ハイスクールD×D Re:Joker of despair   作:カルパン

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2年振りの投稿です。もうスランプとかどうとかそんなレベルじゃないですね。ともかく、最新話です。どうぞ


戦闘校舎のフェニックス
オヤツにハマグリを所望します(真顔


躱す、弾く 往なす、防ぐ

 

空気を叩きつける拳の音、風を切り裂く剣の音、勢いのあまりに地面にぶつかる音。それぞれの音の発生源たる者達が一心不乱に攻撃を加えているのは、たった1人に対してだった

 

「スピードが一定過ぎる!もう少し緩急を付けろ!それから時折フェイントを混ぜるのも忘れるな!相手の虚を突くことが最大の一撃に繋がる!」

 

「うっ!」

 

彼は拳を受け流し、自身の背面に押し出し、次に剣士に目を向けた

 

「手数を増やせ!それかもっと一撃に力を込めろ!防御を打ち破るのは手数と力というのは定石だぞ!」

 

「うわぁっ!?」

 

続いて迫る木刀の全てを側面を叩くことで全てを弾き、足払いをかけて一時的に行動を取れないようにした

 

「うおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」

 

「殴ろうとするたびに一々掛け声を上げんでいい!それとそんなテレフォンパンチじゃ簡単に躱されるぞ!パンチはもっとコンパクトかつ中心部に向けて打て!」

 

あっさりと躱し、背中を押し出すように蹴りを入れて間合いを取った

 

「子猫ちゃん、連携を取ろう。僕達に気が向いている間にイッセー君に背後をとってもらうんだ」

 

「そういうことなら任せたぜ!2人とも」

 

「はい。帝先輩に一泡吹かせてやりましょう」

 

かなり筒抜けだったのか、帝は苦笑を零した。しょうがないから乗ってやろうとお兄さん風を吹かせるように、聞かなかったことにして、表情を元に戻した帝は、来いよと言わんばかりに挑発として人差し指で3人を煽った

 

「「行きます!!」」

 

帝に突貫した裕斗と子猫は、今までにグレモリー眷属として共に過ごして来たことを示すように、互いの隙を埋め合わせるような連携で攻撃を繰り出した

 

対する帝は、指で剣の腹を押し出して攻撃を逸らす、飛んできた拳をさもハエを叩き落とすかのようにして攻撃を逸らしていた

 

「相変わらずとんでもない技量ね……イッセーはまだ駆け出しの悪魔だから仕方ないけど、それでもそれぞれに足りていないものを指摘することで各々に必要なものを理解させ、自覚させようとする。例えば子猫は技量と駆け引き、裕斗はスピード、若しくはパワー、イッセーには戦いのハウツーを。どれも的確すぎて、納得せざるを得ないわ。とてもチープな言葉になってしまうけど、流石帝、と言った所ね」

 

しかし直後、突如として姿を再び現した一誠によって帝は羽交締めにされる

 

「おいイッセー、いくらお兄ちゃんが好きだからって白昼堂々といきなり抱きつくのはその……恥ずかしいだろ……せめて人のいないとこで……」

 

「だぁぁぁ!!うるせぇよ!勘違いされるようなことを言うんじゃねぇ!今だ!木場!子猫ちゃん!このクソ兄貴をブン殴ってくれ!!」

 

恥じらう乙女のように頬を染める帝にキレる一誠。カオスな状況に一同は困惑する

 

ハッと我に返った2人は今度こそと帝に突貫した

 

「なーんてな♪おらよっと」

 

「えっうぉわっ!?」

 

「うっ!?」

 

「にゃっ!?」

 

裕斗と子猫がすんでのところまで接近したタイミングで半回転。驚いた一誠の隙を突いて拘束を解いた帝は軽い回し蹴りを一誠に当てて吹き飛ばし、急ブレーキをかけることが出来なかった裕斗と子猫はそれに巻き込まれて吹き飛ぶ

 

なんとか受け身を取った3人は体勢を立て直すものの、帝を見失ってしまう。瞬間、僅かに砂煙を上げて、裕斗、子猫、一誠の3人の悪魔は、たった1人、帝という人間によって背後から奇襲され同時に組み伏せられていた

