デジモンクロスウォーズ 叛逆のラグナロク 作:ちんみぃ
今日は多くの竜を捕まえた
竜はこの世界でもかなり強力な体と生命力を持つ
いくつか可能性のあるモノを試してみることにした
しかし、また失敗だ
最終的にゼリーのように、アイスのように溶けてしまった
今宵も実験は続く
とある男の日記より
デーモンが放ったフレイムインフェルノにより、微笑みの里に炎が広がっていく。
そのエネルギーをじかに受けたアレスタードラモンのおかげで、降り注いだ力は半減されたが当の本人は大きなダメージを負っていた。
地に落ちていくアレスタードラモンを見かけて慌てて追いかけたタギルと大輝がたどり着くと、超進化の解けたガムドラモンが力なく倒れ込んでいる。
身体中は火傷の跡がありなんとも痛々しい。
「 ガムドラモン!しっかりしろガムドラモン!」
タギルが呼びかけると、辛うじて息があるらしくガムドラモンは小さく呻き声をあげた。
一先ず命があることに安心するものの、かなりの大怪我を負っていることに変わりはない。
早く手を打たなければ手遅れとなるだろう。
「 タギル、クロスローダーの中に入れれば回復するはずだよ。すぐにガムドラモンを中に入れたほうがいいと思う」
気が動転しているタギルに大輝が的確にアドバイスをする。
だが流石に大怪我を負ったガムドラモンの姿は堪えるものがあるらしく、口調や雰囲気が素に近くなっていた。
「 あ、あぁ、そう、だな。」
慌ててクロスローダーを取り出そうとした時だった。
遠くから足音が近づいてくるのが聞こえてくる。
まさかデーモンが来たのだろうかと緊張した面持ちで2人はガムドラモンを取り囲む。
しかし、やってきたのはデーモンではなく里の者たちを避難させてきたタイキたちであった。
「 タイキさん!!ユウ!!」
タギルの顔に安堵の笑顔が拡がった。
やってきたタイキ達はこの状況を飲み込めていないらしく混乱していたが、一先ずタギル達の姿を確認してほっとしたように微笑む。
「 タギル、タイラ、ガムドラモン無事か!?」
「 一体何が起こったの?」
やがて駆け寄ってきた5人はハッとした。
タギルや大輝に目立った怪我は見当たらないが、ガムドラモンはひどい状態だ。
「 おい!ガムドラモン大丈夫なのか!?」
「 ... こいつ、さっきデーモンのものすごい力を受けちまって...俺、何もできなくて!」
「 すまない、俺も力不足だった...恐らく、ガムドラモンはあの力を自分が避ければ里に被害が及ぶからと、自ら飛び込んだんだろう...」
悔しそうにタギルと大輝は俯く。
落ち込んだ2人の肩にポンとタイキが手を置いた。
「 ひとまず理由はわかった。まずは今できることをしよう。反省するのはその後でもいいさ」
人懐っこく愛好を崩したタイキの笑顔で、2人は顔を上げた。
まだ全ての手を尽くし切ったわけでは無い。
頑張ってくれたガムドラモンの為にも、デーモンをどうにかしなくては。
「 よし、まずは奴をこのままここで喰い止めよう。シャウトモン、ダメモン、お願いしてもいいか?」
「 モチロンネ!me達に任せるネ!」
「 おうっ!彼奴には色々と世話になったみたいだからな、一発ぶちかましてやらないと気が済まないと思ってたところだ。」
自分の故郷と大切な弟分をボロボロにされたことで、シャウトモンの怒りのボルテージは現界に達しようとしていた。
そして何より、デジタルワールドの王様である彼には世界を守る義務がある。
「 ああ、気をつけてくれ。その間に俺たちもやつを倒す方法を考える。よし、まずは超進化だ!」
「わかりました!頼んだよダメモン!」
タイキとユウが同時にクロスローダーを構え超進化を発動させる。
オメガシャウトモンとツワーモンへと進化を遂げた2体は一気にデーモンがいるであろう空まで駆け上がっていった。
