忙しい
林間学校行きのバスの中
「………」ぶっす〜
「いや〜悪かったって優さんよ〜、そろそろ機嫌直してくださいよ〜」
「べっつに〜機嫌悪くねーし」
林間学校が始まり班も自分としてはかなりいい所に入れたと思い浮かれていたものの、今現在のバスの席に不貞腐れていた。
班は、俺に楽、集、鶫に宮本、小野寺に桐崎と俺にとっては最高の班に入れたと考えていたが。
今現在、自分の席には隣の集しかおらず、残りはもうひとつのバスに楽を中心に1番広い後ろの席に腰を下ろしていた。
俺を含めたクラスの男子全員が、楽に恨めしい顔を向けていた。
自分の感情を自覚してるからこそ、本気で不貞腐れて隣で目を光らせておちゃらけた友人を対象にふつふつと怒りが湧いていた。
「まぁまぁ…てか、不貞腐れるって事はあの中に優さんの本命がぁぁぁぁぁぁ!!すんません調子に乗りましたからアイアンクローやめて!!」
「…………」ギリギリ
「ちょ!いつもならすぐ終わるのに!!無言でスルーやめて!!!」
隣でなにか騒いでいるが放っておいて、別のヤツと話そうとこのバスを見渡すと見知った3人組が見えた。
「おい、席狭いからもっとそっちに寄れよ。」
「は…はいぃぃぃぃ///」
キザイケメンの小木良太が、2人席のバスで窓側女子に向かって迫り狭いスペースで壁ドンをしていた。
「ふふふ……なかなか揺れるイスね。まったくもって使えないわ。」
「は…はいいいいぃ!」
モデル顔負け美女の中林優香は、わざわざ席のない真ん中に男子生徒を配置して背中に乗っていた。
「ふふっ……僕の上に座るかい?」
「え?…あっ…はい。」
「最高だ!!」
女子のクラスメイトを自分の背中に乗せて喜ぶ大森巧。
「………寝るか。」
忘れよう、今見たもの全てを。
「あのそろそろ離してもらってもいいですか!?…って寝てる!?」
目的地到着
「どおーだった!?俺が用意したスバラスィードライブは?」
「プラスかマイナスかどっちかと言えばプラスだが、お前を……どうしたんだその顔。」
息が切れ切れな楽は、原因に対して文句を言おうとしたが顔が多少凹んだ友人を見て疑問に思った。
「起きたらなんかそうなってたぞ。」
原因でもある俺は、知らん顔をしてその会話に入り込んだ。
楽は俺の言い方からして察してはいるが特に何も言ってこなかった。
「よーし みんなよく聞けよー!プリントにも書いてあるけど、お前らは今から近くのキャンプ場で飯盒炊さんとカレー作りだ。楽しんで作れよー!」
「あーーーい」
キョーコちゃん先生の話のあとそれぞれの班がカレー作りを始めた。
「さてさて、ここで俺が参加するとみんなで作る意味なくなるので監修させてもらいます。それでは、役割分担させてもらいます。」
「「「「はーい」」」」
「はい、いい返事。楽は薪を貰って来てもらって火を起こしてください。火には十分に気をつけるように。」
「了解だ。……役割分担…頼んだぞ。」
楽が最後の方を小さい声で言ってくるのは、凡そ小野寺と桐崎の壊滅的な料理の腕前からであろう。
「安心しろ、そんなヘマはしねぇよ。」
今回、楽の期待を裏切るだろうが俺は大丈夫だと確信していた。
「集は、米とぎ。小野寺と宮本は、鍋と食器を貰ってきてくれ。桐崎と鶫は、野菜と肉を貰ってきてくれ。料理器具とかカレーのルウは俺が持ってくるから。」
「「「「はーい」」」」
それぞれが、動き出し自分の持ち場へと着いた。
俺も自分の仕事で器具を貰ってきて、それぞれの役割を見回っていた。
最初に訪れたのは楽の場所で、こいつは普段から料理をしているから今回は作らせないように、火の扱いを任せたのだ。
「なぁ、優…本当に大丈夫なのか?お前も前に見ただろ?あの二人の腕前をさ。」
「知ってるよ。でも今回は大丈夫だ、安心しろって」
「うーん、しかしだな〜」
「おいおい、お二人さんなんの話しをしてるんだ?」
米とぎの役割の集が、といだ米を持ってきて会話に入ってくる。
「楽が女子チームが作る料理にケチつけようとしてるんだよ。」
「なぁぁぁにぃぃぃ、楽さんよーそれはいけませんぞー」
「や…やめんか、変な誤解が生まれるだろ!」
俺の悪ノリに集は乗り楽をからかった。
たまには、男子3人でこんな何気ない雑談が楽しかった。
次に訪れたのは女子チームのカレーのルウ作り班だった。
ここには、変な材料が無いため余計なものを入れられる心配は無いのだが、一応は様子を見に来た。
そこでは、綺麗なタマネギの皮むきを見せる小野寺と物凄い早業でピューラーを扱い見事な皮むきを見せる鶫。
そして、その野菜をしっかりと切る宮本。震える手でゆっくりと野菜を切る桐崎だった。
ここでは、それぞれが自分に合った役割を与えた。
まぁ、桐崎は最近よく料理部に来て中林と一緒に料理の練習している姿を見ているため、今回は日頃の成果の為に役割を与えたのだ。
そうして、順調に料理が進みカレーが完成した。
「うん、匂いもいい匂いだし色もしっかりしてるから、これで出来上がりだ。」
「もはや、奇跡だな」
「いや〜女子と一緒に作った料理なんてサイコーだな〜」
男性陣はそれぞれの反応に対して。
「疲れたわ。小咲があんなの入れようとしビックリしたわ。」
「ご…ごめんね、るりちゃん」
小野寺の暴走を常に気を張っていた宮本が肩で息をしていた。
「いやぁー料理って楽しいですね!お嬢!」
「うん、今回は上手くいったわ。」
本当に楽しんでいた鶫と桐崎。
「練習した甲斐があったな。」
「うんっ!」
桐崎のその笑顔がとても明るく可愛いものだった。
頑張ります。
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