真・女神転生ⅣデビルサバイバーNOCTURNE   作:蝿声

1 / 3
序盤の東のミカド国では改変する部分が無かった


第1話

 上野地下にある人外ハンター商会。悪魔を狩ることを生業としている人外ハンターの拠点らしく物々しい雰囲気を湛えているこの場所の扉が開かれ、4つの人影が入ってきた。

 

「キャッ……なんてギラギラした空間。それに喧しいわ……」

「どいつも腕に覚えがありそうなケガレビトばかり居やがる」

 

 彼らは物珍しげにきょろきょろと辺りを見回している。そんな彼らを商会に居たハンターたちもまた観察していた。男3人に女1人の4人組で、全員が白の上下に青い上着を羽織っている。さらにそれぞれの首元に白、青、黄、赤色のスカーフを巻いている彼らの装いは、瓦礫から物資を発掘し修繕するのが主なこの閉鎖東京においては、いささか整いすぎていた。

 もちろん、それなりの金を支払えば相応の装備を寄越してくれる店もあるが、上野はそれほど甲斐性のあるハンターともそういった店とも無縁である。人外ハンタートーナメントで毎回初戦敗退の地区は伊達ではないのだ。

 そうして好奇の視線に晒されることになった4人組は、未だ入り口付近でどぎまぎしていた。その様子を見かねたのか商会のマスターが声をかける。

 

「そこの4人さんよ。店の入り口で突っ立ってくれんなよ」

「わッ、すみません……」

 

 黄色のスカーフを巻いた青年が返事をし、促されるまま商会の中へと入って行く。相変わらず好奇の視線は集まっているが、彼らが変わったガントレットを介してクエスト受けたあたりから商会に居たハンターたちの注目も薄れていった。

 もともと変わり者が多く人の移り変わりが激しい人外ハンターは最低限の仲間意識しか持ち合わせておらず、注目されるのは掲示板に乗るようなランカーばかりだ。変わり者だった4人組は、クエストを受けたことで同類であるとみなされハンターの中のその他大勢となった。

 あのガントレットに興味がなくはないが、スマホ代わりの変わり種という意味ではつい最近も目にしたばかりなのでインパクトに欠けている。

 

 注がれる視線が薄まったことに気づいた4人はそっと一息つき、さてどうするかとあたりを見回したところで、4、5人で座れそうなテーブルを一人で陣取る男が目についた。妙な柄のYシャツにスラックスというラフな格好の髭を蓄えたその男は、物騒な雰囲気が漂う商会内において唯一の非武装だった。男も4人組に視線を向けており、目が合うと招くように手を振る。当てのない4人は誘われるままに男の座るテーブルに近づき、軽く挨拶を交わす。

 

「どうも。何か御用ですか」

「いやなに、ちょっと確認したいことがあってな。……お前ら、天蓋の上から来ただろう?」

 

 小さく問うた男の声に4人はひどく驚いた。事実、4人は東京を覆い尽くしている天蓋の上に建つ東のミカド国より、任務を帯びて降りて来ていた。しかしそのことを知るのは少なく、東京においては降りるときに伝って来た塔スカイを出たところで出会ったケガレビトだけのはずだ。彼らから報告を受ける上に立つ人物か、あるいは気づけないまま監視されていたのかと警戒を浮かべたところで、内心を読んだかのように男は笑いながら手を横に振った。

 

「不躾に聞いて悪かったな。俺は聖丈二、しがない記者をやってる。知り合いに予言の真似事をできる奴がいてな。そいつから近いうちに上から人が来ると聞いて、話を聞きたくて待ってたんだ。お前らだと当りをつけたのは、まあ見た目からと勘だな」

 

 ついでに知り合いからの頼まれごともあったしな、という聖の言葉に4人は警戒から戸惑いにかわった表情を浮かべた。

 

「予言、ですか……」

「キシャっつーのは何なんだ」

「知らないか? こういうのだよ」

 

 言うが早いか聖は慣れた手つきでスマホを操作し、4人のガントレットに向けた。4人に聞きなれない着信音がなるとガントレットに宿る妖精バロウズが声を上げる。

 

「あら、マスター。何か受信したわよ。トピックス『月刊・妖』だって。どれどれ……」

 

 それ喋るのか、と驚いている聖を後目に各々が自分のガントレットに追加されたトピックスという項目を開いた。

 

『月刊・妖

 ・東京各地の橋、阿修羅会に破壊される! 目的は人や物資の移動制限か

 ・間もなく人外ハンタートーナメント開催! 注目の戦士、続々参加表明

 ・新宿御苑カゴメ塔の謎に迫る! 背後に阿修羅会とは異なる勢力の影が』

 

