ぶっちゃけ需要があるか確認したかっただけなのに、なんでこんなに投稿したんでしょうね?
ね? 母さん。
続きます。
「ごめんなさいなのです。取り乱しちゃって」
「いや、もういいからそういうの」
電を宥めることに成功した銀時はやれやれといった表情で適当にあしらう。
電は安心したようにホッと息をつくと、おずおずと尋ねる。
「あの、お仕事に関しては……」
「ああ、提督からある程度レクチャーは受けたけどよォ。その前にまず掃除だなこりゃ」
銀時は部屋を見渡すと掃除を提案する。見ているだけで鼻がむずむずしてくるほど埃が溜まっており、とても仕事をしたり生活するような環境ではない。
銀時の一言に電はすっくと立ち上がり
「じゃ、じゃあ電もお手伝いするのです!」
「大丈夫か? 長旅で疲れてんじゃねぇの?」
「司令官を補佐するのが秘書艦なのです。電の本気を見るのです!」
電は先ほどとは打って変わり、腕まくりして気合十分とばかりに息巻いていた。
のだが
「はにゃああああっ!?」
「オイイイイイイッ!?」
電は早くも出鼻をくじかれていた。
「お前この部屋でコケるのこれで5回目だぞ!? 補佐するどころかメッチャ足引っ張ってんですけど!? 掃除するどころか散らかしまくりなんですけどオオオ!?」
「ご、ごめんなさいなのです……」
電は懸命に部屋の掃除を手伝おうとするが、箒を持てば銀時を小突き、荷物をどかそうとすればすっ転び、纏めたごみを捨てようとすればぶちまける。当然わざとではないのだが中々のドジっ子ぶりを発揮していたのだった。
埃まみれで泣きそうな顔をした電に業を煮やした銀時は、怪我をされても困るのでとりあえずこの部屋から離れてもらうよう促す。
「もうお前あれだ。ここの掃除は俺に任せて他のことしてくんね?」
「はぅ……じゃあ、移動用のボートが届いてるはずなので、それがあるか確認してくるのです……」
「気をつけろよ。間違って海に落ちたりとか、舫い綱が緩くて沖まで流されましたとかなしだからな。銀さん泳げないから」
「き、気を付けるのです……」
明らかにしょんぼりした様子でトボトボと部屋を後にする電を見送ると、銀時はひとりごちる。
「あんなちんこいガキが天人とやりあうのか……」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
スナックお登世で横鎮提督から依頼を受けた次の日。
「ここが野郎の言ってた鎮守府か……」
銀時は横須賀鎮守府正門前に立っていた。提督から前金を受け取った後、詳しい仕事の説明をしたいから鎮守府に来てくれと地図と路銀を持たされたのだ。ちなみに貰った前金は、パチンコで増やそうとする前にお登世に強奪されたがここでは関係のない話だ。
銀時が守衛に事情を説明すると、本館に行けと経路を案内される。かぶき町ではあまり見かけない赤煉瓦の建物が物珍しく、銀時は辺りをキョロキョロと見渡しながら歩を進める。
しばらく本館までの道のりを歩いていると、銀時はふとした疑念に囚われる。
「女多くね?」
銀時の言う通り、男性職員に交じって女性がちらほら見えるのだ。しかも服装はてんでバラバラで和装洋装は言わずもがな、巫女服姿の者まで居る始末。おまけに明らかに年端もいかない女学生のような姿をした少女もおり、銀時の横を「いっちばーん!」などと叫びながら走り去っていくのだから疑問を持たないはずはない。
