「なんですって、召喚士が?」
治安維持部隊の執務室で仕事をしていたリンに驚愕の報告を持ってきたのはリンの親友であるフロリーナであった。
「うん、今朝に召喚士さんの部屋にいたところをパオラさんに保護されたの。今はニニアンさんとルイーズさんが見てくれているけど」
フロリーナの言葉を聞きながらリンは執務室から出て発見された人物の待つ部屋に向かう。
「死の王国の攻撃かな?」
「それならもっと脅威になる人物を狙うでしょうから違うわ」
「それなら誰かな」
フロリーナの言葉にリンは呆れたようにため息を吐く。
「こんなことを仕出かせるのは英雄数多しと言えども奴しかいないわ」
「あっ(察し)」
リンの言葉に何かに気づいた表情になるフロリーナ。
そしてリンとフロリーナは召喚士の部屋に入る。そこにいたのは保育士・ニニアンと美人人妻・ルイーズにお世話されている可愛らしい幼女。
幼女はリンのことを不思議そうに見上げた後に嬉しそうに笑う。
「リンおねぇちゃん!!」
その言葉にリンの鼻から少量の愛が溢れたが、奇人に慣れている烈火メンバーはそれを気にすることはない。
リンは幼女(召喚士?)に視線を合わせて優しい笑顔を見せながら口を開く。
「召喚士ちゃんはいくつかなぁ?」
「しゃんしゃ〜い!!」
「そっかぁ、3歳かぁ。自分の歳を覚えていて賢いわねぇ、召喚士ちゃんは」
「えへへぇ〜」
リンの言葉に恥ずかしそうにハニカム召喚士(ロリ)。その瞳は純粋なまでに透き通っていた。普段の世間の醜い部分ばかりを見て育ったようなドス黒い瞳ではない。世間を何も知らない純粋無垢な瞳だ。こんな瞳の召喚士など、一番付き合いの長いリンですら見たことがない。
「これはどう言うこと?」
「多分、魔法の影響だと思いますけど……」
ルイーズの言葉にリンは自分の考えを確信に変える。
「犯人を捕まえる必要があるわね」
「ですがあの人は朝から行方をくらませてますよ?」
ニニアンの言葉にリンは自信満々に頷く。
「ルイーズ、旦那を呼んでもらえる?」
「え? えぇ、わかりました。パントさま〜?」
「呼んだかいMyハニー!!」
「犯人確保」
「あ!? リン、それは汚いぞ!!」
テレポしてきた犯人(パント)を即座に縛り上げるリン。当然のように縛っているロープもパント印の特別製のために魔法はおろか力づくでも脱出は不可能である。
ビチビチ跳ねるパントを踏んづけながらリンは口を開く。
「それで? 今回の騒ぎは何の真似?」
「リン、召喚士達のように私をすぐに犯人扱いするのは良くないな。ひょっとしたら冤罪かもしれないだろう?」
「違うのかしら?」
「いや!! まさしく私の仕事さ!! この鬼畜クソ外道をロリらせたのは私だとも!! おっと、リン!! ソール・カティはしまおう!! 人類には対話という素晴らしい問題解決手段があるじゃないか!!」
とりあえず流れるように笑顔で自供した犯人に鉄槌を下そうとしたリンをフロリーナとルイーズが止める。
「それで? 召喚士のロリ化はなんのためかしら?」
「うん、まず前提条件としてこの小説はFEHを原作にした二次創作小説だ」
「それを言ったらダメでしょうが……!!」
リンの言葉を爽やか笑顔でスルーしながら言葉を続けるパント。
「さて、二次創作小説のお決まりと言えば主人公の女体化ネタやショタ化ネタだ。しかし、似たような話を書くのはぶっちゃけ読者から『またか……』と飽きられてしまう」
「……それで?」
どこか引きつった笑顔を浮かべたリンの言葉に爽やか100%の笑顔で話す天災(パント)
「そこでロリ化だよ。主人公の女体化とショタ化を同時にこなせる万全の策さ!!」
「あんたバカでしょう」
「おっと失礼だな!! この人生勝組天才イケメン魔道士パントさんに向かって!!」
「魔法の実験台にしたかっただけでしょうに」
「否定はしないさ!!」
パントの居直りぶりに流石のリンも怒りを通り越して呆れてしまう。
「それで? 知能の方もロリってるようだけど?」
「うん、それは想定外だったさ。これで私が新しく開発している魔法『若返り魔法』の研究の役にたつよ!!」
「ダメだこいつ。早くなんとかしないと……」
リンだけじゃなくフロリーナとニニアンからも呆れの視線がパントに飛ぶ。ちなみにルイーズは『あらあら』と微笑んでいる。
「待ちたまえ。このままでは私が安全性のない魔法を友人で試した外道のようになってしまう」
「烈火時代は割とやっていたわよね?」
「リン、過去は振り返らないものだよ」
「リン!! 落ち着いて!!」
無言でソール・カティを振りかぶったリンを必死になって止めるフロリーナ。
「ふ、この天才パントさんに漏れなどないさ。本当に召喚士が性格までロリったかどうかの実験もきちんとやるさ」