 4人が読み終わったころを見計らって聖が補足を入れる。

 

「そうやって各地の出来事を集めては知りたがってる奴に教えてやるのが俺の仕事さ。お前らから面白そうな話が聞けるんじゃないかと期待してんだ。ついでに言っとくと月刊とは銘打ってるが実際は不定期だ。それに内容も、俺としてはもっと面白いものを載せたいんだがな、上手くいかんもんだ」

 

 最後は独り言のように言っているが、キシャという職業と話しかけてきた目的が判明したことで4人は納得したようだった。そして話の内容から情報通だということが窺い知れ、目的のためにはこの聖という男から話を聞くのがいいだろうと、4人は目線で確かめ合った。

 

「分かりました。僕たちのことでよければお話しします。代わりと言っては何ですが、こちらからも聞きたいことが幾つか。……その前に自己紹介を。僕はフリン、そしてこちらからワルター、ヨナタン、イザボーです」

 

 白いスカーフにポニーテールの青年フリンが代表して名乗り、青いスカーフの短い髪を逆立てた青年、黄色のスカーフでくせ毛の青年、赤いスカーフの紅一点の女性を順に紹介し、短い挨拶を交わしたところでようやくフリン達は席に座る。そして東のミカド国から東京へ降りてきた理由を語る。

 

 フリンは、自分たちが東のミカド国に仕えるサムライという戦士たちであること、ミカド国のはずれの村が焼かれ村人は悪魔に変えられたこと、その下手人がケガレビトの可能性が高いこと、調査のためにケガレビトの里に下りてきたこと、ついでとばかりに異物の発掘やターミナルの解放も命じられたことなどを話した。

 途中、興味深げに聞いていた聖の顔が難しい表情に変わった時はどうしたのかと思ったが、遮られることもなく語り終えたフリンたちは、商会から「食え」と出された謎の物体Xを持て余しながら聖の反応を待った。

 

「……まあ、順番に行こうか。まずお前らは俺たちをケガレビト、東京をケガレビトの里と呼んでるようだが、止めておいた方がいい。頭に血が上りやすい奴なら今頃喧嘩になってるぞ」

「あー……わりい」

「構わんさ。次は村を襲った『黒きサムライ』について……お前らの聞きたいこともこれだろ? 悪いが心当たりはないな。強いて言うなら悪魔討伐隊の基地だが、どうだろうな」

 

 ワルターの謝罪を軽く流した聖の言葉にフリン達は顔を見合わせる。悪魔討伐隊の基地はミカド国の修道院より目下の目的地と指示されていた場所だったからだ。目的としていた場所が不意に否定気味な言葉が返されたために、驚きはひとしおだった。

 

「それはどうしてかしら」

「特徴を聞いた限り、そいつの装備はブラックデモニカだろう。これは二十年以上前に事実上解体となった悪魔討伐隊の標準装備として支給されたものだ。そいつがこの悪魔討伐隊の関係者という線もあるが、如何せん古い。どんな伝手でそいつの手に渡ったか分からん。おまけに悪魔の疑いが強いんだろう? 悪魔の神出鬼没ぶりを考えれば、な」

 

 聖の説明に、今度はフリン達が難しい顔をする。しばらく考えていたが、結局ほかにあてがあるわけでもないため、基地について教えてもらうことにした。

 

「ですが、行ってみないことには何も分かりません。良ければ基地の場所を教えてもらえませんか」

 

 そう言ったヨナタンに、聖はニヤリとした顔を向ける。

 

「そいつはこっちにとってもありがたい話だ。そう訝しげな顔をするな、ちゃんと説明はする。まずこの上野が有る土地は北と東が東京を囲う壁に、南と西が川に遮られた孤島になっている。悪魔討伐隊は南の川を超えたところの霞が関にあるんだが、そこに行くための橋が壊されたときている」

「げっ……じゃあ泳いで渡るしかないのか? いや舟はどうだ」

「あいにく舟や代わりになるようなものは占有されているし、泳ぐのはお勧めしないな。水の中で水棲の悪魔に勝つ自信があるなら別だが。あと汚いぞ」

 

 その言葉にフリン達は揃って首を横に振る。彼らもサムライとはいえ為りたての新人であり、死線を潜ったことはいくつかあれど、経験豊富とは到底言えない域だ。相手に圧倒的に有利なテリトリーで戦うには足りないものが多いと自覚している。

 