 

「ったく、こんな調子じゃあの野蛮チキンには届かねぇぞ?」

 

「マジでその顔ウザいからやめてくれ兄貴……もう一回そのやれやれって顔したらぶっ飛ばすからな……!」

 

「手も足も……出なかった……」

 

「落ち込む必要はないよ子猫ちゃん……帝先輩がおかしいだけだから……」

 

「おかしいって……いや確かにある程度の技術はあるという自負はあるけどよ」

 

微妙な表情を浮かべる帝は、同時に3人の拘束を解いた

 

「ったく、鍛え甲斐のあるやつばっかで俺は嬉しいよ。ほら、とっとと向こう行って休憩しとけ。次、リアス、朱乃それから美優の3人だ。準備しろ」

 

「ねぇ帝君?もしあなたに一本取ることができたら、何かご褒美をくださいませんか?」

 

「ご褒美か……まぁ、範囲はかなり限られるかもだが、そうだな……俺ができる範囲で何か言うことを一つ聞いてやる。どうだ?ま、できたらの話だが」

 

「あらあらうふふ。これは俄然、やる気が出てきますわね♪」

 

「あら、それは私にも有効かしら?」

 

「えっ……お前もかよ……しょうがない、リアスも追加ってことにしといてやるよ」

 

「あ、あのっ帝さん!私もできたら……その……」

 

「え"っ美優お前まで!?困ったな……まぁいい、どうせなら全員分聞いてやる!」

 

帝の言葉を受け、リアスと朱乃の2人はヤる気(誤字に非ず)になった目をするが、ただし、という言葉に遮られた

 

「俺が勝ったら特訓の密度1.5倍くらいにするから覚悟しろよ♪」

 

ふふんと微笑みを漏らす帝にリアスと朱乃と美優は冷や汗を垂らす

 

(((でも1.5倍ならまだ良心的……?)))

 

「あっでも美優はキツいって思ったらすぐ言えよ?元のプログラムに戻してやるから」

 

「「えっ!?私達は!?」」

 


 

事の始まりは昨日のこと。放課後となり、これから部活が始まるという時間帯のオカルト研究部でだった

 

「いやぁ、やっぱりリアスの女王が淹れる紅茶は一段と美味い」

 

「痛み入ります」

 

無機質な笑みを浮かべた朱乃にそう言いながら、男は慣れ慣れしくリアスの太腿を撫でる

 

彼はライザー・フェニックス。名前からもわかる通り、不死の特性を持つ純血の悪魔だ。ホストかぶれな見た目をしており、一応、親同士の話し合いと勝手な決定による政略結婚という形ではあるがリアスの婚約者だ

 

しかし、当のリアスはライザーを心底毛嫌いしているために、部室内の空気は穏やかと言っていいものではなかった

 

「いい加減にしなさいライザー!何度も言うけれど、私は貴方とは結婚なんてしないわ!」

 

「ははは、日本の言葉に、イヤよイヤよも好きのうち、と言うものがあるらしいがなるほど、こう言うことか。それにリアス、もし本当にそうだったとしても、今の純血悪魔がどれほど少ないかは理解しているだろう?先の大戦で、悪魔、天使、堕天使は数が減りすぎた。特に俺達は先代魔王様方までも失った。現在は少しでも悪魔の数を増やすために魔王ベルゼブブ様が編み出した悪魔の駒というシステムがあるが、それだけでは純血悪魔は増える事はない。そうだろう?」

 

「ええ、それはもちろん理解しているわ。結婚は考えているし子供だって産む気よ。ただその相手は貴方じゃないってだけ。わかったらさっさと帰ってちょうだい」

 

堪忍袋の緒が切れかけたのか、ライザーはソファから立ち上がり、リアスを睨めつけながら言い放つ

 

「いい加減にしろよリアス……俺もこれ以上家の看板に泥を塗るわけにはいかないんだ……いざとなればここにいる全員を殺しッ!?」

 

瞬間的にだが、その場に重力すら感じさせる程の殺気が満ちた

 

ライザーは咄嗟に殺気を感じた方向へと目を向ける

 

