ハイスクールD×D Re:Joker of despair   作:カルパン

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この世には投稿中の小説をほっぽり出してエタるヤツとそうじゃないヤツがいる。私はどっちつかずの半端者です……オニイサンユルシテ……


しっぽり入浴なんてしてやらない

 

 

-side帝ー

 

「重心は前に!腰は低く!拳に全体重を乗せろ!それともっと体の捻りとバネを活用!その程度じゃあの焼き鳥に勝つなんざ夢のまた夢だぞ!」

 

どうも、現在熱血指導なんていう柄じゃないことをしている帝です。そしてこの俺目掛けて腹パンかまそうとしているちんまいのが後輩の塔城子猫さんです

 

「今、何か!おちょくられた!ような気が!します!」

 

「ナニモカンガエテナイヨ?」

 

最近の女の子って怖いね。心読んでくる上に失礼なこと考えたら拳でラッシュ仕掛けてくるんだもん(ド偏見

 

受け止める度に発生する衝撃波的なのが示す通り、一撃一撃がそこそこ重い。現に受け止めた手が若干ビリビリしている。俺のアドバイス通りにやっているからというのもあるが、地力がある上で体全体を用いた打撃法を用いているから、当然組み手を始めた頃より打撃の威力が高くなっている。こう言ったラッシュを仕掛ける時に威力がバラけてしまうのはまだまだだが、完璧にできるようになれば並の相手ならまず負けない程の実力はあるはずだ

 

そして何十にも続いたラッシュは俺が子猫の拳を握ったことで終了した。一瞬の硬直を逃さず一本背負いで放り投げ、仕切り直しの状況に持ち込んだところで、組み手終了のアラームが鳴り響いた

 

「よし、一旦終わり!2時間後に再開するからそのつもりで。今度は足技を中心に見るから、開始10分前には足を中心に柔軟しておくように。ヘラクレス、彼女に何かアドバイスとかは?」

 

「ふむ……子猫様、次は打撃のインパクトが発生する瞬間に、拳に最大量の魔力を乗せられるように心がけてみましょう。それの意識次第では威力は十分に上がりますので、どうか気に留めていただけると」

 

「ありが……とう……ございま……した……」

 

最初から全開で行っていたため、息も絶え絶えになった子猫はぺこりと頭を下げて木の影へと向かい崩れ落ちるように座り込んだ

 

見ての通りだが、俺が行っているのは近接組の組み手特訓だ。具体的には筋力の増強によって変わってしまった体の動かし方を、俺が提案した戦闘スタイルに調整させつつ安定した戦闘を行えるようにするためのものだ。英霊達にも協力してもらい、子猫にヘラクレス、裕斗に沖田さん、イッセーに燕青と書文先生がついてくれている。彼らには第三者視点で見てもらい、随時アドバイスを送ってもらい、休憩時間中に目標の戦闘スタイルを確立させるための体の動かし方をレクチャーしてもらっている

 

リアス達後方組にはケイローン先生がついてくれている。彼には魔術の指導を行ってもらい、戦闘での立ち回りをシミュレーション形式でレクチャーしてもらっている。他だと距離の取り方や相手の行動を阻害、制限する術など……といったところだ

 

「うし、そんじゃ次イッセーな」

 

「ゔぇっ……頼むから手加減してくれよ……?」

 

「そこはお前の努力次第だ。いいからいつもの調子で来てみろ」

 

気は進まないがこれについては諦めてもらう。大事な弟だからこそ強くなって欲しいという兄心をどうか汲んでくれ

 

「っらぁ!」

 

「動きを小さく出来たのは褒めてやるけど、狙いがバレバレだ。視線はあくまでも相手の全体像を捉えるだけに留めろ。それと攻撃は常に5手先まで想定しておけ。単発で終わる攻撃なら子供でも簡単に出来るぞ」

 

「うっ……す、好き勝手に散々言いやがって……!」

 

図星だったのか、それを隠すかのように続けて攻撃を仕掛けてきた

 

「ぃよっと、ほれ次蹴り行ってみ」

 

「兄貴……なんか剣使ってる時より動きのキレ良くないか……?」

 