「 次はガムドラモンだ。ひとまずクロスローダーに入れて体を休ませないと」
次々と繰り広げられる鮮やかな指示に驚いていたタギルは、ようやく意識を取り戻し慌ててクロスローダーを取り出す。
するとその手を止めた者がいた。
ぎょっとしてその主へ視線を下ろすと、それはボロボロになったガムドラモンである。
「 ガムドラモン!?大丈夫か!?今クロスローダーに...!」
「 へ、へへ....おれっち、が...この程度で、くたば、るはず、ねぇ、だろ...」
ニヤリと笑ってみせるも、その顔には苦痛の色が伺える。
強がりを言っていることは明らかだ。
「 ああ、お前はこんなとこでくたばる奴じゃない!そうだろ、相棒!だから今はゆっくり休んで」
「 まだ、決着は、ついてねぇ...ここ、でにげる、バカいるか...」
タギルの支えを借りながらもガムドラモンは立ち上がる。しかし足元が覚束無いのか、フラフラとして今にもまた倒れそうだ。
この強がりの頑固者をどう説得したものかと全員が思案していると、アリスモンがトコトコと近寄ってくる。
その顔は微笑みを称えながらも、この中で最も冷静を保っていた。
「 ガムドラモン、君の気持ちは分かっているつもりさ。でもやはりこれ以上の無茶は誰にとっても良くないものだ。」
「 けど、あいつ、はつえぇ...王様達だけに、まかせるわけにはいかねぇ...それ、に、おれっちは、このままあいつを、みとめるわけ、には、いかねぇんだよ...」
ただの負けず嫌いからではなく、ガムドラモンなりの何か信念に従っての行動らしい。
恐らくは先ほどの話が関係しているのだろう。ガムドラモンの話を聞いているタギルと大輝もよく似た顔つきになっている。
あれは芯の通った頑固者の顔だ。
ガムドラモンの話をしっかりと聴き終えたアリスモンは、暫し思案して再び微笑む。
「 そうだな、じゃあこうしようか。僕らはあのデーモンを追い払う策を考える。その間だけ、君はクロスローダーの中で休んでいること。作戦が決まったら君にも力を貸してもらいたいんだ。どうだい?」
相手の主張を交えつつも自らの意思は曲げない。
ふわりと柔らかく微笑んだその顔は、優しく包むようなものであるのにどこか否とは言わせぬものがあった。
どうやらアリスモンもそれなりに頑固者なのかもしれない。
「 ...わかったぜ....」
「 そうかい?よかった!タギルくん、彼をクロスローダーの中へ」
アリスモンの言葉にコクリと頷くと、今度こそタギルはクロスローダーをガムドラモンにかざした。そしてその中へとガムドラモンが吸い込まれていく。
「 これからどうします?デーモンを倒すのはかなり骨が折れそうですけど...」
ユウが心配そうに口を開いた。
先ほどの戦闘で痛いほどわかったが、やはりあのデジモンを倒すことは難しいだろう。
以前同じく7大魔王であるリリスモンを倒したときも、ベルゼブモンの犠牲を余儀なくされてしまった。
今回も彼らにまだ奥の手が残っていないとは限らないだろう。
それを考慮すれば少なくともかなりの被害を覚悟しなくてはならない。
こうしている間にも再びあの炎を放たれるかもしれなかった。時間はあまりない。
「 ...いや、倒すのはやめよう」
全員が頭を悩ませていた時、ポツリと大輝が呟いた。
「 倒すのは辞めようって、じゃあどうすんだよ?」
「 倒すことができればベストではあるが、今こちらは里そのものが弱点と言ってもいい状態だ。大っぴらに弱点を晒した状態で戦うのはあまりに無謀だ。だが、倒さなくともこの里からどこか遠くへ追い出せばいい。」
「 何か作はあるのか?」
タイキが問うと、大輝はコクリと頷いた。
翡翠の瞳にはしっかりとした確信があり、自信に満ち溢れている。