彼の視線が捉えたのは、他の部員達とは違い、何食わぬ様子で壁にもたれながらライザーを見定めているかのような目をしている帝の姿だった

 

「今の殺気……いや、考えすぎか……それにしてもリアス、なぜ人間ごときがこの場にいるんだ?」

 

「彼は私が巻き込んでしまっただけ……貴方には一切関係ないわ」

 

「ふーん……おい人間、この俺を脅かした褒美に名を名乗る機会を与えてやろう」

 

「……お前食い物に一々名乗ってから食ってんのか?」

 

帝の態度は至ってシンプルだった。目には目を、歯には歯を、侮蔑には侮蔑を

 

「そうか、死ね」

 

その一言はライザーの心情を表すに最も適していた

 

たかだか人間、所詮はただの雑魚。少し炎を飛ばしただけで簡単に焼け死ぬだろうと魔力で炎を生成し、帝に向けて軽く飛ばしたが、それは帝とライザーの間に生まれた壁によって塞がれた

 

「なぁグレイフィアさん、これって正当防衛って事で手ェ出していいのか?いいよな?」

 

帝は眼前に生成した剣を崩し、グレイフィアと呼ばれる女性に話を振る。拳をポキポキと鳴らしている辺り、やる気は満々のようだ

 

それもそのはず、リアスとライザーの婚約の話をオカルト研究部に持ち込んだのはグレイフィアだ。話を振られても何らおかしくはない

 

「なるべくお納めしていただけるとありがたく存じます、皇 帝様」

 

グレイフィアーー彼女はグレモリー家に仕えるメイドの1人だ。冥界ではちょっとした有名人であり、今はリアスの婚約についての説明役としてこの場に来ているーーは帝に深々と頭を下げる。先程の一瞬の殺気だけで、帝の実力を理解してしまったようだ

 

「グ、グレイフィア様!?何もそこの人間にそこまで必要など!」

 

「ライザー様、確かに皇 帝様の言動は……あまり褒められるものではないかもしれません。ですが、だからと言って真っ先に暴力に訴えるのは貴族の名折れです。そのような野蛮な行為、どうか今後はお控えくださいますように」

 

「……チッ!」

 

「まぁ水でも被って頭冷やしなよ。焼け石に水、いや、焼き鳥に水ってか?やかましいわ」

 

「皇 帝様……これ以上は……」

 

「はーいすみませんでしたー」

 

反省zeroな帝は話を切り上げて再び壁に背を預けた

 

「さて、こうなる事はすでに予想されておりましたので……」

 

「なぁ兄貴」

 

「なんだマイブラザー」

 

「あーその……なんだ、ありがとよ、さっきアイツに言ってたやつ。なんかスカッとしたわ」

 

「気にすんな。正直俺も腹に据えかねてたとこだったしよ……それになんか、あいつが他の男に触れられているのがなんかアレっていうか……ってお前なんで泣いてんだよ。情緒不安定かよってうわぁ……」

 

号泣するイッセーはが目の前を指差し、その先に視線を合わせると、ライザーが丁度、()()()()()()()()()()ライザー・フェニックス眷属を呼び出していた。終いには婚約者のリアスが目の前にいるにも関わらず、眷属の女王と舌を絡ませ合うようなキスをする始末

 

これには思わず帝もライザーを"種鷄"と評価せざるを得なかった

 

 

「フッ……どうだ人間。これが俺の可愛い眷属達……ってなぜお前の隣の下級悪魔君はそんなに号泣しているんだ……?」

 

「ハァ……家の弟は将来ハーレム王とやらになりたいらしいんだが、どうもお前のことを羨ましがってるみたいだぞ」

 

「そうだ!女の子に囲まれていい思いしやがって!羨ましいぞ!この焼き鳥野郎!」

 

この温度差である。さっきまでいい感じな雰囲気だったのに台無しである。やはりこの兄にして弟有りといったところだろうか。雰囲気をぶち壊す役はこの2人が適任らしい

 

「というかお前……婚約者の前だってのに何しでかしてんだよホント……そういうのだから拒否られまくってんじゃんか」

 

一誠の頬を抓りながら呆れたようなジト目で視線を寄越す帝に、ライザーはフッと鼻で笑う

 

