デジモンクロスウォーズ 叛逆のラグナロク 作:ちんみぃ
なかなか正解の見えない迷路のような日々を送っていた
だがようやく私の悲願が果たされる
ああ、これからずっと共に居よう
とある男の日記より
謎の空間の入り口に飛び込んだタギル達はそのままいけば地面にすぐに着地できると思っていた。
だがどうだろう。実際には何故か足は空を舞い、そのまま真っ逆さまに落ちて行くのだ。
「 うっそぉおおお!?!?」
そのままなす術もなく三人と一匹は穴の中へ落ちて行く。
途中途中には何故かティーカップやポット、鏡、お菓子に本と随分メルヘンちっくなものが浮いていたりする。
これではまるでおとぎ話のアリスのようだ。
「 一体どこまでいくんだ!?」
「 この高さで落ちたらまずいですよ!?」
「 ぎゃああ!!しぬぅ!!!」
思い思い悲鳴を叫び、無情にも彼らはただ落ち続ける他ない。
しばらく急降下をし続けていると、突然強い光が下から発せられた。
見ればどうやら穴の出口らしい。
この先がせめて硬いコンクリートなどではないことをひたすら願いながら、彼らは光の穴に飛び込んだ。
光から抜けて、最初に見えたのは幸運なことに柔らかな草であった。
その上、思ったほど高くない位置に降ろされたようで、そのままタギル以外の2人と一匹は見事に着地を決める。
タギルはというと、落ち方が悪かったらしくそのまま顔面ダイブをしてしまった。
「 ふぎゃっ!?」
「 おいタギル!大丈夫か?」
「 ぐぬぬ、な、なんとか....」
痛そうに鼻を手でこすりながら、タギルは起き上がり辺りを見回した。
同じように周りの景色を見ているタイキやユウは驚愕に目を見開いている。
「 ここどこだ?」
タギルの目の前には、とてものどかな草原が広がっていた。
ここはどうやら少し小高い丘の上であるらしく、下には小さな村々が広がっている。
おとぎ話にでも出てきそうな美しい景色にタギルはただただ圧倒された。
「 ここは、まさか、デジタルワールド!?」
「 えぇ!?これがデジタルワールドなんすか!?」
話でしか聞いたことのなかったデジタルワールドがまさかこれほど綺麗な場所だとは知らなかったタギルは再び驚く。
だがしかし、確かにどこか非現実的な光景ではある。
これほどのどかな光景はまず人の世界ではなかなか見られないだろう。
「 ああ、間違いない。それもここはシャウトモンの故郷だ!」
『 微笑みの里と繋がってたとはな...一体どうなってやがる?』
「 ? 何か聞こえませんか?」
皆が呆気にとられている中、ユウがあることに気がついて怪訝そうな顔をする。
同じように他のメンバーも異変を察知しようと口を噤んだ。
やがてどこからか確かに奇妙な音が響いてくる。
金属と金属がぶつかり合うような、まず平和な世界では耳にしない物騒な音。
音の出所は森の中のようだ。
「 誰かが襲われているのか?だとしたらほってはおけないな。シャウトモン、行こう!」
ピンチをすぐさま察知したタイキはシャウトモンをリロードするとその方向に走り出す。
「 おうよ!!俺の故郷の奴らのピンチを黙って見過ごす訳にはいかねぇな!!」
「 俺たちも行こうぜ!ガムドラモン!」
「 あったんめぇだ!!」
「 僕らも手伝おう!ダメモン!」
「 モチロンネ!」
更にそこにタギルとガムドラモン、ユウとダメモンが続いて森の中へと飛び込んでいく。
青々した木々が生い茂る森の中をズンズンと突き進んでいくとやがて見えてきたのは、信じがたい光景だった。
複数の悪魔のような球体のデジモンを従えた真っ黒なドラゴンが、1人の人間を囲い攻撃を仕掛けている。
そして驚いたことに、次々と四方からくるこの攻撃を、手に持つ剣で討ち払っている人物は、タギルたちと歳も変わらない少年だった。
真っ黒い癖の強い髪に、ライトグリーンの目をした少年の頭の上には、なかなかごついゴーグルが光に反射している。
「 デジモンの攻撃を剣で防いでいるのか!?」
「 でも、凄い!正確に跳ね返してる!」
ユウの指摘通り、少年は確かに攻撃を1つ1つ丁寧に跳ね返していた。
以前、デジモンを素手で殴る英雄というのがいたが、彼は例外中の例外であり、人間がまずデジモンと対等に戦うのは至難の技だ。
ただの人間の少年ではないのだろう。
使っている剣もどうやら何か特殊なものであるらしく、パチリパチリと時折静電気を弾かせながら光り輝いている。
だが、元々人数の戦力差がかなりあるため、徐々に追い込まれつつあった。
「 相手はピコデビモンとデビドラモンだな
ここいらじゃ見ない奴らばかりじゃねぇか」
