艦魂   作:mangan
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前書き

まず、1,2話を読んで下さった皆様。感想、評価を下さった皆様。
本当にありがとうございました。

そして、3か月もブッチこいてスイマッセンシタアアアアア!orz

あと大事な設定を3つも書き忘れていたので、あらすじに追記しときましたがこっちにも書いときます。

・時間軸としては金丸君達が万事屋から消えた後ぐらい
・提督≠銀魂キャラ≠オリキャラ
・妖精さんは人退っぽい雰囲気

最後に、後書きにおまけコーナーを作ったのでよかったら目を通して下さい。



第三話『物事はだいたい急に動き出すからいつでも対応できるようにしておけ』

 司令部の裏から崖下にある桟橋まで続く下り坂を電はノロノロと下っていた。けもの道の様な未舗装の道に足を取られないようにするというのもあるが、電が首を垂れているのはそれ以外の理由もある。

 

「ハァ……またやっちゃったのです」

 

 本日、何度目になるか分からないため息をつきながら電は嘆く。自然と目がうるみそうになるが電はハッとした様子で首を振ると、顔を上げ胸の前でグッと手を握りこむ

 

「もうあんな思いはしたくないのです……!」

 

 電は一人決意を新たにすると再び歩を進めるが、足元のぬかるみを見落とし転んでしまうのだった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「よーし、こんなもんでいいだろ」

 

 銀時は腰を伸ばしながら部屋を見渡す。

 まるで舗装されるように埃が積もっていた床は木目が見えるまでに磨きあげられ、煤けていた窓は南国の陽光を部屋に届け、蜘蛛の巣の張っていた天井はきれいに清められ照明器具まで取り付けられていた。

銀時は部屋の様子に満足げに頷くと

 

「さすが妖精さんだな。1話跨ぐ間に終わっちまうとか劇的ビフォーアウター過ぎだろ。魔法とか使えんの?」

「いやー。それほどでもー?」

「それほどかもー?」

「メタはつげんはスルーでおっけー?」

 

 銀時が足元にいる妖精達に賞賛の言葉を送ると、妖精達もワイワイと答える。なんとこの男、自分はなにもしないで妖精達に作業させていたのだ。

 事の発端は部屋の掃除を進めていた銀時が

 

「ちょっと気分転換するか(飽きた)」

 

 と、言い出しっぺにも拘らず部屋の掃除を放り出し、建物の探索しだしたことから始まる。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 銀時が部屋を出てギシギシと音を立てる廊下を眺めながら歩くとあることに気付く。

 

「……もともと、旅館だったのか?」

 

 ここに到着した時にはあまりの寂れ具合に気を取られていたが、よくよく観察するとそれらしき痕跡がそこかしこに見えてくる。

 銀時が今いる出入り口には下駄箱やカウンターが残っており、かつて客を迎え入れていたのであろう。そこから廊下が両側に伸び大小部屋が並んでいる。先ほど掃除していた部屋も客室の1つだったのだろうと銀時は見当を付けた。そして、出入り口に向かい合う形で2階へ続く階段があったが、銀時はそちらへは行かずさっき来た廊下とは反対側の廊下を進んだ。ところどころ床が抜けており、見るからに危なそうだったからだ。

 

「こっちは食堂で……ここは風呂場か? ……ん?」

 

 銀時は足を進めると、廊下の突き当たりにふと目が止まる。そこには旅館には不釣り合いな重厚な鉄の扉が据え付けられ、『工廠』と銘打ってあったのだ。

 銀時は扉に近づき恐る恐る開けると部屋の中の騒音が漏れ出してきた。部屋の中には発電機が鎮座しており、唸り声を上げながら稼働していた。他にもおもちゃの様な小さい作業台や工作機械などが6畳ほどの部屋に押し込められており、その間をちょこまかと動く小さい影があった。

 

「お? 妖精か?」

「あ、にんげんさん」

「どーもです?」

 

 銀時が声をかけると妖精達は銀時を見上げて挨拶をしてくる。銀時は彼女らに手を振り返しながら部屋を見渡す。

 

「これ全部、オメーらが用意したのか?」

「そうです」

「にんげんさんのきかい、うごかすのよゆうです」

「でんきつかえます」

「おおー」

 

