ハイスクールD×D Re:Joker of despair   作:カルパン

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相も変わらずお久しぶりです。長いこと小説に触れていなかったせいで文章力が落ちているかもしれませんが、どうぞ


あーダメですお客様!ウチの子は恋愛禁止なんです!

 

-side帝 -

 

-10日目早朝-

 

目がパチリと開き、意識が覚醒したと共に上体を起こす。枕元の時計を見ると短針は5時を指していた。起きるにはまだ早いが俺には丁度いい時間だろう

 

部屋着を脱ぎ捨て、ジャージを着用する。5月も中頃のこの時期はそれほど寒くなく時たま暑ささえ感じ、夏の影がちらほらと見え始めている。昼間は暑くなるだろうから、スポーツドリンクを全員分用意しないといけない

 

キッチンに辿り着くと冷蔵庫より昨日の朝から仕込んでおいたフレンチトーストの入ったボウルを取り出す。ラップを外すと卵と砂糖の香りが鼻腔を擽り、食欲が湧いてきたことを示すように口内に涎が少し溜まった

 

「うん、今日もいい出来だ」

 

事前に用意した人数分の皿に盛り付け、仕上げの作業に入る。人差し指を向けて魔力に指向性を持たせ、高すぎない温度に調整した炎で表面をバーナーのように炙った。こうすることで香ばしさが増して香りを楽しめる筈だ

 

完成したらトレイに置いて再び冷蔵庫に入れた。皆が揃うまではキッチンのカウンターで待つことに決めた俺はインスタントコーヒーを片手に皆の訓練の様子を思い返した

 

まずは近接組。こちらは成功……いや、むしろ大成功と言わざるを得なかった。考えた当初は通常の人間をベースとして組んでいたメニューだったが、嬉しい誤算だった。通常、筋トレやそれに準ずるトレーニングには、壊れた筋肉を再生させ更に強靭なものへとする超回復という人体の作用によって筋力アップを図るものだ。人間であればそれによって起きる筋肉痛が発生し、2日ほど筋肉を休ませる必要があるのだが、流石人外と言うべきかそれに必要な時間は平均で約6時間という時間で事足りた。結果従来の予定よりもやや詰めたスケジュールでトレーニングが行われていた。それ以外にも驚愕を隠せないような成長性によって体幹やリカバリー能力などが飛躍的に向上しており、想像の倍以上の成長に思わずにやけが止まらなかった

 

次にメイジ組。こちらは予想通り強化魔術と並列思考の両方を習得してくれた。まだ及第点の域を超えることは無いが、1週間という短期間で身につけてくれただけでも充分な成果だ。途中で少しアドバイスを送ることもあったが、美優の魔術的センスには目を見開いた。素人ながらに少ない魔力と工程、そして短い詠唱だけでの強化魔術のパフォーマンスはかなり高かった。魔術回路の量や質は一級魔術師と比べても遜色ない程に高かった。朱乃は飲み込みが早く、メイジ組の中では1番に覚えるのが早かった。魔術回路の量や質もそれなりに高く、他2人の先導役となってくれていた。アーシアも習得は割と早かった。3人の中では1番遅かったが、それでも5日目にして全てを習得していた。彼女の持つ神器である聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)は貴重な回復能力を持った神器であり、その回復能力を強化魔術によって底上げできるのは大きなアドバンテージになるだろう。メイジ組も近接組同様に総じて優秀だった

 

そして最後に司令塔であるリアス。こちらは昨日に全てを暗記し、応用編の戦術の質問にもしっかりと答えられていた。実践で即実行できるかどうかは計りかねているところではあるが、少なくともスタートラインにはしっかりと立てているため、特に言うべきこともない。むしろこれぐらいできて当然と言いたいところだし、欲を言えばあれを参考に独自の戦術を編み出すぐらいはできて欲しいところだが、そこは期待して待つ他ない

 

ふと時計を見ると6時半。そろそろ今日の準備を進めるために、カップのコーヒーを飲み干した

 


 

今日の予定を告げ、庭で今日の段取りを頭の中で反芻させながら扱う予定の獲物の調子を確かめていた

 