「 だがそのためには全員の力が必要だ。都合のいいことを言っている自覚はある。だけど、どうか協力してもらえないだろうか?」
少しだけ不安そうに大輝は全員の顔色を伺う。
しかしその杞憂を吹き飛ばすような笑顔だけがそこに並んでいた。
「 あったんめぇだ!」
「 俺たちもこの里を守りたいからな」
「 任せてよ!」
『俺っちもまだやれるぜ!』
「 なんだ、言えるじゃないか。」
嬉しそうにアリスモンは微笑んだ。
大輝の1人で突っ走ってしまう性格を密かに心配していたのだが、その杞憂は必要なかったらしい。
「 すまない、感謝する」
「 それで、俺たちはどうすればいい?」
「 ああ、そうだな、まずは...」
空の上では激しい攻防戦が繰り広げられていた。
主にオメガシャウトモンがデーモンの相手を務め、ツワーモンが隙を見て援護に回る。
しかし2人がかりでも相手は手強かった。
流石に2体の相手が手一杯で里には攻撃を仕掛ける雰囲気はないが、それでも疲弊している様子はない。
「 どうした?英雄や王がこの程度のはずがないだろう?」
「 クソッ!舐めやがって!」
何か打開策を考えなくてはと2体が思考を巡らせていた時だった。
「 うおりゃあああ!!!」
突如大声がしたかと思うと、デーモンに何者かが激突する。
流石に吹っ飛ばされたデーモンがその相手を見れば、それは先ほどボロボロになったはずのアレスタードラモンだった。
「 貴様、その体でまだ動けるのか。大したものだな」
「 おうよ!ここで止まるわけにはいかねぇからな!!勝負だ、この悪魔野郎!!!」
そういうや否や、再びガムドラモンとデーモンがぶつかり合う。
その光景を呆然とオメガシャウトモンとツワーモンが眺めていると、ふいに下から2体を呼ぶ声が聞こえてきた。
「 おーい!王様〜!!」
「 ツワーモン!話があるから少し降りてきて!」
2体を呼んでいたのは、タギルとユウであった。
タイキと大輝、アリスモンの姿は見当たらない。
疑問に思いつつも2体は2人の元へ舞い降りた。
「 どうした英雄?先ほどから逃げてばかりではないか!それでは俺は倒せないぞ!」
デーモンとアレスタードラモンの戦いは平行線を辿っていた。
互いに一歩も譲らぬ猛攻ではあるが、徐々にアレスタードラモンが押されつつある。
しかし、決定だとなるような攻撃は互いに決められていなかった。
デーモンも流石の連戦に多少疲れの色が出ているらしい。
「 テメェこそ、さっきまでのキレがないぜ!」
肩で息をしながらアレスタードラモンがニヤリと笑う。
状況は自分に有利であるはずなのにどこか余裕すら感じられるその笑みにデーモンは薄気味悪さを感じた。
何か罠でも仕掛けているのだろうか?
( だがしかし、何を企もうともこのままでは先ほどの二の舞だな。やはりこの程度か...)
いい加減この攻防戦にも飽き飽きとしていたデーモンは、再びフレイムインフェルノを放つため腕に力を込め始めた。
しかし、今度はそうはいかなかった。
背後から何かが来る気配をとっさに感じとったデーモンは慌てて後退する。
「『 スモーキンブギ』。今度は拙者が相手でござる。」
そう宣言するとツワーモンは次から次へと、攻撃と不意打ちの乱れ打ちを放つ。
それを避けたり打ち払ったりしながらアレスタードラモンの行方を目で探せば、目を離した合間に影も見えなくなってしまっていた。
「 アレスタードラモン!貴様逃げるのか!!ふざけるなよ!!!」
あまりに舐めきっていると言わんばかりの行動に、流石のデーモンも徐々に怒りを募らせる。
しかしそんなことは御構い無しにツワーモンは忍者の如き予測不能な動きで、鮮やかに攻撃を仕掛けていく。
流石に素早い相手であるツワーモンに追いつくのは難しいのか、徐々に後ろへ後ろへ押しやられていった。
( おかしい、何かおかしいぞ?)