「実験をやるも何も……純粋無垢な瞳を見なさいよ。この瞳をあのクソを煮詰めてビン詰したかのような瞳をした召喚士にできるの?」
「リン、相手はあの鬼畜とクソと外道を混ぜ合わせて100年間つけておいたような性格の召喚士だよ? ロリったふりなんかおてものさ」
パントの言葉に胡散臭そうな表情を見せる女性陣(ルイーズは除く)。なんせこの会話を聞いているロリ召喚士は不思議そうに首を傾げている。どう見ても会話を理解しているようには見えない。
「ふ、疑っているようだね。だったら証明してみせようじゃないか!!」
パントの言葉にも純粋無垢な瞳を変えることのないロリ召喚士。
「お〜っす。なんか迷惑魔道士が召喚士に何かやらかしたみたいだな」
「今回は何をやったんだい? いや、召喚士だけに被害が集中している時点で僕らにはメシウマでしかないんだけどさ」
「さぁ、召喚士ちゃん。この二人は誰だい?」
「ゴミクズと虫けら」
「「なんだとクソ野郎」」
なんということでしょう、純粋無垢な瞳だったロリ召喚士の瞳はバカ二人の登場によっていつも通りの瞳になってしまったではないですか。まさしく匠の業。
「ふふ、どうだい!! やっぱり召喚士は記憶までロリってなかっただろう!!」
「……頭痛くなってきた」
パントの言葉に頭痛を抑えるリン。背後ではいつも通りの罵詈雑言の飛ばし合いをしている三馬鹿。
「それで? なんで召喚士はロリのフリをしていたの?」
「いや、この外見で脳みそまでロリったフリしていたらニニアンとかルイーズみたいな面倒見の良い女性陣が風呂に入れてくれる……は!?」
「ストップ!! リン、ストップ!! 普段だったら大丈夫だけど、今は召喚士さんが幼女状態だから絵面がひどくなるよ!!」
無言でソール・カティを振りかぶったリンを先ほど以上に必死になって止めるフロリーナ。それは親友を幼児虐待者にさせないための必死さがあった。美しい友情である。
その諸悪の根源はロリのふりして「こわ〜い(棒)」と叫びながらニニアンに抱きつこうとして腕ひしぎをかけられている。
「それで? どうやったら召喚士は元に戻るの?」
「え? 知らないよ?」
『……は?』
その場にいた全員(三馬鹿含む。例外としてルイーズは「あらあら」と微笑んでいる)から思わずといった声が溢れる。そんなことを気にせずにパントは爽やかに笑いながら続ける。
「はっはっはっ!! ロリ化させる魔法を開発したのはいいんだけど、元に戻す魔法の開発をすっかり忘れていてね!! 元に戻し方はぶっちゃけわからない!!」
「ちょ!? おま!? ふざけんなよ!! こっちは朝起きて『あぁ、パントの奴の仕業か。だったら元に戻る方法もわかってるだろ』と思ってロリ現象エンジョイ策を考えたんだぞ!!」
「騙して悪いが私は興味ないことは研究しない主義でね!! それじゃあサラダバー!!」
「あ!? 待てやクソ野郎!!」
いつの間にかロープから抜け出したパント爽やか笑顔だけ残してその場から逃亡。鬼畜クソ外道ロリの叫びだけが虚しく響くのであった。
「リン……?」
「あ、私まだ治安維持部隊の仕事あるから。フロリーナ、手伝ってくれる?」
「うん、わかったよ」
「私も保育園の仕事があるから失礼しますね」
「あら、それだった私もお手伝いしますわ」
「ニニアン!? ルイーズ!?」
「「それじゃあこれで」」
「貴様らは絶対に逃さない……!!」
「「やめろぉ!! 巻き込むなぁ!!」」
三馬鹿の騒ぎを聞きながらその場からリン達は立ち去るのであった。
ちなみに数日後に召喚士はパントとカナスによって無事に元に戻った。
謎の幼女
召喚士がロリった姿。見た目は幼女、中身は鬼畜クソ外道!! を地でいく最悪すぎる存在。ちなみに元に戻るまでの数日間の間にヘクトルのエリウッドと共謀してヴァイス・ブレイブのロリコン達からお金を騙し取った模様。最悪である。
パント
不可能を可能にする男。大半の騒ぎの元凶を召喚士だとすると、こいつは笑顔でガソリンをぶちまけるタイプ。
ルイーズ
曲者だらけの烈火製の中で数少ない良心でありストッパー。普段は微笑みながら「あらあら」だけで済ませるが、本気で怒らせると烈火製全員が土下座して謝る事になる。
あ、タイトルに誤りがありますね。『召喚士「と」幼女』ではなく『召喚士「が」幼女』ですね。
そんな感じで早速天才イケメン魔道士がやらかしてくれました。本当は母性愛の化身であるミコトマッマも出ばらせようと思いましたが、ミコトマッマの母性愛が止まらなくなったのでリストラ。
今後もパントはこんな感じで敵味方問わずにテロっていってくれるでしょう。
ところで今回のガチャの目標であるシグルーンさんが未だにうちに来てくれないのは何かの不具合ですか?