甘くない偽物の恋   作:鼻眼鏡26号

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あけおめことよろ






10話

大谷side

 

 

俺は走ったとにかく走った。体力なんて御構い無しに。

辛かった、知ってしまって本当に辛い、自分が好いている彼女は俺ではない他の相手を好いていて、それを知ってしまった事が。

 

こんな気持ちは一度も無かった。

こんな体が軽く胸を締め付けられる思いは。

 

これが失恋。

 

 

どのくらい走ったのだろう。

自分が走った中では一番走ったのではないだろうか。

 

走り疲れ息を整えて周りを見てみると辺りは暗くかなりの時間走ったのだとわかる。

場所は漁港でこの時間は人があまり居なかった。

 

夜の砂浜は危険だが俺は砂浜に降りた。

思いっきり叫びたかったが近所迷惑になりそうだしやめて、ただ海を見ていた。

 

この広い地球の中俺は失恋をした。地球規模で観ると小さい事だが自分にとってはとても大きかった。

そう考えていると目が熱かった。

 

そして俺は久し振りに泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく泣いたら少しはスッキリして悟りを開いたかのように気持ちが健やかだった。

 

そうして冷静になった俺はここがどこだかようやく調べることにしてケータイを出そうとすると。

 

 

「おい!さっさとそいつを運べ!もたもたしてんじゃねぇ!」

 

 

「これでようやく俺たちの復讐ができる。」

 

 

すぐ近くの物置工場から聞こえてきた。

 

 

「お前達は外を見張れ。来た奴は誰であろうと殺せ。」

 

 

いやいやいや、殺せ?マジモンのヤバいやつじゃん。

とりあえず、警察に電話しないと。

 

そう思ってケータイの画面から緊急連絡の110番を押して警察へ連絡を入れた。

連絡を済むと警察からその場から離れて下さいと言われたからまず安全第一として離れるため気配を消して歩く。

 

 

「これでようやくビーハイブに復讐が出来るな。」

 

 

「ああ、しかし惜しいよな。あんな若くかわいい子があそこのボスの娘じゃ無ければ、こんな思いをせずに済んだってのに。」

 

 

「確か、桐崎千棘だったか?」

 

 

その会話に俺は足を止めた。

 

 

「ああ、生きていれば俺の娘と同い年だったよ。あの時ほど後悔した日はねぇな。」

 

 

「仕方ねぇよ。この仕事柄有り得ない事じゃないからな。」

 

 

「あの嬢ちゃんもあと数時間の命か。」

 

 

「……………」

 

 

数時間の命?その言葉に俺の中で何かが弾けた気がした

 

俺はその場から離れるのではなく工場に向かい歩き出した。

気配を消し入り口を守っている2人の男の後ろを取るべく、横から屋根に登り男達の真上に立った。

 

 

「………行くか。」

 

 

そう呟き屋根から足を下ろし飛び降り

 

 

ドドンッ!

 

 

頭を掴み胴体を地面に叩きつけうつ伏せにし、気を失わせるために頭を蹴り脳を揺らした。

 

 

「………」

 

 

勢いだけの行動でやってしまったがそれを後悔する前に俺は行動をする。男達を運び隠してから俺は倉庫へと入った。

 

倉庫内は物が段になっていて俺はそれに登り移動し上から相手を確認する。

倉庫内をうろついているのは3人で倉庫の中心で桐崎を囲んでいるのが4人合計で7人と確認した。

 

 

「……意外と少ないな。」

 

 

そこからの行動はうろついている男を2人上から飛び降り着地と同時に地面に叩きつけ気を失わせた。

 

しかし、2人目の男を倒したところで

 

 

ダンダンッ!!

 

 

「…敵襲だ!…気をつけーー」

 

 

「あぶねえな!」

 

 

威嚇射撃で撃って来た3人目の男は大声を上げるが、2人目の男が持っていた鉄パイプを拾い距離を一気に詰めて、大ぶりの一撃を顔面に振りかぶった。

 

 

「…ハァ…ハァ…危なかった。威嚇じゃなきゃ死んでた。」

 

 

そこからまた荷物に登り隠れた。

震える手を抑えて動き続けた。

 

中央から離れた2人に向かい荷物を落とし潰し動きを封じた。

そこから走り真逆へ走り背後を取り桐崎に1番近い男の首を絞め口に手を当て声を出させず引きずり連れ去る。

 

 

「どこかって聞いてんだよ!!」

 

 

男を隠しまた走り背後を取りハットの男から拳銃を取り上げ

 

 

「女の子に向けるべきもんじゃねぇな。」

 

 

「!?テメェ!何モンだーー」

 

 

「危ねぇだろうが。」

 

 

こちらを振り向いた瞬間に腹に拳を打ち込み

 

 

「ゴホッ…や…やめーー」

 

 

男を持ち上げ荷物に向かって投げる。

 

 

ガシャンッ!

 

 

男は音を立てて荷物に突っ込む。

 

 

「大丈夫か?桐崎さん。」

 

 

震えて目を瞑っている彼女に声をかけ安心させるために震える手で頭を撫でた。

 

 

「…!…お…大谷君…!。」

 

 

桐崎はその目から涙が流れて震え声であった。

 

 

「縄外すからちょっと待っててくれ。警察も読んだから安心してくれ。」

 

 

俺はそう言って後ろで縛られていた縄を腕力で引きちぎる。

 

 

「大谷君!」

 

 

「うおっと…桐崎さん?」

 

 

桐崎は縄が放たれると振り向き抱きついて来た。

触れるとわかる体の震えに気づき俺は桐崎の頭を撫でた。

 

 

「よく頑張ったよ。…こんな所さっさと出よう。」

 

 

「うん…うん!」

 

 

俺は桐崎の手を取って歩き出す。

しかし、そうすんなりとうまくは行かなかった。

 

 

「…待てよ。」

 

 

「!?」

 

 

突然聞こえたその声は俺のすぐ後ろからで、声の主は俺の肩を掴んでいた。

 

 

「…そいつを置いてけッ!」

 

 

「ガハッ……」

 

 

ガシャンッ

 

 

ハットの男は俺を引いて正面から顔面に拳を打ち込んだ。

俺はそのが予想外の威力でヨロヨロと後ろに倒れた。

 

 

「テメェには……ねぇだろ!…決死の覚悟は!!」

 

 

「ぐッ……ガハッ…は…離…せ」

 

 

ハット男は俺の上に乗り両手で首を絞めた。

 

 

「こいつらの思いをお前は知らねぇだろ!!奴等のせいで家族を失った悲しみを!!」

 

 

「んなこと…知る…かよ」

 

 

俺も両手を離すためもがくが一向に外れる気がしない。

 

 

「テメェみたいな部外者に邪魔されてたまるかよ!」

 

 

「…くそッ」

 

 

息がかなり危ないと感じたその時、彼女は動いていた。

 

 

「そ…その人を離しなさい!!」

 

 

震え声の桐崎はハットの男に向かって銃口を向けていた。

 

 

 

 

 






優が殴られる描写がわからなかったらファミパンだと思ってくれて結構です。


次で終わらせます。


感想、指摘待ってます


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