獲物の銘はなく、ただの2m程の可変式ギミックを積んだ棍だ。三節棍と棍とで変化し、閉所には三節棍、開けた場所では棍という風な使い分けができる

 

ぶっちゃけロマン武器を使いたかっただけだから特に意味はないけどね

 

「帝先輩、準備終わりました」

 

「お、来たな。みんな揃ってるようで結構」

 

棍を構え直し、リアスとその眷属達を正面に見据える。そこそこの修行をこなしたこともあってか、一同の目つきが初日に比べて少し変わっていた

 

こりゃ今度は顔つきが変わってそうだ。最終日が少し楽しみになってきたな

 

「それじゃあ今からみんながどれくらい変わったか確かめるから、全員でかかっといで。お前達の勝利条件は俺を戦闘不能か、投降させること。反対に敗北条件は王のリアスを抑えられたら負け。今回のレーティングゲームと同じ方式だ。神器持ちは神器使ってもいい。それと本気でかかってくるようにしろ。俺は流すだけでやるからもしかしたら勝てるかもな?」

 

「後から謝っても聞きませんよ」

 

「頑張ってそうさせてみろ。はいよーいどん」

 

合図と共に裕斗が特攻をかましてきた。顔への突きを棍で受け鍔迫り合いへと持ち込むと、前よりも膂力が上がっているのを感じた

 

「やっぱりこうなっちゃいますか……流石です」

 

「前よりもちったぁマシになったじゃねぇの……まぁそれで俺に勝てるかは別問題だがな!」

 

押し込まれ気味だったのを押し込み返し、動きを探ろうといったタイミングで横槍が入った

 

体の中心を抉るように仕掛けてくる子猫は以前にも増して打撃のキレが良くなっていた。筋肉の瞬発力が上がったことによって必然的に鋭さを増したのだろう。良い打撃を繰り出すようになった

 

打撃もある程度弾いたところで胴体に突きを入れると、先端を踏みつけられ頬に一撃を貰いかけたが、半身になって頬を掠める程度に留まった

 

「見違えたな、子猫。随分と打撃の威力とスピードが上がったな、すごいぞ」

 

「当面の目標は帝先輩に一撃入れることですから……このぐらいできて当たり前です」

 

「マジでその可能性が見える辺り危機感を少し感じるなぁ……おっとあぶね」

 

固定された棍を手放しバチバチと音を鳴らす魔力弾から逃れ、次に来た氷弾と禍々しい赤黒い魔力が脛を撃ち抜こうとするが、その間に手を着いて自身の体を持ち上げて回避。続いて鳩尾へと迫っていた氷弾をブリッジのような体勢で回避。そのままの体勢で手足を狙った魔力弾を回避した

 

「うわぁ……」

 

「あらあら、これはまるで……」

 

「やめて朱乃、みなまで言わないで。私達の精神衛生のためにも」

 

「うぇへへへへへ、ほれほれどうだ、キモいだろ」

 

カサカサと左右へ高速で平行移動(シャゲダン)して煽る。気分は台所の黒光りするアイツだ。コイツはやればドン引きされ冷ややかな目線を送られる代わりに相手を煽り散らすという豆腐メンタルの煽りストには使えない強力な技法だ。え、そんな解説要らない?いいから止めろ?そんなぁー……

 

そしてふと男としての危機を感じバク転のようにして体を動かすと、俺の股座を赤い何かが掠った

 

股間がヒュンッとしたような感覚を感じ、若干内股気味に視線を向けるとそこには俺の股間付近の地面を赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)で叩きつけていたイッセーがいた

 

「チッ外しちまったか……」

 

「怖ッッ!?今日1番の恐怖は子猫じゃなくてお前だわ!!何俺の分身殴り潰そうとしてくれたの!?危うく新世界開拓しかけるとこだったわ!!ここを全力でぶつけた時の痛みは女子の着替えを覗いた挙句捕まって制裁として全力でかまされてるお前なら1番わかるだろうが!!なあ裕斗!!!!」

 

多分ぐだぐだした雰囲気になってくるからしれっと内股気味になっていた裕斗も巻き込んでおいた。これでオカ研3バカの完成だ☆

 