 銀時は提督から事前に妖精のことを聞かされても、改めてその高い技術力に驚かされた。

 部屋を見渡していた銀時は、ふと一計を案じ思わず口角を吊り上がる。

 

「なーなー妖精さんよぉ」

「なんですか? にんげんさん」

「あー俺のことは銀さんとでも呼んでくれや」

 

 でだ、と銀時は妖精に顔を近付けるためにしゃがみ込んだ。

 

「なぁ、オメーら。このボロ屋全体の改築とかできねーか?」

「はい?」

 

 銀時は廃墟同然のこの元旅館の改修工事を妖精にやらせようというのだ。

手揉みをしながら下卑た笑いを浮かべて銀時は妖精に擦り寄る。

 

「結構な腕があんだから訳ねーだろー。なー頼むよー」

 

 そんな銀時に妖精達は銘々顔を見合わせると渋い反応を見せる。

 

「どうする?」

「けっこうひろいし……」

「ざんぎょうだい。つきます……?」

「あ? 知らねーよ。提督に聞けや」

「これ、でないぱたーん」

「わがしゃに、いほうざんぎょうはありません……」

「ここがぶらっくしょくばか……」

 

 銀時の発言に妖精達は肩を落とした。ある者はポケットに手を突っ込み足元を弄り、ある者は遥か彼方を眺めるなど、あからさまにやる気をなくした様子を見せるのだった。

 銀時はというと南の島で凍死することは無いとはいえ、廃墟で初日の夜を迎えるなど真っ平ごめんだった。なんとしても妖精達に工事をやらせようと思案顔になると、ふと最初に見た妖精を思い出した。

 

(……まさかな)

 

 そう思いながらも、ポケットからあるものを取り出し妖精に見せびらかすように振ってみる。

 

「分かった分かった。完成したらこいつをやるってことでどうだ?」

「あまあまー!?」

「んんwwwいたチョコにしかみえませんぞwwwww!?」

「みなぎってきたー!?」

 

 露骨にテンションが上がった妖精達を見た銀時は口元の笑みをもはや隠そうともしない。

 

(やっぱりな。コイツら甘いもんに目がねェ)

 

 きっかけは横須賀鎮守府に行った時に、加賀が捕まえた妖精が頭によぎったことだった。あのドMの妖精は給湯室で甘味を漁っていたところを加賀に捕まっていた。加えて、妖精が女の子の姿をしていることから甘いモノ好きであると推測したのだが、結果としては大当たりだった。

 かくして、妖精達のやる気スイッチをONに出来た銀時は、超ド短時間で居住環境を整えることが出来たのだった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 銀時は様変わりした自分の新しい城を眺め、ほくそ笑みながら辺りを闊歩する。

 

(おまけに家具まで用意してくれちゃって、食いかけの板チョコ1枚でサービス精神旺盛すぎだろ?)

 

 銀時が仕事部屋と指定した場所には机や椅子、本棚といった家具一式が据えられており、新しい主が使う瞬間を今か今かと待っていた。

 銀時はさっそく出来たばかりのデスクにふんぞり返っていると足元から話しかけられる。

 

「ぎんさん。ぎんさん」

「あん? どした?」

 

 銀時が目をやると黒電話が足元に浮かんでいた。どうやら妖精が電話を頭の上に担いでおり、姿が隠れてしまっているようだ。

 

「でんわできるようになりました」

「あ? 電話つったってかける相手なんざ……あ」

 

 銀時は妖精の報告を適当に流そうとするが、ここに来るはめになった人物を思い出すと、妖精から電話を奪い取り猛然とダイヤルを回した。

 数コールしたところで目当ての相手が受話器を取った。

 

『はい横鎮』

「オイ、クソ提督っ! 騙しやがったなコノヤロー!」

 

 銀時は相手が出ると、開口一番怒鳴りつける。

 

『やあ、銀さん。たどり着いたようでなによりだよ』

「なにがなによりだよ!? ボインの秘書付きの南国リゾートなんざありゃしねェぞ!? つるぺたのガキ1人と孤島の廃墟で黄金伝説じゃねェか!!?」

『騙しただなんて人聞きが悪いな~。俺はあくまで秘書がつくとしか言ってないよ』

「テメエエエッ!? 詐欺師かコンチクショオオオオオっ!!?」

 

