ハリー・ポッターと呪われた瞳ーInnocent Red   作:轟th

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注意、今回はR-18に近い表現が含まれます。
R-15のタグは付けていますし、私としても大丈夫だとは考えています。
ただ人によっては不快に感じられるかもしれないので、場合によってはトロールを倒した辺りで飛ばしてしまった方が良いかもしれません。

では、本編をどうぞ。


One must draw the line somewhere.

 人気のない廊下を、四人の少年少女が駆け抜ける。

 必死に走りながら後ろを振り返れば、ほんの十メートルも離れていない距離には無骨すぎる棍棒を振り回して廊下に置かれた装飾品や床の大理石を砕き、目から殺意を溢れさせながらトロールが駆けている。もし追い付かれようものなら、問答無用でその棍棒で薙ぎ払われ、象のように巨大な足でもって踏み砕かれることだろう。

 故に、四人とも決して速度を緩めない。

 それが即ちに、自らの死へと直結すると理解しているからだ。

 だが――。

 

「ど、どこまで、走ればいいのさ!」

「分かんないよ、そんなの!」

「兎に角、死にたくなかったら走りなさい!」

「も、もう、限界……」

「マリア、頑張って!」

 

 四人とも、体力が限界に近かった。

 彼らはまだ11歳の子供、それも特別な訓練をしていた訳ではない。それもあんな化物に襲われているのだから、精神的にも追い詰められていた。その中でマリアが根を上げているが、他の三人も似たような状態だった。

 それでも走り続けて三度目かの角を曲がった時のことだ。

 

「むっ、マリア。ようやく見付けたぞ」

 

 そこにいたのは、ノエルだった。

 どうやらマリアがいないことに気付き、わざわざ探しに来たようだ。

 

「早く戻…………おい?」

 

 廊下の真ん中に立つノエルの両脇を先ずは少年二人が駆け抜け、続いてハーマイオニーとマリアもまた立ち止まることなく素通りする。あまりのことに唖然とし、ノエルは振り返って首を傾げて四人の動向を伺った。

 

「貴方も早く逃げて!」

「逃げるって、何から………」

 

 そう答えながら視線を前に戻せば、今まさに怪物が廊下の角を曲がってきた。

 それで自体を把握したノエルもまた方向転換し、全速力で前を走る四人の後を追った。

 

「お前ら! 何をどうしたらトロールに追われるんだ!?」

「仕方ないだろう! ハーマイオニーが襲われてたんだよ!」

「アイツ、ブチギレてるぞ! 何をした!?」

「ぼ、ボクが、極光で目を焼いたの」

「そんなことしたら、誰だって怒るわ!」

「今はそんなの後回しよ! それより、どうやって逃げるか考えないと!」

 

 ハーマイオニーの言葉は最もだった。

 ここでマリアを責めたところで状況が打開される訳もなく、ならばそんな余計なことに労力を割くぐらいなら生き延びる為の手立てを探したほうがずっとマシだ。かといって、妙案がポンと出てくれば誰も苦労しない。

 

「次は、どっち!?」

「次の角を左だ!」

 

 先頭を走る赤毛の男の子の先導で五人は走る。

 だが、その選択が誤りであったことを彼らは直ぐに気付いてしまった。

 

「しまった、行き止まりだ!」

 

 闇雲に走っていた結果、彼らは逃げ場を失った。

 向かう先は袋小路の行き止まり、引き返そうにも直ぐ後ろには怪物が迫っていた。

 

「ど、どうしよう!?」

「そこの教室に入れ、早く!」

「ダメだ。鍵がかかってる!」

「退いて! アロホモラ!」

 

 メガネの少年を押しのけ、ハーマイオニーが魔法で鍵を開ける。

 五人は急いで教室に入って閂をかけたところで、ようやく五人はひと安心した。一般的にトロールは低脳なので、廊下に誰もいないとなれば簡単に見失ったと判断して別の方向へと向かうことだろう。

 

「ふぅ……アロホモラって?」

「基本呪文集の第七章、鍵を解錠する呪文よ」

「でも、これでやり過ごせるよ」

「そうだな……っと、来たみたいだ。全員、物音を立てるなよ?」

 