「 とにかく加勢しよう!シャウトモン!」
「 よっしゃぁ!いっけぇガムドラモン!」
「 僕らも行くよ!頼んだよダメモン!」
三人の声を合図に三匹のデジモンが一斉に相手デジモンへと襲いかかる。
手近にいたピコデビモンの後頭部をシャウトモンが殴り飛ばし、更に別のピコデビモンをガムドラモンが自慢の尻尾で叩き落とす。
「 おりゃぁああ!!」
「 な、なんだ!?」
「 誰だ貴様らは!?」
突然の奇襲に驚きを隠しきれないデジモンたちの視線が一斉に2匹の方へと吸い寄せられた。
同じように少年も彼らに気がついたようで、あっけにとられた顔をしている。
「 てめぇら、俺の故郷で随分といい度胸じゃねぇか」
「 ! コイツは、シャウトモン!デジモンキングだ!!」
「 おっと、デジタルワールド1の暴れん坊、ガムドラモン様のことも忘れてもらっちゃ困るぜ!」
デジタルワールドを救った英雄たちの登場は予想外だったのか、デジモン達に混乱が広まっていく。
一方少年の方は、イマイチピンとこないような顔をしており、例えるならポカーンという音が似合いそうな表情であった。
そう、完全に隙だらけなのである。
「 その命もらった!!」
それを見逃すほど敵もバカではない。
油断した少年の背後に周り、容赦なく注射器を首筋めがけて投げつけようと振りかぶった。
「 !?しまった!」
「 今だ!ツワーモン!!」
『スモーキンブキ!!』
だが更にその背後からヌンチャクが飛び出し、ピコデビモンの頭にクリーンヒットする。
いつの間にやらツワーモンへと超進化していたダメモンの奇襲攻撃だ。
「 1人相手に大人数とは随分卑怯な真似しやがる」
「 ここからは俺っち達が相手してやるぜ!」
周りのピコデビモンとガムドラモン達が交戦を開始する。
人数の不利には変わりはないが、相手はそれほど強くはないらしく戦力的には問題がないようだ。
その隙にタギル達が少年の元へと駆け寄った。
少年とタギル達に近づいてくるピコデビモンはツワーモンが追い払ってくれている。
「 大丈夫か君?怪我はしてないか?」
タイキがざっと見た感じ、少々のかすり傷程度にしか怪我はしていないようであった。
やはりよほど正確に攻撃を跳ね返していたのだろう。
随分と反射神経がいいようだ。
「 ああ大丈夫だ。ほとんど無傷みたいなものだ。」
「 そうか、よかった!色々お互い聞きたいことはあるけど、とりあえず俺たちは味方だ。今はともに奴らと戦おう」
はじめ少年は警戒したようにじっと三人顔を順に眺めていた。
しかし、敵意がないことを感じとると、少しだけ息を吐いて肩の力を抜く。
「 ... そうか、すまない。よろしく頼む。悪いが俺はデビドラモンに少々用がある。周りのピコデビモンの殲滅をお願いしたい」
「 それは構わないが、デジモンもなしに1人で挑むのは危険だ。俺たちも 」
「 いや、話を聞くだけだ。聞きたいことさえ聞ければあとは用はない。」
そういうか早いか、少年は再び剣を構えデビドラモンへと走り出した。
止める暇も無いまま少年に置いてけぼりをくらった3人は完全に拍子抜けである。
「 なんだアイツ!?人の話聞かねえヤツだなぁ」
「 ま、タギルに言われたくはないと思うけどね」
「 とにかく、このまま1人でデビドラモンの相手をさせるのは危険だ。
幸いここはデジタルワールドだからデジモンにも制限はない。せめて俺たちも後方から援護しよう。ツワーモンは引き続き俺たちの周りのピコデビモンに当たってくれ。彼の援護は、遠距離攻撃のできるデジモンたちで対応しよう」
「 え!?そうなんすか!?デジタルワールドだとデジモンに制限ないの!?」
「 ったく、前に時計屋が言ってただろ。デジクウォーツはクウォーツモンが生み出した空間だから制限があっただけなんだよ」
「 そういやなんか言ってたような.... とにかく、そういうことならわっかりました!」
タイキはクロスローダーの中から獅子のように勇ましいデジモン、ドルルモンをリロードする。
それに習うようにタギルも、カッパを模したデジモン、サゴモンをリロードした。
「 おお!マジで複数リロードできた!!」
「 ドルルモン、サゴモン、彼の周りにいるピコデビモン達を頼む!」
タイキの言葉に頷いた二体はすぐさま周辺のピコデビモンに攻撃の嵐を振らせる。
ドルルモンは名前の通りドリルのようなものを発射するドリルバスターを放ち、サゴモンは地面に杖を叩き激流を発生させて攻撃を仕掛ける。
次々とくる攻撃にピコデビモン達は対処しきれないようで、その隙にピコデビモンの間を少年がすり抜けていく。