 返事を確認した聖は続きを話し出す。彼も仕事柄ここにいつまでも留まっているわけにはいかないこと、どうにかできないかと歩き回ったところ川でケルピーという水辺に棲む馬の妖精の群れを見つけたこと、様子がおかしかったから話を聞いてみれば、もともとここ上野にある不忍池を縄張りとしていたが、ピアレイという悪魔が棲み着き始めて追い出されたこと、そしてピアレイを退治してくれれば礼として向こう岸まで乗せてもらえるという約束を取り付けたこと。

 

「だが俺は荒事が苦手でな、基本的に逃げてばっかりだ。だから俺の代わりにピアレイを退治してくれる奴を探していたのさ。どうだ、悪い話じゃないだろう」

「そうですね。問題はピアレイという悪魔を倒せるかということですが……」

「それなんだが、俺の知り合いの新米ハンターと協力してやってくれないか? さっき言った知り合いの従弟とそのツレでな、今の話をもうしてあるんだ。協力して報酬が減るもんでもなし。力を合わせればきっと勝てるさ、頼むぜ」

 

 聖がそう言ったところで、商会の扉が再び開いた。そちらの方を見るとフリン達より少し若い2人の少年と1人の少女が入ってくるところだった。聖がいいタイミングだと呟き、彼らを呼び寄せる。そのことからたった今話していた新米ハンターだろうと思われた。

 猫耳のような形のヘッドホンをつけた少年、帽子をかぶった少年、そして桃色のノースリーブの上着にチューブトップを着た少女。3人は呼ばれたことでフリン達を訝しみつつも笑顔を浮かべ気さくな様子で近づいてきた。

 

「うお、でかいっ」

 

 何が、とは言わないまでもワルターの口からこぼれ出た言葉にフリンが真顔で頷き、ヨナタンは小声でいさめながらも顔を赤らめ、聖は笑ってそうだろうという。そんな男性陣をイザボーは冷めた目つきで睨んでいた。ちなみに3人の身長はフリンより低い。少年2人がイザボーより大きい程度か。

 

「こんにちは、聖さん」

「どうもっす」

「お久しぶりです」

 

 猫耳、帽子、おっぱいの順に挨拶をする。フリン達の方にも軽く頭を下げる程度に挨拶をして、隣の空いていたテーブルに着いた。少年たちとフリン達の両方から相手の紹介を視線で求められた聖は、苦笑しながら話を進める。

 少年たちにフリン達の紹介をした後、フリン達に猫耳がイツキ、帽子がアツロウ、おっぱいがユズという名前で、さっきの話に出てきた新米ハンターであると告げる。

 

「さっきの話って?」

「僕たちはカスミガセキというところを目指しているんだが、そこに行くためにピアレイを討伐する必要がある。君たちも聖さんから同じクエストを受けていると聞いて、協力させてほしいんだ」

「うーん、ちょうど俺たちだけじゃ難しいかもって思ってたところだし、聖さんの紹介なら問題ないと思うけど……どうする、イツキ」

「2人が問題ないなら別にいいんじゃないかな。ユズはどう」

「私もいいと思うよ」

「じゃあ……という前にフリンさんたちはいいんすか? 俺らハンター初めて3日程度っすけど……」

 

 フリンは答える前に、ワルターたちに視線を向けて返答を促す。

 

「いーんじゃねーの。新米って意味じゃ俺らもそんな変わらねえし」

「そうだね。それでもきっと僕たちなら問題なくやれると、そう思うよ」

「力を合わせれば、きっと困難を乗り越えられますわ」

「ということだ。不足はお互い様、ともに補い合おう」

 

 そう言って手を差し出すフリンに、イツキも手を差し伸べて応える。二人の間で握手が交わされたのを見た聖が手と一つ叩いた。

 

「おし、じゃあ行ってこい! あ、ケルピーに見せる用の証として、ピアレイの首を忘れんなよ」

 




本編で語られないであろう設定とか
聖丈二
 真・女神転生Ⅲの登場人物。大いなる意思に呪われてアマラ宇宙でおきるあらゆる事象を記録することを義務付けられている。ただし本人にその自覚はなさそう。本作の設定では25年前(天蓋ができる前)のあれこれで一度死亡しており、天蓋ができた後に転生したという設定。歳は20前半か。大いなる意思に呪われているという境遇からナオヤ(デビサバ)に気にかけられており、その縁でデビサバ主人公組ともそこそこの仲

イツキ、アツロウ、ユズ
 デビサバ主人公組。イツキが原作主人公。名前は適当。原作では天使の思惑とベルの因子から色々と振り回されていたが、本作でもベルの因子はしっかり持っているし天使の思惑に振り回されるのも既定路線。ただし生まれた時から絶望的な環境で育ったため、原作よりかは精神的にタフ。特にユズ。それでもすくすくと育った彼らは人の優しさを忘れていない好青年です
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。