 銀時は電話越しでも提督の口元がニヤついていることが分かり、あらん限りの怒鳴り声を受話器に叩きこむ。

激昂する銀時を宥めるように提督は付け加える。

 

『まあまあ、そんなさみしい銀さんに、俺からささやかな潤いを提供しようじゃないの。今日の午後辺りに着くはずだから、楽しみに待っててよ』

「エロ本か? いや、ワリーな。持ってくりゃよかったと後悔してたとこなんだわ」

『んなワケ無いでしょ、電も居るのに……。まあ、着いた時のお楽しみってことで』

「へーへー。ご親切にどーも」

 

 銀時と提督が男同士の話していると部屋の扉が開かれる。

 

「ただ今戻ったのです!」

 

 電は部屋に入りながらしきりに辺りを見渡し興奮を隠そうとしない。

 

「はわー、中がすっごく綺麗になっていてびっくりなのです!」

「まぁ銀さんが本気を出せばこんなもんよ」

 

 まるで自分がすべてやったかのように銀時はふんぞり返ると、電話越しに提督が尋ねてきた。

 

『……電がいるのかい? 丁度いいや。ちょっと代わってくれない?』

「へいへい。オイ、電。提督から」

「はいなのです!」

 

 銀時が電を呼ぶと電話を替わる。

 

「もしもし?」

『電、引越し早々悪いが船団護衛の引き継ぎ任務だ。1500時にポイントM-8で合流。本土まで護衛せよ』

「了解なのです!」

『初めての環境だろうが、無理だけはしないように』

「ハイ、なのです」

『……うん、銀さんに代わって』

「ハイなのです。坂田司令、どうぞなのです」

「……なぁ」

 

 電が受話器を差し出すが、銀時は受け取らず頭をボリボリと掻くと電に話しかける。

 

「オメーも俺のこと銀さんて呼んでくれて構わねェよ」

「え?」

「何か名字で呼ばれるのはむずがゆくてよ。まー短い間かもしれねーが仲良くしようや」

 

 銀時はいつもの調子でヘラヘラと話しかけるが、対する電はしぼんだ風船のようにくしゃくしゃと困ったような表情になっていき

 

「そ、そういう訳には、いかないのです……」

 

 蚊の鳴くような声でそういう電は銀時と目を合わせようとしなかった。

 

「坂田司令は電の上官に当たるのですから……」

「別に俺は――」

「で、では行ってくるのです!」

「あっおい!」

 

 そう言うや否や電は銀時に受話器を押しつけると、部屋を飛び出して行ってしまった。

 銀時は電が出て行った扉を見つめていると受話器の向こうで提督が話しだす。

 

『まぁ、難しい年頃だから、がんばってちょうだいな』

「……いい加減、すっとぼけんのやめたらどうだ提督さんよ」

『ん?』

 

 銀時は椅子に座りなおしながら提督に尋ねる。

 

「思春期とか中二病なんてもんじゃねぇぞありゃ? 初めて会った時は逆セクハラする勢いだったのがさっきは拒絶ときたもんだ。挙動不審過ぎんだろうが?」

 

 銀時は電に感じていた違和感を話しながら机に足を載せると、若干語気を強める。

 

「アンタ、電のことで俺に何か言ってねーことあるんじゃねェの?」

 

銀時に問い詰められると提督はしばらく沈黙し

 

『……聞きたい?』

「聞かせてもらうぜ。こちとらあのガキとこっから共同生活なんだからよ」

『……教えなーいってトボケたいところだけど、ここまでバレちゃったら隠しても意味無か』

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 陽光が燦々と降り注ぐ海原で、電は一人白波を立てながら海上を航行していた。天気だけを見れば雲一つなく絶好の航行日和といえ、潮風を切っていれば憂鬱な気分も風に流されると思った。

 しかし、電の表情は晴れることはなかった。頑固な汚れの様に暗い気持が電の心にべっとりとまとわりついていた。

 

『聞かせてもらうぜ。こちとらあのガキとこっから共同生活なんだからよ』

 

 電は銀時と提督の会話に思い返していた。電は部屋を飛び出すと少しの間だけ部屋の前で聞き耳を立てていたのだ。すぐにその場を離れたが、そのあと銀時と提督がどのような会話をしたか予想するのは容易だ。