「そこは分かるようで偉いな……ってそういや言ってなかったな。俺こういう殴り合いが1番得意なんよ」

 

「え……?みゅあっ!?」

 

イッセーがあんぐりと馬鹿みたいに口を開けている隙に鼻を摘み上げた。これやられると地味に痛いんだよな……

 

「……えっいや……嘘だよな……?」

 

『残念ながら事実だ。つい先日、お前の兄の記憶を覗き見たが……凄まじかったな。鬼神と言う名すら霞むほどの暴れ振りだったぞ』

 

『うむ、相棒は徒手格闘においてこの世界の武神、戦神共より優れていると言えよう』

 

「そりゃそうさ。気が遠くなるほど長い年月をかけて技を磨いて来たんだから、そんじょそこらの神に劣る道理が無いだろ」

 

「えぇ……」

 

「いやそんな引かんでもええやろ……」

 

当たり前のことを言ったつもりなのに引かれてしまい、ショックで思わず素が出てしまった……いや待て、もしあの心理世界に睡眠中のイッセーの意識を引っ張って来られれば……

 

「……なあ兄貴、何かおぞましいことを考えてるとかそんなわけ無いよな……?」

 

「失礼な、ただ睡眠中でも鍛えられる案が脳裏に浮かんだだけだ」(実行しないとは言ってない

 

「…………………」(嫌な予感しかしない

 

「……今は目の前の事に集中するぞ。1番鍛え甲斐があるのはお前なんだからな」

 

「話逸らしやがったな……」

 

「やかましい、とにかくこれは決定事項だ!最低でもグレモリー眷属の中で一番強くなってもらうつもりでやるから、余裕かましてる暇があるならさっさと来い!」

 

さて、イッセーの意識をどうやって俺の記憶に引き摺り込んでやろうか……やはり歴代の赤龍帝達が座す領域へと引き込んでそれから……

 

「くそっ、せめて1発くらいは当ててやrおぶぁっ!?」

 

「あっ、悪……い……こりゃ伸びてやがらぁ……」

 

すまんイッセー……まさか体が勝手にカウンターを顔に決めちまうとは思わんだろ……

 

皇一誠搬送中

 

という訳で裕斗!かかっておいでなさいませですわ!

 

「帝先輩、声めちゃくちゃ震えてますよ!?しかも口調もめちゃくちゃです!!」

 

いかんいかん、動揺を隠せていないとはまだまだだ。いやでもどうしようこれでイッセーが「兄ちゃんなんて大嫌いだ!」なんて言い出したらどうしようそれこそボロボロに泣きまくって世界をぶっ壊してやるそうだ弟妹に嫌われるくらいならいっそのことこんな世界なんか壊してやるよーしお兄ちゃん頑張っちゃうz

 

「先輩!ストップ!ストップです!そんなところで頑張らないでください!」

 

「はっ!?俺はいったい何を……!?」

 

「イッセー君に嫌われるのを恐れ過ぎるあまりに世界を壊そうとしてましたよ……」

 

「……はぁ……しっかりしろ俺……よし、もう大丈夫。悪い、時間食っちまったな」

 

「い、いえ……お気になさらず……」

 

バチンと両頬を叩き、狂いかけていた思考をクリアな状態に戻して裕斗の指導に入ることにした

 

「さてっと……裕斗、前半の基礎能力向上メニューはどうだった?」

 

「はい、今になって思えばとても実りある内容だったと思います。着実に自信の体が仕上がっていくという感覚は少し嬉しく感じました」

 

「うん、模範的な返答ありがとう。今回からは大剣の扱いに慣れていこうか」

 

「つまり、メインの使用武器を直剣から大剣に変更しろ……ということですか……?