「何、英雄色を好むという言葉があるだろう?いい言葉だと思うぞ?俺は」

 

「いや、お前が英雄とか侮辱にも程があるだろ」

 

「は?」

 

「図に乗るな!人間!」

 

帝の一言に耐え兼ねたのであろうか、棍を獲物とする少女と大剣を獲物とする女性が帝に目掛けて飛び込んだ

 

常人ならば反応すら出来ず叩き潰されていただろうが、今回は相手が悪かった

 

「くっ!?」

 

「あ、有り得ない!ただの人間が私の一撃を見切り、ましてや逸らすなど!」

 

「自身と相手の力量を測れないようなら、君達は三流……いや、四流止まりで終わりだな。図に乗ってるのはどっちなんだか……さて、今からちょっとした選択肢を与えてやろう。このまま暴れて無様に死ぬか、散々舐め腐った相手の慈悲でいかされるか……好きな方を選びな、ワンちゃん達」

 

銃をホルスターから取り出し、銃本体を用いて棍、大剣を逸らし、2人の額に銃口を押し当て、嘲るような笑みを浮かべた帝には、えも言われぬ凄みがあった

 

流石に敵わないとようやく理解した2人は落ち込み気味にライザーの眷属達の下へと戻っていった

 

「おいライザー、飼い犬の首輪ぐらいちゃんと握れねぇのか?あんまりに躾がなってなさすぎて危うく噛まれるとこだったぞ」

 

「よくもぬけぬけと……!!」

 

やれやれとわざとらしく肩をすくめる帝の態度に、ライザーは歯軋りせざるを得なかった

 

当然であろう。己の自慢の眷属がただの人間と侮っていた相手に歯が立たず、舐められるどころか慈悲を与え、コケにすらしたのだ

 

青筋を立て兼ねないほどに怒りを露にするライザーだが、名案を思い付いたかのように歪な笑みを浮かべた

 

「仕方がない……リアス、君とのレーティングゲーム、受けて立ってやろうじゃないか。ただし……ククク……そこの人間も参加させることが条件だがな?フフッ……フハッ……ハッハッハッハッハッ!」

 

「なっ!?言ったでしょ!彼は無関係!私の問題に巻き込むべきではないの!私達との間に、彼は関係なんてーー」

 

ライザーからの理不尽とも取れる内容に抗議を申し立てるリアスだが、それを止めたのは帝だった

 

「何言ってんだお前?関係ありまくりだろが。もうここまで首突っ込んじまったんだしよ、今更無関係貫けねぇだろ。色々と手伝ってやるからバシッと言ってやりな、王サマ」

 

軽く背中を押されたリアスは、押される前の位置に振り返る。そこに代わりに立っていたのは不敵な笑みを浮かべる帝だ

 

「そういうわけにもいかないわよ!それにこれは私だけの問題でーー」

 

「んな訳ねぇだろアホか。俺とお前は協力関係だ。弟と妹が世話んなった分力貸してやるっつってんだよ。今大事なのは、お前がどうしたいかって話だろが、履き違えんな」

 

「私は……でも、貴方が……!」

 

激しい葛藤の中で、リアスは思い悩む。この際ハッキリとさせておくと、リアスは帝を異性としてかなり意識している。それこそ、無意識に帝を目で追ったり、気が緩むと帝のことを考えたりしてしまうのだ。経緯に関する詳細は追々。そんな相手にあまり迷惑をかけて嫌われたくない、というのはリアスの純粋な乙女心や、人間を巻き込めないという貴族悪魔としての責任感故に、帝への協力を渋っているのだ

 

しかし対する帝はかなりのお人好しだ。何も言っていないのに誰かを手助けしたり、細かな気配りや配慮ができてしまうため、知らず知らずのうちに好感度を稼ぎまくっていたらしい……これだからタラシは……

 

「……リアス、思い悩むぐらいならせめて後悔しないと思う道を選べ。それがきっと、今できる最善だろ?心配なら別にしなくていい。そうやって悩んでるときに、真っ先に相談してくれるのが1番嬉しいんだ……これでもダメか?」

 

