ハイスクールD×D Re:Joker of despair 作:カルパン
新章開幕となる訳ですが今章から徐々に帝くんの掘り下げもしていきたいところです
それではどうぞ
他人に幼少期を見られるのってちょっと恥ずいよね
帝side
ビバ!夏!と言いたいところではあるが、今の時期まだ世間は夏夏していない。強いて言えば半袖を着用する人物が増えたぐらいか
さて、リアス曰く本日は旧校舎の一斉清掃でオカ研の部室は使えないとのこと
かと言って契約の近況報告会もあるので急遽皇家で……正確には俺の自室で行われることになった……のだが……
「小さい帝……小さい帝……ハァ……ハァ……♡」
「あらあら、この小さな子はイッセーくんと帝くんでしょうか?うふふ、昔から仲良しですのね♪」
「小さいイッセーさんも可愛いです……♡」
「あ、あんまりみないでくださいよー!」
母さんがお茶を持ってきたついでに
リアスは幼い俺に息を荒くしてるヤベーヤツ、朱乃は俺をイジれそうなのを探してアーシアは幼いイッセーに危ない感情を向けていた
「帝先輩の赤裸々な過去……少し気になります」
「別に隠すこととか恥ずかしがるような過去なんてないけど……あっそのメテオやめろぉー!?」
一方俺と小猫は2人でスマ⚪︎ラをしていた
「先輩はいつまでそのキャラ使ってるんですか……」
「カッコいいじゃんミュウ⚪︎ー!何で尻尾に当たり判定あるんやー!」
因みに士郎、遠坂、間恫さんは休みだ。何でも士郎の腕と体を調整するとか。そっちにはもう1人のセイバーとケイローンをつけているので心配は多分ないだろう
「あれ……帝先輩、7歳から先の写真はないんですか?美優ちゃんとの写真も最近のしか無いし……」
「あー、7歳ぐらいにここから離れて修行してたからな。俺が帰ってくる日まで……ざっと10年ぐらいか」
「そうだったんだ……お兄ちゃんは何でそうまでして……?」
「この世界は力が無きゃ望む未来も満足できる結末すらも迎えられない。生まれた時からそれを知ってたからだ。あとまぁ、これでも赤龍帝だからな。面倒事が向こうから尻尾振って駆け寄って来るのさ」
部屋の空気が若干重くなった。まあ俺にとって都合の良い方に解釈してくれたからこれはこのまま放っておこう
とは言え重い空気はお兄さん好きじゃないのでちょっとしたフォローを入れさせていただく。帝くん、うごきます
「おいおい、これからはいくらでも思い出作れるんだ。そんな暗い顔すんなよ。それよりほらこれ見ろよ、イッセーが風呂上がりにまっぱで歩き回ってるやつ」
「ちょっ兄貴!?」
「これでキンキンに冷えた牛乳イッキして翌日腹痛めてたんだよなー」
「やめろってぇ!」
良い感じに空気も和み再びみんながアルバムに意識を向ける中、祐斗だけはアルバムのあるページを見て固まっていた
「帝先輩、イッセーくん……これに見覚えは……?」
「ん?幼馴染だよ。ガキの頃よく遊んでてさ。えっと……確か名前は……」
「イッセー、多分イリナのことを言ってるんじゃ無い。この剣のことだろ?」
「……知っているんですね……?」
イッセーが納得したように手を叩いている間、祐斗は鋭い目で俺に確認を取ってきた
「ああ、初めて見た時は驚いたが……これは聖剣だな……」
それも叙事詩とかに出るようなレベルのものだ……銘は……オートクレール……だったか
「……ありがとうございます、先輩……」
俺の言葉を聞くと祐斗はゆらりと幽鬼のように立ち上がった
「すみません、少し急用を思い出したので帰ります。お邪魔しました」
ちらりと見た祐斗の瞳の奥には仄暗い炎が宿っていた
あー……コイツの目……態度……こりゃ明らかにアレだな……
「僕は……聖剣を赦さない……!!」
あれ以来祐斗の調子がおかしい。先日にあったはぐれ悪魔の討伐然り、部活対抗球技大会然り……どこか生気が無いと言うか覇気が無いというか……まるで何かに憑かれているかのようだった
極め付けに部活どころか学園にも顔を出していないらしい
事情を知らないがお人好しの士郎、遠坂、そしてクラスメイトの間恫さんすらも心配していた
そんな俺達の心配を他所に昨日、教会より面談の申し出があった。内容は駒王町においての任務の活動を知らせること、それをこの土地を管理している悪魔と人間に行いたいらしい
そして現在、外の熱気を感じながらも面談が行われていた
まぁそんなもん関係無ェってぐらいここの空気冷えっ冷えなんだけどネー!