先ほどからツワーモンもアレスタードラモンも、攻撃を仕掛けては来るが決定的なところを狙っては来ない。
そう簡単に受けてやるつもりもないが、相手からはこちらを倒すという気迫が感じられないのだ。
徐々に違和感が浮き彫りになり、罠、という言葉が頭の中を占めて行く。
( だがしかし、一体何をどう仕掛けたというのだ?奴らの心情からして、里に大規模な爆発物などはつけられないはず。そもそもこの短時間で一体何ができたというのだ?)
混乱する頭で思考を巡らせていたせいか、デーモンは気がつかなかった。
上空から、彼を狙うものがいたことに!
「 『ヘヴィメタルバルカン!!!』」
気がついた時には目の前まで迫っていた。
オメガシャウトモンより放たれた光線はデーモンに直撃し、その威力に押し負けてグングンと高度は下がる。
かなり地上近くまで落とされたデーモンは、憎らしげに空を仰いだ。
「 おのれぇ!!小賢しい!!!!」
「 今だ!アレスタードラモン!!タイラ!!」
「 行くぞ!アレスタードラモン」
「 おうよ!!!『 プリズムギャレット』!」
突如死角より一筋の光が放たれた。
真っ直ぐに、視界に捉えることも叶わぬほどのスピードで光の矢はデーモンに突き刺さる。
光の速さというものに抗うことが叶わなかったデーモンはそのまま進行方向に流されて行った。
それでもどうにか其処に止まろうと足掻けば、今度はアレスタードラモンの攻撃が無数の光の回転となり更に拍車をかける。
「 大輝!!お前の弓か!!だが残念ながら決定打にはならなかったらしいな!!!この程度で俺がやられたりは」
はっと何かに気がつく。
吸い込まれる。
そう彼が考えた時には、すでに手遅れだ。
「 飛んでいけ黒い鳥の如く!ジャックのように、ジルのように!遠くの世界へ飛んで行くがいい!」
デーモンの飛ばされた先に迫っていたのは、別の世界への入り口であった。
デーモンの2倍ほどはゆうにあるであろう大きな鏡の中には、薄暗い闇が映り込んでいる。
チクタクチクタクと、鏡についた複数の時計がバラバラな時間を刻んでいた。
「 その先は、古き世界...おのれ!!!よりにもよって、
鏡にデーモンが触れた瞬間、まるで水に沈むように彼の体は向こう側の世界へ引き込まれて行く。
ギリギリと歯ぎしりをしながら、デーモンは最後に大きな声で吠えた。
「 この程度で俺を負かしたと思うな!!再びお前達と再戦の暁には、データのかけらも残らぬほど燃やし尽くしてやる!!!」
ガチン。
一際重い音が響き、時計の針が全て真上を指して停止した。
「 ふぅ、どうにか追い返せたね...」
力を使い疲れを感じながらも、アリスモンの顔には幸せそうな笑顔が浮かぶ。
彼女の赤い瞳の中に、子供のように無邪気に笑う少年たちの姿が映り込んでいた。
デーモンはひとまず終了です。
戦闘に力をかけたせいか、大輝の人間性みたいな心理描写が雑なのがかなり悔しいので、この辺の話はいつか書き直したいですね...
一応流れを記載します
三体がデーモンを狙撃ポイントで誘導
↓
西側の森からアレスタードラモンと大輝が狙撃?
↓
そのパワーで東側に展開したアリスモンの、大輝達の世界だった場所に繋げた扉に押し込む
という超次元理論です。ひどい。
とことん戦闘という分野においては弱いですね
バトルモノの小説でも読むことにします