 

(あの後、提督は電のしでかしたことを話したのでしょう)

 

 電が考えごとをしていると合流相手の輸送船団が見えてきた。近づくにつれ甲板の上で南方から護衛していた艦娘が手を振っているのが見えた。

 電も手を振り返しながら相手を確認すると、護衛は4名のはずだが3人しか見当たらなかった。真面目に見張りを行っているのか。それとも戦闘で怪我をしたのか。それとも……。

 

「うっ……!」

 

 そこまで考えた電は不意に胸が抉られるような感覚に襲われ、振り返していた手を胸に当て荒くなった息を整える。

 

(深雪ちゃん、早くよくなって欲しいのです……)

 

 電はここにはいない1人の艦娘に思いを馳せていた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 銀時は改装を終え指令室として生まれ変わった部屋の中で、一人椅子に背中を預けていた。両手を頭にやって目を瞑っている姿はまるで昼寝をしているようだった。しかし、銀時の眉間には1本のシワが刻まれており、惰眠をむさぼっているわけではないことをあらわしていた。とうに日は傾き宵闇が迫ろうとしているが、銀時は身じろぎ一つせず、ひとり言を呟いた。

 

「事故って同期が昏睡状態、ねぇ……」

 

 銀時は提督から聞いた話を頭の中で反芻していた。

 

 

 

『実は彼女、電は同期の艦娘を訓練中の事故で沈めてしまっているんだ。

 ああ、大丈夫。死んではいないよ。すぐに旗艦に救助されたからね。

 ただ、長く呼吸出来なかったせいか、いまだに昏睡状態のままだ。

 ……そう、そういうこと。

 電は人一倍やさしくて思いやりがあり、責任感の強い子だ。

 それゆえに、事故だったとはいえ相当ショックだったし自責の念に駆られているんだろう。

 

 ん? それがこの無人島配属にどう関係するかって?

 関係大ありさ。

 ちょっと考えてみれば今回銀さんに依頼した件、おかしな話だと気付くはずだ。

 君に説明したバトンタッチ式の護衛だが……え? 忘れた? ……まあいいか。

 結論から言うと、わざわざそんな離れ小島に拠点を置く必要なんて無いのよ。

 そう、俺が今居るこの鎮守府だけで全て事足りちゃうの。

 どうせ港から沖まで往復するだけなんだから。そっちの方がずっと効率的でしょ?

 ……まあまあ、そう言わずに。帰るなんて言わないでちょーだいな。

 銀さんにはそこにいてもらわなきゃならないんだから。

 そう、彼女に鎮守府にいられちゃマズイのよ。

 なんでかって? 簡単な話さ。

 彼女は艦娘。俺は提督。

 もし敵の大群が襲来してきたといった一朝事があったら。

 もしその時、他に出撃させられる者がいなければ。

 俺は彼女を戦線に送り出さなければならない。

 ……分かってくれた?

 彼女の様子を見た君なら想像がつくと思うが、ただでさえそそっかしい電が事故のショックでテンパってるところで戦場に行ったら?

 ご明察、確実に戦死する。

 え? そもそも向いてない? 戦場に立つ人間じゃない?

 ふ~ん。まるで戦場にいたことがあるような意見だね……?

 いやいいさ。話を戻そうか?

 銀さんからの指摘の通り、彼女は正直戦場に立たせちゃいけない子だ。

 もっとも子供を戦場に送り出している時点でどうかしているんだけどね?

 でもね、ここしかないんだよ。彼女の居場所は。

 ……彼女の過去?

 良い質問なんだけど、残念ながら電の艦娘になる前の経歴に関しては提督である俺でも知らされていない。

 ただ、艦娘となった女性達は幕府関係者の身内か、募集に応じてやって来るかの2通りに大別される。

 まかり間違っても、鉄やアルミなどの無機物から人体錬成の如く出来ることはない。

 ……何を言ってるんだって? いやいや、こっちの話。

 でね、その募集でやってきた者の中でもっとも多いのが、働き手が居なくなった家の者だったり、身寄りのない孤児だったり……。

 銀さんも記憶が新しいんじゃないかな?