バッチェ冷えてますよー
何だ今の毒電波
「さて、では改めて今回の面談を許諾していただいたこと深く感謝する。リアス・グレモリー殿並びに遠坂 凛殿」
始めに口を割ったのはカソックを纏った黒髪の男。生真面目そうな外見通りに丁寧な言葉が静寂を裂いた
「まずは自己紹介だ。オレはエレン・デュ・ラック。今回の任務の代表者を務める一介の神父だ。後ろの2人はゼノヴィアと紫藤イリナ。どうぞよろしく」
エレン・デュ・ラック……確か教会の最高戦力の1人だったか……なるほど、先ほどから溢れる強者の風格にも納得だ
そして紹介されたゼノヴィアとイリナを見やるとイリナは笑顔でこちらに手を軽く振ってきたので俺もそれに返した。一方ゼノヴィアは軽く会釈するだけに終わった
「光栄ね。教会の最高戦力が一角と言われる人物にお目通りが叶うとは思っても見なかったわ」
「いやはや、かの魔王ルシファーの妹君にも認知頂いているとは恐悦至極と言ったところか。遠坂殿もご家名と活躍はかねがね伺っています。管轄は違いますが言峰神父の妹弟子でもあったとか」
「それはありがとうございます。私のような未熟者を認知していただけて光栄です」
社交辞令を交えながら互いの腹を探るように言葉の応酬が繰り返される。リアスも遠坂も、エレンも皆ボロを出すまいと巧みに言葉を選んでいた
「はぁ……やはり腹の探り合いなんぞ柄じゃない……こんなものは古狸どもの相手だけで十分だし……単刀直入に行こう」
やがてそのやりとりに嫌気が差したのかエレンはため息を吐きながら本題を切り出した
「7振りに分かれ、そのうち教会が管理する6振りの聖剣エクスカリバー……うち3振りが先日何者かにより盗まれた」
「は!?エクスカリバー!?それも7本!?」
イッセー……お前……今口を押さえても意味無いぞ……
「失礼、その子は新人の悪魔かな?」
「ごめんなさい、このことについては後でしっかり指導しておくわ」
うーん……このあたりのことは後で誰かに講義してもらうとして……
ふと朱乃と目が合ったので試しにイッセー達に講義してやってほしいとアイコンタクトを取ってみると、いつもの微笑みと共に頷いてくれた
「構わない。今回オレ達がこの街に来たのはその首謀者を追いエクスカリバーを奪還することだ」
「そう……それで、首謀者は目星がついているのかしら?」
「ああ。相手は
コカビエルの名を聞いた途端、グレモリー眷属一同に緊張が走った
「まさかアンタ達……3人でって訳じゃないでしょうね……?」
「そうだ。オレ達は差し違えてでもエクスカリバーを取り戻す」
驚きで無意識に素の口調で聞く遠坂にエレンは淡々とそう返す
あくまでも自分の命は信仰のためだと言うか……
「「狂ってる」」
リアスと言葉が重なった。彼女も同じことを思っていたようだ
「言ってくれるな……それにオレ達は悪魔側に対しても懸念がある」
「まさか、私達が堕天使とグルになっているとでも?」
エレンの……教会の疑念はリアスのプライドを逆撫でしたようで、リアスはわかりやすく不機嫌になっていた
「尤もだろう?オレ達の力が削れて嬉しいのは何も堕天使だけじゃない。
「堕天使と手を組む?笑わせないで!私はグレモリー侯爵の名に於いてそのようなことは決してしていないと断言するわ!」
リアスがそう啖呵を切るとエレンはただ目を閉じ「そうか」とだけ言った。まるで確認事項が終わったかのような仕草がこちらを見透かしているようだった
