ハイスクールD×D Re:Joker of despair   作:カルパン

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珍しく短期間(大体三ヶ月くらい)で仕上がったので初投稿です


スタート地点はどこにでもあるもの

さて、という呟きと共に近接組は声の主の元へと視線を向ける

 

「では改めて自己紹介を。今回、マスターより皆さんへの指南役を賜りました、ケイローンです。どうぞ気軽にケイローン先生とお呼びください」

 

「同じく、ヘラクレスと申します。皆さまの呼びやすいようにお呼びください。我が師、ケイローンと共に皆さまを鍛え上げさせていただきます故、是非とも頑張って頂きたく思う所存でございます。共に鍛錬に励んでいただけるよう努めてまいりますので、よろしくお願いします」

 

「喜べよお前ら。ギリシャ神話でも特に有名な2人が特訓を見てくれんだからな」

 

最後までチョコたっぷりなスティック状のチョコ菓子を齧りながら説明する緊張感のない帝に、一誠、子猫は呆れて溜息、ケイローンとヘラクレス、裕斗も苦笑いを浮かべていた。そも、彼に緊張感やシリアスを求めたところで、平然とした顔でぶち壊してくるのだ。ロマンスならともかく、それを期待するのは無理な話だ。もっとも、本当に大事な場面では流石に空気を読むようだが

 

「帝先輩、特訓……とは言いますが具体的には何をするんですか?」

 

「ま、確かに気になるところだろうな。そんじゃあ早速本題に入るか」

 

帝がぶつぶつと何かを呟きながら、あーでもないこーでもないと菓子の箱と一緒に持っていたファイルから、3枚1組の用紙を3つ取り出した。表紙にはグレモリー眷属近接組強化案〜前編〜とまるで妙齢の女子が書いたかのような雰囲気を感じる丸字体で表されており、2頭身程にまでデフォルメされた一誠、裕斗、子猫といくつかの動物が可愛らしく描かれていた

 

「あのさ兄貴、これ作ったのってもしかして……」

 

「あーうん、俺だよ。深夜テンションで描いたからなんでこんなチョイスにしたのかは正直わからんけど。文句はそん時の俺に言ってくれよ?俺は寝不足でクソ眠いんで戻るけど、なんかあったらそこの2人に言ってくれ」

 

スタスタと足早に合宿所の中へと戻る帝に、一誠はツッコミを入れれなかった、或いは用紙に関する文句を言いそびれたためか、不満気な表情を浮かべた

 

「まぁまぁ落ち着いて、イッセー君。確かに帝先輩はちょっとおふざけが過ぎるところもあるけど、僕達のことを考えて作ってきてくれているんだからそんなに怒ってちゃ悪いよ」

 

「……まぁ、そうだけどよ……」

 

一誠は自分達のことをしっかりと考えて作ってくれていることはちゃんと理解しているためかそれ以上言及することはなく、冊子のページをめくった

 

「皆さん、手元の冊子を確認されましたね?内容として書かれているメニューはそれぞれの限界をギリギリ少し超えるくらいの量として記載されています」

 

「本日はそれらのメニューをこなすまで帰っていけない、とのことです。私達もいくらかアドバイスをさせていただくので、頑張りましょう。それと、その冊子を作られたのはマスターですので、気に障るようなことがあってもどうかご機嫌を損ねないでいただけると嬉しいです」

 

粗方目を通した一同は最後のページを捲る。その裏には1人1人に向けての激励の文が綴られていて、嬉しそうな表情を浮かべた……たった1名を除いて

 

舐めんなぁ!!