「うん……イッセー君、それはちょっと流石に……ね?」

 

「いやなんでだよ!俺の内から溢れるおっぱいへのリビドーを抑えろと言うのかよ!いいか!おっぱいっていうのはだな、この世の全てを包み込む存在にして命の神秘を宿した偉大なるものなんだよ!神秘の探求をすることの何が悪いってんだよ!」

 

「その行為全部じゃい!お前はもっと抑えろ!松田君と本浜君もそうだが、見てくれはいいのにそれのせいでモテるチャンスを全部失ってるんだぞ!この間たまたま通り過ぎた一年女子が『兵藤先輩って熱血屋で優しいしカッコいいけどアレはちょっとねー……』『ホントそれ。アタシ兵藤先輩結構タイプだったんだけどなー……あれのせいで幻滅しちゃったわ……はあーあ、新しい恋探そっと』とか言ってたんだぞ!」

 

「なん……だと……!?おっぱいへの情熱がハーレム王への邪魔をしているだなんて……!?俺の人生と夢が天秤にかけられていただなんて……!!」

 

「アホだろコiぶぉわあああああぁぁぁぁぁぁ!!??」

 

「俺はいったいどうすれbごへぅっ!!??」

 

「アホは帝先輩です」

 

あ、ありのままの今起こったことを話すぜ……イッセーのことをアホだと思いながら動こうとした瞬間、ジャイアントスイングを決められてイッセーの方へと投げ飛ばされてイッセー共々きりもみ回転しながら地面に転がったんだ……頭ん中が回りそうだった……ネタの導入だとかツッコミだとかそんなチャチなモンじゃあ断じてねえ……もっと恐ろしい後輩の片鱗を味わったぜ……

 

「はぁ、こういうところがあるから残念イケメンなんて言われてるのよ……そろそろ起きたらどうなの?演技なのはバレバレよ、帝」

 

「バレテーラ……結構上手いこと騙せたと思ったんだけどなー」

 

腹の上で寝転がっていたアホを放り投げてどかし、近くにあった棍を持ち直して立ち上がる。ぐぇっとカエルが潰れたような声が聞こえてきたがきっと気のせいだ

 

「ふざけてたとは言え一撃入れられたな……」

 

「あれに関してはノーカウントにしてください。誰かが止めなかったらあのぐだぐだは止まらなかったと思います」

 

たしかにあのままで行けばノンストップだったかもしれない……俺から始めたことだから何とも言えないけど本来の目的から脱線させてしまったことに気まずさを感じて目を逸らした

 

「コホン……それで、私達の今の実力はハッキリと測れたかしら?」

 

「アホ言うな。お前らの連携が見れてねーよ。おら、纏めてかかって来やがれ!もう少し遊ぼうぜ!」

 

体も温まったため、向こうには持てる限りを出してもらうために獲物を三節棍へと変形させ構えを取った。今まで構えを取った姿をあまり見せなかったためか、その場の緊張は限界にまで膨れ上がった

 

「みんな行くわよ!裕斗と子猫は挟み込んで!朱乃と美優は私と一緒に帝の動きを制限するわよ!イッセー!あなたは最大の一撃を放てるように力を溜めておくのよ!隙は私達で作るわ!」

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

リアスの作戦通りに子猫と裕斗は俺の両サイドに陣取り、ウィザード組は俺の回避と弾きを潰すためにブラフも混ぜた前衛組の援護、イッセーは己の神器を構えて力を溜め始めた

 

子猫の拳打を逸らし、裕斗の両の剣の側面を打ち、ブラフと本命を見極めながら魔力弾を掻き消す

 

この中で1番警戒すべきはやはりイッセーの攻撃、厄介と言えるのはリアスの滅びの魔力だろう

 