「その返事を聞けて何より。こちらの憂いが消えたところで2つ、あなた方に要求をさせていただきたい」
エレンが指を2本立て、すぐに中指を畳む
「まず一つ、戦闘により街に被害が出てもどうか許容してほしいこと。それからもう一つは当問題において悪魔の不干渉、これらを約束してもらいたい」
「私の管轄内で起きた問題を黙って見過ごせ……とでも言うつもり?」
あっまた不機嫌になってる……今夜はちょっと構ってやった方がいいか……
「勘違いしないでくれ。
「その最中に件の聖剣が砕けたとしてそちらも黙認してくれる……と?」
「ふむ……鋭い指摘をどうも。万が一もあることだしな。聖剣の核をこちらに引き渡してくれるのであれば黙認する。そのまま持ち去るか破壊でもしようものならこちらも相応の対応を取らせてもらうがな」
「そう、いいわ。貴方達がここから出たらお互い不干渉で。凛もそれでいいわね」
「そうね。エクスカリバーに関して疑問は残るけど、一先ずそれは置いときましょう。ただし、この街に住む市民に手を出したらただじゃおかないわ」
「無論だ。無辜の民に手を出すような神の使者などあってはならないからな……さて、そろそろオレ達はお暇させてもらうとしよう」
「あら、お茶くらいは出すわよ?」
リアスの提案にエレンはただ不用とばかりに首を横に振った。長居するつもりもなかったのかいそいそと帰り支度をしていた
「……先ほどから気になってはいたがそこにいるのはアーシア・アルジェントか?」
「あら本当!そっくりさんかと思ったけどやっぱり《魔女》のアーシア・アルジェントさんじゃない!」
アーシアはゼノヴィアの発言に肩をピクリとと震わせ、イリナの追及にも近いそれはアーシアの顔に確かな影を差し込んだ。それと同時にイッセーが彼女を庇うように身を乗り出した
「どうやら君は、まだ主を信じているようだな」
「何言ってるのよゼノヴィア、彼女は悪魔よ?そんな訳無いじゃない」
「悪魔になっても神を信じる者はいる。彼女からはそれと同じ匂いを感じただけだ。問おう、アーシア・アルジェント……その身を悪魔に堕として尚神を信じているのか?」
「……今までずっと信じてきたものを捨てきれないだけです……」
「そうか……ではせめてもの慈悲だ……神の名の下に断罪してやろう。苦しく無いように一瞬で終わらせてやる」
「テメェいい加減に━━」
「そこまでだ、エージェントゼノヴィア」
ゼノヴィアが布に包まれた物体を手に持ったその瞬間、エレンがその手を掴んで止めた。いきなりのことにゼノヴィアはエレンに睨みを返していた
「どういうつもりだ、エレン神父」
「こっちのセリフだ。君は悪魔と戦争をしに来たのか?目的を履き違えるな。いいか、オレ達が会ったのはアーシア・アルジェントと同姓同名のよく似たそっくりさんだ」
それに……とエレンは続けると俺に目を向けてきた
「それ以上その剣を動かしてみろ、君の頭は吹き飛ばされていた……違うか?」
なんだ、バレてたか……流石は教会最高戦力サマだな
ホルスターから半分ほど出した銃から手を放し、しかしいつでも動けるようにと警戒はそのままに残す
「そっち側に冷静なヤツがいて助かるよ。だが身内に手ェ出されかけて黙ってられるほど大人じゃないんでな……しかし器量の無い輩も居たもんだな」
言った通りこちらは大人じゃない。精神年齢はそうかもしれないがかと言って未来の義妹を害されていい気分はしていない
だからこれは仕返しだ。向こうが口撃で終わらせるならこちらも口撃でもって仕返しをしてやる
