僕と未来とパラレルワールド   作:NYO

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僕と未来と自分との出会い②

授業は自習(なし)。文月学園は新設校なのでこんな事がしょっちゅうある。いつもなら皆でトランプとかをするんだけど、今日ばかりは屋上にさえ行かない。

 

「で、どういうことなんだ」

 

服がボロボロになりながらも帰って来た雄二。そんな服とは対照的に、目はキラキラと輝いている。どうやら面白いことを見つけたみたいだ。

 

「僕が分裂したみたいだ」

「明久、分裂したら半分になっちゃうでしょ。こういう時は、増殖って言うんだよ」

「論点がずれてるような気がするんじゃが」

「って、いうことは、本当の本当に未来の吉井君ってことで良いんですか?」

「吉井君?」

 

明人さんは姫路さんのほうを見た後、天井を見上げる。ん?なにがあるんだろう。

僕もつられて天井を見る。

 

「思い出した。瑞希にキスされたのお化け屋敷の後だった」

 

ガッ(無防備な部分(くび)にチョークスリーパーが決められる)

パンパンパン(必死でタップする僕)

ゴキッ(僕の中の何か大切なものが折れた)

 

「瑞希。あんたまさか……」

「誤解です美波ちゃん! まだしてません!!」

「まだ?」

「ち、違うんです! 言葉のあやです!」

 

走馬灯って意外と五月蝿いんだね。

 

 

 

                 ☆

 

 

 

目が覚めたとき、僕は円の外で寝かされていた。

 

「つまり私が"明久君"って呼んだときにキスをするってことですか」

「そうだね、確かそうだったよ」

「ウチがキスするのはいつなんですか!」

「美波は……いや、言わないでおくよ。そっちの方が面白そうだしゃべるから! 喋るからそっちに曲がるように人間の体はできていないー!!」

「明人殿よ、なぜそんなに楽しそうなのじゃ?」

 

明人さんは腕の関節を極められながらも、小動物とじゃれあっているような朗らかな笑顔だった。

 

「それはね、そういえばこの控えめな胸の感触を楽しんでいた時もあったなー、って思って」

「っ……!!」

 

光の速度で明人さんから離れる美波。頬を染めて少しだけこちらを見ると、さらに顔を赤くして俯いてしまう。

 

「そういえば、なんで明人はこっちに来たんだ」

 

僕とはいえ、年上なのに敬語も何も使わない雄二。

 

「違うぞ明久、お前だから敬語を使わないんだ」

「雄二! それは余りに酷すぎるよ! そして勝手に僕の心を読まないで! プライバシーもなにもないよ!」

「違うよ明久、元々プライバシーなんてないんだ」

 

ねぇ、明人さんは一応僕だから味方じゃないの!?

 

「それでね雄二、僕がこっちに来た理由はね、偶然なんだ」

「「「偶然?」」」

「そう、これを見て」

 

そう言って明人さんが取り出したのは腕輪。太陽の日差しをうけておぼろげに光る腕輪は、多少傷ついている。

 

「まだ詳しくは言えないけど、この腕輪は特殊なものでね、僕以外は使うことができないんだ。これに新しい能力を付け加える際に起きた副作用で僕はこっちに来たんだと思う」

「「「能力?」」」

「高い得点者の召喚獣に腕輪が付いていることがあるよね。これはそれと同じ物で、違うのは召喚獣じゃなくて本人が着ける物なんだ」

「能力について教えてくれないか」

 

雄二が真剣な目に変わる。おそらく次の試験召喚戦争の切り札として使うのかもしれない。学力で劣るから上のクラスに勝つには策を練らなくてはならないのだから

 

「いいよ、元々の能力を教えることは出来ないけど、新しく付けられた能力なら教えてあげる。能力は瞬間加速(ブースター)。加速《ブースト》の掛け声で発動できて、召喚獣の得点を一時的に貸すことが出来るんだ」

「ほう、それじゃ、各個撃破される心配がないのか」

「それはいい腕輪じゃの」

 

感心する秀吉と、考え込む仕草を見せる雄二。なにかブツブツ言っているけど邪魔をしないでおこう。雄二の魅せる奇策は、集中してこそ生まれるものだ。

 

「なんでそれが良い事なの?」

「普通、戦闘は一対一が基本だ。それが代表との闘いとなればなおさらな。だけどその周りには常に護衛がいる。それであの腕輪の出番だ」

 

びしっと腕輪に指を指し、なお矢継ぎ早に話す雄二。

 

「保持者には申し訳ないが囮になってもらい、戦力を代表との闘いに集中させる、という闘い方が考えられる」

 

クラス中から拍手が沸く。なるほど、それは確かに良い作戦だと思う。

 

