召喚士と英雄の日常   作:(TADA)

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前話でしばらく書かないことを言っときながら書いてしまったので投げます。


盗まれたオーブを追え!!

ヴァイス・ブレイブに激震が走った。

 「なんですって!? オーブが盗まれたですって!?」

珍しく静かな治安維持部隊詰所にリンの叫びが木霊する。

 「目撃者はいませんが、オーブの数が少なくなっているそうです」

セシリアの言葉にリンは悲痛な表情を浮かべる。

 「オーブはヴァイス・ブレイブの戦力を向上させるのに不可欠なもの……早く犯人を捕まえないといけないわね」

 「はい」

リンはソール・カティを持って部屋を出る。それにセシリアもついていくのであった。

 

 

 

 「というわけで早く自首しなさい」

 「「「問答無用で縛り付けといてそれはなくない?」」」

いつも通りに部屋でバカ二人とだらけていた俺は、怒髪天をつく勢いで部屋に入ってきたリンにロープで縛り付けられて床に転がされた。ちなみに一緒にきたセシリアはリンに「拷も……けふけふん。取り調べを誰かに見られるわけにいかないから外で見張っていて」と言われて素直に出て行った。

 「第一、オーブがなくなったならそれは召喚士のせいだろ。俺とエリウッドは関係ないだろ」

 「ヘクトルの言うとおりさ。僕達は完全に冤罪だからロープを解いてくれないかい?」

 「リン、こいつらは最近リンに無断で行った俺の召喚の手助けをしたぞ」

 「「きさまぁぁぁぁぁ!!!!!!」」

二人だけ助かろうなんざ甘いんだよ。

俺たちのやりとりに呆れたようにため息を吐くリン。

 「それで? 召喚士、盗んだオーブを使って誰を召喚したの?」

 「待て待て、それについては本当に俺じゃない」

リンは夫(仮)を疑わないことを知らないらしい。そしてすでに使った後前提というのもどうなんだ。

 「それに召喚士だったらエクラもいるだろ。そっちの可能性だってあるはずだ」

 「残念だったわね。エクラはカタリナが来る可能性を嫌って召喚を拒否しているわ」

 「ファッキン」

あの女。騙すようにして無理矢理召喚士にしたことを恨んでいやがるな。

 「ほら、早く吐きなさい。今なら情状酌量の余地もあるわよ」

 「待って!! 本当に待って!! 今回のことは本当に俺じゃない!!」

 「詐欺師はみんなそう言うのよ。それを証明できる人がいるの?」

ソール・カティを振りかぶりながら言っても情状酌量の余地はないようにしか思えないのだが。

だが、俺は絶対的な弁護士がついている。

 「最近、倉庫の整理を頻繁にニノが行なっている。それを見て烈火出身者が悪事を働けると思うか?」

 「三馬鹿は無罪、と」

 「すげぇ手のひら返しだな」

 「ものすごく納得できる僕らも同類だけどね」

大天使ニノエルが頑張っている横で悪事を働くとかそれできたら人間じゃねぇよ。しかもたまに現人女神・パオラ様までいらっしゃるんだぜ?

 「それなら、一体誰が盗んだのかしら……」

 「考え込む前にロープ解いてくんね?」

俺の言葉にリンが見えない速度でソール・カティを振るうと、俺たちのロープだけが綺麗に切り落とされる。それに軽く戦慄する。

 「おい、やばいぞバカ二人。リンの剣の腕前が上がっている」

 「明らかに修羅連中の影響だろ」

 「リンは元々世紀末民族出身だからね。そこに修羅連中の剣の腕前が合わさったら僕らは……」

エリウッドの言葉に俺たちは身震いする。どう考えても敵に振るわれるより、俺たちに対するお仕置きの方が強烈だからだ。

 「ヴァイス・ブレイブに恨みをもつ連中かしら」

 「恨みなんて買いすぎて誰だかわからんぞ」

 「売れるものなら売っておきたいよね」

リンの言葉にヘクトルとエリウッドがHAHAHAとアメリカンに笑いながら返答する。まぁ、恨みなんて味方であるはずのアスク王国からも買ってるから否定できないけどな!!