「貴様、今何と言った?」
「器量の無い輩と言ったんだよ。考えてみろ、悪魔を癒したから貴女は今から魔女ですだ?悪魔にすら慈悲を向けるとはなんて慈悲深い……とならなかったのか?悪魔にすら慈悲を向けることができるようにと神器を調整した神はなんて素晴らしいのだとならなかったのか?敬愛する主の意図を汲み取れないなんて滑稽に他ならないな!」
「だが悪魔は我々の敵だ!人を誑かし魔道に堕とす存在だぞ!?それに神は悪辣なる悪魔は滅せよと仰せられた!それに従い人界の安寧を護る我々の何が悪いというのだ!」
「ほう?ならお前らの経典には争いを好まない無辜の悪魔すらも滅せよと書いてある訳だ。他種族と共に共生したいと考える悪魔すら殲滅対象な訳だ。いいこと書いてるじゃないか……なら殺せよ?ここにいるのは人と共に生きることを選んだ無害な悪魔だ。お前らにとって不倶戴天の敵が目の前にいるぞ?」
「言わせておけば……!望むところだ!貴様も悪魔に魅入られたクチだろう!ならばこの場で諸共!」
「帝!」「ゼノヴィア!」
あわや戦闘寸前のところ、リアスとエレンが俺とゼノヴィアを引き留めた
手を出す気はさらさら無かったが熱が入りすぎたのは事実。素直に反省と謝罪を述べよう
そういう訳だからイッセーはとりあえず落ち着け
一瞬イッセーに目配せをすると、意図を汲んだイッセーは大人しく食い下がってくれた
「悪い、頭に血が上りすぎた。反省している……すまなかった」
「……元より君の仲間に心無い言葉を浴びせ続けたのはこちらだ。あまつさえそれを黙って見過ごしていたオレにも落ち度はある。誠に申し訳ない」
「エレン神父!そこまでする必要なんて━━」
「いや、する必要がある。確かに彼の言う通り、悪を成さぬ悪魔がいるのであれば我々は隣人として手を差し伸べるのみ。エージェントイリナ、君も思い当たる節が無いわけでは無いだろう?」
イリナは当時の情景を思い出したのか苦い表情をしていた。昔の優しさと純粋さは未だに彼女の中に残ってくれているようだった
「それからエージェントゼノヴィア、君はやりすぎだ。今回の任務が終わり次第、追って処分を言い渡す。いいね?」
「……ああ、神父エレンに今後を委ねるよ……」
ゼノヴィアは沈んだ面持ちのままエレンの後ろへと下がった
うーん、ちょっとやりすぎた感……詫びついでの申し訳程度ではあるが情報提供でもしてみようか
「……コカビエルも一枚岩では無いはずだ。取り巻きの情報は流れてはいないのか?」
「いや、今のところは何も……容疑者はいるが絞れていないところだ」
「なら丁度いい。詫びと言っては何だが情報提供させてくれ。この件、恐らくバルパー・ガリレイも噛んでいるだろう」
「……その名はどこで?」
「……まぁ、俺が追っている人物と関わりがある……とだけ。ヤツの所業も妄執もそれなりに知っているつもりだ。だからこその確信がある」
「そうか……わかった。善意ある市民の情報提供、感謝する。ではそろそろ我々はここで」
ドアノブに手をかけたその時、エレンは思い出したかのように呟いた
「これは独り言だが……かの聖女の魔女認定には多くの者が反対の署名をしたらしい。まぁ、結果的に悔しさの残る結果となったが……まぁ今頃はどこかで友に囲まれて幸せに生きているのだろうな」
今度こそ彼らはオカルト研究部の部室から去っていった
「いやぁ、あの神父さん優しい人で良かったよ。俺のやらかしにも目ェ瞑ってくれたし……感謝だな」