俺とイッセーが所有する神器、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)神滅具(ロンギヌス)という神器の中でも異質な強さとなる能力を2つ以上持った、文字通り神をも滅する可能性を多分に孕んだ最上級クラスにあたる神器だ。主な能力としては10秒毎に自身の能力を2倍引き上げ、溜め込んだ力を解放することで真価を発揮する倍加。自身への強化倍率よりは劣るものの、溜め込んだ力を対象へと託し対象となったものを強化させる譲渡、と言った2つの能力だ。さらに細かい能力を上げるとあといくつかあるが今回は割愛する。殊更注目すべきはやはり倍加能力だ。こう言った単純な強化能力は土台となる宿主の力や器の容量と耐久度によって大きく差が出て非常にわかりやすいし、だからこそ強力なのだ

 

さてここでイッセーの身体能力を振り返る。悪魔となった当初は悪魔としての身体能力はあったものの、精々がオリンピック上位を目指せる程度の身体能力。悪魔達(彼/彼女ら)で言うところの下級悪魔という評価が最もなところだった。それが今や中級悪魔の下の中ぐらいならば殴り合って対等に渡り合えるだろう身体能力をしている。少なくとも同じ下級悪魔に遅れを取ることは無い。それが意味するのはつまり、同じ強化倍率で強化されても戦闘能力的に見れば大きく違ってくると言うことだ。……まあつまりはイッセーは修行を超頑張って強くなった。だから警戒する必要があるんですね(メガトン構文

 

次点で厄介なリアスの滅びの魔力。これもかなり注意を注がねば、魔力弾を弾いたら獲物壊れちった☆なんてことになるから笑えない。生物や物体、有機物や無機物などといったこの世界に存在するありとあらゆるものはそれの根本となる概念結合源とそれに結合する様々な付着概念が一纏りとなって形成されている。そんな概念結合源と呼ばれるものはそのモノの存在の確立を証明するための基盤。魔術師の間では起源と呼ばれるモノだ。土台が崩れるとその上にあるものも崩れるように、概念結合源が消滅すると、それを構成する概念ごと消えてしまう。その核を守る役目を担っているのが核に結合する付着概念だ。核を守るように何重にもバリアを張っている付着概念だが、唯一概念結合源を破壊できるモノがありそれには一切のバリア機能を発揮しなくなる。それが滅びという概念だ

 

さて、ここまでで話せばわかると思うが、滅びの魔力は文字通り滅びの概念そのものだ。ではなぜそんなものが物或いは人に宿っているか。結論から言うと、滅びの概念に連なる能力を扱える者は皆、付着概念として創造の概念を持っているからだ。滅びは全てを根絶やしにし消滅させる概念。対して創造は0から1を、無から有を生み出す概念だ。察しが良ければわかると思うが、創造の概念は概念結合源すら創造、再生ができる。しかし滅びと創造の概念の所有者は必ず創造の概念を扱えない。なぜなら創造の概要は滅びによって攻撃された概念結合源の修復、そして滅びによって消滅した付着概念の再生成に全リソースを割いているからだ

 

え?創造の概念がのリソースが滅びの概念のリソースを下回ったらどうするつもりだって?そこは心配ご無用、全ての概念は例外なく全て等価値だ。創造くんの過労感は否めないが……しかし創造の概念は滅びの概念を持つもの以外に滅多に付与されることはないからそういうとこでは足し引きは合ってるのかもしれない。再生の概念持ちには創造の概念も付与されるなんてことは結構あるが、再生の概念持ちもそこまでいないからまぁヨシ!(現場猫

 

説明はこのぐらいにして話を戻そう。滅びの魔力は雑に使っても強いが、本質を理解した途端に最強の矛にも最強の盾にもなれる。しかし治療はダメだ。これがラノベとかみたいに解釈を変えて傷に滅びの魔力を当てて治療を……なんてした瞬間、接触部分が消える。そんなアホ(俺みたい)なことするやついないよな?いないだろ。だが使い方を理解すれば、攻撃を必ず掻き消す防御、相手の防御を必ず崩す必殺の攻撃として大いに活躍出来ること間違いないが、概念の理解なんてのは聞いて2割感覚で7割奇跡で1割なんてのが常だ。今後の成長を期待するだけしかできない

 

「さて、現実逃避はやめてそろそろを向き合わにゃね」

 

