召喚士と英雄の日常   作:(TADA)

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あけましておめでとうございます。今年も正気を疑うこの作品もよろしくお願いいたします。

あ、サブタイトルの仲間の部分は生贄と読んでいただける嬉しいです。


アスク王国ヴァイス・ブレイブ自治領の新たなる仲間

白いフードを被った人物は歩いて大きな門のところにやってくる。とてつもなく巨大な門に繋がるように巨大な壁が中央にある城を囲むようにできている。

白いフードの人物がここまでに見てきた街並みはとても栄えているように見えた。それこそ白いフードを呼び出した国なんかより栄えている状態であった。

白いフードの人物が巨大な門に押しひらくように手をかけるとどこか中性的な音声が流れる。

 『流体魔力検査—————クリア。身体的特徴—————クリア。網膜認証—————クリア。ようこそ新たな英雄よ。アスク王国ヴァイス・ブレイブ自治領は新たな英雄を歓迎いたします』

その音声と同時に自動的に巨大な扉が開かれる。技術が中世だと思っていたら突然オーバーテクノロジーを見せつけられて白いフードの人物はおよそ30秒程固まっていたが、復活して中に入る。すると巨大な扉が自動的に閉まってしまう。

ここで白いフードの人物は困ってしまった。とりあえずここに行けと指示されたところに来たら放置を食らったのだ。誰でも困る。

 「おっと!! もう新しい英雄さんがやってきていましたね!!」

 「待たせてしまったみたいですね!! すいませんです!!」

すると何故か空中から少年と少女が降ってきた。突然の出来事に頭が混乱する白いフードの人物。しかし、我が道を行く二人組は決めポーズを取りながら語りを辞めない。

 「僕はここで働いている英雄の一人にして神軍師の息子であるマークくんです!!」

 「そして私はここで働いている英雄の一人にして神軍師の娘であるマークちゃんです!!」

そしてマークくんちゃんは二人で白いフードの人物に手を差し伸べてくる。

 「「さぁ!! 貴方のお名前を入力してください!!」」

白いフードの人物はどこかで入力ってなに? と考えながらも素直に自分の名前を述べようとすると目の前に選択肢が現れる。

 『名前を選択してください

  エクラ

  メキシコに吹く熱風、トンヌラ

  ここはあえて第3のマークとして生きていくぜ!!』

ここでも白いフードの人物の困惑が深くなる。

——まともな名前がエクラしかない!? しかも二番目はジョジョとドラクエが混ざってるし、三番目はこれ以上マークが増えても大変だろう!!