「もう……本当に心臓に悪いことしてくれるわね……皇くん……」
「そうね……とは言え私達に変わって怒ってくれたのはスッキリしたわ」
みんなと違って俺はあくまでも個人的な協力者。全員下手に怒れない分俺の方が自由にやりやすい。最悪殺し合いになってもリアスや遠坂が俺との関係を否定すれば向こうは宗教に批判的な過激派の暴徒に襲われたと認識してくれるしな。怒られそうだからそんなこと言わんけど
「そんな言うほど優しかったか……?」
「優しかっただろ。俺らへのスタンスといいアーシアへの態度といい……特に最後なんてわかりやすかった。多分あの神父さんも署名したクチだろうな」
「えっマジかよ!?やべぇ兄貴……俺あの人のことめちゃくちゃ睨んじまった……!」
うーん……この愚弟め……まぁそれしきのこと、あの神父さんは気にしてなさそうだけど……
「帝先輩、さっき追っている人物がいるって……」
「……別に個人的な復讐とそういうアレじゃないよ。ただ会って聞きたいことがある。ただそれだけだ」
本当に俺個人の復讐ではない。とはいえやってきたことの精算ぐらいはしてもらうけど
雑談している最中、ドアが雑に開かれた。そこにいたのは鬼気迫る表情で肩を上下させる祐斗だった
「祐斗!?貴方今までどこに行ってたのよ!!」
「部長、それより教会の人達は?」
心配するリアスなどお構いなしに祐斗はリアスに詰め寄る。だがリアスはその圧に負けず祐斗を見つめ返す
「おっとしまった、こんな時に聖剣を出しちまった」
祐斗の様子を見兼ねた俺は以前鍛造した聖剣を再現しわざとらしく声を張り上げた。すると祐斗は凄い勢いで俺の剣に視線を向けた。見事俺が蒔いた餌に引っかかった
「やっぱり先輩も持っていたんですね……先輩には悪いですけど壊させてもらいますよ……」
「ここでコイツを出さなかったらお前はまた行くんだろう。前までのお前なら信じて送り出してやる……だが今のお前じゃダメだ。復讐に呑まれ過ぎている」
「貴方には関係のないことですよ。寧ろ、僕はこのために生きてきたと言っても過言じゃないんですから」
「……しゃーない、なら校舎裏に出ろ」
やはり祐斗は復讐に囚われて冷静さを欠いている。復讐どうこうについてとやかく言うつもりはない。むしろ生きるための指針になるならそれは有っていいものだ
だが復讐心によって目的と行動が逆転すれば全てが破綻する。今の祐斗は聖剣を壊すために生きているのではない。生きるために聖剣を壊す存在に成り果てている
俺は後輩のやりたいことを手伝ってやるほど優しい先輩じゃない。黙って成功を見守るのみだ。かと言って失敗も経験だと言えるほど出来た人間でもない。ならここで折ってやるのも情けというものだろう
「はぁっ!!」
校舎裏に着くなり祐斗が手に持った魔剣を振り下ろしてきた
だがわかりやすい軌道のそれは簡単に弾くことができた
「まぁ焦るなよ。剣を振るだけで問題が解決すると思うな。まずは情報の収集と分析」
実践してみせるように守りの態勢を取り祐斗の動きの癖を読むことに徹する
「次に相手の能力の考察とそれの対応」
重々しく繰り出される唐竹割り。有り余るその威力を利用するようにその手に持つ巨剣に剣を絡め、力のベクトルを縦から真横に変える
「そしてそれらを元に脳内シミュレーション、どんな状況にも対処できるように数パターン用意しろ。相手に攻勢を仕掛けるのは最後だ、覚えておけ」