裕斗と子猫の攻撃とウィザード組の攻撃を捌いていた訳だが、リアスの策にハメられ周囲を大玉転がしに使用する大玉ぐらいの大きさえもの滅びの魔力弾が俺を中心に半円状に展開された魔方陣から射出されて現状に至る

 

今思えば途中からおかしかった。今まで固まっていたのが急に3方向からの魔力攻撃、その間にアーシアが視界の端でちょこちょこと動いているのが見えていたがなるほど、そういうことなのだろう。今回ばかりは本気で避けた方が良さそうだ

 

魔力を放出、青い炎と緑の雷を纏い推進力として隙間を目指して地を蹴る。十分に勢いをつけてスライディングし、すぐさま魔力同士がぶつかり合って大きな爆発を起こした。爆風を利用してさらに加速し次なる狙いのためにリアスの元へと進路を変えた。迎撃のために魔力弾が撃ち込まれるが、魔力放出を瞬間的に最大出力に上げることで吹き出す炎で掻き消した

 

「部長の元には行かせません!」

 

「喰らってください」

 

裕斗からの飛び掛かり切りを避け、子猫が投げた木の上に乗り、リアスに向かって跳ぶと不穏な機械的マダオボイスが響いた

 

〈Explosion!!〉

 

この合図は倍加完了と倍加の反映を完了したという合図だ。つまりそれが指す意味は……

 

「へへ、流石に兄貴でも空中なら避けれないだろ!行くぜ!3分間のチャージを今ここで放つ!今必殺の!ドラゴン波ならぬドラゴンショットォォ!!」

 

米粒サイズの心許ない魔力球はイッセーが殴りつけると同時にゴン太レーザーとなって俺目掛けて放たれた

 

「おい誰だイッセーに魔力の扱いを教えたヤツ!ちょっとだけ褒めてやる!っぶなッ!?」

 

身を捻ってなんとか回避すると同時に威力を物語るかのように風圧が俺の体を叩きつけた

 

えちょっとタンママジ待ってイッセーのヤツこの中で1番成長してるだろ!?俺の剣ビームと同じ威力出てたぞ!?

 

「まぁいいやとりあえず覚悟ぉぉ!」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい!貴方あsーーきゃっ!?」

 

「はい、チェックメイト」

 

風に煽られて飛距離が伸びたのでそのままリアスに突撃。俺と彼女の体が衝突し、勢いのまま一緒に地面を転がり俺が下敷きとなった状態で彼女の首に指を突き立てて詰みを宣言した。何か言いかけていたが恐らく足のことだろう。左足の膝から下が綺麗に消し飛んでいた。こんなもの放っておいても勝手に治るし気にする必要はないだろう

 

「アーシア!今すぐ帝の足を治療して!」

 

「はい!大丈夫ですか!?今回復します!」

 

「あ、おう悪い」

 

アーシアがこちらに駆け寄って治療を始めるのと同時に全員が青い顔をしながら側に駆け寄ってきた。みんな酷く慌てているが特にイッセー、リアス、アーシアの3名が酷い。別に痛くも痒くもないからそこまでになる必要が全くないように思える

 

「ご、ごめん兄貴!あの時は無茶になってて全力で撃っちまった!本当にごめん!!」

 

「いや、そんな必死になんなくても大丈夫だって。ほら、さっさと顔上げろよ。アーシアももういいよ。実を言うと俺の体って対外的な回復効果は受け付けてくんないんだよ」

 

「え、それって……!?」

 

「まぁ呪いみたいなモンだよ。心配しなくてもすぐ生えてくるから。ほら」

 

グジュグジュと肉が盛り上がって左足が元の形に戻った。見慣れたもんだけど相変わらずちょっとキモい。これを見たみんなもさらに顔を青褪めさせていた

 

「それよりほら、今日の総評するから戻るぞ。はいリアスもいい加減に動く」

 

「……いや……心配かけたんだからこのくらい我慢なさい」

 

「はいはい……よっと、お前軽いな。ちゃんと飯食ってんのか?」

 

他に方法もないからこういう抱え方になったが、こういうのはやっぱり慣れない。リアスの顔が近かったり体が密着したりしている所為か妙にドキドキしてしまっている。顔に出したらイジられることは確定しているのでなんとか堪えている