困ったような帝の笑みにリアスは一瞬にして顔を真っ赤にした

 

「も、もう!あなたって人は……もう……!でも、ええ……そうね!いいわ、覚悟しなさいライザー!貴方は私達と帝で消し飛ばしてあげる!」

 

「ほう、これは楽しい事になってきたな……!おい人間!貴様はこのライザー・フェニックスが直々に殺してやる。精々最後まで醜く足掻き続けるといい!」

 

転移の魔法陣を生成し終えたライザーとその眷属はその上に立ち、転移の準備をしようとする

 

ピシャッという音と共にライザーの後頭部が濡れた

 

「殺すとか醜く足掻けとか……あまり強そうな言葉を使わない方がいい……弱くみえるぞ?」

 

ニヤニヤとライザーの後頭部に水鉄砲の銃口を向ける帝は、あの有名な漫画のセリフを態々抜粋し、更にライザーを煽った

 

「楽に死ねると思うなよ……皇 帝……!!!!」

 

炎が舞い上がると共にライザー達の姿は消えた。しかし彼はまだ、己が蹂躙されるかもしれないといった可能性にすら気付かないのであった

 

「おい兄貴……最後のアレ……」

 

「いや、タイミングが良すぎてさ、言わずにはいれなかったんだよな」

 

「ごく自然と聞けた今のセリフに感動を覚えていいのか、頭を抱えればいいのか……全くね……」

 


 

というような経緯があり、現在はグレモリーが所有する山々、そして別荘地にて、特訓をしようということになったわけである。余談だが、帝の持っていた水鉄砲は、いつでも相手をおちょくれるようにと常に懐に忍ばせているものらしい

 

その後だが、当初グレイフィアによって10日間に設定されていた修行期間を、帝がなんやかんやしたことによって17日という長期間へと引き伸ばしてもらっていた

 

その甲斐あってか、初日の今日は日が落ち始めるまでの間、目一杯帝が全員と組み手をし、全員の実力と限界を知り、そしてプログラムを作成することができた

 

「さて、今日はみんなご苦労さん。デザートでも食べながら今日のミーティングを始めよう」

 

くたびれたオカ研メンバーに、今日一日を乗り切ったご褒美……というわけでもないが、疲れて料理さえままならないであろう彼女達に代わって帝とアーシアが料理をすることになった

 

「さてと、んじゃまずは個人評価から行こうかな」

 

帝の一言に、一瞬で全員に緊張が走った

 

「まずは裕斗から行くが……いいな?」

 

「……はい!よろしくお願いします!」

 

「ん。じゃ言わせてもらう。基礎はしっかりと固めれているが、応用、発展があまり利かず、地力が物足りない……といったところだな。技量に関してはまぁ及第点だ。この修行合宿中に伸ばせればいいけどってな感じだ」

 

帝からの容赦ないダメ出しに木場の気分はズンッと下がった

 

「よ、予想はしてましたけど、やっぱり辛口ですね……」

 

「当然。そんなんじゃお前らのためもならない。甘んじて受け入れろ。裕斗、お前魔力を使えたりだとか体術を習得していたりだとかはないのか?」

 

「少し苦手ですが、魔力は少しなら使えますし、緊急時でも対応出来るよう、最低限の体術は身につけています」

 

「ん。なら、次から剣を扱う時は剣に魔力を纏わせてみろ。切れ味は上がるし剣の能力の性能も上がる。魔力が全くないという訳ではないならそのぐらいはできるはずだ」

 

例えばこんな風に、という言葉と共に、帝はホルスターから銃を抜き、一瞬で銃に魔力を纏わせる。銃からは僅かに炎が燃えているような音と、電気が走っているかのような音が漏れ、裕斗の口からは感嘆の声が漏れる

 

「魔力の精密操作を覚えることができれば、剣なんかだと刃の部分の魔力だけを回転させて切れ味をさらに上げたり、その武具から魔力放出を行うことでさらに性能を底上げできたりする。さらにこの2つの技術を組み合わせると剣からビームが出せるようになるぞ」

 

瞬間、空気が一瞬凍り付いた。辛うじて裕斗の喉から這い出てきた声は、その場の全員の心情を代弁していた

 