次々に振るわれる刃を全て弾きながらついでとばかりに祐斗に実践を交えて指南を施す。今の祐斗には届かないだろうがそれでも頭の片隅に置くぐらいはするだろう
祐斗には大剣を扱えるように特訓を施しはした。だが今の祐斗が扱う獲物は彼が扱える範疇を超えたもの。言うなれば特大剣だ
聖剣の破壊のみを考えて力任せに振るわれるそれには技が宿っていない
俺が手に持つ聖剣は過去に手慰みに作った三流も良いとこのなんちゃって聖剣だ
込めた光の力も弱いしそもそも構造的にも壊れやすい。根本を狙われたらすぐさまポッキリだ。取り柄と言えば切れ味ぐらい
平時の祐斗であれば今の指導ですぐにでもこの剣を折っているはずだ。だが現状そうなっていないということはそういうことだ
「はぁ……はぁ……!どうして……!」
「……そうまでしてお前は聖剣を折りたいか……」
我慢の限界からか俺は思わずため息をこぼした
ここまで聖剣に執着を見せるあたり、おそらくバルパーと浅からぬ関係なのだろう
コカビエルの思惑といいエクスカリバーのことといい……気になることが多すぎる
「……決めた。遊びは終わりだ、祐斗」
今後の方針を決めると祐斗の特大剣を両断する
あっさりと折れた己の剣を見て祐斗は唖然としていた
「祐斗、今のお前にエクスカリバーは折れない。復讐に関しちゃどうこういうつもりは無いが少し頭ぐらいは冷やせ」
「……ッ!!まだやります!みんなの仇を討つまでは立ち止まっては━━」
聖剣を必ず折ると息巻く祐斗の鳩尾を殴り気絶させる。暴走状態に近いコイツを止めるには暴力以外には無かった
「リアス、祐斗は部室で寝かせておく。それから2、3日開ける。イッセーと美優、そういうことだから父さんと母さんにも伝えておいてくれ」
「わかったわ。でも内容ぐらいは教えてもらえないかしら?」
「知り合いのとこで調べ物だ」
イッセーと美優からも了解を取り、リアスとアーシアに家の事を頼むと祐斗を部室に連れソファーに横たわらせた
ちょっとした手助け程度に書いたメモを祐斗のポケットに忍ばせ部室を出る
校門を通り過ぎた辺りでスマホを取り出し見知った番号に連絡をかけた
『おう帝か。どうした?珍しいじゃねぇか』
「ようアザゼル今からそっち向かう。どうせ駒王町に来てるんだろ」
『相変わらず面白味の無ェ探知能力だな……何か用事でも出来たのか?』
「コカビエルのことだよ。それとエクスカリバーについて」
『なるほどね……よし、資料は用意しといてやるからゆっくり来な』
「あっ悪ィもう着いたわ」
「うわお前どっから湧いてきやがった!?あとどうやって来やがった!?」
人様を虫呼ばわりとはいい根性してるなこの未婚総督め……
「お前の潜伏先の座標を割り出して刻印済みの短剣を付近に精製して位置を置換しただけだっつーの」
「いい迷惑だっつーの……たく……資料探し手伝えよ?」
「ああ。急に来たのはこっちだしその程度はするさ」
目の前の逆プリンみたいな髪色をしたいかにも昔悪さしてましたって雰囲気のオジサンはアザゼル。堕天使を束ねる長だ
一応俺の命の恩人ではあるが割と雑に扱っている自覚はある。彼の部下からも許可はもらっているので問題無しだ
堕天使総督は雑に扱ってもいい。だってアザゼルだから
「そう言や前にお前んとこに放り込んだ奴ら、どうしてんの?」
「お前が送りつけてきたホムンクルス共なら元気にやってるぜ。いつかお前に恩を返すって息巻いてやがる。それとお前が送還してきた奴らは更生プログラムを受けてもらってるとこだ。あと2日ぐらいで終わるだろうさ」