 

ワナワナと怒りを表す一誠に一同はギョッとするような表情となる

 

ケイローンは勢いよく叩きつけられて砂に塗れてしまった冊子の裏面を見ると、なんとも言えない表情で苦笑を浮かべた

 

『最低3、4回くらいは死ぬつもりで頑張れよ♡』

 

いったいどこが限界をギリギリ少し超えるぐらいなのだろうか……

 


 

「ん、みんな揃ったな。そんじゃ始めるか」

 

宿舎内の講義室にはリアス、朱乃、美優、アーシアの計4人のウィザード組と帝が集まっていた

 

緊張を浮かべるような面持ちの4人は一斉に帝へと視線を向けた

 

「さて、これからみんなには魔力の操作などの訓練を受けてもらうが、悪魔になったばかりのアーシアもいる。おさらいがてらに簡単に魔力についての説明をするぞ」

 

「うぅ……すみませぇん……」

 

落ち込むアーシアにリアスは大丈夫よ、とだけ告げ、朱乃と美優もそれに頷いた

 

「うん。成り立てだからって心配することはないぞ。何かあったら、いつでもみんなに相談するといいさ。でだ、まぁ簡単な講義を始めようか」

 

帝が備え付けのホワイトボードの前に立つと、それぞれが長机の席についた

 

「さて、確認だけどもここにいる全員は魔力による攻撃を中心としたウィザードタイプ。或いは後方支援タイプということで間違い無いな?」

 

帝の問いにその場の全員が頷いた

 

「ん。そしたら始めるけど、悪魔にとっての必須技能の魔力。悪魔に成り立てのアーシアにも分かりやすく噛み砕いて説明するぞ。魔力とは、悪魔の代表的な異能の一つだ。下級クラス、中断クラスといった風に当人の実力が上がるにつれて魔力量は増えていく。一般的には魂の強度や肉体の完成度……まぁ身体能力の高さかな。それによって補完されている」

 

チラリと全体を見渡し、怪訝そうな表情を浮かべる者が1人もいないことを確認して続ける

 

「次に魔力を体外へと放出させて攻撃や防御などへと転じさせる用法。こいつは各個人の想像力から発揮され、より具体性があるほど、捻出される魔力の密度は高くなる。感情や心などから発生する意志エネルギーとも関連性が見られていて、主に感情の起伏でそれが見られるんだ。感情的になっている時は、全身から微弱ながらにも魔力放出が発生しているから、捻出される魔力は平時よりも少なめの傾向がある。反対に、冷静な時は捻出される魔力が多いため、魔力に付与される効果が高かったり、少ない魔力の消費で最大限の魔力攻撃をすることができたりする。それらの結果から、ウィザードタイプは常に平静を保つ必要性が求められるんだ。まとめると、想像力や意志が強いほど放出される魔力は多くなり、感情によっても左右されるが、落ち着いている状態が1番好ましいってなとこだな」

 

その理論に相違はないようで、悪魔としての経験がそれなりに長い朱乃と、生まれながらの悪魔であるリアスはそれに頷く

 

「次に魔術的要素。これについては……まぁ、純血の悪魔は魔術適正が驚くほどに無い。そのメカニズムは未だに解明されていないそうだ。対して転生悪魔は人として持っていた能力を悪魔となっても使用できる場合が多い。魔術の行使もそのうちの一つだな。魔術は自身の魔術回路から魔力(オド)を使用し、詠唱と、何らかのイメージで魔術行使のトリガーを引き、その効力を発揮する。ただ、魔術回路の数や魔力(オド)の質で威力や効果に大きく違いが出てくるし、数を増やしたり質を上げるのも一筋縄じゃいかないから、自分の生まれに期待するしかないな。魔術には感情とかは関係ないから、魔力と違って安定した火力と効果を引き出せるのがポイントだが、先天性や才能によって大きく左右されるから、特殊なケースでない限りは難しいな」

 

ホワイトボードの余白のスペースが全て埋まったため、裏表が変わった

 

「さて、ここまでで質問があるやつはいるか?ん、美優か。どうした?」

 

「えっと、魔力と魔術にはそれぞれ別のトリガーがあるって言ってましたけど、それを同時に使う時ってどうすればいいんですか?」

 

帝は質問の内容に思わず一瞬目を見開いた。教えようと思っていた内容にズバッと切り込まれたのだ。素晴らしい着眼点だ、と内心で高く評価した帝は笑みを浮かべた

 