 

「そ、そこまでしろなんて言ってないわよ!」

 

「知るかよ、言っても退かなかったんだからこれくらい甘んじて受けなさい」

 

「こんなの恥ずかしすぎるわ……あなただって我慢してるのバレバレなんだから……」

 

「……言うなよ、余計意識しちゃうでしょうが……」

 

肌を撫でるように吹く風は心地良いはずなのに、それに乗って来る香りが俺の鼓動をより早めていく。砂糖を吐きそうな気分に耐えながら、割とワガママな姫様にも同じ気分を味わってもらうことにした………………おいこらそこ砂糖吐くな。イチャつくな?喧しいわ!

 


 

今日の鍛錬を終え、入浴を済ましてしっとりみかどんになった俺は情報屋から買い付けたフェニックス家の資料とライザーについての資料を手にテラスへと赴いた

 

左目の異能を使う際の補助として情報処理能力や演算速度、脳にかかる負担などを大幅に軽減する目的で作った眼鏡をかけ、僅かに左目に意識を向けて資料に目を通すと瞬間的に膨大なデータが思考を埋め尽くした。続けてタブレット端末から流れているライザーの試合の動画を見ることで、ヤツの戦略や得意不得意、強み弱みなどの溢れんばかりの情報を全てノートに箇条書きし、優位性を持てるものや警戒点を明確にすることでより洗練された作戦が練れるだろう

 

しかしやはり見立て通りか、ヤツは自身の再生能力に胡座をかいている所為なのかメンタルが少し脆い。現に相手の作戦を読みきれず、想定外の出来事にリカバリーを取ることができていない。となるとやはり攻略方法は3つ。展開や組み立ては当日のフィールド次第といった具合だが、今のところはリアスに決定権を握らせておく他ないだろう

 

「月明かりの下で読み物なんて、随分と趣があるわね」

 

ふと声をかけられて頬杖を解くと、ネグリジェと薄いカーディガンを着たリアスが分厚い本と眼鏡ケースを手にこちらを見ていた

 

「向かい側、いいかしら?」

 

「なんで返事する前に座んのさ……いやいいけど。それよりその格好寒くないのか?」

 

「そうね、たしかに少しだけ肌寒いけどまだ心地良いぐらいよ」

 

「そ、そう……」

 

しかしやはり直視できない。リアスのネグリジェはかなり薄いタイプのようでその……月明かりのせいで浮いた突起とおピンク様がハッキリと見えてしまって気まずい。後ろの風景に焦点を合わせてなんとか気にならないようにしているが、肌の露出度が高いのも相俟って目に毒、というより目に劇薬だ

 

「そうだ、これ全部やるよ。大体得られる情報は読み取ったから、後は好きに使うといいさ。どうせレーティングゲームのルールとライザー対策のために来たんだろ?」

 

「本当によく見てるのね。その通りよ。でも、いいの?かなり深いところまで書かれてるみたいだけど……」

 

「気にするな。情報収集は戦いの基本だ。それに元々コイツはキミにやる予定だったわけだから、別にいいんだよ」

 

「ふふっ、それならありがたく頂戴するわ」

 

そしてしばらく、沈黙が続いた。空の星々は爛々と輝き、浮かぶ月は半分に綺麗に割れている。街の喧騒から遠く離れたこの地は驚くほどに静かで、聞こえる音なんて木々の揺れる音、虫の羽音、頁をめくる音。そういえば帰ってきてからこんなまともにリラックスできてるのは初めてだ。今はぼーっと空を見上げていると、春の大曲線や春の大三角形、プロキオン座や天秤座、ヘラクレス座、レグルス座などが見えて、全部探し終えたら、勝手に自分で星座を作ってみたりして遊んでいた

 

「なぁリアス、これは単なる興味で聞くけどさ……なんでお前、ライザーとの結婚を嫌がってるんだ?」

 

「……帝、私はリアス・グレモリー……そうよね?」

 

「?あ、ああ」

 

「じゃあ、今あなたの目に写っているのは?"リアス"?"リアス・グレモリー"?」

 