 攘夷戦争。

 あの戦では多くの血が流れた。

 結果として、膨大な数の戦災孤児や遺族が生まれるに至った。

 ……そう、戦場で男が死んで残された女子供が流れるようにウチに来るって寸法さ。

 おまけに理由は知らないが艦娘は女性しかなれないみたいだから、ウチも本腰入れて募集をかけてるしね?

 ……そう怖い声出しなさんな。俺みたいなしがない元町奉行の与力じゃどうしようもないことなのよ。

 そうだよ、畑違いの俺の様な人間を長に据えなきゃならんほど海軍は人手が足りていない。

 足りていないからこそ来れば受け入れる。

 それに放っておいても彼女達には野垂れ死ぬか、吉原に身を落とす未来しか待っていないときたもんだ。

 みんなで幸せになるっていうのが俺の信条だけど、今とれる最善の選択肢はこれしかないんだわ。

 

 いや~銀さんの勘が鋭くて助かるよ~。

 こうしてより深く事情を把握してくれたわけだしね?

 え? 退路のない状況に追いやった上で? 同情を誘うぶっちゃけ話をしといてよく言うって?

 ……俺もなりふり構っていられなくてね。

 手前味噌で申し訳ないけどね。

 奉行所……いや、治安組織の仕事はほとんどが負け戦なんだよ。

 風邪薬と同じさ。症状が出てから使われるのがほとんどだ。

 熱が出れば解熱剤を、咳には咳止めを投与するように、俺達も症状に合わせて投与される。

 与えられた仕事を淡々とこなしているうちに、なんとか社会が状態を取り戻す。

 何かあってからでしか動けない。本質的には手遅れなんだ。

 たださ? どうせ手遅れなら、同じ負け戦なら、彼女達には生き残って欲しいと思うわけ。

 俺も彼女達に安い国のために死んで来いなんて命令するなんざ真っ平ごめんだ。

 だから今回は提督の立場を最大限に利用して予防接種みたいな真似をしてみたってわけさ。

 ほら? 提督ってさっきの話でいえば医者や薬剤師みたいなもんじゃん?

 ただ、提督と言う立場があるゆえに、左遷みたいな形になってしまったのが心残りだけどね。

 

 ん? 結局、どうすればいいのかって?

 彼女を見守って欲しい。それだけさ。

 別にカウンセリングなんてデリケートなこと出来ないでしょ?

 それに電のことは電自身で答えを見つけるべきだ。

 外野がとやかく言ったところで本人が納得しなければ意味がない。

 だが、彼女はまだ子供だ。

 だからこそ手助けする大人が必要なわけ。

 その時は銀さんなりに助言なりなんなりやってちょうだいな。

 え? 人選ミスもいいところ?

 またまたそんなこと言っちゃって。

 銀さんならうまくやってくれるんじゃないかなーと思ってるよ。

 根拠? んー……勘かな?

 まあいいじゃないのそんなこと。

 じゃあ、電のこと。よろしく頼むよ銀さん。

 あ、言い忘れてたけど電から連絡があるかもだから無線の近くには居てよ?

 

 

 

 銀時は目を開くと椅子から体を起こしながら頭を掻きむしる。

 

「護ってくれつったって、そいつ今海の上なんですけど?」

 

 銀時が誰もいない部屋で一人ごちると机の上に目をやる。そこには無線機が鎮座していた。

 

「おまけに電からの連絡もねーし」

 

 無線機は提督との電話が終わるとタイミングを見計らうかのように妖精が持ってきたのだった。スイッチ1つで電と通話が可能らしいが、今のところ使う機会は訪れずに沈黙し続けていた。

 銀時は重い体を持ち上げるようにのそのそと立ち上がると

 

「取りあえず晩飯ぐらい作っといてやるか」

 

 部屋を出た銀時は食堂の方へ歩くが、食堂の扉の前で思わず歩を止めた。中から人の気配と物が動く音が聞こえたからだ。妖精たちが何かをしているのかとも思ったが、それにしては移動する足音が大きすぎる。

 

(電にしては足音が重い。こんな孤島までモノ盗りか?)