「お、いい質問だな。今回はそのことを転生悪魔の3人に教えようと思っていてな、そいつをする際の必須技能の習得方法を教えよう。悪いがリアスには事前にも言った通り別で教えることがあるから、それまで少し待ってて欲しい」

 

「わかったわ。じゃあ折角だから、ここで待っておくわ」

 

了解、とだけ答えたら、今度は朱乃からの質問が飛んできた

 

「帝君、必須技能の習得と言っていましたが、一対どういうことをするのですか?」

 

「そうだな、今から教えるのは並列思考を習得するためのトレーニングだ」

 

「並列思考……ですか?」

 

「そうだ。さっき言った通り、魔力と魔術を行使する際には別々にしてイメージを固める必要があると言ったな。しかし、それをする際には自分の脳内でのイメージを崩し一から構築せねばならず、仮にイメージを崩すことなく出来たとしてもラグが発生する。それを起こさないための並列思考だ」

 

徐にホワイトボードから離れた帝は人差し指を突き出し、魔力で球体を生成すると、形を変えたり、グルグルと回したりと自由に動かし始めた

 

「こいつは魔力を使って生成したモノだ。大体は自分の思うように動かしたり、形を変えたりできるし、簡単にモノを複製したりもできるといった具合だな」

 

フィンガースナップの音と共に魔力が消え、続けて帝の右腕に幾何学的な形で線が浮かび上がった

 

「そんでこれが魔術。まぁ見ての通りわかるが、発動タイミングが魔力を使った時に比べてわかりやすいのが欠点だ。今は強化の魔術を使ってるんだが、今回はこれを覚えて魔力の強化をできるようにするのが最終目標になる。基本的に魔術は魔力での攻撃をする際のサポートとして使うことになるかな。はい、朱乃ちゃん」

 

「魔術がどう言ったものか、というのは帝君の説明でわかりましたが、魔術はどうやって認識をするのでしょうか?」

 

「それについてはお前達の魔術回路を開いた後で教えるよ。ほれ、こっちに首筋突き出して……でもいきなり叫んでセクハラとか痴漢とか言わないでよね……?」

 

ビクビクと怯えながら及び腰になっている帝からは、今の時代においての男性の生き辛さが見て取れる。まるで電車に乗っている時にいきなり痴漢と言われたことがあるかのような怯え方だ。女性優位の社会は末恐ろしい限りである

 

やっぱりやめたほうがいいよな……?なんて呟く帝をよそに、3人は迷うことなく従った

 

「……よし、最初は朱乃からだ。い、行くぞ……」

 

輪郭部分に手を置き、指の腹を首筋に当たるように調整し、朱乃の体に微弱な量の魔力(オド)が流れた

 

しかし朱乃は上の空だ。理由は単純、帝の整った顔立ちに見惚れていたのだ。顔と顔が非常に近い、所謂ガチ恋距離と言われる状態にあった。まぁ、帝の体勢が体勢なためにどうしようもないことではある……それを抜きにしても、学園では美形イケメンなんて呼ばれているのは納得がいった。色の深みと輝きが絶妙なバランスを保ったエメラルドグリーンの瞳、片目が少し隠れてしまいそうな房のある綺麗な銀髪、少し小さめな筋の通った鼻に微かに笑みを浮かべる薄い唇……顔だけでなく、全体的にスラっとしたシルエットに加え、性格、包容力など……これでイケメンでなければおそらく全ての人間の目は腐っているのか、濁ったビー玉でも埋め込まれているのだろう

 

そんな状況に健全な乙女なら心臓をドキドキと高鳴らせ、頬を赤く染めている。例に漏れず、朱乃も健全な乙女であり、しかも相手は結構いいかも、と気になっている相手だ。顔に熱が籠もっていくのも自然なことだ

 

こんな距離なら間違いが起こっても仕方がない……ぼやっと蕩けたようなことを考え、朱乃は帝の唇へと吸い寄せられた

 