仕方ないので白いフードの人物は一番上のエクラを選択する。

 「ふむふむ、エクラさんですね。僕らのオススメは第3のマークになることだったんですが……」

 「トリプルマークの夢が遠のいてしまいましたね、マークくん!! 仕方ないので師匠がマーク名義で実装されるのを待ちましょう!!」

マークちゃんの言葉が真実になったら本格的にこの世界はやばいのではないかとエクラは考えるが、頭の隅から放り投げる。

 「さ、次の質問ですよ」

 「貴方の性別を選択してください!!」

とうとう言葉も選択になったかぁ、とエクラはどこか諦めつつ目の前に表示された選択肢を見る

 『性別を選択してください

  男性

  女性

  無性

  体は男でも心は乙女よ!!』

おかしい。性別の選択は二つのはずなのに何故か四択になっている。

この時点でエクラの脳内アラームは逃げることを推奨しているが、これは強制イベントなので回避不可能である。

仕方ないのでエクラは正直に性別を選択する。

 『性別を選択してください

  男性

 →女性

  無性

  体は男でも心は乙女よ!!』

選択肢を選んだ瞬間にマークくんちゃんは急に真顔になった。

 「え? 嘘ですよね? これだけ丁寧なネタフリをしたのに……」

 「大変ですよマークくん。この人マジメ枠です」

待ってくれ。ここはどんな場所なんだ。

エクラが口に出す前にマークくんちゃんは再び100%笑顔に戻る。

 「まぁ、マジメキャラが増えるのは良いことです!!」

 「その通りです!! なにせこの作品はマジメキャラほど不憫枠になりますからね!!」

待ってくれマークちゃん。その発言は聞き逃せない。

 「さ、それでは簡単にここの説明をして行きますね!!」

 「ここはアスク王国ヴァイス・ブレイブ自治領です!! アスク王国の属領ですが司法等の法律、商業、軍事などはアスク王国からは完全に独立している自治領です!!」

 「名目上の自治領主はアスク王国の王子のアルフォンスさんです!! 会ったら胃薬を差し入れしてあげてくださいね!!」

 「裏で支配しているのがマークくんとお母さんであるルフ子さんと私のお父さんであるルフ男、そして師匠の三人です。三人纏めて『三軍師』と呼ばれています!!」

 「一部のアスク王国の心ない人々からは『三大悪魔』とも言われていますが三人ともとっても良い人達ですよ」

アスク王国の心無い人々がきっと正論だと思ったエクラはきっと間違っていない。

 「それじゃあ次の場所に案内しますね。マークちゃん!!」

 「マークちゃんにお任せです、マークくん!! こぉぉぉぉい!! ペガサァァァァス!!」

マークちゃんが叫びとともに突き上げた指先でフィンガースナップをすると地面から黒いペガサスがせり上がって来た。

何故かガイナ立ちで。

なんでこう、この二人はツッコミどころしか用意しないんだ。

エクラはどこか可哀想なような目でマークくんちゃんを見ると、マークくんちゃんは肩を寄せ合いながら何やら相談を始めた。

 「おかしいですね。Gガンダムとガイナ立ちは誰でもわかると思ったんですが」

 「ムムム、これはエクラさんがロボアニメファンでなかった線が濃厚ですね。だってロボファンだったらGガンはまだしもガイナ立ちには反応するはずです」

 「あれですね……次は守護月天方式ですかね」

 「なるほど。星神を呼び出すシャオさん形式ですね。次回までに鏡を用意しないといけませんね」

 「……待ってください、マークちゃん。師匠だったら本物を持っている可能性がありますよ!!」

 「あ、そうですね!! 師匠だったら『お、金目のもんめっけ。儲けた』とか言って原作世界から掻っ払ってきそうですしね!!」

マークくんちゃんの師匠がどんな危険人物なのか不安になるエクラ。

 「とりあえずエクラさんは乗ってくださ……おやおや、逃げちゃいけませんよ」

 「安心してくださいエクラさん。いくら私でもお客さんが乗っている時に普段やっているエアロバティック・マニューバはやりません!! なにせ『スキルを持っていないんだからやってはいけない』ってお父さんに注意されましたから!!」

待ってくれ。ペガサスに鎧しかないのに普段はアクロバットをやっているのかマークちゃんは。

そう突っ込むヒマもなくエクラはペガサスに縛り付けられ連行される。マークちゃんが手綱を握り、マークくんはペガサスのお尻の辺りにガイナ立ちをしている。

 「さてさて、まずは眼下に見えるのが屋外演習場です」

 「演習場とは言っていますけど、実質的には校庭みたいなところです。所属している英雄さんが訓練したり遊んだりヘクトルさんが頻繁に火刑に処されるところだと思っていただければ大丈夫です」

説明の中にさらっと処刑場発言が聞こえた気がしたが、エクラは気にしないことにした。なにせこの純粋そうなマークくんちゃんが軽く「あ、ここで頻繁に燃やされる人いますから」なんて言いそうにないと思ったからだ。

 「次はこのアスク王国ヴァイス・ブレイブ独立自治領の独自施設である『アイラ修羅道場』です!!」

 「ここでは我がアスク王国ヴァイス・ブレイブ独立自治領が誇る三大修羅が道場をやっていて、一日籠るだけで弱兵だったアスク王国兵士がニフル王国兵士くらいになれると大評判ですよ!!」

 「ちなみに最後までやり遂げれば一般弱卒の人も英雄クラスになれます!! 大抵はその前に死にますけど!!」

マークくんの言葉を証明するように道場の中から凄まじい勢いで一般兵士の格好をしたヴァイス・ブレイブ自治領兵が飛び出してきて200m程転がって停止している。

エクラはどこか遠い目をしながら案内を続けられる。どこでも見られたのがエクラのSAN値がピンチになる光景だ。しかもマークくんちゃん曰くどいつもこいつもここに召喚された英雄ばかりだということだ。常識人のエクラには耐えれそうもない。

最後にペガサスは城の入り口までやってきて、エクラはようやく解放される。

そしてマークくんがいい笑顔を浮かべながらエクラの方を振り向いて口を開く。

 「どうですかエクラさん、僕らと一緒のこの世界を救いませんか?」

マークくんの言葉に当然のようにエクラの前に現れる選択肢。当然のようにエクラは選択する。

 『 はい

  →いいえ』

まーくちゃんの ぶらーさーぺんとぷらすが なりひびく!!

 「あ、すいません。私の魔法で返答が聞こえませんでした。どうですかエクラさん、私達と一緒にこの世界を救いませんか?」

全く悪びれた様子のないマークちゃんが100%笑顔を浮かべながら返答を聞いてくる。それにエクラも笑顔を浮かべながら再び選択肢を選択する。

 『 はい

  →いいえ』

まーくくんの ましょぎむれーが なりひびく!!