 

 銀時は腰に差した木刀に右手をかけると、勢いよく引き戸を開けた。

 

「警察だ!!」

「きゃっ!?」

 

 銀時が食堂に踏み込むと、割烹着を着た女性が驚いた様子でこちらを振り返った。銀時は想定していた相手とかけ離れた容姿の彼女に肩透かしを食らい、思わず反応がぎこちなくなる。

 

「えーっと、どちら様で?」

「あ、はじめまして。私、給糧艦の間宮と申します」

「給糧艦?」

 

 間宮の自己紹介に銀時はオウム返しをするしかなかった。最後に艦が付くからおそらく艦娘なんだろうなという予想は立ったが、全く素性が分からない。

 いまいちピンと来ていない様子の銀時に間宮は怪訝そうな様子でたずねる。

 

「提督から聞いていませんか? 今日こちらで食事と甘いものをふるまってくれと頼まれたのですが?」

「あーハイハイ。俺のことは銀さんとでも呼んでくれや」

 

 銀時は昼間の提督の言を思い出しはたと手を打った。楽しみにしていろと言っていたのはこのことだとようやく合点がいった。よくよく見てみれば間宮の手にはお玉があり、火にかかった鍋が目の前にあるのだから料理の真っ最中だったのだろう。

 だが、銀時はそれ以上に気になるセリフが間宮の口からもたらされたことに注目していた。

 

「ところでさ。今、甘いものって言った?」

「はい、提督から銀さんへの差し入れということで、どうぞお召し上がりください」

 

 間宮は銀時に説明しながら、四角い包みを銀時に差しだした。包みを受け取った銀時は速攻で包み紙を破り、齧りつく衝動を抑えきれなかった。

 

「ンまい! ンめーじゃねえかッ! これ羊羹だよな!?」

「ええ、私は艦娘の中でも兵站担当でして、本土から離れたところで任務に就いている子達にこういった甘味を届けるのも仕事なんです」

「……天使か?」

「うふふ、そんな大げさですよ」

 

 銀時の賞賛に間宮ははにかむように笑って答える。銀時はバクバクと羊羹を頬張る口を休めず間宮に尋ねる。

 

「こういったってことはなに? 羊羹の他にも何かあんのか?」

「ええ、最中や饅頭、色々ありますよ」

 

 間宮は割烹着の隙間や袖の中などありとあらゆるところからマジシャンの如く甘味を取り出して銀時の前に並べて見せた。

 

「……神か?」

「だから大げさですって」

「いやいや、奇跡以外のなにものでもないでしょ? どこから取り出してんのコレ?」

「企業秘密です♡」

「んなことどーでもいいや! ラーメン天使のどんぶりの中身だって知らなくていいもんなー?」

 

 すっかり上機嫌になった銀時は細かいことなど気にせず羊羹を平らげると、机に並んでいる他の甘味も飲み込むように食べだす。

 

「ヤベエ……ウマすぎてほっぺ落ちそうだよ? 大丈夫? 俺ほっぺ付いてる?」

「あはは……大丈夫ですよ……」

 

 間宮が出した羊羹や饅頭などの甘味を銀時は貪るように食らう。間宮も普段は甘味をふるまった時の艦娘を見ていると微笑ましくなるものだった。だが、この男に関してはそうならない。間を置かずに甘味を平らげていく様を見せつけられると、こちらが胸焼けしそうになってくる。

 ただ、間宮としては聞いておかなければならないことがあったので、ぎこちない笑みを銀時に向けるとそっと語りかける。

 

「あの、銀さん?」

「なんすか?」

「そんなに食べて大丈夫ですか?」

「大丈夫、大丈夫。もう医者から血糖値高過ぎって注意されてっから。もう銀さんそのへん割り切ってるから」

「いえ、そちらも心配ですけど……」

 

 間宮はいったん切ると銀時に顔を寄せると

 

「お代払えるんですか?」

「え?」

 

 間宮の問いかけに銀時はキョトンとした様子で聞き返す。

 

「え? コレ提督からの奢りじゃねェの?」

「ええ、羊羹一本は。それ以外は銀さんが勝手に食べちゃったので」

「えっ?」

「え?」

 

 当然だが銀時は無一文である。そもそも金が無いから依頼を受けたのだからあるはずが無い。確かに、差し入れとして手渡されたのは羊羹1本だけであり、銀時の胃袋に入っている他の甘味は間宮が見せただけで、食べていいとは一言も言ってなかった。