「こら、何どさくさに紛れてキスしようとしてんだアホ」

 

「ひゃっ!?」

 

しかし、そうは問屋が卸さないようで、人差し指によってそれは阻まれた。自身のしでかそうとしたことに気付いてハッと我に帰った朱乃はボフッと顔から湯気を出し、さらにと言わんばかりに思いがけない追い討ちをもらう

 

「ったく……少しは自分のことを大切にしろよ……それに俺だって最初は好きな人としたいし……」

 

口元を隠し、少しもじもじとした態度で頬を赤らめた帝に、普段のおちゃらけた様子や何気ない仕草に見える男らしさなどのギャップと相まってクリティカルヒットしたようだ

 

意外にもロマンチストで、もじもじとしている様子は完璧に女子のそれだ。少し絵になるのが腹立つ

 

「ってそうじゃなくてだな!朱乃、さっきお前の魔術回路を開いたわけなんだけど、一瞬でも何か頭の中に浮かばなかったか?」

 

「えっと……少しだけですが、雷雲から雷が落ちる、というようのなイメージが浮かびましたわ」

 

「OKだ。魔術を使う時、そのイメージは重要になる。しっかりと覚えておくように。あぁそれと……1回目だから大目にみるけど、次はオシオキしちゃうからな?

 

耳元で紡がれた挑発的な囁き声は、見事に朱乃をダウンさせた。朱乃は真っ赤になった顔を手で覆い机に突っ伏し、犯人はペロッと舌を出して軽くウィンクをし、してやったりと言いたげな笑みを浮かべた

 

「さって次はアーシアだな。さっきみたいなことはもちろんしないから安心して欲しいんだが……大丈夫か?」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

アーシアは特に何かが起きる事もなく魔術回路を無事に開くことができた。「お疲れさん」と帝が労いの意を込めてぽんぽんと軽く頭を撫でると、アーシアは少し満足したような気持ちになった

 

さて次は美優……というところでまたもや問題が起きた

 

「んー……こりゃ完全に怯えられてんな……」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

さて、ここで皇美優という少女について少し深掘りをしておこう

 

彼女は容姿がとても良く、スタイルや体型など、どれひとつ取っても魅力的な女性だ。実際、学園でも非常に人気があり、そこらのアイドルなんか目じゃない。それなら当然、色恋に飢えた男子はアプローチをかけまくり、気を引いて一気に彼女をゲットだぜ!する算段を立てる下心マシマシな者は多かった。美優が駒王学園1年生であった頃、それはもう毎日のように告白されていた。同級生はもちろん2年生、3年生と下手すれば全校男子生徒が彼女にしていたんじゃないかというほどだ。しかし、美優はそれを全て断っている。彼女は男性恐怖症だ。それもかなりの重症である。男性が同じ空間にいると少し息苦しく感じるし、半径1m以内に寄ろうものなら目眩がし始め、真横に居るものなら動悸が激しくなり、息切れを起こし始める。最悪そこに過呼吸までプラスされる。過去のトラウマのせいでこうなっているのだが、今は割愛しよう。気が許せる相手……例えば一誠や父親、裕斗などの身内に対してはそういったこともないのだが、その身内に至るまでの道のりがとてつもなく長いのだ。現に、身内にかなり近い帝でさえ近くにいると怯え体を震わせている。やはりぽっと出のお兄ちゃんでは無理があったか

 

「うーん……まぁ、ダメならダメで仕方ないか。心の準備とかそういうのもなく始めた俺が悪いし」

 

「いいの?この合宿は私達の力を上げるためのもの。そう時間をとっていていいとは思えないのだけど」

 

困り顔の帝は美優から一歩引き、そんな様子にリアスが苦言のようなものを呈した

 

「んー……良くはねぇよ、当然ながら。ただ、強くなるためにはモチベーションが必須だ。それを欠いた状態で修行したって成果は乏しいもんさ。この子に必要なのは、時間と覚悟、そして強くなりたいという意志だ。そこから一歩ずつ、少しでもいいから進めればいい。よく言うだろ?千里の道も一歩からってね」