 

「うーん、それとはまた違うんだよなぁ。今の裕斗は基礎スペックが上がったお陰で大剣も楽に振り回せるようになっている筈だ。今回はそれを少し試して見ようと思ってな」

 

今まで裕斗には決定打、威力の高い一撃というものが足りなかった。今回の内容も結局のところそのきっかけ作りに過ぎない

 

それに俺がいつまでも協力してやれるとも限らない。最悪の場合敵対する場合だってある存分にあり得る。もしそうなったとしても俺に()()を出させるぐらいにまでは成長して欲しい

 

「さて、それじゃあこいつを使ってやっていくか」

 

「……先輩、毎回思うんですけどなんでそんなにポンポンと業物を人に手渡せるんですか……」

 

「一応弁明しておくと俺はあくまで過去に打ったものを再現しているだけだ。一つ一つ丁寧に打ってたら時間がかかるし、何より面倒だろ」

 

ぎょっとした表情の裕斗に対し誤解を解くように言った

 

「まさか先輩、前は後方支援というか……鍛治関係をしていたんですか……?」

 

「うーん……どっちかと言えば兼業が近いかな。鍛治職を前線に出すとか頭おかしいよなホント」

 

裕斗は頭おかしいのはお前だとでも言わんばかりに不服そうな表情をしているが、そこは適材適所の一言で黙らせた。俺の場合は適切な役割が2つあっただけにすぎない。だがやはり後衛職を前衛に出すのは頭おかしすぎる。今度帰ったらあのバカ総長はボコボコの刑にしてやる。ギルティなのだ。へけっ

 

「って、こんなことしてる場合じゃなかった……よし裕斗、構えろ」

 

目的を今更思い出し、傍らに立て掛けていた木刀を手に持ち開始が近いことを告げた

 

「行きます!先輩!」

 

剣を構えた裕斗は駆け出し、次の瞬間には鉄同士でぶつかり合うような鈍い音が響いた

 

-帝side out -

 

-side一誠-

 

目を覚ますと、そこは一面白の何にもない世界だった

 

「俺、さっきまで寝てたよな……?なんだってこんなところに……」

 

とりあえず体を起こし周囲を見回した

 

「よぉイッセー、起きたか」

 

「うぉぉわぁっっ!!??」

 

「……うぉぉ……鼓膜ァァ……!!」

 

そんな顰めっ面で非難してきたって、いきなり背後から気配もなく近寄られて声をかけられたら誰でもビビるに決まってるだろうがバカ兄貴

 

「……それよりここ……一体どこなんだよ……」

 

「ぐぅ……ここは歴代赤龍帝の残留思念が集う赤龍帝の深層世界だ……まだ耳鳴りしてる……」

 

「……?その割には何もなさすぎるだろ」

 

周りを見渡してみるが、それらしきものは見当たらない。まぁ兄貴のことだから嘘ではないんだろうけど……

 

「俺の力で無理矢理黙らせてるだけで、本来であれば残留思念の怨嗟が渦巻く場所だ」

 

嘘だろ!?なんて悍ましい場所なんだ!?なんでこんな物騒な場所にわざわざ呼び出してくれやがったんですかね!?

 

「……今のイッセーは心も体も、そのどちらもが未熟だ。歯に衣を着せない言い方をすればクソ雑魚な訳だ。そんな状態で夥しい量の怨嗟を受けてみろ、発狂して廃人になるぞ?」

 

事もなげに言い放たれたそれはとんでもない内容だった。あと忖度も無くボロクソ評価されて少しムカついたので起きたら早速殴りに行こう。事実だからって言っちゃぁいけねぇこともあるんだよ

 

「まぁ今から見せるものはそれ以上にヤバいこと請け合いだけどな。ハハハ」

 

しかもさらっと笑いながらさらなる爆弾を投下してきた。やっぱりこの兄貴頭おかしいんじゃないだろうか。でも心なしか目が死んでるような気が……

 

「はぁ……兄貴……まさか今からやることって……」

 

「うん、昼に言ってたやつ。俺の戦闘経験を追体験してレベルアップ!みたいな感じのことするぞ」

 

若干の胡散臭さ満載の広告のキャッチコピーめいたフレーズに思わず疑いの目を向けた

 

「はぁ……一応言っておくけど、お前に戦闘センスが無い以上経験で実力不足を補うしかないんだからな?そこさえなんとかできればライザーの眷属達を相手にしても上手く立ち回れる筈だ」

 

「ライザー相手にはどうするつもりなんだよ……」

 

「……気合いと根性、あと夢と希望を少々……?」

 

もう正直にムリって言えよ!その方が気持ちよく殴れるわ!