 そのことに考えが至った銀時は冷汗を流し顔を痙攣させていたが、やおら爽やかな笑みを浮かべると

 

「俺と君の思い出に付けといて」

「会って5分しか経ってないのですが?」

 

 訳の分からないことを言って銀時は誤魔化そうとするが、間宮がピシャリと突っ込む。

 そんな銀時の様子に間宮は仕方がないですねと言わんばかりに肩を竦めると、にこやかに銀時に尋ねる。

 

「右腕と左腕どちらが良いですか?」

「へ?」

 

 次の瞬間、間宮が背中に手を伸ばすと、身の丈ほどはある刀を引き抜き様に銀時に振り下ろす。

 

「どっせいいいいいっ!!」

「ウボアアアアアアッ!!!」

 

 銀時が転がるように斬撃を躱すと近くにあった椅子が真っ二つにされる。間一髪で避けた銀時は後ずさりながら叫ぶ。

 

「チョットオオオオッ!! ソレどこから取り出したの間宮さんんんん!!?」

「企業秘密です♡」

「あらヤダ! さっきと同じセリフなのに恐怖しか感じねェエエエエッ!!」

 

 若干、笑顔に影が濃くなった間宮に銀時は指を突き付ける。

 

「アンタ兵站担当だろ!? なんでそんな近接武器もってんの!?」

「武器ではありません。ただのマグロ解体用の包丁です」

「どっちにしろ凶器には違いねェだろうがあああああっ!! っていうかタダ食いしただけで普通ここまでするかっ!!?」

「当店の経営方針です。盗人の腕は切り落として償わせます」

「なにそのハムラビ法典んんんんん!!」

 

 間宮は銀時と会話しながらもゆっくりと間合いを詰め、包丁?を担ぐように構えなおす。

 

「では……その腕置いてけえええええっ!!!」

「いやあああああああああっ!!!」

 

 間宮は猟奇的な笑みを浮かべながら、包丁?を振りかざして銀時に襲いかかる。銀時は情けない悲鳴を上げながら逃げまどうしかなかった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 洋上を航行する輸送船の甲板の上で、電は西日のオレンジ色に顔を焼かれながら海を眺めていた。護衛任務は電も何度か経験しており、大半が海とにらめっこする非常に退屈な時間となる。もちろん監視を怠れば自分もろとも護衛対象や味方を危険にさらすので流木一つ見逃さない気持ちでいつも臨んでいた。

 ただ、今回ばかりはどうしても身が入らない。そもそも、本土近海でさしたる危険はないということや、護衛するには目の数が足りなさ過ぎるということではない。海を眺めていると頭の中で様々なことが渦巻いてしまうからだ。

 今後の自分の行く末や迷惑をかけた提督、己の身を案じてくれた姉妹、それこそ挙げていけばきりが無かった。そして電のもっとも心に重くのしかかっていることに考えが及ぶと、思わずため息が漏れる。

 

(なんにしろ、深雪ちゃんは許してくれないですよね……?)

 

 周りからは事故だからしょうがないと励まされこそしたが、自分が引き起こした事故だ。今も昏睡状態にある深雪のことを考えると、電は自分を責めずにはいられなかった。

 

(どうごめんなさいすればいいのか分からないのです。そもそもそんな機会が来てくれるのでしょうか……?)

 

 電が甲板でたそがれていると電子音が耳を打ち、意識が現実に呼び戻される。無線の呼び出し音だと気付くと慌てて受信ボタンに手をやる。

 

「こちら電、どうしたの――」

『電っ! 頼むっ! 金貸してくれエエエエッ!』

「はわっ!?」

 

 若干食い気味に金の無心をしてくる銀時に、電は困惑を隠せない。

 

「な、なにがあったのです?」

『文無しで間宮の甘味食ったら殺されかかってる! おまえ給料それなりに貰ってんだろ!? 頼む! でないと銀さん片腕持ってかれちまう! 明日からシャンクスになっちまう!! 赤髪じゃなくて白髪海賊団率いることになっちまうよオオオオオっ!』

「……なにやってるのですか?」

『頼むっ!! もうお前だけが頼りな……え? 子供から金借りて恥ずかしくないのか? しゃーねーだろ! ねー袖は振れねーんだよ!! 大体オメーもちょっとタダ食いしただけでケチケチし過ぎなんだよ! 俺の引越し祝いってことにしてサラッと流せる度量もねーのか!?』