彼女らが元気なら何よりだ。造られた命であるなら尚更幸せを享受するべき。古事記にもそう書いてるしばっちゃも言ってたから間違いない
あの堕天使共の扱いに関しちゃは残当だ。むしろもう少し厳しめに行ってもいいとすら思うがそこはアザゼルの裁量に任せる
「んで、コカビエルのことだ。あの人今まで割と大人しくしてただろ何があったってんだ」
「さあな。ただアイツのことだ、戦争の再開を望んでるんだろ」
まだやるつもりかよと非難めいた視線をアザゼルに送ると鼻で笑って否定された
「少なくとも俺含め大多数の奴らは戦争反対派さ。次やれば俺達聖書陣営は良くて半壊、悪けりゃ全滅。どのみち機能する状態じゃ無くなる」
「それでもあの人は聞く耳持っちゃいなかったって訳だ。戦争に未練でもあったのか?」
「かもな。アイツはウチじゃ
「だと思ったわ……なあアザゼル、もし戦時中に折れたエクスカリバーが本物じゃないって言ったら信じるか……?」
調べ事の主要をそれとなく聞くとアザゼルの作業する手が止まった
「……お前もそう思うか?」
「エクスカリバーは元来星が鍛えた神造兵装、人の希望や願いの結晶のようなもの。本来なら折れてはならないものだ」
「その通り。伝承によりゃエクスカリバーは湖の乙女に返還された。だがエクスカリバーはなぜか持ち出され俺達の大戦の最中に折れた……この件は俺も個人的に調べたかったところだったんだが……」
どさりと俺の上背よりもやや上ぐらいまでににファイリングされた紙束がローテーブルに積まれた
この紙束をばさーっと散らしたい欲望が少し顔を出しているが割と真面目な話の途中なので一旦退室してもらう
「これ全てアザゼル1人でやったのか?」
「そんなところだ。とは言え実地調査までには至っていない。堕天使総督っていう肩書きが邪魔でよ」
「なるほど、それなら丁度いい。交換条件だ。この紙束の情報をもらう代わりにエクスカリバーの真偽を確かめてきてやる。裏が取れ次第真っ先にお前に連絡を入れてやるし転移先の資料をまとめてくれてやる……どうだ?」
研究者気質のアザゼルなら俺が提示するこの条件に必ず良い反応をしてくれるはず……なのにその顔は疑いの表情だった
「随分気前がいいな……いったい何のつもりかだけでも教えてもらおうか」
「今回の件にバルパー・ガリレイが絡んでいる。ヤツの尻尾が掴めそうだから手を貸せ」
「ッ!?本当か!?いや、ガセの情報の可能性もあるんだぞ……何せ今の今までロクに影すら踏めなかったってのに━━」
「根拠はある。先日の円卓計画の首謀者、コルベール・ブリテニクが拠点としていた場所に聖剣計画と神造計画、それに関する資料があった。当然、両計画の首謀者の名前を添えてな」
「ほとんどクロじゃねぇか……いや、もし尻尾が掴めたとしても古い情報の可能性だってある……確証はあるのか……?」
「なら拷問にかけるまで。バルパーの口からヤツの名が一言でも漏れたその瞬間にだ。バルパー、そしてアイツを探すの、手伝ってくれるよな?」
「……恐ろしいこと考えやがるぜ……まぁ、チビの頃から知っているヤツが珍しく頼み事をしてくれてる訳だしな……良いぜ、お前さんの人探しを本格的に手伝ってやろうじゃねぇか」
「まだ未成年だからお茶で勘弁しろよ」
よろしくの挨拶代わりに互いにグラスの底蓋を軽くぶつけ合うと小気味いい音が響いた
しかし何故か俺にはそれが一波乱巻き起こる合図に思えてならなかった
To be continued.