 「ふふ、ここは超天才軍師の俺に任せておけ」

 「ここでは召喚士だろ。なんだよその思い出したかのような軍師設定」

 「いや、ルフ男とルフ子は軍師だってことを読者のみなさんも理解しているだろうけど、俺が烈火世界で軍師をやっていたことを覚えている方が少ないと思ってな。まぁ、FE界の郭嘉こと召喚士さんに任せておけ!!」

 「「ウルセェよ、李儒」」

 「誰が悪徳軍師か!!」

 「やってることは李儒じゃない」

リンの言葉にグゥの音も出ない。だって悪どいことの方が相手に効くんだから仕方ない。ここは出たら負け軍師の名前が出なかっただけマシとしておこう。

 「まず、オーブはリン率いる治安維持部隊の管理下に置かれている。これに下手に手を出せば修羅道場に放り込まれるのは自明の理。賢い人間ならまずやらない」

 「続けて」

俺の言葉にリンが先を促してきたので俺も続ける。

 「それだったら自由に治安維持部隊の管理下に動ける人間になる。それは基本的に治安維持部隊の人間かニノかレイになる。しかし、ニノとレイがやるわけないし、治安維持部隊も真面目人間ばかりだからない。それだったら後はオーブを管理している人間になる。まずはリンだが除外。動機がないし、リンだったら盗む前に俺をしばき倒して召喚できないようにする」

 「その通りね」

 「「「否定しろよ」」」

冗談で言ったつもりだったのに肯定されて深い悲しみを味わう俺。

 「まぁ、いいや。次にエクラだが、奴はクレイジーサイコレズの召喚を怖がって召喚室に入ろうともしないから奴がオーブを盗むこともないだろう」

 「召喚させないためにオーブを盗んだ可能性もあるんじゃないかい?」

 「それは無理よ。エクラはオーブを見ただけで拒否反応を出すレベルだから」

 「末期症状じゃねぇか」

リンの返答にヘクトルが戦慄する。あのエクラがそこまで恐れるクレイジーサイコレズを召喚したい気もするが、オーブの数も減ったので回避で。

 「そして最後、こいつが本命だ。商魂逞しく、俺にオーブを売りつけて金を巻き上げる悪徳商人」

 「「「アンナ!!」」」

 「イグザグトリー」

そこからの動きは素早かった。リンはさっさと俺の部屋から出て行った。

俺とヘクトルとエリウッドはそれを見送る。そして遠い目をしてエリウッドが口を開いた。

 「素直にベロアちゃんを召喚するのに使ったって言えばよかったんじゃない?」

 「それやったらお前らもまとめてニフルの湖に沈められるぞ?」

 「だからってあれでいいのかよ。アンナがやったって証拠がなくねぇか」

 「安心しろ脳筋。バッチリ証拠になりそうな代物をアンナ商会に仕込んでおいた。これであの倫理ガバガバ商売女も懲りるだろう」

 「「よくやった」」

俺の言葉に珍しくバカ二人が褒めるのであった。

 

 

ちなみにアンナ商会は無実を訴えたが、幾つもの証拠の品が見つかって一ヶ月の営業停止処分を食らったのであった。

全く、他人に罪をなすりつけるとか悪いことをするやつもいるものである。

 




アンナ商会
この作品はどこまで独自設定を放り込むかわからない独自設定。アンナが商魂逞しくヴァイス・ブレイブの英雄達に商品を売るお店。日用品から英雄の隠し撮り写真や使いずみ商品を取り扱う倫理観ZEROなお店。

クレイジーサイコレズ
クライネの家族で軍師見習い。今ちょうどピックアップがきてるけどひく予定はない。これにはクリスちゃんも大安心。




そんな感じで更新です。書くヒマないとか言っときながら書く作者。だって想いを集めてであんなネタになる話をされたらやるしかないだろ!! てことです。

次回は未定です。また何か面白いネタができたら投げるかもしれません。

ところでクレイジーサイコレズの星4落ちはまだですか?

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