 息を潜め、耳を欹てれば廊下を歩くトロールの足音が聞こえてくる。

 のしのしと歩みながら五人を探しているのが壁越しに感じられ、もし物音一つでも立てようものなら如何にトロールと云えど気取られてしまう。そのことに戦々恐々しながら早く諦めて去ってくれと願っていると、それが通じたのか、トロールが踵を返して去ろうとしている足音が聞こえてきて何人かが安堵した。

 まさに、その瞬間。

 

 

 ポトッ。

 と何の因果か、一匹の子グモが赤毛の少年の手の平の上に落ちてきた。

 実は彼は今よりも幼い頃、お気に入りだったテディ・ベアを実兄の悪戯により大きな蜘蛛へと変えられたことがあった。その時の経験はそのままトラウマとなり、五年以上たった今でも彼は大小問わず生きた蜘蛛が大の苦手だ。

 つまりは――。

 

「ひっ、うわああああっ!」

 

 大声を上げて飛び上がり、手の上の蜘蛛を弾き飛ばした。

 突然の凶行に他の四人は驚いたが、問題はそうではなかった。

 

「バカっ、そんな声を出したら――」

 

 ノエルが言いかけた瞬間、教室の扉が外から破壊された。

 砕かれ飛散する扉の残骸の向こうには、妙に目だけを光らせた怪物が彼らを見据えていた。

 

「前の扉から――早く!」

 

 五人は慌てて前の扉から逃げようとしたが、それを察したのか、それとも単なる偶然なのかトロールが弾き飛ばした机が障害物となって戸の前を封鎖してしまった。こうなってしまえば逃げ道はたった一つ――トロールの背後にある出口のみ。

 しかし、今のトロールの隙をついて逃げるのは至難。

 かといって戦おうにも、彼らが覚えているのは魔法の初歩の初歩のみ。

 こうなっては恐怖に震えながら、先生たちが駆けつけてくるのを祈るしかない。

 

「………手を拱いている暇はない、か」

 

 だが一人、違う人物がいた。

 ノエルは他の四人とは異なり、異様なまでに落ち着きを払っていた。

 まるで、目の前にいる怪物など存在していないかのような冷静さを見せている。

 

「四人とも、今すぐ目を閉じて屈んでろ。俺がいいと言うまで決して顔を上げるな」

「な、何を一体――」

「死にたくなかったら従え!」

 

 静かに、それでいて反論を許さない声が響いた。

 四人は言われた通りにその場に屈んで目を閉じた。

 

「――エマンシパレ」

 

 それは聞いたことない呪文だった。

 続けて、まるで縛られていた何かが解かれるような衣擦れの音が聞こえてきた。

 

 

 “蛇よ、絡み付け”

 

 

 微かにだが、そんな言葉が耳に届いた。

 その直後、ズシンッと重たい何かが落ちたような音と振動が伝わってきた。

 

「……もういいぞ」

 

 恐る恐る顔を上げてみれば、そこには倒れたトロールの姿があった。

 先程まで大暴れしていたのが嘘のように、まるで石像にでもなったように動かない。

 

「な、何をしたの……?」

「少し麻痺させただけだ。三十分もすれば動き出す」

 

 アイマスクを直しながらノエルが答える。

 そこへバタバタと慌ただしく何人かの人物が教室に踏み込んできた。先生たちだ。

 おそらく情報通りに地下に向かった後、トロールがいないことに気が付いて上まで探しに来たのだろう。そして先ほどの物音を聞きつけて、ここに駆けつけたのだ。先生たちは先ず倒れているトロールを見てぎょっとし、続けて傍にいる五人の生徒の存在に気がついた。クィレル先生が情けなくひーひー言うのを尻目に、マクゴナガル先生はずいっと前に進み出て五人を睥睨した。

 

「一体全体、あなた方はどういうつもりなんですか?」

 

 それは冷静ながら怒りに満ちた声だった。

 明らかにマクゴナガル先生はこの場に五人がいることを怒っている。

 

「実は、その……」

「先生、これには事情が……」

「どのような事情だったのか、納得できる物を聞かせない」

「マクゴナガル先生。彼らは……私を助けに来てくれたんです!」

「ミス・グレンジャー? それは、どういう意味ですか?」

 

 驚いた面持ちで、先生はハーマイオニーをみた。

 

「わ、私がトロールを探しに来たんです。私、一人でやっつけられると思い上がって。誰の手も借りずに倒すことができたら、みんな私のことを認めてくれるって思ったんです! 色んな本を読んでいたから、その……トロールのことも知っていましたから。けど、それは酷い勘違いだと痛感しました。すみませんでした!」