そしてデビドラモンの爪と少年の剣が激しくぶつかり合う。その衝撃と音の重さがお互いに一歩も譲らず本気で戦っていることを物語っていた。
「 答えろ、デビドラモン!お前達の主人は今どこにいる!!」
「 さぁな、先ほども告げたが貴様に教える義理はない。俺たちはあくまで残りカスの処理をしに来ただけに過ぎないんだからな!」
「... やはりどうしても答えないつもりなのか。ならば、お前達を倒す他ないようだな。」
一際強い一撃同士がぶつかり合い、互いに2人は距離を取る。複数の悪魔の異名を持つデビドラモンに対し、少年は全く臆することなくその瞳を真っ直ぐ見据えていた。
澄んだ緑の瞳はただ目の前の相手だけを捉えている。
一方のデビドラモンの方は、少年の言葉に興味深そうに、それでいて小馬鹿にしたように、ほう?と感嘆の声を漏らした。
「 貴様が俺たちを倒す?表の勇者様達が現れたことで強気になっているのか?先ほどまで我らにほとんど苦戦状態であったのに。」
「 そうだな、先ほどまでの俺の目的はお前達から、話を聞き出すことだった。だがその必要がなくなった今、これ以上手加減をするつもりはない。」
「 貴様は手を抜いていた、と申すか。随分と舐められたものだな」
黒く硬い翼を大きく広げデビドラモンはひときわ高く上昇する。太陽を背にすると影と相まって黒さが増し、それが闇の塊そのもののようで不気味であった。
見るものを凍らせる赤い目が、より一層不気味にギラギラと輝いている。
何かを仕掛けるつもりなのは一目瞭然だ。
「 ならばこちらも全力で貴様を葬ろう!」
そう叫ぶや否や、デビドラモンは勢いよく滑空を始めた。
徐々にスピードが増していき、鋭い爪の威力が上がっていく。
あの一撃を喰らえば無事では済まないだろう。
「 危ない!!!逃げろ!!!」
タイキが少年にそう叫ぶも、少年はピクリとも動かなかった。
ただ真っ直ぐに狙いを定め、向かいくる敵を返り討ちにしようと意識を集中させている。
「 さぁ死ね!!叛逆の騎士よ!!我らが主人がこの世界を殺すその時を、亡霊として見届けるがいい!!!」
デビドラモンが少年を斬りつけようと大きく腕を振りかぶる。
タギル達は後方からの支援に徹していたため、この距離からでは少年まで届かない。
「 さらばだ!!『クリムゾンネイル!!!!』」
少年が引き裂かれるまであと三秒ほどとなった時、突如として少年とデビドラモンを青白い閃光が包み込んだ。
あまりの眩しさに目を開けていられず、何が起こっているのかはわからない。
ただそこにあるのは凄まじいエネルギーだ。
信じられないほど強い力が少年とデビドラモンに降り注いでいる。
「 ま、まぶしぃ!」
「 一体、何が起こってるんだ?」
やがて光が完全に消滅した時、そこには目を疑うような光景があった。
あれ程のエネルギーを直に受けたのにも関わらず、怪我ひとつない少年。
そしてその足元にはデータの瑞まで焼け切ったデビドラモンが転がっていた。
「 ....どういうことなんだ?」
先ほどまで命を落とす寸前であったのは少年の方だったはずだ。
それなのにこの一瞬で立場は完全に逆転してしまった。
ボスがやられてしまったことにより、ピコデビモン達にも動揺が広がり、ついには悲鳴をあげながらどこかへと消え去っていく。
「 さっきのあいつが、やったってことか?」
言葉にしてみてもタギルは信じられなかった。
人間がこんなことをできるはずがない。
ましてや、あのデビドラモンは相当強いデジモンだったはずだ。
人間の子供に敗れるなど、誰が信じられよう。
タギル達が完全に呆気にとられている中、クルリと少年はこちらに向き直った。
鮮緑の瞳には先ほどまであった鋭いものはなくなり、むしろどこかあどけなささえ感じられる。
「 助けてくれてありがとう。とても助かった。
俺の名前は時雨 大輝。んーと、とりあえず、よろしく」
何事もなかったかのように大輝と名乗った少年は、1番先頭にいたタイキに手を差し出す。
コテリと首をかしげながら、謎の少年はこちらを不思議そうに見つめていた。
大輝はしぐれ たいらと読みます。
初めは足りないものだらけの主人公ですが、少しずつ成長していく予定です。
ところで、この時点でこれだとすでに20話越えるのではって感じです。
道のりは長いですね
おまけですが、プロローグに挿絵を追加いたしました。毎回ではないかと思いますが、ちょこちょこ追加していきます。
この回にも追加予定です。
タイトルは叛逆のラグナロクとなりました。
大輝とタギル達がどのような戦いをするのか、見届けてください