「さっきも言ったけど、この腕輪を付けるのには条件を満たさなければいけないんだ」

「へぇー、じゃあ僕はその条件を満たしているって事だよね? 条件って何かな? かっこいい? 運動神経が良い? 優しい?」

「バカじゃな」

「バカね」

「…………バカ」

「ごめんなさい、バカだと思います」

 

皆がなにか言っているけど聞き流そう。そして姫路さん、無理して言わなくてもいいんだよ。

 

「クズだな」

 

雄二、いまほど君が憎らしいと思ったことはないよ。

 

「条件は、頭が悪いことだよ」

「明人さん! 今僕が必死に、聞き間違いだ、って思い込もうとしたのに肯定するなんて酷いよ!!」

 

僕のライフポイントは既に0を過ぎてマイナスまで突入したよ!

 

「とりあえず学園長にあえば何とかしてくれるかもな。歳は違っても同じ学園長だし」

「さすがだね雄二、その歳でそこまで頭が回るなんて」

 

こうして僕達は学園長室を目指して教室を後にした。

 

 

 

 

 

              ☆

 

 

 

 

 

「と、言う訳なんです」

「なにが『と、言う訳なんです』だい。きちんと説明しな」

 

なんと! どの漫画やゲームでも使われている新しく説明するのがめんどくさくて省略する技『と、言う訳なんです』が通じないなんて!? 学園長、恐るべし。

校長室にいるのは長い白髪が特徴の藤堂カヲル学園長。試験召喚システム開発の中心人物だ。こんなシステムを開発した人だから、少々型破りな面もある。

 

「今日は学園長にお話があって来ました」

 

さっき言った"敬語はお前だから使わない"発言はどうやら本気だったらしい。

 

「そんな能書きはいらんから早く本題をお言い」

 

雄二のこめかみがピクピクと動いている。丁寧な口調なのに一蹴されたのがむかついたんだろう。こんな時はなんだっけ、えっと……カドミウムを食べると体に良い?

 

「学園長、この腕輪に見覚えはありませんか?」

 

明人さんは一歩前に出て、コトンと机の上に腕輪を置いた。黒いスーツに身を包む彼と校長の姿は敏腕秘書と社長みたいだ。もちろん明人さんのほうが秘書である。

 

「あんた、何者だい?」

 

学園長の目に警戒の光が灯った。これは何だい、ってしらを切っても自分の所に辿り着かれたっていう事実の前には無意味だってわかったんだろう。

 

「そう警戒しないで下さいよ学園長」

「まだ公表されてない腕輪が盗まれているって言う時点で、警戒するなっていうのがおかしいもんだね」

「そうそう、まだ名前を名乗っていませんでしたね。僕の名前は吉井明人、こちらは坂本雄二、そしてこちらが――」

「二年生を代表するバカです」

「学校一のバカです」

「そうか、そっちの方がわかりやすいか」

「そうだよ雄二、こっちのほうがいいよ」

「ほぅ……。そうかい。アンタが吉井明久かい。ああ、それと、明人の方がわかりやすかったねぇ」

「ちょっと待って学園長! 色々と言いたい事ありますけど、僕まだ名前を言っていませんよね!?」

 

学校一のバカ=吉井明久っていう図式が成り立っている事実に落胆しそうだ。いや、した。

 

「だが、吉井"明人"なんて聞いたことがないね」

 

そうか、明人さんは存在を知られてないのか、ならここはどうにかして誤魔化さないと!

 

「彼は転校生なんです!」

「「「………………………」」」」

 

あれ? どうしたの皆。なんか視線が冷たいよ?

 

「学園長の私が生徒を、特に転校生を忘れると思うかい?」

「それに着ているのは制服ではなくスーツだ」

「僕のことをどうにかするためにここに来たんだろう? 隠しても意味ないじゃないか」

 

ここにいる全員がIQ180以上の化け物か!?

 

「失礼しました。僕はあそこにいる吉井明久の兄です」

「だからこの腕輪と何の関係があるんだい? あんたは弟と似てバカだねぇ」

「今この腕輪は開発中のはずですよね? なんで僕が持ってると思います?」

「あんたが盗んだからじゃないのかい」

 

いい加減イラついてきた。なにも悪くない明人さんがここまで罵倒されると気分が悪い。隣にいる雄二も跡が残るほど手を強く握りしめている。そんな僕らの方を見なくても、明人さんが手で僕らを制した。

 

「雄二、明久、僕のために怒ってくれてありがとうね」

「なんでわかったんですか!?」

 

この部屋には鏡があるが、明人さんの位置からは僕らが見えないはずだ。

 

「昔から連れ添った仲だからね。根っこの部分はいつだって分かっているつもりだよ」

「ほぅ、弟とは違い人間ができているんだね」

「あはは、内申点をあげるためにあんなに努力したことをもう忘れてしまったんですか、ババア?」

 