 

 電はスピーカーの向こうで間宮を相手にギャーギャーと喚く己の司令官の声を聞いていると、電は先ほどまで悩んでいた自分が段々バカらしくなってきた。

 

「ハァ、まったく人の気も知らないで……ん?」

 

 電は呆れたように目を逸らすと、ふと海の様子に目が止める。夕焼けに目を細めながら欄干から身を乗り出すようにジッと目を凝らす。電の乗る船から少し離れた海面が、沸騰するようにボコボコと泡立っていたのだ。

 電はそれが何を意味するのかに気付くと、慌ててインカムを押す。

 

「こちら駆逐艦電! 緊急! 緊急なのです!」

「イヤイヤ緊急事態はこっちだよ!? もうすぐそこに甘味の主が迫ってんだよ!!?」

「そんな場合じゃないのです!」

 

 危機感のない銀時に電は一喝すると、インカムを押す指に力を込めながら報告する。

 

「我、敵艦見ゆ! 我、敵艦見ゆ、なのです!!」

 

 電が叫ぶのとほぼ同時に海を割ってソレは躍り出た。

 黒々としたクジラを思わせるフォルムだが、生気を感じさせない青白い眼光が周囲を威圧する。おどろおどろしい歯が上下に並んだ口が開かれると、その隙間から伸びる1門の大砲が見るものを恐怖させる。

 

 今まさに深海棲艦が電の乗る船に狙いを定めようとしていた。

 




教えて!! 銀八司令

銀時「ハイ、と言う訳で唐突に始まりましたこのコーナー。司会の坂田銀時と」
電「電です。よろしくお願いします」
銀時「えー、これからシリアス全開の戦闘パートに突入するっていうのに、急にこんなコーナー挟んできやがって。空気読めよ作者コノヤロー」
電「はわわ!? コーナー自体を否定してはダメなのです!」
銀時「まあ、この駄文書いてる理由はいろいろあるんだが、一番大きな理由を言うとだな……」
電「言うと?」
銀時「作者がシリアス疲れした」
電「自爆なのです!」
銀時「もともと銀魂と艦これのクロスオーバーのギャグネタが浮かぶから、ネタ帳にある程度溜めたところまではよかったんだよ。そしたらよ? 肝心の導入部分を全く考えてねーのにスタート切りやがったんだよ? あのバカ」
電「だから投稿がこんなに遅くなってるのですね……?」
銀時「リアル残業が多くて進められないのもあるけどな? そんなフワフワ設定で話書くから、3話目にしてとんでもないシリアス設定ブチ込みやがったから目も当てられねェよ」
電「艦娘の設定と電の過去がものすごく重いのです」
銀時「つーわけだから、ココではシリアスなしのギャグオンリーでグダグダと話を展開しまーす」
電「作者の心の平穏を保つためにご協力くださいなのです」
銀時「ゆくゆくは読者からの質問や感想を取り上げたりするつもりだったんだが……早速、緊急事態発生だ」
電「このコーナー書いてる間に質問が来てしまったのです……」
銀時「今回はコーナーの説明だけにするつもりが、秋イベやってる間に来ちまうとか想定外過ぎんだろ?」
電「嘆いていても仕方ないのです。とっととやるのです」
銀時「しゃーねーな。ペンネームていおさんからの質問。『装備すると全能力が1上がる眼鏡(新八)は出ますか?』。えーズバリお答えします。出ます。チョイ役で」
眼鏡(新八)「どんだけえええええ!! っておいいいいい! 名前逆だろおおおおっ!!」
銀時「あー新八。出てきて早々ワリーけど、そろそろコーナー終わるわ」
新八「ええッ!? 何でですか!? まだ、名前の部分しか突っ込めてないですよ!!?」
銀時「作者このコーナー1000字以内で収めるって決めてるんだわ」
新八「ええええっ!! ちょっとそんなのって――」
銀時「じゃあ今日はここまで。新八は本編でも顔出すから、ていおさんは楽しみにしててねー」
電「またなのです!」
新八「ちょっと! まだ全能力プラス1の所突っ込めてないんですけ

―終―






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