「……えっ……ビー……ム……?」

 

「うん、ビーム。実際に彼の有名なアーサー王やジークフリートとかはこの技術とビームを用いて強敵を打ち倒してきたんだぞ」

 

「……では、その技法を知っている帝先輩もビームを撃てるのですか?もしそうなら私、先輩をもう人間とは思いたくないです」

 

「あ、飽く迄知識として知ってるだけさ。そんなそう簡単にぽこじゃか撃ててたまるかよ」

 

上擦ったような声で白をきる帝に、子猫はあ、この先輩絶対ビーム撃てる……と確信した

 

「こほん……話は逸れたが、次は体術についてだが……まぁ剣術と組み合わせてもズレがない程度には完成させるぞ。後は基礎的な部分……特に筋力アップを図っていくって所かな。とりあえず裕斗の評価はこれで終わりだ」

 

「はい!明日からよろしくお願いします!」

 

「おう。倍ぐらいには強くしてやるから覚悟しとけよ?そんで、次は子猫な」

 

「よろしくお願いします」

 

ビクッと体を跳ねさせた子猫は、帝からの評価を待った

 

「お前はとりあえずひたすらフィジカルトレーニング。その後に型をある程度決めてそれに伴った技術の向上。以上」

 

「……帝先輩、もしかしてテキトーに決めてませんか?」

 

「馬鹿言うんじゃねぇよ。いいか、格闘ってのはフィジカルと戦闘スタイルによって大きく違ってくる。型やスタイルをある程度決めておけば、その分何を集中的に鍛えていけばいいのかっていうのが1番わかりやすい。例えば俺なら、中国武術の動きや型を参考に剣術や体術に活かしている部分が多いんだ。例えば震脚や脱力、秘宗拳や截拳道なんかの動きを取り入れてる。あとは躰道での距離の詰め方や連撃なんかもあるな。これを自己流に変化させてるってとこだ。そうだな……子猫なら空手とムエタイを取り入れてみたらどうだ?」

 

「蹴り技を主体にしろ、ということですか……?」

 

蹴り技は通常の戦闘であれば、死に技のような物と言われている。仮に蹴り技を受け止められた場合、軸足のみが残り、自由な移動を行えず攻撃をされるのに恰好の的となってしまう

 

そういった懸念があり、今まで拳打主体のスタイルにしていたところを、変更しろとでも言うようなことを言われたのだ。子猫が戸惑うのも無理はないだろう

 

「そうだ。こう言っちゃお前に失礼だが、お前は体が小さい。だから通常の戦車のようにパワーを上手く引き出すのが難しい……そこで、筋力が腕の3倍あると言われる足の出番だ。これによってパワー不足はある程度補えるし、悪魔の羽や体幹を上手く使うことで蹴りのデメリットと言えるとこはある程度カバーできるしな。子猫の場合だと腰を最大限落として超低位置からの一撃だったり懐に潜ったり出来れば、相手の急所にズドンッてな感じがいいと思う」

 

「……少し考えてみます」

 

「あぁ。戦闘スタイルについての指導は後半からするつもりだから、それまでは地力を上げながらゆっくり考えてくれ」

 

そしてまた数十分……帝の辛口評価が続き、終わった時には全員が頭を抱え、これからの訓練の過酷さに思いを馳せざるをえなかった

 

「総評、酷い!」

 


 

丑の時、中庭にて太刀を構える帝。気配、そして息は凪いだ水面の如く静かだ

 

「すぅ………………ッ!」

 

息を大きく吸い、意を決すると、太刀を振るった。返す刀で斬り、袈裟斬り、逆袈裟斬りを放つ。さらにもう一度逆袈裟を放ち、後方へと飛び退く

 

一息着くと同時に、周囲に遅れて風が吹き荒ぶ

 

「……やっぱ無理……想像の中とはいえ、やっぱ師匠に勝てるとか無理ゲーっすわ!あーやだやだ」

 

帝が想像で立ち会ったのは、かつての彼の師だ。帝が振るった刃の数は先ほどの一連の動作の中で30。その30合の切り結びの果てに、首を切り落とされた。彼の目にはそう映ったのだ

 