(まさかそれらしい話しといて、イメクラかソープランドの支店長の依頼だったりしねぇだろうな? ……まあ、それはそれで良いけどよ)
そんな思考を廻らせつつ本館と呼ばれるひと際大きな建屋の前にたどり着くと、入り口前に人が立っているのが見えた。
「……また女?」
銀時の言う通り、そこに立っていたのは女性だった。青い袴の弓道着の様な服装に身を包み、短めの髪を左サイドで結っていた。
銀時が近づくと女性も気付いたようで、無機質そうな堅い表情のまま軽く会釈する。
「……万事屋の坂田銀時さんですね? 提督の秘書を務めている加賀です」
「おう、よろしくな。なんかレ○ィ・ガガみてェな名ま――」
「10分遅れです。こちらへお急ぎください」
「え? ちょ、待って!?」
加賀と名乗った女性は銀時の話も聞かずスタスタと建屋内に入って行ってしまう。時間に遅れたことが相当気に入らなかったのだろうか。いきなりのつっけんどんな対応に銀時も慌てて後についていく。
銀時は加賀に連れられ廊下を歩くが、2人の間に会話はなく重苦しい沈黙だけが横たわっていた。先ほどのやり取りのせいで銀時からは話しかけづらい上、前を歩く加賀に話しかける気配が微塵もないためである。そのため、暇を持て余した銀時は歩を早め加賀に近寄ると、初めて加賀を見たときから気になっている部分の観察に勤しむのであった。
(やっぱりデケーよなぁ)
銀時が横眼に見つめるのは加賀の豊満な胸であった。一目彼女を見た瞬間、真っ先に目に着いていた銀時は、暇を持て余した今まじまじと観察に勤しむのであった。
(道着を前へ前へと押し出す双丘の膨らみ。胸当てのせいで歩いていても全く揺れねェが、詰め物をしている違和感は感じられねェ。第一、このねーちゃんのキツい性格からするとわざわざそんな見栄は張らねェと見た)
推理を進めると銀時はカッと目を見開いた。
(とするならば! これは本物のボイン!!)
確信に至った銀時は思わず口元がゆるむのを抑えきれなかった。銀時は若干前のめりになり、覗き込むような姿勢で想像を膨らませる。
(和装だから晒しか? 意外を衝いてブラの線も捨てきれねェな。おそらく、そういうもろもろを外しても形を崩さねェ張りがあるモノに違いねェ。いや~眼福眼福。これだけでも苦労して来た甲斐があったってもんだぜ)
銀時がひとり想像を逞しくしていると、視線に気付いた加賀が銀時にチラと視線をやる。
「私の格納庫に何か御用?」
「え!? 格納庫!? あー確かに格納してるよねー!? 俺的には開放している方が好みかな~? なんて……アハハ」
「……そう」
「……」
銀時は突然話しかけられたため、思わずいつもの調子でセクハラ発言をしてしまう。しかし足を緩めず大した反応を示さない加賀に、流石の銀時も救いの場を求めて窓の外に視線を外す。
「――!?」
窓の外に目をやった銀時は両目を見開き思わず足が止まる。銀時達のいる廊下の窓からは横須賀港の様子を一望することが出来た。そこには大小様々な船が停泊しており、中には戦闘により傷つき修理を待つ戦闘艦の姿を見ることもできた。しかし、銀時に衝撃を与えたのは大型船の威容や傷ついた艦艇ではなかった。
「人が……海面を滑ってる?」
銀時の目には数名の少女が海面に立ち、尚且つその上をアイススケートよろしく滑っている光景が映し出されていた。彼女達は先ほど本館までの道のりで見かけた少女と変わらない年頃であり、背中には武骨な機械の様なものを背負い中には手に巨大な銃の様なものを持った者までいるではないか。
