第一話 転生
「RXキック!!」
俺は蜘蛛の意匠の怪人に両足で蹴りを放つ。空気との摩擦で赤熱した両足は寸分たがわずに蜘蛛怪人に吸い込まれるように決まる。蹴り倒された蜘蛛怪人はそのまま起き上がることなく断末魔を上げながら泡と消え行き跡形もなくなった。
そんな光景を眺めて俺はいつもと変わらない日常に少し辟易しため息をつき自分の愛車である命を持ったバイク、アクロバッターにまたがりその場を後にする
俺がなぜ仮面ライダーBLACKRXになり来る日も来る日も怪人退治に追われているのかを知るには俺が生まれる前まで遡らなくてはならない。
運命の瞬間、それは俺が転生を承諾した時だったのかもしれない。
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此処は何処だ? 目を覚ますと俺はあたりを見回す。すると上も下も右も左もないまるで雲一つない青空の真ん中にいる様な気分になる不思議な空間にいることに気づいた。
「さて、ここがどこだか分からないが、こんな心地のいい空間なんだ、少しぐらい惰眠をむさぼっても許されるよな。」
誰に聞かせるでなく呟き、まどろんでいると、不躾に俺に話しかけてくる声が聞こえた。だが何故かその声に嫌な感じはせずしばし聞き入った。
「心地よいと言ってもらえて光栄です。しかしここは世界の理より完全に外れた場所あまり長い間留まって頂くわけにはまいりません。 貴方は肉体や魂の軛より時はなたれ今この時、貴方と言う存在そのままでこの場所にいます。 私は貴方に頼みたい事がありここにお招きしました。 どうか聞いていただけないでしょうか?」
空間全体から聞こえてくるようなその声の主に興味の沸いた俺は問いかけられたことの答えではなく名を聞いた。
「お前は一体何なんだ? 名前は何という?」
俺の声は何にも反射することなくこの空間に溶けて行ったようだったがちゃんと聞こえていたようで返事があった。
「神、精霊、悪魔、かつて私を呼び表す言葉はあまた存在した。だがどれも私そのものを適切に表すものではなかった。しかし今は簡単、私は乞い願うモノだ。」
気取った物言いをする奴だなと思いつつも俺は願い事と言う物を聞いてみたくなり話の続きを話すように促す。
「それで俺に何を頼みたいんだ。持って回った言い方はやめてくれよ。」
「そうだな、有り体に言うと君は死んでいるんだ。 そんな君にある世界に転生してもらいたいと思ってね。」
まったく、いくら持って回った言い方はやめろと言ったからってやってほしいことだけ言われても判断できないだろうが。
この辺りは自称乞い願うモノの融通の利かなさを見せられた感じで、今までに比べて少しは人間味を感じる。
「なんで俺を転生させたいんだ、理由を教えてくれるか?」
「貴方は子供のころ理科授業かなんかでミョウバンの再結晶実験なんかしませんでしたか? ミョウバンを限界まで溶かした飽和水溶液に種結晶をつるしてつけておくと大きなミョウバンの結晶が析出するんですよ。 ちなみにコツは再結晶化させている時にホコリなどの不純物が入らない様にしておくことです。 不純物が入るとそれを核として結晶ができてしまうので種結晶の方も大きくなりにくいんですよ。」
「突然理科の話なんかされても困るんだがな。」
「簡単に言ってしまえばあなたに転生してもらいたい世界で同じようなことを起こしたいと言う事です。 その世界では悪意が過飽和状態でいつ悪意の種ができ大きく成長するか分かりません、なので貴方と言う不純物を世界に入れて小さな悪意の結晶をいくつも固体として生み出し人自身の手で処理をしてもらおうと考えているのです。」
人の事を不純物だなんてよくも言ってくれる。だが今の説明が本当ならばその世界の人以外なら誰でもよかったと言う事か。
「俺にはそうそう戦う力なんてないんだが。」
「貴方が闘い悪意を消す必要はありませんよ。見えもせず触れもできないならともかく物質として存在するならば人の手でどうとでもするだろう。 ですが早々あなたに死なれても事らとしても困りますし自衛の手段はお渡しします。 お引き受けしていただけるでしょうか?」
話を聞いているとき俺は転生するのも面白いんじゃないかと思ってしまった。少しでもそう感じてしまえばすでに奴の術中にはまってしまったと言う事なのだろう、俺は新しい世界への興味が止まらなくなり、
「いいぜ!! 引き受ける。」
と返事をしてしまっていた。
「ならさっそく転生の準備をしよう、心の中に君が最も強いと思うヒーロー像を強く思い浮かべてくれ。」
声に従い俺は大好きな仮面ライダーたちの事を、特に仮面ライダーBLACK RXを思い浮かべる。すると何故か体の内から自分が変わっていく妙な感覚が湧き上がってきた。
「これは一体俺の体はどうなったんだ。」
「貴方の存在は今貴方が強く思い浮かべたものに近づきました。必要なものは転生されてから手に入る様にしておきます。あとついでと言っては何ですが貴方が転生する世界ではあなたが生まれた数年後ブレインバーストと言うVR対戦格闘ゲームが開発されるのですが戦いの経験のない貴方が経験を積むにはもってこいなのでそちらも送らせていただきます。 それでは良い来世を。」
なんだか急かしている様なその言葉に不信を感じる間もなく俺の意識は闇に沈んでいった。
読んでいただいてありがとうございました。
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