「まだまだだな……っていうか一回の振りで10の斬撃とかマジでやめろよ……まだ7が限界なんだぞこっちは……」

 

刀を地面に深く突き刺し、ぶわっと噴き出た汗を拭いながら独りごちる

 

ただ、一つ、指摘するべき点があるとすれば、数が少ないとは言え師と同じことをする帝も大概におかしい、とだけ

 

「いやさっきから向こうの山喧しいな!魔力の揺れとか激しいしどうなってんだよ!」

 

数十分後、二つ向こうの山にカチコミかけた帝は、赤銅と煤けた金の激闘に割り込むこととなった

 


 

修行日2日目、グレモリー眷属一同は食堂で皆顔を合わせる

 

「おはよう、みんな。昨日はよく眠れたかしら?」

 

「はい!ベッドがふかふかでとても寝心地が良かったです♪」

 

「あらあら、アーシアちゃんはすっかり順応していますわね」

 

「すごいねアーシアちゃん……私、あんまり眠れなかったよ……」

 

「同じく……です。疲れがあったとはいえ、緊張でなかなか眠れませんでした」

 

「すげぇなアーシア、俺あんまりにも疲れてそんなの考える暇もなく寝ちまったよ」

 

皆が起きがけの交流を交わし、会話に花を咲かせる。こういった何気ないひと時も結束を固めるため、そして思い出として残すことができるような一瞬となるため、それぞれが楽しんでいた

 

「あれ、そういえば帝先輩はどこにいるんでしょうか……まだ寝ているんでしょうか……?」

 

「帝なら厨房じゃないかしら?明日も料理頑張らないとって言っていたし」

 

「おぉ……やっと起きたかお前ら……待ってた……zzz……」

 

声に反応して出てきた帝はとんでもない眠気を抱えて一同に挨拶をした……かと思えば立ちながら寝だした彼に一同は慌てて駆け寄った

 

「大丈夫ですか先輩!?」

 

「大丈夫大丈夫……7割5分9厘寝てるだけだから……」

 

「大丈夫じゃない!?しかも細かいし!実は余裕あんだろ!」

 

小さなボケを入れた帝であるが実は割とマジである。だがそれを知らずか一誠から飛んできたツッコミに帝から「ははっ」と世の中に絶望し切ってるような乾いた笑い声と共に

 

「マジ無理正直もう寝たいめっちゃ疲れた」

 

死んだ魚のような目で捲し立てるように早口で飛び出したその言葉には全員が困惑するしかなかった

 

「……早く寝ればよかったじゃないですか……」

 

「朝飯の準備もあるしお前らに紹介しないといけない人もいるのに寝てられっかよ」

 

疑問符を浮かべる一同に対し、帝はただ付いて来いというだけだった

 

裏庭に着くとそこには全身真っ黒、巌のような筋肉の鎧を纏った巨躯の男が帝と親しげに話していた

 

「えっと、帝……?その方はいったいどちら様かしら?」

 

リアスはグレモリー眷属の総意を帝に投げかけると、当人はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりにふっと笑った

 

「こいつは俺が使役する英霊、サーヴァントだ。ギリシャにおいて随一の知名度を誇る大英雄……と言えばわかりやすいだろ?」

 

「まさかっ!!半神半人にして、十二の偉業を成し遂げた伝説の大英雄ヘラクレス!?」

 

「それだけじゃないぜ」

 

まさかのビッグネームに驚きを隠せないメンバーに、帝はさらにと追撃をかけると同時に4名、追加として人が現れた

 

「稀代の英雄作成者である森の賢者ケイローン、水滸伝に伝わる無頼漢にしてある拳法の創設者と謳われる燕青、圧倒的技量を持つ拳法家の李書文先生、幕末最強の剣士の沖田総司、以上5名と俺が徹底的に鍛えてやる!言っておくが、地獄ですら生温い訓練になることは覚悟しておけよ!!」

 

不敵な笑みを浮かべる帝に、グレモリー眷属一同はこれから起きる訓練の壮絶さを想像し、顔を青褪めさせた

 

ついでに帝は意識が途切れてぶっ倒れた

 

 

 

 

 

To be continued……

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