召喚士と英雄の日常   作:(TADA)

76 / 219
ストーリーでアルフォンスパッパが死んだ、だと……!!


優しい世界であるこの世界でそれは許されんぞ。


死の王ヘルの苦難

 「死からは逃れられぬ」

死の王ヘルは呪いを与えたアスク王国アルフォンスの命を刈り取らんと、彼に近づく。彼の父親がアルフォンスの前に立ちはだかったが、死の力を取り込めればいいヘルは別のどっちでもいい。

死の力を取り込むことはヘルにとって最重要課題だ。なにせこの世界で敵対する組織によく知るクソ鬼畜がいる。奴がいなければもうちょっとボス感を出すことも考えたが、奴がいれば話は別だ。速攻でケリをつけなければ自分が不幸になる。不幸になるだけで済めばいいが、最悪死ぬ。最悪じゃなくても死ぬ。

ヘルは死を与える存在であり、死を恐れてはいけないかもしれないが、そんな些細なプライドは速攻で捨てた。

上手い具合にあの鬼畜外道がいない時にアルフォンスに対して死の呪いを与えることができた。解呪されていないことを考えればまだ死の呪いを解く技術は発見されていないことにヘルは安堵する。

 (今回は勝ったな。風呂入ってくる)

しかし、死の王ヘルの目論見は一人の鬼畜クソ外道によって阻まれる。

 「術式解放」

ヘルにとって聞き覚えのありすぎる声と共にヘルは魔法陣によって封印される。

 「こ、この術式はこの世界にはないはず!? ま、まさか!!」

 「騙して悪いが仕事なんでな」

 「このクソ外道うぅぅぅ!!!!!!」

当然のように出てきたのは胡散臭い笑みを浮かべた白フード。アスク王国が救世主として呼んでしまった召喚士であった。

 「よし、バカ二人。囮を回収。安全圏まで退避させろ」

 「「あらほらサッサー」」

 「あぁぁぁ!! ちょ!? その二人は私の生贄!!」

召喚士の言葉にヘクトルとエリウッドはアスク王国の王様と王子を担ぎ上げて運搬する。どう考えても王族に対する扱いではないが、ヴァイス・ブレイブではこれが普通である。

 「ひ、卑怯だぞ鬼畜クソ外道!! お前は『その世界にない術式は使わない』って縛りを入れていたじゃないか!!」

 「君だけは特別だぞ(ハート)」

 「そんなVIP待遇はいらないから!!」

しかし、そこで死の女王ヘルに逆転の一手が見える。召喚士の右隣にはリンがいて詰みゲーだが、反対側には自分の娘がいる。

 『今だエイル。その鬼畜クソ外道を殺してアスク王国に平穏をもたらすんだ』

ヘル渾身のアイコンタクト。しかし、エイルはどこか諦めた眼差しをしながら遠い目をしている。そしてヘルを見ながら愉悦の笑みを浮かべる召喚士。

 「ヘル、死の呪いが使えるのは自分だけだといつから錯覚していた?」

 「なん……だと……!?」

召喚士の爆弾発言である。

 「いいか、どこの世界でも馬鹿の一つ覚えみたいに同じ術式を使われていれば、俺みたいに秀才魔導師でも解除の術式とその改良くらい加えられるようになる」

 「ちょっと待って……ちょっと待って、まさか?」

召喚士が渾身の(胡散臭い)笑みを浮かべながら口を開く。

 「貴様の娘には俺特製の死の呪いをかけておいた。俺を裏切った瞬間に死ぬ特別性だ」

 「外道ぉぉぉぉ!! この鬼畜クソ外道ぉぉぉぉ!!!! それが人のやることかよ!!」

 「ははは、貴様の縁者の時点で人権などないわ。だが、親の罪を娘に問うのも可哀想だからな。貴様が死んだら解除されるようにしてある」

 「げどぉぉぉぉぉ!! 子供に親殺しをさせるつもりか!!」

 「安心しろ。貴様を殺すのは俺だから」

しょうかんしの えがおのこうげき! へるのじゅみょうが1000ねんへった!!