 

 そう言って頭を下げた。

 まさかハーマイオニーがそんなことを言い出すとは思わず、誰も言葉が出なかった。

 

「もし四人が駆け付けてくれなかったら、私は今頃トロールに殺されていました。本当は誰か一人が先生を呼びに行くべきでしたが、そのときは私を助けることに必死で……」

「ミス・グレンジャー……もしその言葉に嘘偽りがないのなら、貴方には失望しました。自分がどれだけ危険な行為をしたのか理解していますか? もし四人が間に合わず、貴方が命を落としていたらご両親はとても悲しまれることでしょう」

「……はい」

 

 ハーマイオニーは項垂れる。

 赤毛の少年が思わず口を開いたが、それはノエルにより阻止された。

 もしここで何か言ってしまえば、ハーマイオニーの行為を無駄にすることになるからだ。

 

「ミス・グレンジャー、グリフィンドールからは5点減点します。怪我がないのなら今すぐに寮に戻りなさい。今頃、生徒たちが中断したパーティーの続きをしています」

 

 ハーマイオニーが頷くと、他の四人へと視線を向けた。

 

「言っておきますが、五人とも生きていることは奇跡です。幾ら同じ学友を助けるためとは云え自分たちの行いが、如何に無謀だったかを忘れてはいけません。ですが、危険を承知で危険なトロールに立ち向かった勇気は賞賛に値します。一人5点ずつあげましょう。このことは私の方からダンブルドア校長に伝えておきますので、帰ってよろしい」

「いや、ルカニアとエバンズは残りたまえ」

 

 と、スネイプ先生がノエルとマリアを呼び止めた。

 二人は先生に連れられて教室を出ると、地下室にある彼の担当である魔法薬学の教室の隣にある私室へと案内された。扉が閉まったところで、スネイプ先生は二人へと振り返った。

 

「さて、先ずは何故お前たちがあの場にいた?」

「それは、ボクが……急にトイレに行きたくなったんです。寮まで我慢できそうになかったので。ノエルはそんなボクを心配して探しに来てくれたんです」

「………そうか。ならば、あのトロールを倒したのは――ルカニアか?」

「はい。俺がやりました」

 

 先生は予想通りの返答に、重々しくため息をついた。

 どうやらスネイプ先生はトロールを倒したのがノエルだと気づいていたようだ。

 

「言っておくが、お前たちの行動は決して英雄的なものではない。それを自分は英雄だの勇敢だのと勘違いするではない。また寮に戻らなかったことは減点の対象だが、これはトロールを倒した功績を鑑みて不問とする」

 

 もう帰ってよいと許しが出たので、二人は部屋を後にした。

 二人は並んで寮へと進んでいると、ふと思い出したようにノエルはマリアをみた。

 

「ところでマリア」

「なに、ノエル?」

「その……トイレは、間に合ったのか?」

「―――――」

 

 ビクッとマリアの身体が震えた。

 そうだ、余りに目まぐるしい出来事に忘れていたが、自分は尿意をもよおしていたのだ。

 まるで忘れていたのが嘘のように、それは存在感を明らかにしていた。

 

「あ、あ……のえ、る」

 

 前屈みとなり、顔を赤らめる。

 それで事情を察したのか、ノエルも硬直する。

 

「いや、マリア……ちょっと待て」

 

 例えるのなら限界寸前のダム。

 既に壁面には無数の亀裂が走っており、いつ決壊してもおかしくない状況。

 

「ここは拙い! 近くのトイレまで運ぶから我慢を!」

「も、もう……無理」

 

 我慢の限界だった。

 本人の意思とは無関係に流れ出したそれは、貯めてたのもあり一気に流れ出した。

 

「あ、ああ―――」

 

 少女の足元に水たまりが広がっていく。

 

(すまん、マリア……無力な俺を許してくれ)

 

 ノエルに出来たのは、ただ背を向けて耳を閉ざすことのみだった。

 

 




トイレを我慢して涙目になり、プルプル震える美少女。
いい、と思ってしまう私は紛れもなくHENTAIなのでしょうね、きっと。
よく分からない、という方はPixivにて「おしっこ我慢」と調べて下さい。

クリック? クラック! また今度!
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