すぐさま銀時は前を進んでしまっている加賀を呼び止める。
「オ、オイ! えっと……ガガさん!? あいつらなに!? ここって波紋戦士雇ってたりすんの!?」
振り向いた加賀は銀時の指さす方向に目をやると、なんと言うことはないという口調で告げる。
「彼女達は艦娘。じきに見慣れます」
「ハァ? カンムス? いやあの、そう言う思わせぶりなセリフはいいからさ――」
「それに」
「聞こう! 人の話聞こうガガさん!」
銀時の言葉をことごとく無視する加賀が1つのドアの前に進む。ドアには『執務室』という金属プレートがあしらえてあった。
「すべて彼が説明してくれます」
そう言うと加賀はドアをノックする。
「加賀です。万事屋の坂田銀時さんがいらっしゃいました」
「はいはーい。入っちゃって~」
「どうぞ」
加賀に勧められるままに銀時はドアを開けると、応接セットの向こうにある執務机に座る提督が手を上げる。
「やあ銀さん。待ち侘びたよ」
「どーも、えーと……フルチン提督?」
「横鎮ね。なんか段々エスカレートしてない?」
提督がやれやれという様子でソファーに座ることを勧める。
「まあ立ち話もなんだ。掛けなよ。加賀さんお茶持ってきて」
「はい」
「茶葉ケチらないでね。濃いーの好きだから」
加賀が部屋から出ていくと、銀時はソファーに腰掛けながら提督に用意していた質問を繰り出す。
「ちょっと訊きてェんだが、ここはカンムスとか言う波紋戦士も雇ってんのか?」
「波紋……? ああ、彼女達のことか。その辺も含めてこれから説明するよ」
そう言うと提督はテーブルの上にある『深海棲艦 写真資料①』と書かれた茶封筒を手に取る。
「まず、我々の“敵”である深海棲艦のことなんだけど。どれくらい知ってる?」
「『んちゃ砲』ブッ放すクジラみてぇな天人」
「うーん、その辺りの認識から改めようか」
こうして横鎮提督による深海棲艦レクチャーは始まった。
―10分後―
「よーするに、デケェのはそのイ級とかの強面の魚で? あとは人間大でヤバさは人型に近づくと上がってくると」
「そんなところ。補足するなら魚型の深海棲艦は大きくても2、3m位だから船の大砲じゃ狙いにくいのよ」
「ふ~ん……で、さっきの波紋戦士とどう繋がるんだ?」
「ああ、それはね――」
「お茶をお持ちしました」
鼻をほじりながら質問する銀時に提督は答えようとすると加賀が返ってきた。
「ああ、ありがとう」
「おう、悪ィなガガさん」
「……気付いてない様だから言うけど、私の名前は 加 賀 です」
加賀は聞き取りやすいように、1つ1つの発音をしっかり銀時に言うのだった。
「え? マジ?」
「……ひょっとして、今の今まで聞き違えてた? 俺、何度か呼んでたよね?」
ギョッとする銀時に、提督は呆れ顔を向ける。
加賀は構わず茶托を置くとお茶を配膳し出す。
ジャボッ
「どうぞ」
「……オイ。今、親指思いきり入ってたぞ」
ジト目で突っ込む銀時を見ずに加賀は普通に提督にお茶を出しながら
「心配いらないわ。これぐらいで火傷するほどヤワではないので」
「そこじゃねーよ! てか今度は指先を洗うな! 湯呑はフィンガーボウルじゃねぇんだよ!!」
銀時に出したお茶で指先をバシャバシャと洗う加賀に銀時は抗議の声を上げる。
その様子を見ながらため息をつきつつ提督が口を開く。
「ちなみに加賀さんも艦娘、君が言うところの波紋戦士だよ」
「……え? そうなの?