 

「ああもう……なんでもいいよ……それで?どうやりゃいいのさ」

 

「お、やる気になってくれたか?それなら準備するからちょっと待ってろ」

 

なにやらぶつぶつと呟き始めて準備を……待て今精神状態保護とか聴覚防護とか精神汚染遮断とか聞こえてきたんだけど!?

 

「はい、とりあえずこれ付けてくれ」

 

震える手をどうにか動かして兄貴から受け取ったイヤリングを耳につけた

 

「多分今聞こえてたと思うけど、これ付けとかないと死ぬから絶対外すなよ」

 

「死!?」

 

「うん、死。SAN値チェックで確定失敗ロールになるから」

 

「なにそれ……」

 

「……忘れろ、今知ったところで多分無駄。それより準備は出来たか?そろそろ始めるぞ」

 

不安な気持ちでいっぱいになる俺の胸元に、そんな気持ちを知ってか知らずか手を添えーーー

 

あやわはわひやりまらなららさならやあはらわ

 

「イッセー!!」

 

「ッッッッ!!??……兄貴……な、なんなんだよ……アレ……!!」

 

悍ましいモノを見た。顔の表面が蛆虫のように蠢く巨人、前足後足その全てが触手のように呻きビクビクと鼓動のように痙攣を繰り返す4足歩行の怪物、頭部が人間の頭の外側と内側の構造を全て裏返しにしたかのような構造をしたヒト型……どれもこれも吐き気を催し正気を削るような化け物ばかりだった

 

「……気持ちはわかるけど、この程度は頑張って耐えてくれ。保たなくなるぞ」

 

「勘弁してくれ……」

 

意識と正気を何度も飛ばされる中でふと考えた。兄貴が戦っているこの場所は一体何処なのだろうと

 

-一誠side out-

 

-帝side-

 

幕引きの朝が来た。長いようで短かった17日間を乗り切り、目の前に並ぶ彼らは当初とは比較にならないほどの成長を遂げている。1人1人がライザーに牙を向けられる力を持った者ばかりだ

 

腕組みを解き、物思いに耽っていた目を見開き全員の表情を見て、口を開く

 

「よし、じゃあ始めようか」

 

言い終わるのが先か後か、そんなタイミングで裕斗が大剣を構えこちらへと突っ込んできた。唐竹斬りを半身になって回避し、大剣が地に触れるより先に蹴り上げ裕斗を飛び越えてこちらに仕掛けようとする子猫とイッセーの行動を制限した

 

「別に言い終わるまで待たなくったっていいんだぞ?」

 

「くっ……流石に反応が早いですね……!」

 

続くイッセーは裕斗の肩を持ちそこを軸に飛び蹴りを放ってきたが、下方に叩き落としイッセーの下を潜ろうとする子猫の動きを更に阻害した

 

追撃にとイッセーの足が着く前に裕斗に足払いをかけ、イッセー共々転倒させた

 

そんな動きにチャンスとばかりに子猫は2人を高く跳躍して飛び越え、更に空中で縦に一回転、そのまま遠心力を乗せた踵落としを決めに来た

 

それと同時期に俺の胴体を狙った雷の魔力弾と氷の魔力弾が飛来した

 

いつもの如く打ち払おうとした左腕を構えた一瞬に嫌な予感を感じ氷の魔力弾を掴み雷の魔力弾へと投げ、子猫の踵落としの軌道を逸らして回避。姿勢をそのまま貼山靠の構えに移し、ガラ空きの腹部へ向けてぶちかました

 

「に"ゃっ!?」

 

「こっちも忘れんなよなっ!」

 

吹き飛んでいく子猫を尻目に起き上がっていた裕斗は横薙ぎに、イッセーは屈んで足払いをかけてきた

 

両者の攻撃の軌道を見て、少し早めにイッセーが仕掛けていたことを読み下半身を脱力させ体を後ろに倒し、態と足払いを受けて後方に倒れ込んで裕斗の斬撃を回避した

 

魔力弾の群がこちらに迫っているのを視認し、地に片手を付け勢いのままバク転をして魔力弾の僅かな隙間を掻い潜るように動きその全てを回避した

 

