召喚士と英雄の日常   作:(TADA)

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先に言っておく。


正直すまんかった


召喚士とイドゥン

イドゥン

人と竜が争う人竜戦役の時代に人を苦しめた、強く、美しく、悲しい魔竜。千年の間に戦いの真相は忘れ去られ、かつての竜族の王とされている。暗闇の巫女とも呼ばれる美少女の姿をしているが、重要なのはそこではない。

彼女は腹黒の子供であるロイ世代の『ラスボス』である。

重要だからもう一度言うが『ラスボス』である。

 「そこで彼女の地雷を前もって聞いておこうか変態共」

 「う〜ん、この召喚士が我達に対する信用度のなさ。割と自業自得だと自覚しているけどどう思うロプトウス」

 「ワシも自業自得だと思う」

部屋に呼び出したのはFEラスボス同盟とか言う割と絶望の響きを持った団体に加盟しているラスボス二人組であるギムレーとユリウスである。

 「でもイドゥンはFEラスボス同盟でもまともな部類よ。これは我が断言できる」

 「ワシも同意見だ。人の話はちゃんと聞くし、他者には優しいしな」

 「しかし、俺の『地雷センサー』がビンビンに仕事をしているんだがなぁ」

二人の言葉に俺は首を傾げる。俺は色々な世界を旅しているので他者の地雷に敏感なのだ。

 「そうは言っても我達からは特に言うことはないからなぁ」

 「うむ、強いて言うならば」

ギムレーとユリウスはそう言って顔を見合わせてから口を開く。

 「「ちょっと人類に対する愛が重いだけで」」

 「おっと、俺の地雷センサーに反応があったぞ。その辺りのことを詳しく聞こうか」

俺の今まで経験した中でもトップクラスの危険信号だ。だが、ラスボス二人は特に気にした感じはしない。

 「いや、本当にちょっと我達もドン引きするくらいに人類に対する愛が重いだけなんだって」

 「うむ。『惰弱になっていく人類に耐えららません。そうだ、私が人類を滅ぼそうとしたら人類は覚醒するのでは』とかトチ狂った発想で人類を滅ぼそうとしたくらいだ」

 「今までの中で一番最悪じゃねぇか……!!」

なんつぅとんでも理論を振りかざすんだ、あの魔竜。

 「いや、我達も『その発想はおかしい』って一応止めたんだよ?」

 「だが、基本的に温厚で優しいイドゥンだが、突っ走り始めたら止まらない竜でもあってな。結局『人類を愛するあまり人類を滅ぼそうとする究極的なヤンデレ』になった。これにはメディウスも頭痛薬を飲んだレベルだ」

軽い調子で頭のおかしい発言をし続ける変態ラスボス達。

 「いやぁ、ゼフィール君の失敗はイドゥンを全盛期の姿で呼び出せなかったことだよNE!!」

 「うむ!! 全盛期の姿で呼び出せたら勝ち確定レベルの理不尽さだからな!!」

 「なにそれ怖い」

おかしい。FE史上最弱と名高いイドゥンが実は一番の実力者だと? これは封印ファンから叩かれるレベル。

 「いや、マジでイドゥンを全盛期の姿で呼び出せたらヤバイんだよ、召喚士」

 「どのくらいヤバイんだ?」

 「ここがFate世界だったら抑止力が仕事するけど、返り討ちになるレベル」

 「FE世界がピンチ……!!」

俺はなぜこうも取り扱い注意の英雄しか呼び出せないのか。え? 俺が取り扱い注意だから? ちょっとなにを言っているのかわかりませんね。

 「いや、我達もこの世界でイドゥンの気配を感じ取った瞬間に別世界に高飛びかまそうと思ったんだけどね」

 「意外とイドゥンが大人しくしているから様子見をしているところだ」

 「ちなみにやばくなったら?」

俺の言葉に二人は見たことがないマジ表情を浮かべる。

 「「別世界に逃げる」」

 「絶対に逃さないからな。むしろお前らをストッパーの最前線に送るからな」

 「「鬼! 悪魔!! 召喚士!!」」

ははは、罵倒などすでに慣れている俺に無意味さ。むしろ鬼や悪魔などは褒め言葉だと思えるレベル。

 『失礼します。召喚士さんはいらっしゃいますか』

 「……ファ!?」

そして俺の部屋の扉がノックされると同時にイドゥンの声がする。俺が扉の方を向いた一瞬の隙をついてギムレーとユリウスは逃亡していた。

まじかぁ。爆弾の解体処理を一人でやるのかぁ。

 「ああ、鍵は開いているから入っていいぞ」

 「失礼します」

俺の言葉に入ってくるのは顔が見えないくらいにローブを深く着ているイドゥン。部屋に美少女と二人きりと言うドキドキシチュエーションのはずなのに、胸の高鳴りは危険信号を知らせる高鳴りだけなのはどう言うことなのだろう。

