「こ、ここのご飯は美味しいですよね」
「ああ」
どこか顔を赤らめながら昼食を取りながら俺に話しかけてきたのはエイリーク。ストーカー被害から逃れるために咄嗟に俺を選択したのかと思っていたのだが、想定外にガチであったようで、ヴァイス・ブレイブ内にいる時はどこか恥ずかしそうに俺に話しかけてくることが多くなった。この姿を見ていたギムレーは「あまずっぱ〜い!! これは学園青春恋愛物語の匂いがプンプンするぜ!!」と叫んでいたのでコンクリに詰めてニフルの湖に沈めておいた。
俺を狙ってくる人物は肉食系が多いのでエイリークみたいなタイプは貴重である。ちなみに先ほどリンに一緒に食事を取っているところを目撃されたので晩御飯は大豆になるだろう。晩御飯はヘクトルとエリウッドのところに奇襲をかけるとしよう。
ストーカーコンビ? ああ、柱の影で血涙を流しているよ。
「と、ところで召喚士さん」
「なんだ?」
エイリークから見えないように飛んできたノスフェラートを無効化しながら言葉を促す。
エイリークは顔を赤くしながら口を開いた。
「ど、どんなお墓だったら一緒に入っていただけますか!?」
「質問おかしくないか!?」
「ダメなんです!! シスコンストーカーもドM幼馴染ストーカーも無理なんです!! こうなったら召喚士さんと一緒にお墓に入るしか手段がないんです!!」
「別の誰かと結婚とかあるだろ!?」
「絶対に邪魔してくるじゃないですか!? あの2人から私を守ってくれるのは召喚士さんしかいないんです!!」
学園青春物語だったはずがまさかの心中狙いだったでござる。と言うかエイリークがここまで追い込まれているのも想定外なんだが。
いつの間にか取り出した雷剣ジークリンデを構え、眼からハイライトさんが消え去って状態で俺に近づいてくるエイリーク。
「落ち着けエイリーク。話せばわかる?」
「召喚士さん、来世で一緒に幸せになりましょう?」
「これはアカンやつや」
とりあえず遠くで爆笑しながら俺たちのやりとりを見ているロイドとライナスのリーダス兄弟には仲良く会話しているニノとジャッファの写真を見せるとしよう。ニノの愛らしさとジャッファに対する憎しみで憤死してくれるはずだ。
振り上げた雷剣ジークリンデをパリィで防ごうと思った瞬間に、エイリークに凄まじい勢いで抱きつく幼女が現れる。
「おねぇちゃぁぁぁぁぁぁん!!!!!!」
「きゃ!? ミ、ミルラちゃん?」
エイリークに抱きついたのは仮装装備で我がヴァイス・ブレイブにやってきた幼女マムクートのミルラであった。
エイリークに抱きついて至福の笑顔を浮かべた後にエイリークから見えないところでストーカー2人を見る。
「ハ」
思いっきりストーカー2人を嘲笑した。
これらからわかる通りミルラはエイリークのことが大好きなガチレズで、そして己の見た目が幼女なのをいいことにエイリークにベタベタをくっつき、それを羨ましがるストーカー2人を嘲笑するという最悪すぎる存在である。
「もう、ミルラちゃん。いつも言っているけど飛びついてきたら危ないわよ?」
「は〜い、ごめんなさい。おねえちゃん」
妹を諭すように優しく告げるエイリークに(表面上は)あどけない笑顔で答えるミルラ。なお瞳は欲望で濁っている。
「それじゃあ私がミルラちゃんの分のお水をとってきてあげるね」
「うん!! 私は召喚士のおにいちゃんと一緒にここで待ってるね!!」
エイリークには笑顔を、ストーカー2人には中指を立てながら元気よく答えるミルラ。これに気づかないエイリークを攻めるべきなのだろうか。
そしてミルラは立ち去っていくエイリークを見送りながら至福の笑顔を浮かべながら口を開く。
「おねえちゃんの尊さは異常」
「キャラブレてんぞ」
俺の言葉に頬を膨らませて怒っているアピールするミルラ。
「キャラはブレてません〜。おねえちゃんの尊さが悪いんです〜」
「ギムレーといいミルラといいマムクートは変態ばっかりか……」
俺のやれやれと言った雰囲気に不満げな表情を見せるミルラ。
「私のおねえちゃんに対する愛をあの変態ラスボスと一緒にして欲しくありません。あっちはただの変態的な愛ですけど、私のは愛……そう、純愛なんです」
「レズ幼女が純愛を語るなよ」
「あ〜!! それはマムクート差別ですね!! チキさん(大人)とニニアンさんに報告させてもらいますからね!!」
「そのマムクートの保護者組から問題児扱いされている自覚はあるか?」
「問題児なんて失礼です!! 私は愛に忠実なだけなんです!!」
「その愛に問題があるだろうが。エイリークは女だぞ? そしてお前も性別は女だろうに」
「愛の前に性別なんてないようなものです!!」
椅子に立ち上がりながら力強く言い放つミルラ。もうこの娘は駄目かもわからんね。
「「ミ〜ル〜ラ〜」」