 「おのれ鬼畜クソ外道め!! 赤髪ロングヘアーのナイスバディ女家庭教師に死の呪いを与えたことをまだ恨んでいるな!!」

 「召喚士、後で話があるわ」

 「ヘル、貴様だけは楽に殺さんぞ……!!」

とりあえず召喚士に対する意趣返しは済んだ。あとはこの魔法陣を解除するだけである。対ヘル結界としてはかなりの強度を誇るが、今まで召喚士を殺すために溜め込んだデスパワーを使えば力任せに解除できる。しかし、それをやるとヘルを殺す目つきで睨みつけているムスペル王族組と力が半減している状態で戦わなくてはいけない。リーヴとスラシルは速攻でトンズラかましたので援護も期待できない。

 「ちなみに外道、これは私をどのように殺す結界?」

 「うん? 聞きたいか? 普通は教えないよな。でも今の俺は目障りな蝿をようやく殺せることで気分がいいので特別に教えてやろう。その魔法陣は俺が作った特別性という話はしたな。その魔法陣には死の力を少しずつ取り込み、そのあとに取り込んだ力を暴走させて消し飛ぶという特別性だ」

 「……それって私の魂も消し飛ぶ?」

 「ははは、当然だ」

「お父様! めっちゃイイ笑顔ですけど、その笑いは悪役の笑い方ですわ!!」

魔法陣を召喚士と一緒に組んでいるインバースからツッコミが入るが、そのインバーズも似たような笑顔が浮かんでいる。似たもの親子である。

 「だが、想像以上に貴様の力が強いな。暴走まで3分といったところか」

 (勝った!! 3分あればこれを自力で解除して戦闘に入れる!! ムスペル組はムスペル死体兵を使って時間を稼いで私は逃げの一手!!)

そしてヘルは魔法陣の解除に意識を向ける。

それを見た召喚士がイイ笑顔を浮かべたのを見て瞬間的にヘルの背中に冷や汗が流れる。

 「ちなみに3分と言ったな。あれは嘘だ」

 「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」

その言葉の瞬間にヘルは力任せに魔法陣を破る。力がゴリっとなくなるが、仕方ない。このままいればチャオズすることになる。

ヘルはそのまま空に飛翔する。その瞬間に隠れていた弓隊から一斉射撃を受けるがヘルは鎌とアクロバティックでこれを回避!! そして最後に捨て台詞も忘れない。

 「バーカ! バーーカ!!! バァァァァァァッカ!!!! この女タラシ!!」

 「ってめ!? 俺の覚えにない中傷はやめろ!! あ!? 待ってリン!! 腕はそっちには曲がらな」

召喚士の悲鳴で少し気分が晴れたヘルは速攻で逃亡するのであった。

 

 

 

 「父上、ご無事で何よりです」

 「うむ、アルフォンスもな」

 「……」

 「……」

 「……死んで一人だけ楽になんてさせませんからね?」

 「……強くなったな、アルフォンス」

そんな会話がアスク王国の親子でされたことを知るのは本人達だけである。

 




ヘル
ギムレーに次ぐ小物系ラスボス。どこの世界でも死の呪いをばらまいていたら尽く召喚士に邪魔をされてた。しかもその呪いを利用される始末。お互いにお互いを邪魔に思っていて殺そうとしているが、他から見たらやっていることはトムとジェリーに近い。

エイル
母親と召喚士の確執に巻き込まれた完全な被害者

対ヘル専用結界
色々な世界に召喚されていた召喚士が持っていた技術をつぎ込んで作り上げた対ヘル専用結界。最終的にヘルはチャオズする。

赤髪ロングヘアーのナイスバディ女家庭教師
もしかしなくてもアティ先生。ちなみにアティ先生は自力でどうにかしたご様子。この作品屈指のバグは伊達ではない。

アスク王国親子
 「「死の呪いで楽になるのは自分だ!!」」
同じことを考えていたご様子。



ここは(味方にとって)優しい世界。こんな感じで王様には生き残っていただきました。今後も頭のおかしいヴァイス・ブレイブに悩んでいただきましょう。

作者は今までやってきたゲームの中でもトップクラスの好きなキャラなんですよね、アティ先生。3でアティ先生ENDがなくて憤慨したのは作者だけじゃないと信じてます。

あ、そういえば前話から感想返しを初めて見ました。いつまで続くか未定ですけど。そして次回も未定です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。