 

「……ごめんなさい……私のせいで……」

 

「……深くは聞かない。オカ研(ここ)にいるのって、大体は過去になんかあったり、自分だけのもんを抱え込んでるヤツばっかだろ?それに関してどうこう言えるような、人様の内側に土足で踏み入るような図太さはねぇ。それを解決するなんて無理だし欲しがってるような言葉を掛けれるほど優しくもねぇ。でもさ、見守ったり少しだけ手を貸してやったり、期待して待つだけならできる。こんなんでも、結構期待してんだぞ?いつか肩並べて一緒に戦えるって。……待ってるぞ、美優」

 

伝えたいことを伝えられたのか、帝はそれ以上美優に対して何も言わなかった。並列思考と魔術のトレーニングメニューを朱乃とアーシアに伝え、より詳しく内容をまとめた冊子を2人に渡した帝はリアスと共に別室へと向かった

 

「私の……覚悟……」

 


 

「よかったの?美優をあのままにしていて」

 

「いいのいいの。美優を気にしてるのは俺とお前だけじゃない。彼女は必ず立ち上がってくれる。今度は自分から歩み寄ろうとしてくれるはずさ」

 

「ふふ、その自信はいったいなんなのかしら?お兄ちゃんの勘?」

 

「お、よくわかってるじゃん。そんじゃ、リアスの分も発表しますかね」

 

やる気を漲らせたリアスは帝の方を見る。じっと見つめると顔が熱くなってしまうので、後ろの方に焦点を当てながら頷いた

 

「今からここに積んだ15冊の兵法書を、9日目の朝までに丸暗記すること。それがリアスに出す修行課題だ」

 

「えっと……ここにあるのを全て……なのよね……」

 

目の前には厚さが7cmにも届かんばかりの兵法書が積まれていた。どれも対人戦闘における膨大な量の戦術や陣形をまとめたものばかりだ

 

あまりの量に若干辟易していると、著者の欄に目が止まった

 

「ゼフィリム・ヴェルデヴェルデュ……?」

 

「あぁ、それ俺の友達だよ」

 

聞いたことのない名前だと思い、自身の記憶から該当する人物を見つけようと思案していると、本を綺麗に仕分けていた帝がそう答えた

 

「へぇ、そうだったのね。どんな人なの?」

 

「うーん……なんだろう、俺と同じで悪ふざけとか騒いだりとかが好きなんだけど、頭のキレがすごくてさ、戦術から戦略、パッと思いついたもんが全部めちゃくちゃいい感じにまとめれるスゲェヤツだよ。……って何その顔」

 

笑顔で楽しそうに友人の話をする帝に、リアスはつい微笑ましくなって笑顔を浮かべていたようだ

 

「ごめんなさい、あなたが楽しそうにお友達の話をするものだからついね。とっても大事なのね」

 

「まぁな。何せ、俺とアイツは()()だからな」

 

「心友?親友じゃなくて?」

 

「おう、心と心で繋がっていて、互いに尊重しあえて尊敬できて、そして互いの全てを曝け出せるような関係。その意味を込めての心友だ。要はズッ友以上の仲みたいなもんだよ。そら、読みやすくまとめておいたからさっさと始めるように。これからみんなのとこ回るけど、1時間置きぐらいにここに来てちょっとした問題出すから、くれぐれもサボったりしないように」

 

雑談もそこそこに、そろそろ書斎から出ようとドアに近づいた帝かリアスから再度声をかけられた

 

「あら、もう少しくらい一緒にいてくれたっていいのに」

 

「んー?ここに居る間は俺を独り占めできるんだから我慢しやがれ。それとも、手取り足取り、これぐらいの距離感で色々と教えて欲しかったのか?こんな風に」

 