「……そっか……そうだよな……自分の家を見てるヤツなんかより、自分を真っ直ぐに見てくれてる人と結婚したいよな……」

 

……この雰囲気知ってるよ……これ慎重に考えないと取り返しのつかねぇことになる……具体的に言えば一歩間違えたらリアス√になる……これだけは間違えてはいけない……彼女の気持ちを知っているなら余計に……

 

「そう、私は私を見てくれて、私自身を愛してくれる人と結ばれたい。もちろん、グレモリーの名には誇りを持っているわ。でも、グレモリーだからというだけで将来まで左右されたくないの。私は自分の手で、みんなと笑い合えるような幸せな日々を勝ち取りたいの」

 

馬鹿なことを考えている俺を尻目に、そう言って微笑んだ彼女は月明かりに照らされているせいか、いつもより儚げで、風が吹けばどこかに消え去ってしまいそうだった

 

「いいんじゃねぇの?自分の手で未来を勝ち取る……俺ちゃんそういうの結構好きよ」

 

彼女の手を握ってしまいたくなったのをぐっと堪え、いつものようにおちゃらけた態度でいるように徹した

 

「ありがとう。あなたならそう言ってくれると信じてたけど、実際に言われてみるととても嬉しいものね」

 

そりゃそうだ。自分の考えを持って努力できるヤツは正当に評価されるべきだ。じゃなきゃ割に合わない

 

「期待通りに帰ってきてよかったな。それより、あの焼き鳥野郎への対策は進んでるのか?」

 

「ええ、今はなんとか形にできているけど、あなたがくれたこの資料があれば上手く作戦を組めるわ」

 

どうやら俺が渡した戦術本は無駄ではなかったようだ。ありがとう、ゼフィ……お前の押し付けが一人の少女の未来を救ったんだぜ……

 

遠く遠く、別の場所にいる心友に心の中でサムズアップして感謝を伝えた。今頃ちょっとイラッと来ているだろう

 

「それで作戦ってのは?」

 

「んー……そうね……こういうのはどうかしら?」

 

彼女の口から、概要が伝えられる

 

「なるほど……それなら確かに勝機はある。俺の使い方も上手いじゃないか」

 

「使うって……そんな言い方をされるとこっちが気不味くなるわ……巻き込んでしまってこんなことを言うのは図々しいと思うけど、頼めるかしら?」

 

「任せろ、こっちは元々お前の指示通りにしか動かねぇ予定だったしな。いい暇つぶしができて丁度いい」

 

俺の返事にリアスは苦笑いで返してきた。ニートしてろとでも言うつもりかこやつめ……

 

「……まぁ、そんなところかしら」

 

「そうか、んじゃそろそろ部屋に戻るわ。湯冷めして風邪でも引いたらお前のこと見れねぇしな」

 

「あ、待って!」

 

立ち去ろうとしたが、手を掴まれて引き止められた。そしてリアスは真剣な表情で俺の顔を見つめてきた

 

「……近くない?あとどうしたのさ」

 

「ご、ごめんなさい!……なんだか、あなたの顔が少し疲れているように見えて……」

 

なんで……そんなとこまで気づいてしまうんだよ……あぁもう……敵わないな……

 

「……なんだ、そんなこと?心配すんなって。俺って若干色白だからさ、たまーにそう言われんだよな!別に無茶してるとかそう言うのでもないから大丈夫だって。じゃあな、おやすみ」

 

「あっ……」

 

やめろ、そんな寂しそうな顔をしないでくれ……気付いてもらえて嬉しいだなんて思ってんじゃねぇよ……

 

部屋に辿り着き、ベッドに顔を埋めた

 

わかっている……彼女が向けてくる感情も……俺が抱いてしまっている感情も……でも、こんなのはダメだ……必ず破綻する……本当にそう思うなら、一歩引いて考えるべきなんだ……なのに、見抜かれて、あまつさえそれを喜んでしまうなんて……

 

「……はぁ……キッツ……」

 

ぽつりと零した言葉はどこかに吸われて消えていった。赤い布に巻かれた左腕を見て、また一つ呟いた

 

「あと半年か……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued.

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