そして地底の亡者のような声を出しながらやってきたストーカー2人組。その眼は血走っていて、今にもミルラを殺そうと言わんばかりの眼光だ。だが、ミルラはそんな2人を嘲笑する。
「負け犬が徒党を組んでミルラちゃんに何かようですか?」
完全に喧嘩を売っていくスタイルである。
「ミルラ貴様ぁぁぁぁ!! 俺がエイリークに話しかけるのを我慢しているのに抱きつくだとぉぉ!? 羨まけしからんまねをぉぉぉぉ!!!」
「エフラムの言うとおりだね……!! 僕らは治安維持部隊がいない時にしか近づけないのに君は公然と抱きついた上にクンカクンカまでしたね……羨まし妬ましいまねをぉぉぉぉ!!!!」
完全に理性を失っているストーカー2人を前にしてもミルラは一歩も引かない。
「それはお2人が無様なだけじゃないですか。ミルラちゃんのようにおねえちゃんが嫌がらない絶妙な距離感を測れなかったからじゃないですか。その点ミルラちゃんは徹底的におねえちゃんを研究して嫌がらずに甘えられるポジションをキープしています。悪いですけどおねえちゃんの貞操は貴方達でも外道召喚士さんのものでもありません。このミルラちゃんのものです!!」
力強く最低なことを言い放つミルラ。このガチレズ幼女マムクートはエイリークの貞操をガチで狙っているらしい。最悪すぎるぞ。
そして無言で武器を構えるエフラムとエイリーク。この時点で俺とミルラがやるべきことは決まった。
俺がミルラを見ると、ミルラと視線があう。そして2人で力強く頷いて禁断の叫びをあげる。
「「助けてエイリーク!!/おねえちゃん!!」」
「あ!! 兄様にリオン!! 何をしているんですか!!」
俺とミルラの叫びに戻ってきたエイリークに説教を食らうストーカー2人。だがそこはストーカーコンビ。堪えるどころかエイリークの声が聞けて嬉しそうである。
「召喚士さん、何かいい罰はありませんか」
困ったエイリークが俺に聞いてくる。なるほど。罰だったら最適なところがある。
俺は常に隠し持っている鈴を鳴らすと、広間の扉が勢いよく開かれカアラが入ってくる。
「召喚士殿、御呼びとあってカアラ参上しました」
「ご苦労さん。早速で悪いけどこの2人を道場で鍛えてやってくれ」
俺の言葉にストーカー2人は顔色を真っ青にするが、そこは忠犬の皮を被った狂犬はガン無視である。
「おお、それはちょうど良い。現在、ちょうどニフルの第一王子とムスペルの第二王女も鍛えているので一緒でいいでしょうか?」
「よしなに計らえ」
「御意」
カアラは俺に一礼すると逃げようとしたストーカー2人を速攻で捕まえると広間から出ていく。それを愉悦の表情を浮かべながら見送ろうとするミルラ。だが、残念だったな。
「カアラ、ここにいる仮装マムクートも一緒に頼むわ」
「御意」
俺の言葉に即座にミルラを捕縛するカアラ。何か叫びをあげる前に猿轡を咬ませるのを忘れない。
俺を恨みのこもった視線を向けてくるミルラを俺は爽やかな笑顔で送りだす。
「あ、あの召喚士さん。ミルラちゃんにアイラさんの道場は厳しいのでは……?」
「大丈夫、大丈夫。これで性格が矯正されたら儲けものなだけだから」
「性格の矯正ですか? ミルラちゃんに必要なんですか?」
「エイリークは知らなくでいいことだな」
ちなみにヴァイス・ブレイブ修羅三人衆にボッコボコにされてもミルラの性格は治らなかった。むしろ怪我を理由にエイリークに甘えていた。早く気づけエイリーク。その幼女は兄と幼馴染以上のモンスターだぞ。
エイリーク
運命の選択時に召喚士を選んだことで、召喚士ルートに入ろうとしているルネス王国の王女様。そのやり方はギムレーが『学園青春恋愛物語キタコレ!!』と叫ぶほど奥手。でも書いている途中でハイライトさんは消えた。
ミルラ
エイリーク大好きガチレズ幼女マムクート。エイリークの貞操を虎視眈々と狙う。
助けてエイリーク!!
どっかの王子が叫ぶ言葉。
そんな感じでミルラちゃん爆誕編です。感想で指摘のあった通りのキャラ崩壊じゃ面白くないだろうということでエイリーク大好き幼女(ガチレズ系)になりました。エイリークは泣いていい。
最近、作者はカアラに攻撃速さの孤軍と待ち伏せを継承させて『一撃で殺せなかったら殺される地雷』で遊んでます。普通のクイズマップより難易度は高め。いかに奥義を連射できるかにかかってます。ちなみにカアラ単騎で敵を殲滅できたら成功。成功率? 3割あるんだから大成功と言っても過言ではないのでは?
FEHやっていて思ったんですが、これFEシリーズを一本とかしかやっていない人とか楽しめるんですかね。作者は色々やったので楽しいですけど、覚醒とかしかやっていない人がこの作品読んでいると別作品のキャラを勘違いしないか心配です。特に烈火とか烈火とか烈火。だが、私は謝らない。今更原作通りに書けねぇから!!
次回は我らが女神・パオラ様に実装される新武器を献上する予定です。ついにトライアングルアタックが来たんだな…!!