リアスはちょっとした挑発をすると、それに乗った帝はリアスの肩に顎を乗せ、手を取って指と指を絡ませ合うように握った。リアスは瞬く間に顔を真っ赤にさせ、帝はニシシと悪戯が成功した少年のように笑った

 

「えっ……その……きょ、距離が近すぎよ……私達まだ、つ、付き合ってないのよ?別に私はこのままでもいいというか……」

 

「あぁ、だから朱乃に悪戯してたとき羨ましそうにしてたのか。でもこのままじゃ集中できないんじゃないか?」

 

「誰がそうさせているのよ……もぅ……」

 

「ふふ、ああやって相手を挑発するからだよ。その様子じゃしばらく集中できないだろうけど頑張れよ」

 

帝は余裕たっぷりに、なんならリアスにウィンクまで残して部屋を出た。残されたリアスは30分ほど開始できなかったとか

 

「……やべ……なんかアイツめっちゃいい匂いしたし……指めっちゃ細くて柔らかかったし……ちょっと迂闊すぎたな……」

 

ここにも1人、自爆して耳を真っ赤にしている馬鹿がいたとかいなかったとか

 


 

後日、決意が固まった美優が帝の元へと訪れ、魔術回路を開くことに成功。朱乃とアーシアの魔術と並列思考を共に習得するために合流した。全体的に上手くいっているようで、着々と一人一人の実力が上がっている。途中、一誠が死にかけたり、裕斗が骨折したり、朱乃が魔術を暴走させかけたりとアクシデントはあったが、それらも全て彼達の成長の糧となっている

 

「992……993……994……っ!」

 

しかしここに1人、そんな現実に満足できず、オーバーワークに励む少年が1人いた

 

『相棒、そろそろ休め。体が悲鳴を上げ始めているぞ』

 

「995……996……997……こんなとこで音をあげてたら……追いつけねぇんだよ……みんなに……!!」

 

自身の相棒の忠告に聞こえないふりをかまし、そのままトレーニングを続けた

 

彼は悪魔として転生したときから、ずっと弱さに苛まれていた。ハッキリ言ってしまえば1番弱い。みんなには無い自分だけの力を持っているが、肝心の土台が弱ければ例え強化されたとしても弱い。だからこそ、さらに力を求めているのだ

 

「998……999……1000……!!」

 

予め決めておいた回数に到達すると、重り代わりに持っていた大岩を手放し、地面に横たわった。全身からは汗が噴き出し、体から発せられる熱は夜風にさらわれて少しずつ彼の熱を冷ましていく

 

「よう、オーバーワークお疲れさん」

 

「っ!?」

 

ふと声をかけられた瞬間、感じ慣れた、しかしそれでいて意識外から突如として首筋にもたらされたヒヤリとする感覚はモヤモヤとしていた感情を少し吹き飛ばすには十分だった

 

「そう驚くなよ、隙を晒してるお前が悪いんだぞ?ほれ、こいつ飲んで少し休め。それとドライグ、お前イッセーを止められなかったな?そんなんだからマダオなんだよ」

 

『おい!マダオとはなんだマダオとは!』

 

「まるでダメなオオトカゲ。略してマダオ」

 

『おい相棒!それは聞き捨てならんぞ!撤回しろ!』

 

やたらと暴れる左腕をなんとか抑えながら声の主から渡されたスポーツ飲料を一口分飲む。想定していたよりも甘さは薄く、少しだけ塩気を感じるような後味が残った。中に残っているのは少しシャーベット状になった部分と、カチカチに凍っている部分、そして手の熱で融解し、液体へと戻っている部分の3つだ

 

声の主は少年の置いた大岩に腰掛け、あの黒くて甘いクセになるような炭酸のパンチが効いた味わいの飲料を飲んでいた。マダオとのやりとりにひと段落ついたのか、こちらの顔を真っ直ぐ見つめてきた

 

「水入れてるからちょっとは飲みやすいだろ?汗もかなりかいてるから塩も入れといた。……なんか悩み事か?」

 