「あーそうじゃなくてね……。加賀さん、ちょっと艤装展開してみて」
「はい」
加賀はお盆を置くと、2人から少し離れ目を瞑る。
「航空母艦『加賀』。抜錨」
加賀が唱えると背中や左腕の辺りが1瞬まばゆい光に包まれた。次の瞬間、彼女の背中には矢筒と弓が、左腕には「カ」と書かれた大きな板の様なものがあった。
銀時は特撮の変身シーンを見ているような気分に囚われ思わず見惚れる。
「おお……!」
「さっきも言ったように普通の船じゃ深海棲艦は小さすぎて対応できない。そこで、人間大のあいつらを相手にするなら、こちらも人間大になればいいという思想の元、開発されたのが……あー……」
提督が説明しようとするが、なぜか詰まると加賀に向き直る。
「ゴメン加賀さん。『艦娘』の正式名称なんだっけ?」
「しっかりしてください。仮にも提督なんですから」
正式名称を忘れた提督に、加賀が突っ込むと1つ咳払いし
「『宇宙戦【艦】とか普通にある世界観だけど、海の上だったらウチの【娘】の方が早い、安い、可愛いで3割強いから』 略して『艦娘』です」
「イヤ長くねエエエッ!? そんな長げー名前そりゃ忘れるわッ!! ほとんど製作者側の気持ちしか言えてねェよ!? しかも最後の3割強いってなんだ!? なに基準で3割つってんだ!!?」
「……だから言っています。ヤワではないと」
「なにドヤ顔してんのオオオ!? 確かにスゲー記憶力だけど、そんな話してたっけ!?」
銀時がひとしきり突っ込むと提督に話しかける。
「これあれか? 天人の技術だよな?」
「うん、妖精星人という種族に技術協力してもらって実現したんだ。手のひらサイズの小人見たいな天人でね、人間の海上航行艤装や携行型兵装の開発など多岐に渡り活躍してるよ」
「この子がそうです」
提督が説明する横から、加賀がひょいと銀時の前に妖精星人を見せる。加賀の手には襟首を摘ままれた状態でされるがままになっている小さい女の子がぶら下がっており、銀時を見るとパタパタと小さな手を振る。
「はろー?」
「お、おう……」
「珍しいね。加賀さんが妖精さんを連れるなんて」
思わず立ち上がりマジマジと妖精星人を見る銀時の横で提督が加賀に話しかけると、加賀はしれっとした顔で返す。
「給湯室で菓子類を漁っていたところを捕まえました。あとで折檻しときます」
「オイオイ、大丈夫なのかよ? こんなちんこいなりしてんだし――」
「あーん。こーふんするじゃないのー」
「……オイ、本当に大丈夫なのかコレ?」
折檻と聞いて心配する銀時をよそに、妖精としてはウェルカムらしく体を器用にくねらせる。その様子に銀時は別の意味で心配になってきた。
「心配いらないわ。あたなと違ってみんな優秀な子たちですから」
「ねえ、君さ、さっきから俺にチョイチョイ突っかかってきてるけどさ? あんまナメた口きいてっと銀さん終いにゃ怒るよ?」
加賀のことあるごとに挟む棘のある言動に銀時は青筋を立てて加賀にメンチを切っていると、まあまあ、といった様子で提督が間に入る。
「艦娘の説明はこんなところで良いでしょう」
提督は銀時に座るように促すとサクサク説明を続ける。
「君には艦隊を1つ率いてもらうよ。と言っても船団護衛専門で1人だけなんだけどね」
「は? たった1人? オイオイ、そんなんであの深海魚の群れに太刀打ち出来んのか?」
「昨日も話したけど反攻作戦の関係で人員が大幅に引き抜かれちゃってね。今の輸送船の護衛は、艦娘が護衛対象に乗り合わせているんだけど、いかんせ数が足りないから従来の港から港までのやり方だと全員過労で倒れてしまう。そこで、脅威度の低い本土近海は最低限度の数にして、バトンタッチの要領で遠方からの護衛を引き継ぐという方法を取ろうと思う」
この方法によって遠くから来た艦娘は帰る方向の輸送船にまた乗って戻ればいいので、本土近海往復分の工程を短縮できるという寸法だ。ただし、船会社との連絡を密にする必要がある上、艦娘が消耗した燃料や弾薬の補給も帰りの輸送船で行わなければならない。そのため、いつ誰がどの船の護衛に就くかをしっかり管理することが求められる。