 「あ、すいません。僕の魔法で返答が聞こえませんでした。どうですかエクラさん、僕らと一緒にこの世界を救いませんか?」

答えは一択以外ありえないだろうと思いながらもエクラは再度選択肢を選ぶ。

 『 はい

  →いい「いいかげんに諦めなさいよ」』

エクラが選択肢を選ぼうとしたら褐色肌のナイスバディ美人が選択肢に割り込んできた。新たなキチガイの登場とエクラが戦慄しているとマークくんちゃんは嬉しそうに褐色ナイスバディ美人に話しかける。

 「「インバース姉さん!!」」

 「はぁい。Wマーク。初めての新人勧誘に手間どっているみたいね。その道のプロの私が完全ウルトラパーフェクトな選択肢の出し方を教えてあげるわ」

インバースはそう言ってエクラを優しげな笑顔で話しかける。エクラはその笑顔に『美人局』という単語が頭に浮かんだ。

 「どう、エクラさん。私達と一緒にこの世界を平和にしてみない?」

 『 はい

   YES

   Ja』

実質的に一択だったが、エクラはせめてもの抵抗を試みる。

 『 はい

   YES

   Ja

  →せっかくだから私はこの隠された選択肢を選ぶぜ!!』

 「な!? なんと!! その隠された選択肢を見つけるとは……いいでしょう。その選択肢で本当にいいのね?」

インバースの言葉に表示される選択肢。

 『 はい

   いいえ』

まともな選択肢にエクラは安心しながら選択肢を選ぶ。

 『→はい

   いいえ』

 「はぁぁぁぁぁ!!!!! 言質はこのインバースちゃんがバッチリとりましたぁぁぁぁ!! はい!! Wマーク!! 隠された選択を大・公・開!!」

 「「Wマークにお任せ!!」」

三人の言葉と同時に先ほど自分が選んだ選択肢が正しく解放される。

 『 はい

   いいえ

  →せっかくだから私はここの召喚士として働くぜ!!』

!?

エクラの驚愕を余所に三人は手慣れた様子でエクラを縛り上げる。

 「いやぁ、インバース姉さん、助かりました。あんな選ばせ方もあるんですね!! 僕ももっと勉強しなきゃ!!」

 「私もです。私はなんとしてでも認めるまでループさせる方法しか浮かびませんでした!! さながらドラクエⅤのレヌール城のように!!」

 「ふふふ、二人とも覚えておきなさい。時に人間というのは追い詰められた時に博打に出るのもいるのよ」

三人にわっしょいわっしょいされながら運ばれるエクラ。途中で止めてくれる英雄はおらず、むしろ遊んでいると思われたのかロリマムクート達にも担がれる騒ぎとなった。

そして一つの部屋で自由にされるエクラ。

 「お父様が忙しくて新しい英雄を召喚できる人物を召喚したら手違いでアスク王国の方に出ちゃった時は焦ったわ」

 「でもこれで大丈夫ですね!! だって先ほど言質とりましたし!!」

 「さぁ!! エクラさん!! これからは師匠と一緒に楽しいガチャライフですよ!! 初回は無料でできますから好きなオーブを選択してくださいね!! あ、ちなみにリセマラはできないんで!!」

リセマラできないソシャゲかぁ

そんなことを考えつつエクラは諦めたように石版に浮かんだ適当な青色オーブを選ぶ。

石版に吸い込まれるオーブ。舞う砂埃。テンションが上がる三人。そして出てくる新たな犠牲者。

 「私はアリティア王国の従騎士ロディ。まだ見習いの騎士で……」

発言の途中でフリーズするロディ。同じくフリーズするエクラ。

 「……クリス?」

 「あ、すいません。人違いです」

 「その声間違いなくクリスだな!? 君がいなくなったせいでカタリナの情緒が不安定になった。あ、こら逃げるな!!」

エクラは召喚してしまったアリティア王国第七小隊時代の友人から逃げるように部屋から飛び出していくのであった。

 




エクラ
の名前を借りたクリス(♀)。アリティア王国でマルスに仕えていたが同時に仕えていたカタリナの愛が重すぎて別世界へと逃亡。しかし、召喚士の策略によって第二の召喚士としてヴァイス・ブレイブにやってきた。少なくとも今のところはうちにはカタリナ(あとついでにルーク)はいないので安心してマルス達と再会を喜びって欲しい

ロディ
アリティア王国従騎士。どうやら異世界へ高飛びかましたカタリナの後始末が大変だったご様子。こらそこ。火薙ぎの槍のわざマシンとか言わない。




あけましておめでとうございます。去年は新年会の様子を書きましたが、今回は新キャラを登場させました。なんとその職業は召喚士!! しかも今度は新・紋章のマイユニちゃんですよ!! この作品のオリジナル設定はどこまで行くのか作者も不明です。
最初の設定では闇落ち英雄専用の召喚士にしようと思いましたが、せっかくなのでまだ実装されていないマイユニのクリスちゃんにしてみました。まぁ、今後出てくるか未定ですけどね!!


だが、もしすり抜けとかでカタリナがやってきた場合は彼女の受難が始まるでしょう。

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