒の世界にいられるだけで私的には幸せなんですが『人の欲望には際限がない』というのがお父様の教えですので私も間違いなく一緒にいるだけじゃ我慢できなくなってしまいます食事作りはリンさんに譲りますからせめて体調管理くらいは私にさせていただきたいと思うんですせっかくお父様から薬草に関する扱いも学ばせていただいたことですからああなんだったら武器も杖に持ち替えて回復役もこなしましょうか? お父様の教えの通りに暗器の扱いにも慣れていますので赤魔以外にも様々な役割をこなすことが可能ですしこれだけ広範囲な役割を果たせる愛娘インバースと絆を結んでステータスUPを図るのは軍師として当然だと思います」
「どうしようか召喚士。プリシラが頻繁に詰所に投げ込んでくる怪文書染みたことをインバースが言っているんだけど」
「教育よろしくお母さん」
リンの右ストレートが俺に突き刺さった。モヤシな俺が当然耐えれるわけがなく壁まで吹っ飛んでいく。
そしてインバースが倒れている俺を抱き起こしてリンに向かって叫ぶ。
「お母様!! 確かにお父様は鬼畜で外道で救いようがないクズですけど、私達の家族なんですよ!!」
「インバース。子供の貴女にはわからないかもしれないけれど、その男には言葉では意味ないの。むしろ逆に論破されるから手を出すことの方が大切なのよ」
「お前ら酷くない……?」
何故自称娘と自称嫁にここまで貶められなきゃいけないのか。
しかし、インバースは作戦が大当たりした時の俺の悪い笑みを浮かべる。
「リンさん。今、私がお母様と言ったことを否定しませんでしたね。これは認知されたと思って構いませんね。私のお父様は召喚士、お母様はリンさんだと思っていいですね?」
「な!?」
否定しようとするリンをインバースは手のひらで言葉を抑えて言葉を続ける。
「リンさん。これは貴女にとって悪い取引ではないと思いますよ? 何せお父様は鬼畜で外道で人間のクズですけど何故か人から好かれる特殊能力を持っています。私はここにきてまだ時間は浅いですが、すでに数多くの女性から言い寄られているのを目撃しています。ここで私という召喚士の娘の登場によってさらに争奪戦は荒れるでしょう」
インバースの言葉にリンは黙って聞いている。ちなみに俺はインバースの手で抑えられて口を開けない。
「しかし、私がリンさんのことをお母様と呼ぶようになれば他のライバルより先んじることができるでしょう。どうですか? 貴女にとっても悪い取引ではないと思いますが?」
(……落ちたな)
俺が内心で考えているとリンとインバースが無言で握手をするのであった。
ちなみに俺に拒否権はなかった。
インバース
褐色グラマラス妖艶美女。原作のキャラ設定は各自ググッてね! この作品ではファウダーに滅ぼされた村からファウダーではなく召喚士に拾われて育てられた。そのために謀略家とか軍師系統の能力が超強化。ギムレー教団への参加は『無駄に長く生きている竜だったらお父様を呼び出す方法も知っているでしょう』という軽いノリだったご様子。
怪文書
作者がアズレンを始めたことで知った存在。是非ともこの作品で書きたかったけど最初に書くのはまさかのインバース。ちなみに我がヴァイス・ブレイブでの怪文書枠は今のところプリシラ。
人の良い召喚主
もしかしなくてもアティ先生
そんな感じで前話のあとがきに書いた『養子設定作りたいなぁ』という願望が叶いました。普通にロリとかショタじゃ面白くないので丁度よく実装されたインバースに白羽の矢が立ちました。召喚士に娘ができたことで書いていた『父親達の宴』に召喚士も参戦できるぜ、やったね!! 全部書き直しだ!!(血涙)
そういえばハロウィンガチャのカゲロウのおかげでカミラ(ノーマル)が星5の10凸に到達しました。やっぱり星4とか星3落ちしていると10凸させやすいですね。羽は常に不足しますけど。フレンドにレーヴァテインちゃんの10凸の方がいるんですけどいくら貢いだんでしょうか。
そろそろ作者もキャラの把握が難しくなってきたので、キャラ設定一覧みたいなものでも作りますけねぇ。