「で、そのバトンタッチ役を君の元に就く子にやってもらいたいんだ。そして、司令部を新設するとなると便宜上、指揮官が必要になる」
「ふ~ん。何かよくわかんねぇけど、お飾りでもいいから責任者を置いておけって訳か?」
「一応、二重チェックの意味合いもあるからね? 忘れないでよ?」
「へいへい」
提督の念押しに銀時は耳をほじりながら頷くが、ふと妙な違和感を覚えた。
「ん? てことはここのボスはあんたがいる訳だから、俺の仕事場はここじゃねェってことか?」
「察しが良くて助かるよ。君にはここに行ってもらいたいんだ」
「ハァ!? 絶海の孤島じゃねェか!? 完全に島流しだろこれ!?」
提督が示した勤務地を知った銀時はしかめ面を隠さない。提督が指さしたのは、太平洋上にポツンとある島。地図上に記された南方の基地よりもはるかに近いとはいえ、絶海の孤島という表現は間違っていなかった。
銀時はそりゃ人が集まるはずが無いと理解できた。誰が好き好んで島流しになりたがるというのか。そう判断した瞬間、銀時はそそくさと手を振って帰ろうと席を立つ。
「パスパス! ワリィな提督さんよこの話はなかったことに――」
「ちなみに……」
立ち上がろうとする銀時にかぶせるように提督が話しかける。
「おニューの司令部で彼女みたいな秘書艦が付くよ」
「……」
提督が彼女みたいなと指さすのは脇に控える加賀。それを見た銀時は立ち上がろうと腰を浮かせたままの姿勢で固まる。
「……提督あの――」
「まあなんだ。折角、南の島に行くんだ。南国リゾート気分を味わってきなよ」
何か言いたげな加賀を手で制しながら、提督は朗らかに銀時に伝える。
そして、提督の話を聞いた銀時はというと
―― ボン キュッ ボンの豊満ボディの秘書。
―― 2人きりのキャッキャウフフの南国バカンス
―― ポロリもあるでよ?
というパラダイスを想像していたことは言うまでもない。
銀時はさっきまでのしかめ面をサッと引っ込めると
「いやー侍たるもの、一度交わした約束は必ず成し遂げないとなー」
「じゃあよろしく。明日のフェリーで出発してちょうだい。これチケット。着いたら連絡してね」
あっさり手のひらを返した銀時に提督は翌日発のフェリーのチケットを渡す。
その後の銀時は電のいる無人島の廃屋にたどり着き1話冒頭に至るのである。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
銀時と電が気まずい対面をしている頃、横須賀鎮守府の執務室では提督と秘書艦である加賀が書類仕事に忙殺されていた。
加賀が申請書類にある程度目途がついたところでおもむろに口を開く。
「もうそろそろ坂田さんと電が顔合わせする頃ね」
「ん? そうだねぇ」
「大丈夫なんですか?」
「何が?」
提督は経理の書類との睨めっこをやめ、加賀に顔を向ける。
「あの男のことです。仮にも彼女の上官になるんですよ」
「加賀さんは不安?」
「時間を守れない、ちゃらんぽらんでセクハラ発言、人の名前を間違える……どれをとっても人の上に立つ者には向いていませんが?」
「そこまで正論攻めされると辛いなぁ」
提督は椅子に背中を預け頭の後ろに手を組む。加賀の言う通り銀時の性格は、控えめに見ても社会人としてほぼアウトと言っても過言ではないものだった。
提督は天井の模様をぼんやりと眺めながら囁くようにつぶやく。
「兵隊の頭は務まらないか……」
「……なにか?」
「いや、別に」
提督は加賀が指摘する社会的な物差しでは、到底測れないものを銀時に見たのだった。
(俺にはとてもそんな目には見えなかったよ。銀さん)
提督が思い出しているのはスナックお登世で垣間見た銀時の目だった。様々なものを失い、それでもまだ抗おうとする鋭い視線。すぐにいつもの死んだ魚の様な目に隠されてしまったが、提督はその瞬間を見逃していなかった。間違いなくあの目は数々の修羅場を潜りぬけた者だけがする目だと確信していた。それがあったからこそ、今回の依頼を無理やりにでも推し進めたのだ。