彼らの息の合った攻撃も少し落ち着いてひと段落し体勢を整えた後にグレモリー眷属全員に声をかけた

 

「ふぅ……さて、そろそろ全員温まって来ただろうし各自今出せる全力で来るように。もしかしたら本気の俺に一撃くらいは入れれるかもね?」

 

その瞬間全員の顔に緊張が強く写った。かつて遠坂と士郎のサーヴァント達と一戦繰り広げているのを目撃しているからか、彼らの緊迫感は一入だろう

 

目を閉じる。息を吐く。吐いて、吐いて、吐いて……己の中身を全て吐き出して、深く深く息を吸い、目を開ける

 

「さぁ……行くか」

 

「っ!魔剣創造(ソード・バース)ッッ!!」

 

圧に耐えかねた裕斗は反射的に神器を解放し、剣山を俺に目掛けて放った

 

んじゃ……本気でやるからには少し真面目にやるとしようかな?

 

座標設定完了

演算投影工程、省略(ロードアウト)

滞留魔力固定化、完了

射出物制限、解除

 

軽く設定も弄り直したし、そろそろやってやろうか。よく覚えておくといいぞ裕斗、剣を造るとはこういうことだ!

 

あと10㎝、8㎝、6、5、4と迫ったところで、フィンガースナップの音が静かに響いた。瞬間、空から鈍色の流星群が落ち剣山の全てを砕いた

 

こちらに飛び散った魔剣の破片をいくつか掴み、こちらに飛んできた魔力弾に向けて投げた

 

質量を持って飛んできた雷の魔力弾は、進路を破片に遮られてその行先をほぼ下に向けてしまった

 

ゴッと砲丸が地面に落ちてめり込んだような音と共に消え去った

 

真面に食らったら二重で痺れて動けなくなるな……考えているとイッセーが地を這うような低空姿勢で懐に飛び込んできた

 

初手に足払いをかけて来るが加速前に足で阻止。しかしそこを起点に重心を前方へ移動させながらの掌底が鳩尾へと飛んできたが腕を置いてガード。今度は膝蹴り……に見せかけた頭突きっ!?

 

「あっぶな!?くそぅ、やるようになりやがって……」

 

「ゔぇっ!!いってぇ……!!そうなるようにしたの兄貴だろ……」

 

「まぁそれもそうか……1年分とはいえお前に戦闘経験を与えたのはまずかったかな……くそっ!さっきから地味にうぜぇぞこのぉっ!?」

 

イッセーを投げ飛ばした辺りから落雷とかガンドとか滅びの魔力の雨とかばっか向かって来るからほんとやりにくい!

 

「流石ね!けどこれならどうかしら?朱乃!」

 

「はい!天雷よ!」

 

魔力弾の雨を躱しまくっていると、朱乃が放った雷が魔力弾を降らし続けている魔法陣に当たった。直感から飛び退くと、先程まで立っていた場所に大きな雷が落ち、そこに穴を開けた

 

「おぉ、いい威力してんなぁ……ぁ"っ!?」

 

うそやん!?連射するとか聞いてへんて!うわっ…しかも地味にホーミングしてくるしっ!

 

「随分と余裕そうじゃない?これも追加してあげるわ!」

 

リアスはそう言って滅びの魔力を魔法陣に放った

 

おい待て……まさか……!?

 

「うわやっぱり追って来た!?しかも小粒じゃねぇかチクショウ!」

 

「逃しません、えいっ」

 

どこから持って来たのか、巨大な岩を持った子猫は可愛らしい掛け声と共に岩を投げるという可愛らしくないことをしてきた

 

「あ"っっぶね……さて、そろそろ壊すか……」

 

四足歩行獣のように姿勢を低くして大岩を回避し、岩が盾となっている間に魔力を吐き出し続ける陣を破壊すべく対魔力性能の高い剣を射出した

 

「っ……はぁっ!!」

 

息を殺して懐に潜り込んでいた裕斗は大剣を逆袈裟に切り上げ大きな砂埃を立てた

 

「よしっ!ってあれ!?兄貴は!?」

 

「みんな上よ!迎撃して!」

 

裕斗の斬撃を利用して大空へと舞っていた俺は最も簡単に見つかってしまった

 

てか見つけるの早すぎない?