うん、やっぱりいつまでたっても僕は僕だ。

 

「血は争えないのか」

「で、私に何を言いにきたんだい?」

「その腕輪を直して頂きたいのです」

 

口調が戻り、誠実な態度で学園長に頭を下げる。

 

「ふん、そんな事をしても私らに見返りはない」

「その腕輪を見れば完成に近づくのでは?」

「……わかった、いいだろう」

 

雄二の交渉術の一部を学んだんだろう。それほどまでに自然な仕草だった。

 

「話はこれだけかい? ないなら早くクラスに帰りな」

「いえ、後一つだけ残っているんです」

 

そういうと明人さんは胸に手を当てて、

 

「僕を文月学園の教師にしてください」

「却下だ」

 

脊髄反射で却下された。これには明人さんも少し凹んでいる。

 

「少し考えてくれたっていいじゃないか! ねぇ、雄二もなんか言ってやってよ!」

「…………」

「ねぇ!なんか喋ってよ!!」

 

僕だけが空回りしてる気分だ。

 

「そうだねぇ、あんたの言ったとおり根っこは変わってないから学生でやったらどうだい?」

「「いいのか(ですか)!?」」

 

僕としては色々な話が聞けるので万々歳だ。雄二は目を見開いて驚いているけど。

 

「ああ、二言はないさ。坂本、お前も吉井の根っこの部分が数年で変わると思うかい?」

「まったく思わん」

 

なんだ!? 皆、脊髄反射がデフォルトで備わっているのか!?

 

「話はこれで終わりさね。さぁ、帰った帰った」

 

しっしと手で追い払われる。まるで腫れ物を扱うような感じだ。

 

「「「失礼しました」」」

 

ドアに手を掛けゆっくりと開けると、扉の隙間から差し込んだ自然光が僕らの影を薄くした。

雄二が外に出て、僕が出る。最後に明人が扉をしめながら、

 

「学園長、お体にはお気をつけて」

「あ、ああ、気をつけておくよ」

 

重いドアが閉じられて呆気にとられている学園長の顔が見えなくなる。

明人に心配されたのが意外だったのか、あんなに饒舌だった学園長の口が言いよどんでいた。

 

「明人、気づいたか」

「それはこういう事に気づける雄二と何年も一緒にいたからね」

 

教室へと帰る途中、明人と雄二がそんなことをいいだした。

 

「なんのこと?」

 

二人の間で僕には分からない会話が交わされる。

 

「ババアが明人と明久の関係について気づいたんだ」

「なんでわかるの?」

 

隠蔽は関係だったはずだ!

 

「完全に気づいたのは根っこの部分って言った時だったな」

「その前までは明久のことを弟って言ってたしね」

 

それだけ気づける二人がおかしいだけだと思う。

 

 

 

             ☆

 

 

 

涼しい廊下から日のあたる教室へと戻る。ドアを開けた瞬間に雪崩かと思えるように人が殺到した。

 

「どうでしたか!」

「どうじゃった?」

「どうだったの」

「…………気になる」

「偶然を装って姫路さんの胸を!」

 

とりあえず最後の発言をした奴は後で殺すとしよう。

 

「なんとかなったよ」

 

笑いながら皆を落ち着かせる明人さん。僕の席を中心にしてみんな座る。

 

「とりあえず、転入生としてこのクラスに入ることになった」

「そうですか……って、ええーーっ!!」

 

おたおたする姫路さんはとても可愛い。秀吉はあいかわらずポーカーフェイスで、美波は口を開けてポカーンとしている。

 

「確かに、明人殿は童顔じゃから、高校生と言われても違和感は感じんが……」

「だから、これからは僕のことを"明人"って呼んでくれないか」

「じゃがのー……」

「さすがに……」

 

さすがにみんな遠慮している。未来の僕とはいえ年上の人だ。いきなりタメ口で話せ、というわれるほうが厳しいに違いない。

 

「皆、明人の言う通りだ! このクラスに入った以上明人はクラスメイト! 敬語で話すほうがおかしいだろう」

「そう……そうよね、うん!、よろしく明人!」

「これから仲良くしようの、明人!」

「よろしくな、明人!」

「…………明人、よろしく」

「あ、えっと、あの、よろしくお願いします、明人さん!」

 

姫路さんの敬語に明人さんは苦笑いしている。そして遅れたけど、雄二は最初っから敬語じゃなかったでしょ。

明人さんは皆と握手をして、僕のほうに手を差し出してきた。

 

「後は君だけだよ、明久」

「! よろしく、明人!」

 

こうして僕達のクラスに新たなクラスメイト、吉井明人が加わった。

 

 




次回はオリキャラとオリ腕輪の紹介

かなり前に書いた作品だからかな。地の文がやけにむちゃくちゃな気がする
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