イドゥンは流れるように椅子に座ると、ローブをとる。ローブの下からは美少女の顔が現れた。

表情は笑顔だ。とびっきりの笑顔だ。一般人男性だったら見惚れるレベルの笑顔だ。

しかし俺にはそれが威嚇の笑顔にしか見えなかった。

俺の背筋に冷たい汗が流れる。恐れている? この俺が? リン以外に……!?

俺の内心など無視したようにイドゥンは口を開く。

 「召喚士さん。なんでも今戦っているヘルと名乗るクソアマは人の死をエネルギーとして蓄えるとインバースさんに伺いましたが?」

 「あ、ああ。間違いない。あいつは人の死……つまりは魂をエネルギーとして自分の力を蓄えている」

俺の言葉にイドゥンは優しい笑顔を浮かべなから立ち上がる。

 「ちょっとヘルとか言うクソをぶっ殺してきますね」

 「待って!! お願い待って!! 今あいつが殺されると俺達の計画が狂うの!! それに絶対にイドゥンはまともな殺し方しないでしょ!!」

 「失礼ですね。きちんと死の世界諸共消しとばすだけですよ」

 「それやられるとこの世界にも影響が出るから!!」

 「大丈夫です。私が信じる人類なら絶対に生き延びてみせると信じてます。ええ、きっと今までにないほどの災厄に一丸となって立ち向かい、魂の光を明るく照らすのでしょう……おぉ!! みたいです!! 私はそんな人類がみたいです!! ですからやっぱりヘルは消しとばしてきますね!! ええ!! 大丈夫です!! 私が愛する人類だったらこの程度の難局は乗り越えてくれると信じてます!! あぁ!! 私に人類の輝かしい勇気を見せてください!! そして人間賛歌を謳わせてください!! 私の喉が枯れ果てるほどに!!」

 「クソ!? 止まれイドゥン!! なんて俺の言葉聞くわけないですよね!!」

俺はそう言いながら部屋に備え付けられた赤いボタンを叩き壊すように押す。

 『エマージェンシー!! エマージェンシー!! 英雄が暴走しました!! 一般人は至急退去し、対応班は武装してください!!』

それと同時にヴァイス・ブレイブに響き渡る緊急アナウンス。だが、その程度でイドゥンは止まらない。

 「おぉ……! おぉ!! みなさんも私に立ち向かってくださるのですね!! 素晴らしい!! 素晴らしいです!! さぁ、私を止めて見せなさい!! でなければこの世界は滅びますよ!!」

 「おかしい!? 味方なのに敵になってる!!」

 

最終的にイドゥンはヴァイス・ブレイブ修羅三人衆や我がヴァイス・ブレイブのイカれた奴ら相手に高笑いしながら三日三晩戦い続けて満足してくれたのだった。

 




イドゥン
魔王系魔竜。アマッカス理論を振りかざす美少女魔竜。人類大好き。勇気大好き。自分に立ち向かってくれたらもっと大好きな超迷惑魔竜様。人類大好きだけど自分に滅ぼされるレベルじゃ許してくれない。誰か私を倒して!! な敵でも味方でも厄介極まりないお方。ゼフィールの敗因は彼女を全盛期で呼び出せなかったこと。

(この世界の)封印ラスボス戦
めっちゃはしゃいで世界を崩壊させかけたイドゥン様に勇者ロイくん達は絶体絶命の危機!! しかし、そこに現れたのはロイくん達を度々助けた謎のFE仮面達!! そして世界の崩壊は流れるように現れたパントが華麗に解決!! かくして封印の剣で留めを刺されたイドゥン様は万歳三唱しながら亡くなった。





なんか正直すまんかった。でも原作のイドゥン様の弱さを知っている人間には『逆に強すぎてどうしようもないイドゥン様』を想像した人は多いと思うんだ。え? 作者だけ? そんなぁ……
イドゥンを召喚した時から最強キャラ設定にしようと思っていましたけど、それだけだとパンチが弱いのでアマッカス理論が搭載されました。人類大好きなので人を呪い殺すヘルは絶対に殺すウーマン。ヘル様逃げて。超逃げて

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