 

「手の内を晒すようなマネはしたくないなぁ……」

 

「ドラゴンショットォ!!」

 

「落ちてっ!」

 

落下中は動けないと踏んだのか、右からはイッセーの魔力砲、左からは美優が飛ばした水の魔力弾とガンド、そしてその2つの影に隠れた炎の魔力弾が迫っていた

 

「ふふふ、ダメ押し……させてもらいますね?」

 

そして真上からは朱乃からの雷が落とされようとしていた

 

うん、いい連携だ。でもこれらは全て恐らくではあるがブラフ、本命は恐らく……

 

一応の答え合わせのために左眼の異能を使うと、やはり予想通りリアスからかなりの量の魔力反応が出ていた

 

このまま潰しに行ってもいい……というか潰すべきと勘が囁いているが、実力を見ると言った手前どうしようもない。手の内をそうポンポンと晒したくもないので、ここは普通に回避に専念するとしよう

 

地上から剣を最速で射出し鍔を蹴ることで落下の軌道を変えて全てを回避した

 

続けて裕斗が剣を、子猫が先程の岩を投げて来たが先に俺の元へ到達した剣を掴み岩を両断した

 

「みんな離れてっ!」

 

そして俺が着地したと同時に落下地点の半径3m以内を囲むように大量の魔導陣が現れた

 

俺の上下からは重力が発生し、大小さまざまな役50に渡る様々な属性の魔力弾やらビームやらが飛び出して来た

 

魔力弾は剣を射出して破壊し、ビームは避けてを繰り返すが長引くほどにその密度を増やしていった

 

「もういいわ美優!あとは私が!」

 

魔力の雨が止んだタイミングで危険を予感してその場を退くと大量の赤黒いレーザーがもと居た場所を通過し、その奥にあった木々の幹を貫通していった

 

えっ……あれ初日に比べて滅びの概念への理解に一歩近づいてない……?あれ下手な防御は意味ないぞ……!?

 

「ふふっ、流石の貴方でも私の秘密兵器には危険を感じたかしら?」

 

「へぇ?一歩成長したみたいだな。まぁ、あんなの当たらなかったら意味無い」

 

若干の冷や汗を垂らした俺に対しリアスはそう言い放つが、ちょっとした強がりを見せた。しかしその後の一言は俺をぎょっとさせた

 

「なら当たるまで撃てばいいってことよね……?」

 

それと同時に彼女の手元の陣が回転を始めた。それはさながらガトリング砲だ

 

なんてことを考えているとホントに滅びの魔力弾が雨のように吐き出された

 

流石に当たるとマズい……視界を広く遮る必要があるな

 

迫る弾幕から逃れながら剣を広範囲かつ壁のように、そして彼女たちを囲うように展開した

 

視界を完全に遮った後に今度は彼女達の周囲を包囲するように展開した。始めこそどうにか突破しようと剣の壁を破壊していたようだが、無駄と悟ったのか途中から破砕音は聞こえなくなった

 

あっぶねぇ!!マジで一瞬だけ死ぬかと思った……将来性があるとは思ったけど……えぇ……

 

……さて、成長の伸び幅は粗方見ることができたし、困惑も程々にしてそろそろ締めに入ろうかな

 

地面に手を着き利き足を後ろに、剣を足の位置に合わせるように生成し爪先は地面に、爪先から後ろは剣に乗せ全身に雷を走らせた

 

脳内で掛け声を再生し尻を持ち上げて……地を蹴った

 

1秒とかからず剣の壁に到達しそのまま突っ込んだ。破砕音が響き破片が飛び散るが、皮膚に突き刺さることなく自身の魔力へと還元されていった

 

中心部に到達すると全員が驚愕の表情を浮かべていた

 

「ハハッ、まさか壁ぶっ壊して来るとはって顔かぁ?」

 

「そう来ると思ってたぜ兄貴ッ!」

 

誰もが初動が遅れた中、唯一動けていたイッセーがこちらへと向かって来ていた

 