しばし沈黙する。風が吹き、今度は目の前の存在を示すように香りを運んできた。風呂から上がってきたばかりなのか、フローラルな甘い香りだ。濡れた髪は艶やかに月光を浴び、首から覗く鎖骨には汗が滲み、よりいっそう妖艶さを引き出している。黙っていれば世の女性の悉くを魅了できるだろう容姿や体つきに思わず呆れる。正直自分だって兄のように女の子を揶揄ったりしてみたい。日頃の行いを省みると、そんなことすら出来そうに無いが

 

戦闘でも、自分と同級生のイケメン野郎、力自慢の後輩が束になってかかっても遊ばれる。付け入る隙が全くない。身近な存在が途方もなく遠い。部長も、副部長も、姉も、同級生も、後輩も、皆が遠い。守りたいと強く思う子ですら、唯一無二となり、大事な戦力として数えられている。自分の力の無さを改めて思い知り、悩んでしまう。それこそ、仲間達を妬んでしまいかねない程に

 

「なぁ兄貴……俺って皆にとって必要なのか……?」

 

「お前……いきなり何を……」

 

「だってそうだろ?俺は木場みたいな剣術もスピードも無い……子猫ちゃんみたいなパワーも無い……アーシアみたいな皆を癒せる力も無い……部長みたいに頭がキレるわけでもない……朱乃さんと姉ちゃんみたいに魔力に秀でてるわけでもない……そんな俺が、皆に必要なのか……?」

 

弱音を吐いていると突然、頭を撫でられた。子供扱いされていると感じ、むっとなって睨みつけると笑って躱された

 

「ったく、ふざけたこと言ってんじゃねぇっての。劣等感に苛まれてナーバスになってましたってか?そんなら、俺が心配する必要はないってことだな。喜べイッセー、お前は強くなれるぞ」

 

強くなれる……?自分が……?信じられない。何を根拠にして言っているのか全く理解ができない

 

「まぁその様子だと、何言ってんだコイツはって感じだな。いいかイッセー、強くなれるヤツってのは大体が挫折を何度も味わう。そんで何かのきっかけを見つけて一気に成長する。俺はイッセーに、その可能性の一端を見出したんだよ」

 

「……きっかけ……」

 

「お前には強くなりたいって思う意志がある。仲間のためなら強大な敵に喧嘩を売れる勇気がある……彼我の実力差を見極められないからこれは正直褒められたもんじゃ無いけど……あとは、お前の決意を決めさせるきっかけだけだが……お前ならこの合宿中にそれが掴めるって信じてる。何せお前は俺の弟だからな」

 

「ははっ、なんだよそれ……ま、兄貴がそんなに言うってんなら、俺も信じてみるよ。兄貴の信じる可能性ってヤツ」

 

ニッと笑顔を浮かべる兄に釣られてつい吹き出してしまった。でも、心の中のつっかえのような焦りはあまり感じなかった。たまにはこうして心の内を晒して話してみるのも悪くはないのかもしれない

 

「まぁ今に見てろって。そのうち兄貴を超えてやるよ。コイツと一緒にな!」

 

「まったく、やれるもんならやってみやがれ。おいそっちのドライグ、イッセーのこと頼んだぞ」

 

『はっ、誰にモノを言っている?お前に言われずともこの俺が相棒を最強にしてやるさ』

 

「ははっ、そいつはいい。俺達も負けてらんねぇぞ、ドライグ」

 

『ああ。魂を分けられていようとこの俺は誇り高き二天龍の片割れだ。そうでなければ張り合いが無いと言うモノだ』

 

突き出した左の拳に兄の拳が合わさったと同時に心に再び灯火が宿ったのを感じ、新たなスタートに期待を膨らませた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued.




今回は帝くんの容姿に軽く触れてみました。イメージとしてわかりやすくするとアズレンのダンケルクを男にしたみたいな感じです

それと今回は皇家の兄弟妹についてスポットを当ててみました。一誠は間違いなく原作とは違った進化をさせるつもりなので乞うご期待です
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