提督は体を起こすと、こちらを見つめる加賀に笑いかけ
「ま、いいさ。なんとかなるだろう」
「……ふぅ、あなたも大概ね」
適当とも取れる提督の発言に、加賀はため息をつくと書類を手に取り席を立つ。
そんな加賀を見た提督はニヤリと口の端を上げると彼女の背中におもむろに声を投げかる。
「俺としては加賀さんが優しい人だと分かってすごくうれしいよ」
「はい?」
提督の言葉に振り向いた加賀は表情を変えることなく訊き返す。
「なぜそのような話になるのですか?」
「わざと嫌がらせしたんでしょ? 銀さん本人から依頼を拒否させるために」
「……」
加賀は何も答えず黙って提督を見つめるだけだったが、彼は構わず続けた。
「我慢が出来る子加賀さんが、わざわざあんな真似したんだ。お世辞にも真っ当な人間とはいえない銀さんがあの子の上官にならないようにするために。違う?」
「…………」
「加賀さんもなんだかんだで電のこと、気に掛けてるんじゃないの?」
「……さあ?」
加賀は短く答えると扉をあける。そして出様にただ、と付け加えた。
「苦境に立たされているあの子をなんとかしたいという思いはあるわ。でも、どうすればいいかは私にも分からない……」
そう言い残した加賀を提督は黙って見送ると再び天井を見上げる。
「ミスキャストは無いと思うんだけどなぁ……」
提督が小さく呟くとそれをかき消すように電話が鳴る。
「はい横鎮」
「オイ、クソ提督っ! 騙しやがったなコノヤロー!」
銀時の怒鳴り声を聞いた提督は先ほどより若干顔色が明るくなるのを感じた。
(さてさて、お手並み拝見と行こうか。銀髪のお侍さん)
後書き
ここまでお読み頂きありがとうございました。ここから先は小説の内容に全く関係のない、後書きともいえないダベリの空間になるので、暇で暇でしょうがねえから仕方なく読んでやるという人だけが読んで下さい。(長いです)
さて、この度、銀魂と艦これのクロスオーバーという黒魔術もいいところの小説を書くにあたり、私は今画面の前にいらっしゃる読者の皆さまについて悩みました。このページを開いたということは少なくとも銀魂と艦これの両方、もしくはどちらかを知っていると思うんですよ。両方知っている方はバッチ来いで済む話ですが、片方しか知らない方は知っている方の原作に大分知識が依存しているんじゃないでしょうか。個人的にですが、外食する時に知らないメニューに挑戦する時の心理状態に似ていると思うんですよ。例えばイタ飯屋に行った時に「ミネストローネとフォカッチャのセット」とか言われても「なんのこっちゃ?」となり頼みにくくなるわけですよ(少なくとも私は)。もし、その隣に「ミネストローネとナポリタンのセット」があったら「ああ、ナポリタンと何かが付くんだな」となってそっちを頼みやすくなるわけですよ。ちょっと冒険しても、片方でカバーが利く訳です。
そんで頼みやすいからと言ってホイホイ釣られた人の中には「なんだこのミネストローネ!ただのカス汁じゃねえか!」「なんだこの油そばみたいなナポリタン!ふざけるな!」と自分の知識を総動員してケチを付ける人もいるでしょう。
気持ちは分かります。自分の期待を大きく裏切ったものが提供されればそう言いたくもなるでしょう。ただ、そういうお客さんに向かって私は声を大にして言いたい。
「ちゃんとしたナポリタンとミネストローネが喰いたかったら、ちゃんとした店に行ってください」
ウチは「なんちゃってナポリタン」と「なんちゃってミネストローネ」をセットで提供しているお店なんで、期待をすること自体が間違っています。「同じ小麦で出来てるし黄色いしラーメン麺でいいんじゃね?」とナポリタンを作り、野菜カス余ったからラーメンの煮汁も使ってスープ作っているようなどうしようもないお店です。「調理師免許?いいえ、知らない資格ですね」とか店主はほざいているわけです。
長くなりましたが。そんな「なんちゃって」小説でもいいよ、という瀬戸内海ぐらいの心の広さを持った人に私はこの小説を読んでもらいたいと思いましたマル