勢いのまま懐へと飛び込んで来たイッセーは俺の顎目掛けて海老蹴りを放ってきたが、すれすれのところで回避し足首を掴んでそのまま後ろの穴へと投げ込んだ

 

続いて裕斗が地面から俺を囲むように剣を生成し裕斗自身が空中から直剣を二振り携えて仕掛けて来た

 

着地寸前に何かを投げて来たが直感で回避。次いで振り下ろされた2刀を躱しそれらが地面に突き刺さった

 

魔力の反応を感知し、身構えると足元からの反応だったためそのまま跳躍して回避した

 

「ここまで読まれるなんてまだまだだな裕斗!」

 

「ここで落とされるのまでは読めていましたか?」

 

声の方向へ目を向けるとそこにはとてつもない勢いで回転をしていた子猫の姿があった

 

「ま、躱すとこも込みで予想してっけど」

 

「にゃぁぁぁ……!?」

 

勢いの乗った回転蹴りをバレルロールのように回避し、背中に手を着き地上に向けて思いっきり押し出した

 

さて、子猫を地上に追いやったはいいものの手の内を晒さないと決めている今は風に身を任せる他無い

 

何やら風切り音が聞こえるが完全に脱力しきって最早ぺらっぺら状態の俺にこんな攻撃など……ごめんやっぱ嘘魔術の感知きちぃ……

 

髪が数本千切れ飛んだ悲しみを他所に、着地を狙って放たれた魔力弾を全力で体を折り畳むように仰け反り回避した

 

驚愕……と言うより引いたような表情を浮かべているが、少しでも動けば撃つと言わんばかりの集中力でこちらを見つめている

 

ぱすっと彼女達の背後で音が鳴り一斉にその音に反応した一瞬を突き美優と朱乃を抜き、構えようとしたリアスの額に銃を突き付け引き金を引いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁマガジンは予め抜いておいたし中に残っている筈の弾丸も突きつけるまでの間に廃莢しているので、結果的には空撃ちで終わったが

 

撃たれたと思ったリアスは腰が抜けたのかぺたんと地面に座り込み、他の全員は顔が真っ白になったままだ

 

「俺の勝ち。ぶい」

 

敢えて空気を読まずにそう言ったもんだから、即座に寄って集ってボコられた。残念でもないし当然か

 

「全く帝くんったら……イタズラ好きはいいですけれど、おいたはいけませんわよ?」

 

「いやぁ悪い悪い。まぁでも実際のレーティングゲームならこうなりかねないだろ?予行演習は必要じゃないか」

 

めっとでも言いそうな表情の朱乃に対してそう返した。それにここ最近どうにも怪しい痕跡もあるし……備えあれば憂いなし、ということで

 

「にしたってアレはやりすぎだろ……」

 

「うん、それは反省する。ごめんなリアス、立てるか?」

 

「……痛かったわ……」

 

「ごめんって……まだ痛むか?」

 

黙ったままこくりとリアスが頷いた。撃たれたのがよっぽどショックだったのかなんか暗い。罪悪感すごいなぁ……

 

「ホントに悪かったよ……まぁでも……うん、これで確信を持って言えるな」

 

若干涙目のリアスをあやすために頭を撫でながら出た呟きに全員が反応した。一瞬でドナドナとした空気が消え、張り詰めたような空気になった

 

なんだよドナドナした空気って……

 

「この調子ならライザー程度なら全員で軽く捻ってやれる。ちゃんとそう言わせるに足る実力が付いてるよ」

 

ニッと笑いながら全員にそう告げた。俺にここまで言わせるなんて……ええ、大したもんですよ

 

頬が赤くなってるヤツがいるだって?無視します!!理由はもちろんお分かりですよね!?

 

それにイッセーにも何かいい案があるみたいだし……絶対に碌でもないことだけは確定してるけど

 

「うし、そんじゃ汗流して荷物片付けて撤収しようか。明日は本番だからみんな家に着いたらすぐ寝ろよ」

 

風呂に入る前にまた一悶着あったが、それはそれ。またの機会にということで……周りが女性ばっかの風呂は流石に死にます……

 

To be continued.


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